「戯言の部屋」

セピアス、戯言を語るの間

クリスマス・ディナー

2007-12-24 14:36:58 | ショートショートショート


 レノを街中で見かけた時、ニナは思わず最後に会ったのはいつだったか思い返していた。
 6ケ月。
 そう、6ケ月だ。
 久しぶりに見るレノは少し痩せていた。
 さらさらと舞い落ちる雪の中で、寒そうにコートの襟を寄せている。
 しんしんと冷える空気の中で、頬は白く透き徹り。 
 唇だけが朱を塗ったように赤く鮮やかだった。
「よう。」
 ニナは、片手をあげてレノに声をかけた。
 レノはニナに気付き、はんなりと微笑んだ。
「久しぶりだな。」
「うん。久しぶり。」
 言葉が、白い吐息となって中空に霧散する。
 彼を象る線はあまりに細く、このまま溶けて消えてしまうのではないかと思える程に華奢だった。
 無理も無い、とニナは心の中で呟く。
 今年の夏、レノの妻ミーナが死んだのだ。
 生まれ変わったら、きっと比翼の鳥となり。
 もしくは連理の枝となって、季節を彩ると思えるような。
 そんな仲の睦まじい夫婦だけあって、レノの嘆きようはあまりに激しかった。
 ミーナが、泣き叫ぶレノの魂さえも連れて行ってしまうのではないかと思える程だった。
 空ろな瞳でただ涙をはらはらと零すレノに、とても葬儀の相談など出来るはずもなく。
 ニナが一人で取り仕切ったのだった。
 それから6ケ月。
 レノは一度も外には出てこなかった。
 心配になって何度か家に訪れたのだが、レノはけしてその扉を開こうとはしなかった。
 人形師としての職業上、家に籠って製作することはよくあることであったが、時が時だけにやはり心配だった。
 でも、どんなに言っても、レノは大丈夫だと扉の向こうで繰り返すばかりだった。
「何してるんだ?」
「忙しくて、クリスマスの準備をしてなくて・・・当日に慌てて準備をしているんだよ。」
「そうか。」
 小さく笑うレノに、ニナは少なからずホッとする。
 事実、レノが抱える荷物には、クリスマスディナーに使うと思われる食材やら、蝋燭やら、飾りやらで埋め尽くされていた。
「仕事はどうだ?」
「うん、まずまずだよ。」
「まあ、仕事していれば気が紛れることもあるしな。この時期はクリスマスだから、注文も多いだろう。」
「そうでもないさ。」
 北風が、彼の前髪を巻き上げる。
 レノは小さく目を細めた。
 蝶の触角のような細い睫が震えるように揺れて、黒檀の瞳に僅かな陰がかかる。
 その瞳に宿る小さな瞳に、ニナはふと違和感を感じた。
 熱に浮かされたように潤んだ瞳は、確かにニナの方を向いているのだが。
 ニナの後ろ、遥か遠い何かへと焦点を結んでいるように思えたのだ。
 彼の眼差しの一切が、その一点へと吸い込まれているように見えた。
「大丈夫か?」
 ニナは、思わず声をかけていた。
「何が?」
 首をかしげて、微笑むレノ。
 ニナは、かける言葉が見つからなかった。
 黙り込むニナを見つめながら、笑顔はやがて雪と共に零れ落ちた。
「もう、行かなきゃ。」
「そ、そっか。」
 レノは、小さく手を振った。
 ニナも釣られて手を上げる。
「家で、ミーナが待っているからさ。」


 暖炉で赤々と燃える炎の前で、レノはばっとテーブルクロスを広げた。
 入念に洗濯し、沁み一つないクロス。
 きちんとアイロンがあてられて、ぴっしりとテーブルを包み込んでいる。
 その中央に、銀の燭台を載せる。
 燭台には赤い蝋燭が置かれ、火を燈されていた。
 レノは、ひとつひとつの料理を運んでくる。
 こんがりと焼けた七面鳥。
 パースニップと茹でたにんじん。 
 湯気を立てるマッシュポテト。
 林檎を丸ごと入れたパイ。
 ラム酒をたっぷりと入れたプラム・プディング。
 グレービーソースが、暖炉の火を映して艶々と輝いている。
 ワインの栓を抜くと、彼は磨き上げたグラスに注いでいく。
 完璧に飾り立てられたこの密やかな食卓に、レノはゆっくりと腰を落ち着ける。
「今年も、二人っきりのクリスマスだね。」
 ナプキンを膝に広げながら言った。
「これからも、ずっと、こんな風に二人っきりで過ごして行こう。」
 レノは、細い指先でワイングラスを手に取る。
 紫の漣に、白いドレスを着た女性が映っていた。
 いや、白いドレスを着た人形が映っていた。
「乾杯。」
 レノは呟き、幸福そうにワインを飲み干す。
 語ることもなく、微笑むこともない彼の妻。
 ひっそりとした静けさの中で、ただじっと頭を垂れていた。
 それはまるで、二度と戻ることの無い魂に向かって、祈りを捧げているかのように見えた。
 思い出の中で彷徨いながら、幸せな夢を見るレノを見守っているようにも見えた。
 窓の外にはしんしんと雪が降り積もり。
 この世界をどこまでもどこまでも、白く染めてゆく。
 雪が深くなればなるほど。
 沈黙の密度が色濃くなっていくように思われた―――――。


