誰かと付き合ったとして、その馴れ初めを話すのがセピは実は嫌いです。
いつどこでどんなシチュエーションで、どっちがどう告白をして、どっちがどうそれに応えたのか。
そういうこと、事細かに聞いてくる人がいますが、出来れば話したくない。
照れているんじゃないんです。
なんていうかねえ・・・「そんなこと聞いて楽しい?」と思うわけですよ(←シドイ)
多分聞く方としては、そのラブラブっぷりを冷やかしたいみたいな気持ちもあると思うんですけど。
前彼と付き合った時、根堀葉掘聞かれてかなり参りました。
聞かれたから応えるのですが、何か言うたびに
「えーやだーもー超ラブラブぢゃーん。」
みたいな反応がねえ・・・・。
聞かれたから応えたのに。
「まったくも~、ラブラブっぷりを自慢しちゃってさあ(笑)」
な感じで言われるとねえ。
ふざけていると分かっていてもねえ。
「聞いたのはそっちでしょ!」と思ってしまうのです。
多分ですねえ。
相談といいながらのろけだった、とか。
愚痴といいながらのろけだった、とか。
そんな女性の話を多く聞いてきたから、やたらと「のろけ」に過敏に反応するのかもしれません。
個人的に「のろけを聴く」のはまあ大丈夫ですが、私個人が「のろける」のは嫌。
多分「のろけ」って、殆どの人が「つまんねー」と思う話なんじゃないかしら?と思うから。
私だけなのかなあ。
恋人同士は恋人同士で造られる会話のノリや、一緒に過ごすうち造られる関係のノリってのがあると思うのですよ。それは恋人同士の数だけ色があり、まさに十人十色。
そのノリでしか分からない話をされても、共感してあげることが出来ないので。
内輪ネタを延々とされているような感じだと思うのです。
そういう話を聞けても、私がするのはちょっと。
特に付き合い始めなんか、よっぽど気をつけないと殆どの話がのろけになっちゃう。だから多分、「真摯に相談したい」というような困った状況にならない限り、自分の恋人の話をしたがらないのだと思われます。
前に友人から「彼さあ、こんなこと言っててさあ。可愛いと思わない?」とのろけられました。
私の反応は「ふ~~~~ん。」
母性本能が無いですからねえ(笑)
おおよそ男性を「可愛いw」と思うことがない(言い切っちゃった)
だから、「可愛いw」ネタでのろけられても反応が鈍いので、肩透かしを食らわせてしまうかも(苦笑)
ああ、でも今書いていて思いましたが。
「えーやだーもーラブラブ~」とからかう会話も、「彼って超可愛いの~」な会話も。
よくよく考えたらとても「女子高生らしい」会話だなあ。
なんていうか、女性らしいきゃぴきゃぴした感じ。
そういうのが苦手で嫌いで、女子高時代苦労したから、それでこんな風に思うのかも!
無意味なきゃぴきゃぴより、よっぽどブラックトークの方が楽しいわ。
人のこと言えませんが、「表面上仲良し」は女性の専売特許ですからねえ。そして大概そういう会話ってきゃぴきゃぴしたものになる。
もっと人間性やセンスが感じられる会話の方が、ずっと楽しいと思うのだけれどもなあ。
でも、ある意味そういうきゃぴきゃぴは、挨拶のような社交辞令のようなもので、そこから入っていくことで「とりあえず私は害はないし、ノリについていけますよ」というサインを出しているのかもしれませんね。
そしてきゃぴきゃぴすることが出来ない私のような人種は、にこやかに微笑むだけで精一杯という感じになる。
まあ、いいのさ。
「誰とでもとりあえず仲良くなる」力はなくとも、私の周りにいるのはおかげさまでいい女ばかりだし。
私自身は全然いい女ではないですが、「面白い」女であるだろうと思われるし(馬鹿にされているという説もありますが・・・)
そんな風に少しずつ、人間関係って取捨選択されていき、淘汰され排斥されていくんでしょうねえ。
ε- (´ー`*) フッ
人生において、ささやかな不幸が連続して起きる日ってのはあるもので。
私にとって、そういう日はそこそこ頻繁にやってくる(頻繁なんかい)
土曜日は、まさにそんな一日でした。
土曜日は友人と会う約束をしていて、家を出てほんの数分チャリを転がした段階で忘れ物に気付く。
ああ、しまったと思って家に戻る。
家に入ろうとして、家の鍵すら忘れていることに気付く(←致命傷)
「アアン、馬鹿ン。」
と思いつつ。
インターフォンを鳴らすも、普段家にいるのにこの日に限って母が(しかも私が家を出た直後に)外出したことが判明。
うぎゃーと思うも、なくても大丈夫っちゃあ大丈夫なものなので、そのまま外出する。
友人と待ち合わせて映画「マリーアントワネット」を見に行く。
吃驚するくらい、つまらん ( ゜Д゜)ポカーン
開始後1時間で、劇場を出たいと思わせる映画ってなかなかないよねー(皮肉)
こんだけあくびを連発させて泣かせる映画ってのも、なかなかないやね(超皮肉)
だってだって。
やっぱり主役を演じたキルスティン・ダンストの演技がなっちゃいなかった。
そうだろうと予測していましたが、ここまでとは~~~(ま、脚本も悪いんだけど)
夫婦の営みをしようとしない夫と、周りからの圧力。
その狭間の苦しみや、しきたりの中の窮屈感や、やるさないからこそ爆発するような想いで夜遊びを重ねる彼女の孤独。
全然、感じられないε- (´ー`*) フッ
ただうっすらと微笑んでいるだけ。
学芸会じゃないんだから~~ヽ(´~`; ォィォィ
その後、生まれて初めてのホルモン焼きを食べました~~
これはめっちゃ美味い。しかも安い。
「やっぱ内臓が一番美味いよね~~~」
なーんて言いながら、ばくばく食っていました。
で、千円割引クーポンを持っていたのですが。
なんと四千円以上頼まないと割引にしてもらえないらしく。
会計¥3800ちょっとナリ。
ぅ惜しぃぃぃぃぃ~~~Σ(´□`ノ)ノ
後一品頼んだら千円割引だったんかい!
