「戯言の部屋」

セピアス、戯言を語るの間

土曜日の午后 12

2006-08-19 21:15:22 | 土曜日の午后

 たまにはこんな試みもよいかと思い。
 物語風にお届けいたします第十二弾。



 
冷やし飴を買いに出て
今日がもりばばの
お話の夕べであることを思い出した



もりばばの家に集うのは
最高気温を記録した日と決まっている
殺人的な日差しを逃れ
ひんやりとした風情に包まれた
あの家



ばばの過去を知っているものはいない
合気道の師範だったとか
飴売りだったとか
光脈の守り人だったとか
噂は色々ある

僕はそれが
すべて本当だと思っている



「おやおや。今年もきたっね。
まあ、上がいやんせ。
昨日よか茶が届いたで
まあ、飲んみゃんせ。」



障子を開けて仰ぎ見る
月の光の禍々しさ
語りの夕べは不定期なのに
登る月はいつも満ちていて
濡れ羽色の森を照らし出す



「そんではある
をんなの話をしようかね」

灰暗い光と共に
語りの夕べが始まった

 珍しく和風テイスト。
 セピの憧れる「やってみたいこと」の一つに。
 囲炉裏を囲んでお年寄りに昔話や伝承を語ってもらう。
 というのがあります。
 木が燃え爆ぜる音を聞き、嬲る風の声をバックミュージックに、訥々と語るしゃがれた声。
 どこか哀愁があって、土の匂いがする物語を紡いでいく。
 美味い番茶があれば、なおヨロシ。

 高橋克彦の作品に『眠らない少女』というのがあります。
 主人公が昔囲炉裏で語ってもらった、昔話『うりこ姫』の怖さを思い出し、妻と娘に語るシーンがあります。
 岩手の方言で綴られる物語は、その残酷な内容をさらに奇怪に血なまぐさくさせる。
 本当に方言で話しているのを聞いたら、場の空気だけで震えてしまいそうです。

 そんな一時をぜひ過ごしたひ。
 民俗学大好きィには、たまらない集いではないでせうかww