年末調整

2007-12-22 10:03:17 | Weblog

 毎年年末から年明けにかけて、私の母は実家に帰っておりました。
 祖母が亡くなってからは、祖父が殆ど寝たきりになり、その介護のためにも帰っておりました。
 祖父が亡くなってから1年以上経ちますけど。
 今年になってある問題が勃発しました。
 そう、「遺産問題」です。

 遺産をどう相続するかの問題じゃあナイです。
 遺産とも言うべきなのは土地と、そこに立っている住居なんですが。
 これが、どちらも銀行の抵当に入っていることが祖父の死後に分かったんですね。
 契約者は叔父(祖父母と一緒に暮らしてた)と祖父。
 祖父が亡くなった為、連帯保証人を新たにつけろ・・・と銀行側から言ってきたわけです。
 んな何千という借金があり、返済しているとは知らなかった母。
 吃驚仰天してしまったんですね。
 借金も相続されますから。
 1/3ずつ子供達に借金が相続されている状況だったわけです。

 折りしもこの時私は銀行で働いていたので。
 銀行のやり口というか、どんな風な「考え方」でどのように何を「求めている」のかを銀行側の立場から知ることが出来ました。
 ・・・このために銀行という職を得たのか?そういう運命だったのか?と思えるくらいの偶然でした(笑)
 友達の弁護士などに相談しつつ。
 結局亡くなったことを知った後3ケ月以上経っても「相続放棄」が出来ることを知り、裁判所に申請して相続放棄の手続きを取りました。
 借金を返済したら、きちんと得られる「財産」だったかもしれないですが。
 リスクの方が高すぎる賭けだったのです。
 
 そうして、母は年末実家に帰られなくなりました。
「もう帰られなくてもいいわ。」
と呟いていた母。
 その言葉の裏には、実家に帰ることを考えて借金を引き受け、もし万一自分の子供達に相続されるより、自分が実家を捨てた方がマシだ・・・という気持ちがあることが私には分かりました。
 切なかったんだと思うんです。
 大好きだった祖母の思い出の残る家。
 大好きだった祖母の遺品に彩られた家。
 そこを捨てるということは、並大抵のことじゃない。
 でも、自分は自分の子供に迷惑はかけられない。
 ただその一心だったと思うんですね。

 今年は姉が結婚をし。
 兄は世界のいずこかにいる。
 だから、年末は私は母と一緒にいてあげようと思いました。
 せめて、今年くらいはね。
 親子寄り添いながら、百八つの煩悩を数えたいと思うのです(笑)

召しませ カップケーキ

2007-12-08 02:55:30 | 召しませ


 カップケーキ
 日本じゃそれほど好まれてはいませんが。
 「ちょっとしたおやつ」にもなれば「ちょっとしたバースデーケーキ」にもなる。
 海外では大変親しまれている食べ物です。
 例によって、例の如く。
 海外ドラマを見ていて、「ぉお!食ってみたい!!(゜ロ゜屮)屮」となったわけですが(笑)

 最近始まった超能力ドラマ「HEROES」9話目?かな?

 不死身少女クレア・ベネットが、チャリティに出すカップケーキを義理のママンと作っているシーン。
 どうでもいいが、クレア・ベネットって毎話死んでないか?(笑)
「普通がいい」
と泣いてたまうのはいいが。
 けっこう冷静に「え、よいしょっと」と解剖された体を繋げるのはどうよ?どよ?どーなのよ?
 えーっと。
 話がズレました。
 続きまして、大好きな海外ドラマ「Sex and The City」
 