頼めばよかった~~~~。
ぐーがー、とのたうちまわっていました。
その日は朝まで遊んで帰りました。
なんせ家の鍵がないので、日曜日に誰もいなくなる前に帰らねばならぬ。
映画はつまんなかったが、まあまあ楽しかったとしよう・・・・と、思いつつ地元に着く。
自転車が、撤去されている!( ゜Д゜)ポカーン
あああああ。
もうもうもう!
本当に本当~~~~に、ツイてない!(基本的に滅多に日曜に撤去されない)
しかも引き取りに¥2000かかるなり。
自分が悪いんだけども。
どうにもこうにもサンドバックにびしばしキックを繰り出したくなってしまったセピアスなのでした~~。
トホホ
これほど煙草が似合う女性もそうそういまい。
煙草を挟む指先のフォルムも。吸い込む時に僅かに細める瞳も。紫煙を吐き出す唇の紅さも。
まるで映画の中のワンシーンのように、完璧な調和がある。
髪を掻き揚げ、斜めに見あげる瞳のキツさ。いつも口元に浮かんでいる皮肉っぽい微笑。
口元から覗く犬歯が、刃のように尖っていたとしても、きっと違和感なぞ感じない。
いや寧ろ、彼女になら噛み殺されてもいいとさえ思う。
彼女にかけられた嫌疑は、殺人。
現場に残った少ない証拠を寄せ集め、聞き込みをし、あらゆる科学捜査の果てに彼女にたどり着いたのだ。
第一容疑者として、出頭を申し渡したのが先刻。
この狭い取調べ室で、彼女は美しく煙草を吸っている。
まずいなあ、と心の中で呟く。
長い経験で分かる。
本当にまずいのは、こういうタイプの女性なのだ。
「事件当夜はどちらに?」
「自宅。」
「お一人ですか?」
「興味があるの?」
「質問に答えて下さい。」
私が憮然と言い放つと、彼女はおかしそうに笑った。
「ごめんなさい。誰かと一緒に暮らしているのかって意味かと思ったの。ええ、事件の夜は一人でいたわ。残念ながら、証明してくれる人はいないわね。」
ふうっと紫煙を吐く。
ゆっくりと瞬きをする。
長い睫の奥に、濡れたような瞳が私をじっと見つめている。この状況を楽しむように、きらきらとした光を滲ませて。
「被害者の男性を知っていますね。」
「ええ。」
彼女は肩を竦めた。
「どのようなご関係でしたか?」
「難しい質問ね。」
彼女は小さく首を傾げた。
「恋人、友人、他人・・・誰かと誰かの関係をカテゴライズするのは難しいわね。恋人でもなく友人でもなく他人でもない、そんな曖昧な関係もお互いが納得していれば成立してしまうものだから。」
「詭弁ですね。」
「そう?」
彼女は肩眉をあげ、揶揄するような微笑を浮かべた。
「調べでは、彼はよく貴方の店に行っていたそうですね。」
「ええ。」
「また個人的にも頻繁にお会いしている。」
「ええ。」
「もう一度聞きます。どのようなご関係だったのですか?」
「そうねえ・・・確かに客と店員という関係ではなかった。とても親しい関係だけど、肉体的に親密という関係ではなかった。そんなところかしら?」
と、言いながら彼女は髪を掻き揚げ、ゆっくりと足を組み直す。短いスカートから伸びた足の、まぶしいくらいの白さが私の目を刺した。
短い沈黙が訪れる。
彼女が彼を殺すとして、どんな動機が考えられるだろう。
彼の部屋にある沢山の痕跡が、彼女が犯人だと告げているのだが、どれも決定打に欠けるのだ。
男の首に巻きついていた、絹の感触を思い出す。さらさらとしたその手触り。ひんやりとした死体を、まるで飾り立てるような紅い布地だった。
白く細い彼女の指先と紅い絹は、きっととてもよく似合うだろう。
黒い服に身を包み、高いヒールの靴で踏ん張り、彼女はきりきりと男の首を絞める。無駄な動きは何処にもない。全てが淡々と、まるで丹精な音楽のように完結する。
煙草を吸う仕草のように。一分も隙のない美しさで。
力無く脱力した男の口元は、僅かに笑っている。
狂気の中で見る、幸せな夢に包まれた微笑。
それは確かに常識では考えられない歪んだ愛なのだが、それでも少しだけ羨ましいと思っている自分がいる。
死にたいとか、殺されたいと望んでいるわけではない。
ただ、目の前の女性には、確かに何か危険な闇を感じるのだ。全てを投げ打ち、暗澹とした泥の中に沈んでしまいたいと思わせる何か。息が出来ないくらい無我夢中で、何も見えない暗がりの中で、彼女という火だけが真実と思わせるような何か。
「彼が亡くなって、どう思いますか?」
ひたひたと近づいてくるような、彼女の魅力に飲み込まれそうな自分を振り払いながら、私は最後の質問を投げかける。
ふと、彼女の瞳が虚空を見つめる。
小さな小さな、ともすれば見逃してしまいそうな弱々しい光が、その目の中に飛来する。
「・・・・残念です。いい子だったのに。」
彼女はそう言って、少し淋しそうに笑った。
いままでのような態度とはまるで違う、まるでペットを亡くしたばかりの少女のような顔だった。
それは一瞬だけだったが、私の心に大きな布石となって響いた。
彼女は、大変危険な女性だ。
なぜなら、彼女は混乱を愛するからだ。
そして十分に自分の魅力を知っているし、それを活用する方法も知っている。
だが一方で、とても孤独な女性なのだと思った。
深い深い海の底で、遥か遠い水面を見上げるように。音もなく、温もりもなく、しんとした寂しさに漂いながら。彼女はきっと、何かを狂うほど求めているのだろう。
ほんの一瞬だけ見せた彼女の哀しみ。
それは蒼く蒼く透き通った、彼女の孤独の波紋だった。
「疑わしきは罰せずか・・・。」
釈放された彼女の後姿を見送りながら、呟く。
朝日の中で、背を伸ばして歩く姿があまりに凛々しくて、つい見惚れてしまう。
燐と顔を上げ、胸を張って歩く彼女。
彼を殺したのは、彼女なのか。それとも彼は、ただの自殺だったのか。
「もしかして、二人の間でそれは変わりないのかもしれないなあ。」
私はそう言って、煙草に火を点けた。
灰皿には、彼女が握りつぶした吸殻が残っていた。
紅い口紅のついたそれが、やけに官能的に見えた。
ふと思いついて、調書をもう一度見直してみる。
彼女が経営していた店の名前。
それは―――――「Queen Bee」
「出来すぎだな。」
私は小さく笑った。
映画「プラダを着た悪魔」と同じくらい女性のハートを鷲掴みしている(と思われる)
映画「マリーアントワネット」
ゼピはフランス革命アタリの歴史が好きなので、マリーアントワネットを描く作品も好きです。
暴動の火種となる首飾り事件を映画化した「マリーアントワネットの首飾り」とか。
結構いい映画だと思います。
さて、巷で上映中の映画「マリーアントワネット」↓
映画「プラダを着た悪魔」が、ストーリーよりも寧ろファッションに興味を引かれて見た方が多いと思われるように、この映画も華やかな生活の中のファッションやスィーツが見たくて劇場に行く女性が多いのではないかと憶測。
ま、多分マリーアントワネットの孤独をより深く表す為にも、「華やかさ」にかけてはかなり金をかけて造った作品だと思われます。
250周年ということもあり、アントワネットブームが巻き起こっている様子。
先月までは豪華なお部屋でマリーアントワネットになって下さい、みたいなホテルのイベントもありましたし。展示会も多く開催されていたみたいですねえ。
で、私はですね。
この映画をぜひ見たいと思うのですが。
正直、マリーアントワネットを演じるキルスティン・ダンストがあんまり好きぢゃない。
スパイダーマン出演した際も「こんなに奇麗じゃないヒロインは珍しい」という辛口の酷評を頂いていた彼女。
ん~~~確かに。ハリウッド女優にしては、華がないように思います。正直。
でねえ、華やかさをどう見せてくれるのかってところなんですよねえ。
むしろ、セピの目的は映画に沢山出てくるだろう・・・。
✿ฺスィーツ✿ฺ (´¬`)
上の写真みたく、まるで宝石のように飾り付けられたスィーツってのを、ゴージャスに食べてみたいでござるなあ~~~。
とはいえ。
食べたいなああああと思うのと、食べられるのとは違う話で。
ケーキを食べたところで、2個も3個も食えない。
食べたい気持ちがあっても、どうしても1.5個くらいで胸焼けが・・・・゜・(ノД`)・゜・
・お手軽に食べられる
・映画にも出てくる
・おフランス☆パリパリは雰囲気に酔える
というスィーツを探したところ。
見つけました!
その名は「マカロン」
シュー生地とパンの中間くらいな生地なんでしょうか。
むっちりとした食感の生地で、中にはたっぷりのクリームww
生地は色々な味があり、お値段が一個¥200前後と安価な為、手軽に楽しめるおフランスなスィーツだそうです。
ってか、私初めて「マカロン」ってスィーツを知りました。
表参道の駅で¥160で売っているという情報をキャッチ☆
これは映画を見に行くまでに、まずは味の予習をしないとねw
( ´艸`)ムププ
皆様は、セピが先月9日に動物園に行ったのを覚えていらっしゃるでしょうか。
そこに居た熊を見て、セピの心からのヒトコト。
「熊、食ってみたいなあ~~~~。」(←マジ)
アイヌでは熊鍋というものがあって、独特のコクと香りがする美味しい鍋なんですって。
高校生の時に武田泰淳著『森と湖の祭り』を読んで、アイヌの生活の美しさや哀しさに感動を覚え。
そして思ったのです。
「ぜひともに、食ってみたいな熊肉を。」(七五調)
そんなぼんやりとした憧れがあったわけですが。
先日、仕事帰りにビレバンに行って来ました。
そこで偶然見つけてしまったww
←ドドカレーと熊カレーww
トドは別に興味があったわけでもないのですが。
でもさ、トドカレーですよ?
海の獣と書いて海獣のトドですよ!?
どんな味なんだろうと、食べてみたくなるぢゃん!!(アタシだけ・・・?)