シーズン3第5話「恋のボーダーライン」より。

 キャリーがエイダンと初めて出会い。
「恋しちゃった・・・とミランダに語るシーンです。 
 2人がパクついているのが、The Magnolia Bakeryという店のカップケーキ。
 日本ではカップケーキを、「小さなマフィンに生クリームがかかっているもの」・・・と思っている方が多いですが。
 実は違います。
 ケーキの上にのっているのは「アイシング」と呼ばれる砂糖クリームです。
 粉糖と卵白で作られたクリームですが。
 着色料で色づけして、明らかに体に悪そうな鮮やかな色合いにするのが特徴(←シドイ)
 これが、日本人には「ありえねえ!(・・ )」というくらいの甘さらしいです。
 一口で「歯が痛くなる」と思わせる甘さっちゅーから。どないやねん。
 海外のお菓子は素敵なんですが、極端な甘さがちょっとねえ・・・。
 で。
 やはり、そんなゲロ甘いのはイヤだけど。
 日本人好みの甘さのカップケーキが売ってないかしら?と思う方はやっぱりいると思うんですよ(自分で作るという選択肢はのし)
 需要があれば、供給がある。
 ありました!
 銀座プランタンの中にある洋菓子屋さん「Cappuccino」(チャプチーノ)
 本来はイタリアンレストランなんですが、Cafeとしても好評らしいです(in NY)
 プランタンの中では当たり前ですが、洋菓子屋さんとしてカップケーキを販売してました。

 1個300円強というお高さ☆
 上にのっているのはアイシングではなく、生クリームです。
 いや、これがマジでねえ。

 美 味 い  ゜+。:.゜(*゜Д゜*)キタコレ゜.:。+゜

 一番美味しかったのは写真奥にある「ダブルクリーム」という奴でした。
 中にカスタードクリームが入っていて、まさにダブルで美味いww
 
 海外では、こういうカップケーキを作って。
 1個ずつにアイシングでアルファベットを書いて、バースデーケーキにしちゃったりするわけです。

 ↑なんか、可愛いですよねえww
 多分オーブンがあれば、結構簡単に作れるお菓子なんじゃないかと思いますが。
 なんにしろウチは泡だて器がないのでねえ。
 手作業になるわけですよ。
 それでも昔は、卵白から手作業でメレンゲにしたりしてたんですよ?
 いかに食い意地が張っていようと、面倒臭いもんは面倒臭い (・・ )
 ちゅーわけで、お菓子作りはやらなくなってしまいました☆
 まあ、いいじゃん。んな、高いもんじゃなし。
 食べたくなったら、買って食べちまえ!
 
それがセピ流でごんす (✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ


怒涛の飲み会ラッシュ その1

2007-12-07 00:16:25 | Weblog
 12月といえば。
 忘年会やらクリスマスやらで忙しい頃。
 今月は、会社関係の飲み会だけで4件をこなすことに。
 既に諭吉ちゃんに羽が生えてます ・゜・(ノД`)・゜・
 というわけで。
 金と気を使った飲み会をするなら、どうせならネタにしてしまえと。
 そんな風に思ったセピです(←転んでもタダでは起きない)
 まずは第一弾、会社のクリスマス会でございます~~。
 
 場所は渋谷。
 しかも、その会場がパワハラでやめた会社の本社の隣。
 初手から思い出しムカが入る小ぶりな私 (・・ )
 そんな私の人間性が炸裂する中、開場ぴったしくらいに着く。
 貸切パーティルーム専用のビル(3階建て)の1階に何も考えず突入。
 入り口で
「メーカー様のお名前をどうぞ」
といわれ、普通に間違ったパーティ開場に入っちゃったことに気付く。
 さすが私っ!
 いいボケかましてますなっ!!(✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ
 デカデカと出ている看板に、きちんと「会場(2階)」と書かれていることを確認しつつも。
 なんでか3階なんぞに行っちゃったりして。
 さすが私っ!
 脳みそ溶けてますなっ!!(✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ
 ま、そんなこんなで会場についたわけです。

 所詮は会社の飲み会。
 期待はしてませんでしたが。
 予測以下の出来だとは期待してませんでしたわ (・・ )
 いやー。ちゃっちい。
 とにかくちゃっちい。
 うちっぱのコンクリを、黒くすりゃいいってモンじゃねえ。
 ミラーボールをつるしたら、パーティになるってモンじゃねえ。
 と、心の中に突っ込みいれつつ。
 パーティの始まる前に既にワイン2杯目を煽っていた私ですが。
 クリスマス会のプログラムってのがマタ凄くて。
1 始まりの言葉
2 歓談
3 シャンパン式
4 歓談
5 手品
6 歓談
7 終わりの言葉
 ・・・・。
 ・・・・。
 ・・・・。
 あのさあ。
 
 歓談ばっかぢゃん! (ノ∀`)アイター

 ま、そんな中で、明らかに人数を考えてない少ない料理を全て制覇致しました。
 バイキングなんで、競争率が高い高い(汗)
 そんでも、お腹どころか命一杯になるまで食べましたよ。
 まあ、料理はそこそこ美味しかったです。
 でもひとつだけ疑問が。
 なんでクリスマス会なのに、筑前煮? ( ´,_ゝ`)プッ
 さらにひとつだけ言っておく。
 いくら面倒くさいって言ってもだな。
 仮にもパーティなんだからさ。