で、この連休に友人宅に押しかけ調理(っても温めるだけ)
勿論一緒に食べて、それぞれどんなか見ないとねってことで2缶とも空ける。
1缶内の分量は1.5人前くらい。なので中途半端に残った0.5人前分のルー。
友人、一緒くたにする。
君の行為は勇気がある行為だと思う。
が、ひとつだけ言っておく。
それを食うのは間違いなく、君だあああああ!
←カレーなる食卓
準備OK。
一応、口直し用にたまぎょ焼きを私が造りました。
コップに入っているのは友人が作った中華スープでござる。
とても美しいランチのように見えますが、ちなみにこれは朝飯風景です(笑)
やっぱりホラ、一日の力をつけるために朝から「ガッツリ」いっとかないとねえ(☆∀☆)
まずは、熊肉。
カレーの味が強くて、独特の味が分からん。
ま、筋が思った程なく、結構淡白なのではないかと思われます。
カレーによく合っていて、普通に美味しかった。
だよなあ。猪とか熊とかって、いかにも美味そうだもんなあ。
ちぇ、つまんねえの(←目的が既に間違っている)
続きまして、トド肉。
吃驚するくらい魚臭くて、臭みがカレーより勝っている。(←致命傷)
なるほど、海洋生物は例え哺乳類であっても臭いのね、ということを身を持って知る。
感想?
不味いわっ!食えるかぁ!_(:D)__(←討死)
ちなみにこのシリーズ、他に蝦夷鹿カレーとミンク鯨カレーがありました。
1缶のお値段は¥1000チョイ。
ちゃんと「北海道特産」と書かれた安心の品。
どこかの町並みで見かけた際には、ぜひともご試食めされ。
話のタネに!
その日訪れたカップルは、少し風変わりだった。
繊細そうな男性の隣に座った女性を見て、私は彼らの問題を一目で把握した。
女性は―――――そう、有機的人造人間だったのだ。
まだ、人間と殆ど機能的に変わらない生体人造人間というならば分かるのだが。
しかも彼女は随分旧式のタイプの有機的人造人間だった。表情を変えることすら出来ない。日々の雑用を淡々とこなせるくらいの機能しか、持ち合わせてないだろう。
無表情な眼差しで、彼の隣に鎮座している。
「ここが・・・恋愛カウンセラーと聞いて、やってきました。」
男性の方が口火を切った。思ったよりずっと幼い声だった。
「どうか僕達を、助けて下さい。」
私を見つめる彼の瞳はあまりに真摯で、そこに狂気がないことを確認した。
「そしてここにいらしたということは、何かトラブルを抱えているということですね。」
「はい。」
「どのようなトラブルですか?」
「問題は・・・彼女と結婚をしたいのに出来ない、ということです。」
「それは法律的な問題ですか?それとも個人的な問題ですか?」
「勿論法律的な問題もあります。この国ではまだ、有機的人造人間との結婚を認めていない。それは仕方がない。ただ今、彼女との交際さえ両親が認めてくれないことが、心の負荷になっているんです。」
「ご両親に、彼女と結婚したいとおっしゃったわけですね。」
「はい。もともと彼女は僕専用の雑用係として家にやってきました。両親は共に仕事が忙しく、僕に構う時間がない。自動制御化した広い屋敷の中に僕を一人ぼっちでいさせることに、罪悪感を覚えたのかもしれません。家事や掃除などが出来て多少話をすることが出来れいいだろうと考えて、恐らく両親は生体人造人間でなく有機的人造人間をよこしたのでしょう。勿論――――。」
彼は一旦言葉を切り、ふと自嘲気味に笑った。
「多少燃費がかかりすぎても、セクソイドをあてがう危険性は回避したかったと思ったのかもしれません。」
「でも、ご両親の予測に反して貴方は、彼女を好きになってしまった。」
「ええ。なぜなのか、分かりません。彼女は旧式の有機的人造人間です。作り物の皮膚、作り物の瞳。唇から零れるのは、合成ボイス。埋め込まれたICチップだって、前世紀のシロモノです。」
彼は、隣に座る彼女へと目を向ける。
件の有機的人造人間は、話が聞こえているのかいないのか。微動だにせず、前方を見据えている。
蒼い瞳が映し出すものを、デジタル化して電気信号に送るだけなのに、その目には不思議な表情があった。秘密の森の中に、密やかに水をたたえた湖のように。燐とした奥深い輝きが、その目には宿っていた。
それが、このタイプのデフォルトなのか。
それとも――――。
「彼女の蒼い瞳を見ていると、それだけでしんと心が静かになるんです。穏やかな海の波に身を任せているような――――不思議な程に満たされるんです。」
そう言って彼は、どこか切ない表情をした。
流星に焦がれる惑星のように、不思議にも彼は彼女に憧れを抱いているのかもしれない。
「彼女と結婚をしたい、と言った時両親はジョークだと最初思ったようでした。」
「・・・・。」
「やがて僕が本気だと分かると、大反対しました。彼らの言い分は『自然なことではない』でした。だからそんな世迷言を言うなと。目が覚めないようならば彼女を・・・彼女を廃棄すると言われました。」
「・・・・。」
「自然なこと。僕にはその言い分が分かりません。僕にしてみれば、愛する人が単に有機的人造人間だったというだけ。僕は彼女に出会い、彼女に恋をした。とても、自然な心の動きでした。」
「成る程。」
私は、万年筆でカルテをぽんと叩いた。
アプローチの仕方をシュミレーションする。
「なぜ、両親に認めてもらおうと思ったのですか?言わなければ、別に事を荒立てることなく彼女と一緒にいられたのに。」
「それは・・・。」
彼の目が泳いだ。
「彼女と二人で暮らしたいと思ったからです。」
「家を出て?」
「はい。二人だけで、暮らしていきたいんです。」
しかし。それは両親に言った理由にはならない。なぜならば、両親に彼女への想いを打つ明けずとも「独立する」と言えばすむ話だからだ。彼には、両親に「好きな人がいる」ということを言わなければいけない理由があったわけだ。
それを自覚しているにしろ、していないにしろ。
「両親に言うことに関して、彼女は何と言いましたか。」
「え?」
私の質問に、彼は意外な程動揺した。
「聞いていません。」
「彼女に?」
「はい。」
「結婚に関しては?」
「一緒にずっといたいと言いました。」
「返答は?」
「そうね、と言いました。」
私は改めて彼女を見た。
先程から変わらず、彼女は澄んだ瞳で前方を見つめている。
瞬きしない瞼が頬に影を落とし、不思議なノスタルジックな雰囲気を醸している。どこか淋しげで、どこかしんと冴えた顔。まるで無表情なのに、なぜか胸を締め付けるような哀愁を持つ顔。
私の中に、不思議な想いが沸き起こる。
確かに・・・彼女は普通の、有機的人造人間とは違う。
独特の雰囲気、というものはロボットには持ち合わせていないものだ。
ふと私は、彼女に質問してもようと思い立った。そう、普通のカップルを診断するように。
感情のないロボットに感情的な質問をする。
概念無きものに概念を訊く。
その返答が、ロボット固有のものならば・・・それはそれで後は彼だけの問題として捉えればよい。
「貴方に聞きたいことがあります。」
私は彼女に言った。彼女は初めて、首を動かして真正面から私を見た。
嘘のない、穢れのない瞳だった。
どこかアンニュイな、退廃的な瞳だった。
「彼を、愛していますか。」
シンプルで、一番大切な質問をぶつけてみる。
彼女の瞳に、微かに宿るかげり。
それは静かな、小さな小さな波紋だった。
「いいえ。」
抑揚のない合成ボイスが、高い声を奏でる。
「私は彼を、愛していません。」
「そんなっ!」
彼は息を呑み、がっくしとうなだれた。
私はただ、有機的人造人間を見つめていた。
アイシテイマセン。
ごく普通のカップルのように応えた彼女。
ごく普通のカップル以上の、機微な優しさを持って応えてくれた。
私は、感動した。
蒼くどこまでも蒼く広がる、彼女の湖の美しさに見惚れていた。
駐車場から出て行くカップルを、窓から見下ろす。
「嘘をつく有機的人造人間か・・・・。」
呟きが口から零れ落ちた。
愛する人の為に嘘をつく。
愛していないと嘘をつく。
それこそが「愛」を知っている証拠。
そんな高等な技術を持つ、有機的人造人間がいたとは。
「いや・・・もっとシンプルに。彼女には、あるのかもしれないな・・・。」
この世に犇く何億何千というロボット達が夢見るもの。
どんなに精巧に作られたロボットですら、持ち合わせていないもの。
マイクロチップの上を走る、幻の電気信号。
「こころ、か・・・。」
私は呟いて、カーテンを両手で閉めた。
途端に部屋は、闇に閉ざされた。
寒い季節は、人間関係も寒くなるらしく。
最近、色々な人が私に自分の苦しみを吐露する。
ぶっちゃけた話をしてくれるのは、それだけ私という人間を信頼してくれているからだと思い、ぶっちゃけてくれたそのことを嬉しいと思います。
昔社会人1年目の時に、秋頃から冬にかけて、変わるがわる同期が私に懺悔しに来たことがあります。というか、同期内で三角関係やら四角関係になっていることに、全然気付いてなかった鈍感な私(苦笑)
しかも、そんな複雑な恋愛関係が展開される中、唯一のほほんと仕事してました。
いいのか悪いのか(苦笑)
その時、男性の同期が私に
「こういう話を、引かれることなくちゃんと聞いてくれるのって、お前しかいなくてさ。」
と、言って下さったことが凄く胸に残っています。
ま、そりゃそうやな。私以外、同期全員関係者だもんな(ちょっと皮肉☆)
でもそれだけでなく、「ちゃんと話を聞いてくれる人」と彼が信頼してくれたんだなあ、ということが伝わってきて嬉しかったのです。
良識や常識を分かっていても、特に恋愛問題って、思うままに行かないし進めないことってある。
それを頭ごなしに否定したりは、しない。
思い返せば。
私の人生にも、確かに苦しいことや辛いことが沢山ありました。
やっぱり信頼出来る人にぶっちゃけ、勇気をもらい、涙し、語ったものです。
でも時折、「辛い気持ち」のまま動けなくなることがありました。
誰にも言えない。何もしたくない。
今なら分かる。
あの時の私は、弱さに逃げていただけなんだな~と。
本当に苦しい時は、言葉なぞ出てこない。
ただ魂のままに、声なき慟哭を続けるだけ。
本当に辛い時は、心の闇に気付かない。
ただ、貫く痛みに息を止めるだけ。
本当に哀しい時は、涙なんて出てこない。
時間の感覚さえない空白に、呆然とするだけ。
言葉が紡げる分、心の闇を見つめられる分、涙が流せる分、まだまだ前向きになれる余地があるということです。
でもあの頃は分からなかった。
ただひたすら「辛い」という気持ちにしがみついて、何もせずにいました。
何もしないでいることを、「辛いこと」のせいにしていました。
立ち上がって立ち向かうことの方が、よっぽど辛いのに逃げていた。
「大丈夫、許してあげる。」と言ってくれる人が現れることを願いながら、ぼんやりと過ごしていました。
そんな人はいない。
絶対に、どこにもいない。
今の状況を作り出したのは、誰でもなく自分自身なのだから、自分が変われば環境が変わるはず。そうしたら救いは向こうからやってくるはず。
そんな風に考えて、自分改革を決行しました。
結果は?