 バナナくらいもいで出せ (・・ )
 マジで吃驚しましたよ。
 吃驚ついでに、思わず写真撮っちゃいましたよ(←ネタ根性)

 ちょっと良かったのは、シャンパン式。
 ってか、シャンパン式しか良くなかった orz
 シャンパンは、ロゼとなぜか青いシャンパンでして。
 見た目、とても美しかったです。

 当然どちらも飲みました。
 ぶっちゃけ、先輩の分まで飲みました。
 ってか、先輩つぶれちゃいまして(笑)
 幹事の人が入れ替わり立ち代り私に
「大丈夫ですか?」
と聞いてくる。
 ええっと・・・。
 私の薄汚い人生で見た酔っ払いたちを鑑みても、多分大丈夫だと思います (✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ
 とは言いませんでしたが(笑)
 とりあえず、沢山お茶を飲んで頂いたし。
 歩き方もおぼつかないわけじゃなかったので、大丈夫でしょう。
 ・・・多分(ちょっと不安)

 まあ、そんな感じのクリスマス会でした。
 歓談中の、談笑する男女を見ているのが面白くて仕方なかった。
 肩がぴったりくっついて座っている男女がいるわけですよ。
 会社の飲み会ですからね。
 セクシーな場所ではないのに、明らかにセクシーな雰囲気があるわけですよ。
 付き合っているか、付き合って無くてもどちらかがソノ気だな ( ´艸`)ムププ
 と思わせる風景なわけです。
 それがリーチ目なのかどうなのかまでは分かりませんが。
 今後の展開を夢想するだけで面白い。
 え?オヤジ臭い?

 ほ っ と け や (・・ )

ついにクランクアップ

2007-12-02 22:42:12 | Weblog


 やっと・・・。
 やっと・・・。
 ぃやあああああっと・・・。
 小説が書き終わりました

 パンツァ~イ \(*T▽T*)/ パンツァ~イ

 いやあ、嬉しい。
 今回は本当に苦労しました。
 80Pという長さで、ぶっちゃけどう推理小説なんて書けるのよ?と思っていましたけど。
 やってみるもんです。
 最初の1稿目でなんと60P。
 少なっ!
 そんで加筆した第2稿で75P。
 修正校正して・・・結局最後は76Pか77Pでしたね。
 で、思いました。
 第一稿で60Pということは。
 残り20Pもあれば多少派手なトリックも展開出来そうな気がする
 ということは、80Pで推理小説を書くのは不可能じゃない。
 人間相関図が必要になったり、室内トリックの関係上物の位置を描写しなきゃいけないとかじゃない、普通のシンプルなトリックだったら十分にイケそうです。
 なるほどねえと。
 私が長く描くのは、どうしても「心理描写」なんですよねえ。
 本質的に「人間心理」を描きたい私としては、やはり「トリックを魅せる」という書き方は、タイプ的に向かないのでしょうねえ。
 多分やろうとして出来ると思うのですが。
 というか、実際今回もきちんと考えたんですが。
 やっぱり妙に心理描写が長い(笑)
 これってば、もう「性格」みたいなもんすかね。
 いやー色々勉強になりました。

 ところで私が小説を書く時。
 本当にノっている時は、目の前に映像が展開していきます
 だから、一人映画を見ているような感じなんです。
 ちなみに映画の撮影でサイレント映画の頃は、フイルムをクランク(歯車とネジをサドルのような)と言われるもので手回ししていました。
 一定の速度で回さなければならず、これによりクランクは「フィルムを回すこと」となり、撮影を象徴する言葉となりました。
 故に撮影開始は「クランクイン」、撮影終了は「クランクアップ」と言われています
 私の小説を書く時のイメージってのは、まさにこのクランクを手回ししている感じなんですね。
 目の前で展開するストーリを、じっと正確に描いていく。
 なので、私は小説の書き始めを「クランクイン」、小説の書き終わりを「クランクアップ」と勝手に言っています(笑)
 さて。
 今回のクランクアップの暁には、是非やりたいことがありました。
 それは・・・。

 大盛りブラウニーを食べる (✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ

 昨日、けいこ姫と念願のブラウニーを食べましたよ!!
 なんつーか。
 期待通り、生クリーム特盛りの明らかに2人分以上あるブラウニーでした。

 美味しいごほううびは三倍美味しいw
 友達と楽しく食べるスイーツはさらに美味しいww
 ううん。満喫致しました。

 さてさて。
 次回のクランクアップは2月末と3月末の予定。
 とりあえず12月はのんびり出来るかも??
 忘年会シーズンですしね。

 懐の風通しが良くなる季節ですけど、何か? (・・ )