私は、少しだけ強くなり、少しだけ成長出来ました。
階段を一つ上がり、視界が変わり、光を感じました。
それは取るにたらない、本当にささやかな成長でしたが、それでも成長出来た自分を誇らしく思いました。
私の人生は、その繰り返し。
辛いことにぶち当たり、落ち込んで愚痴を言って、十分にエネルギーを溜め込んでからぶつかっていく。
必ず、戦う。
そして、大切なものを掴みとる。
どんなことでも、必ず学ぶことがある。学ぶことが出来れば、それは経験という財産になる。
経験が、私を豊かにする。豊かな感受性が、幸せな人生にしてくれる。
人生は、幸せになった者勝ち。
だから、どんな辛いことでも「負け」はハナからなし。
いつだって、前に進む限りそれは価値のある行為なんです。
そのことに気付いてから、私は弱さに酔うことを自分に硬く禁じました。
それだけでなく、私に相談や愚痴を持ちかける人にも、弱さに酔っている姿を受け入れるのをやめました。
そこに救いや希望があるならば。
誤魔化さず、目を向けて欲しいと思うから。
いつでも、私の最初のひとことはここから始まる。
「で、君はどうしたいの?」
望む未来、望む自分、望む状況。
そこまでの道のりに、少しばかりの光をあげたい。
その手助けが出来るのであれば、私は喜んで力を貸します。
ただ、私は駆け込み寺ではない。
涙を流すだけの場所ではない。
そんな風に、他人に対して厳しさを持つ勇気を持とうと思いました。
私にそんな資格がないかもとか、権利がないかもとか。そういう小賢しいことを考えるのをやめました。
義を思えば、義を伝えよ。
それは勿論相談してくれた人の為ではない。
伝えたいと思う、私自身の自己満足の為。
去年のブログの記事よりも、前向きな自分がいます。
来年の私は、今の私を見て「ナマイキなこと言ってるなあ(苦笑)」と思うかもしれない。
それは、それでいい。
未来は分からない。
そこに、希望が沢山眠っていると思うから。
よく「運動音痴でしょう?」と言われるセピですが。
確かに運動が得意な方ではない。
だって武道派だもの。
人生ちゃめっ気と殺気で乗り越えられると思っているもの~ww
というのは、冗談です。(でも半分本気)
今までで、スポーツをちゃんと習ったことってないなあ。
教室に通って~みたいなのはね。
道場もどきで剣道とキックボクシングと舞拳と酔拳と猿拳を習っていたけどね。
ずっと昔にバトミントンをやってたか・・・でもクラブでやる程度でしたね。
そんな私が得意とするスポーツが2つあります。
ひとつ目。
跳び箱。
こういうと失笑される方多いですけどね?
跳び箱って結構難しいスポーツですのよ?
セピは10段飛べます
しかも台上前転とかも可!昔は水平開脚も出来ました。
よく正月に筋肉番付やってるぢゃないですか。
20段とか飛ぶ人超人か!?と思いつつ、うずうずしちゃう。
ま、やったところで、踏み切りでびびって跳び箱に突撃するだけですけどね。
ふたつ目。
それはスケートです。
スケートは、ローラースケート(ううう。世代がバレる)が出来る人なら絶対出来ると思う。
セピ、初めてのスケートの時
「あんな天狗の下駄みたいなので、どうやって滑んのさ~!」
と不安でしたが。
いざやってみると、バランスを取るのが全然難しくない。
普通に氷の上に立てるから、滑るのも簡単。
バックで滑るのはできるのですが・・・さすがにイナバウワーはちょっとね(誰も聞いてない)
スピンは難しい。
なぜなら首を固定するのを忘れて、いつも酔うから(馬鹿)
スケート場って滑るのが楽しいだけでなく、時折吃驚するような怪人がいる。
確実に60歳はいってそうなご老人が、いきなりトウループ(左の爪先立ちでのジャンプ&回転)したりね。しかも奇麗に着地しちゃったりしてね。
その後、後ろ手に手を組んで何事もなかったようにつぃ~っと滑っていく(でもちょっと満足気)
ん~、なんていうかクールでした。
唐突に食べたくなるファーストフードのやうに。
物凄~くスケートをしたくなってきたので、今週末に決行予定ww
楽しみだなあ~~~。
スケート滑ったことないという友人も、強制参加(←迷惑)
ごめんね。ありがとう!(✿ฺ´∀`✿ฺ)ノ
先に言っておく。
キミが転んだら、まずは腹を抱えて笑います(しかも指さして)。
( ´艸`)ムププ
たまには、鬼の首を取らせておくれよ(笑)
さてこの度。
新しいカテゴリ追加
なんか音楽ネタとか映画ネタとか、無作為に戯言っていたので、ここらで纏められるようなカテゴリを作りたいと思いましてw
一応ですね、ここにUPする前に視聴サイトを検索しているんですが・・・。
概ね、マニアすぎて視聴が無い・・・・ orz
興味がある方はぜひレンタルなどして聞いてみて下さい。
着歌フルとか・・・あればいいが・・・やっぱりマニアすぎてないやもしれません(涙)
さて、しょっぱなのお題。
「ノリが軽くて元気になる歌」でございます。
ではでは~チェケラw
1 「あんまりあなたが好きなので」 Vo:おおたか静流
誰もが知っているオクラホマミキサー。
そう、フォークダンスの曲にポップな歌詞を載せたこの曲。
なんていうかですねえ。
人を食ったような歌い方(注!褒めてます!!)にぴったりとフィットして、大変面白い曲になってます。
好きな人が出来て、毎日一喜一憂する恋心がよく出ている。
でも切ない感じは全然しなくて、むしろ右往左往する感じが軽快でコミカルに歌われています。
最後に、微笑ましいオチもあり。
大好きな曲でございます。
ああああ。
視聴して頂けないのが哀しいでござる~~~・゜・(ノД`)・゜・
2 「Future's Memories」 Vo:The gardens
この曲よりもむしろ、「bye bye blue」の方が知名度があるかも?
なかなかカラオケに、この方の歌自体入っていないマニアな方です。
でもねえ、凄くいいんですよう。
歌詞もね、素晴らしい。
例えば友情であれ愛情であれ、深く深く想うということをこんな風に表現するのって素晴らしいなと思うのです。未来は分からないけど、ただただその人を一途に想っていこうとする気持ちは、それだけで壮大な感情なんだなと思わせてくれます。
こちらの曲は、リンクフリーだったので、リンク載せちゃいます~w
↓歌詞を読んでみて、興味がある方はぜひ聞いてみて下さいまし~~~。
Future's Memories The gardens 歌詞情報 - goo 音楽
3 「あいかわらずな僕ら」 Vo:B'z
「Wonderful Opportunity」とどちらにしようか迷って、こちらに軍配。
理由は・・・
「最後のくしゃみがいい感じだから」
ってそこかーい!!
カラオケに行くと、シメの曲ってどうするか悩むじゃないですか。
私とちょっとさんは、大概「あいかわらずな僕ら」かCHAGE & ASKAの「YAH YAH YAH」を歌います。
なんかね、この曲はじんわりと元気になるんですよう。
「このままのオレらでいいじゃん。」って感じで、カラリと笑って肩組んで飲みに行くやうな。
そんな素な明るさが素敵です。
↓歌詞だけではこの曲のよさは伝わらない!ぜひ聞いてみて下さいませ!!
あいかわらずなボクら B'z 歌詞情報 - goo 音楽
まだまだまだまだ、沢山あるのですが。
書ききれなくなるので3曲まで。
これから色々なテーマに沿って紹介していこうと思います。
どうぞ、よろしく~~~ノシ
自殺願望は、小さい頃からあった。
自分がなぜ生きているのか。
特に死ぬ理由がないというだけで生きてきたが、生きる理由が特にないということで死んでもいいのかもしれない、とふとそう思った。
そう思ったら、雪山に登っていた。
不思議なことに、自分が死ぬ場所だけは決めていた。
小さい頃に一度連れてきてもらった、今はもう亡くなった父親の田舎。
むせるような草いきれの立ち込める山は、冬になると白銀の世界に覆われる。
夏には劈くような蝉の絶叫で満たされてたこの場所が、冬になると一切が雪に吸収されて神秘的な無音に満たされる。
それは見ているだけで胸が痛くなってくるような美しさで、私は必ずこの雪に埋もれて死のうと心に決めたのだ。
雪に埋もれ、見上げる満天の星に包まれて、優しい眠りの中で訪れる死。
それはきっと哀しい程、甘美なものに違いない。
私はよく母が飲んでいた睡眠薬をポケットに突っ込んで、夜行列車へと飛び乗っていた。
吐く息が、暗い闇に吸い込まれるように消えていく。
雪の重みに枝が撓って、はらはらと降り落ちる音以外、何も聞こえない闇。
どくんどくんという鼓動が、煩いくらい耳に響いていた。
雪は思いのほか深く、登ることそれ自体が結構困難だった。
足を引き抜き、前に突き出すのだが、突き出したその足がずぶずぶと沈んでしまう。後ろ足を引き抜こうとするが、かなり力を入れないと抜き出せない。
見た目さらさらとしたパウダースノーなのに、ずっしりとした重みがあるものだと今更ながら驚く。
「ああ、もう!」
なかなか進まないことに苛々して、私は山の中で唸った。
本当は中腹にある小川まで行きたかった。
が、体力的に無理だ。
「寒ければ、いいんだもんね。」
呟きながら、ポケットに入っている瓶を取り出した。
濃い茶色の瓶は、ぐるりとラベルが貼ってあって中身がよく見えない。
それでもずっしりとした重さがあった。
一瓶まるごと薬を飲んで、このまま寝たらきっと朝には死ねるに違いない。
と、思いながら瓶のフタを開けて、硬直する。
・・・・・瓶一杯の、粉。
錠剤じゃない、粉末の睡眠薬だったのだ。
「嘘・・・そんな・・・。」
私はぎょっとして、言葉を失った。
錠剤は、苦しいけどなんとか飲み込むことが出来る。
でも粉末は・・・・ちょっと難しい。
ああ、もう。
どうしてここ一番って時に、こういうミスをするのか。
思えば、いつもそうだ。いつも大事な時にしくじるのだ。
私は地団駄を踏みながら、いっそ舌を噛み切ってやろうかしらと乱暴なことを考えた。
しかし、出来れば奇麗な死体で見つかって欲しい。
しょうがない。とにもかくにも、沢まで行くしかないのだろう。
水があれば、どうにか薬が飲めるわけなのだから。
「ああ~~~~、もう!もう!」
私は舌打ちしながらも、果敢に雪に突進していった。
沢まで辿りつくまでに、一体どれくらい時間を要したのだろうか。
体から湯気がたっている。気温は氷点下なのに、むしろ熱い体に心地よいくらいだった。
はあはあと荒い息をつく私を、つんと澄ました表情で満月が見守っている。
小川は半分凍りつきながら、そんな満月を映し出す。
淡い月光を浴びた雪は、きらきらと輝く。よくよく見ると小さな結晶の形をしていて、遠い夜空の星よりも儚い美しさが目に沁みた。
疲れきった体で、ごろりと大の字に横になる。
手をぼーんと外に投げ出した・・・・その時。
左手に、何かつるつるした感触を覚えた。
石ではない。明らかに人工的なものだ。
起き上がるのが面倒だったので、私はうーんと体を横にして手の平で雪の中を弄った。
雪に埋もれていたもの。
それは―――――黒革の財布だった。
ぎょっとして、思わず起き上がる。
財布は見るからに高級そうで、光具合で本物の牛革と分かる。
たっぷりと膨らんだ中身を、おそるおそる見てみると。
まずは小金色に輝くカードのオンパレード。札は封こそしてないが、札束1つ分はゆうにあるくらいの量である。
見たこともないお金に、くらくらと眩暈がした。
財布の中にはもう一つ、運転免許が入っていた。
月の光を便りに見てみると・・・・住所は東京だった。
「と・・・・届けた方がいいのだろうか・・・・。」
そりゃ、いいに決まっている。
これだけのカードの量にお金に、身分証だ。
このままここに置いておいたら、見つかるのはいつになることやら。
でも、私はここで、死のうとしていたんだけど。
ああ、でもでも、きっと困っているだろうしなあ・・・。
「ああ、ああ、もう!もう!」
私は髪を掻き毟った。
私の雄たけびをあざ笑うように、雪はどこまでも美しくなだらかに続いていく。
大きく一つ、溜息をついた。
白い息が消えない内に立ち上がり、まるで突撃するように雪道へと戻っていく。
苛々するくらい進み辛い雪に、相変わらず足を取られながら、ぷりぷりと怒っていた。一体何に対して怒ればいいのか分からなくて、まるで蹴っ飛ばすように雪山を下っていった。
雪山を降りて最初の交番に、財布を届けた。
届けてすぐに、雪山に戻るつもりでいた。
が。
「ちょっと待って。」
立ち去ろうとする私を、交番の小父さんが呼び止める。どきっとして振り返ると、小父さんは何処にか電話をかけていて、目で私に椅子に座れと言っていた。
大人しく、座る。
電話をかけ終わると、小父さんはそのまま何も言わずお茶を入れてくれた。
私は訳が分からず、差し出された湯のみを手にとってお茶を啜った。
出がらしの番茶は、思いのほか美味しかった。暖かい温もりが体一杯に広がる。それは冷え切った体をじんわりと包み込み、私を優しい気持ちにしてくれる。
また、今度にしよう。
死ぬのは明日でも、いいや。
そんな風に思った。
そのままお茶を啜っていたら、走って来る足音がした。
なんだろうと思っていたら、息せき切って一人の男性が飛び込んできた。
「財布見つかったって本当ですか!?」
飛び込むなり、その人は叫んだ。
急いで走ってきたのだろう。真っ赤な顔をしている。
交番の小父さんは、やっぱり無言のまま財布をゆっくりと差し出して、私を指差した。
男性は、そこでようやく私の存在に気付いたらしい。
背が高く、がっちりとした体躯。しかし何より、彼の澄んだ眼差しと零れ落ちそうな大きな瞳が美しくて、私は胸がどきりと高鳴るのを感じた。
「見つけてくれた方ですか?」
彼は私に尋ねる。どきまぎしながら頷く。
「いやあ!本当に有難う!!なんて言ったらいいか・・・助かりました。有難う、有難う!」
彼は興奮して、私の両手を自分の手で包み込み、ぶんぶんと振り回した。
その勢いに吃驚して、私はなすがままだった。
「ここではなんなので、珈琲でも飲みに行きましょう。お礼もしたいし。おまわりさんも有難うございました。」
彼は財布を大切そうに受け取って、からりと笑って私の手を取る。
勢いに背押されて、おずおずと立ち上がる私を、まるで引っ張るようにそのまま彼はずんずん歩いていく。
何て強引な人なのだろう!
私と初対面なのに!!
でも不思議と、嫌な気がしない。
それはきっと、彼の明るい人間性から生まれたものだから。
あんなに急いで走ってきた彼の懸命さが可笑しくて、私はくすくす笑いが止まらなかった。
珈琲を飲みながら考えた。
自分がなぜ生きているのか、やっぱり分からない。
特に死ぬ理由がないというだけで生きてきたが、生きる理由が特にないということで死んでもいいのかもしれない、とそう思う。
でも、人生にはアクシデントがある。
不思議な出会いや不思議な出来事が連なって、こんな風に楽しい一時に導いてくれたりもする。
捨てたもんじゃない。
悔しいけど、そう思った。
捨てたもんじゃないと思っているうちは、生きてみればいいのかもしれない。
無邪気に笑う彼の笑顔に応えながら。
そう、思った。