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「戯言の部屋」

セピアス、戯言を語るの間

やっちまったよ、おいおい

2007-04-21 23:54:18 | Weblog


 七犯さんの弟君が日本史苦手ということで、七犯さんが「サルでも分かる日本史HP」を作成しているとのこと。
 んで、「教科書に載ってないトリビアなネタを欲しいとの依頼を受けました。
 とんでもなく偏った知識でよろしければ・・・・ということで、安請け合い(笑)
 写真などの素材があると宜しかろう、ということで。
 私の大学にある「考古学資料室なら無料で入れて写真撮り放題ですわ~~~となり、母校へお連れすることと相成りました。
 そう、全てはここから始まったのです。 
 
 土曜日。
 しょっぱなからセピ、10分遅刻 orz
 待ち合わせ場所を原宿にしたことを、懺悔してしまいそうな程の人ごみ。
 そういえば昔、人ごみに入ると無条件で機嫌が悪くなる上に八つ当たりする彼氏がいたなあ・・・と、余計なことを思い出しながら表参道のCafeで一息。
 七犯さん、美味しい珈琲を飲みながら。
 まるでビデオ録画をお願いするような気軽さ
「結婚式の時、スピーチお願いします。」
とな。
 ゥオイ!ゥオイ!ゥオイイイイ!!
 初手からいきなりカウンターパンチとは。
 流石は七犯さん、やりますな。
 ε- (´ー`*) フッ
 って!マジですか!?
 何も考えてなかった上に心の準備がああって・・・ああでも式まで三週間。
 その間にンみっちり準備も心の準備もしておいてねうふってことですかい!
 や、やらせて頂きますよ。ええ。はい。喜んで。
 というわけで。
 軽くプレッシャーを感じつつ、母校へGoとなりました。

 ン年ぶりに歩く母校への道のりは、随分と変わっておりました。
 ファッションナブルな街表参道~渋谷間。
 Cafeも洋服屋も半年単位で栄枯盛衰を繰り返しているらしい。
 かつて私がインド綿で出来たワンピースを買った店は、近未来映画に出てきそうなPCの店に変わり、映画アメリを彷彿とさせながらブリュレをほおばったCafeが洋服屋に変身している。
 いつまでも変わらず鎮座しているagnes bに「さすが」と、よく分からない感心をしたり。
 ま、そんなこんなで母校へとやってきたのですが。
 私の母校は「日本文学」と「史学」と「神道」が有名な大学です。
 だもんで、出土した鏃やら壺やら鐘やら、そういった「考古学的所産」を展示して一般公開している「考古学資料室」なる部屋が、大学院の校舎にあったんです。
 で、いざ着いてみると・・・。
 大学院、消失している ( ゜Д゜)ポカーン
 へ?何?どうなってんの?
 そこだけ蒸発したような土くれが広がっている。
 目を本校舎に転じると。
 本校舎、確か3階建てのハズなのに。
 17階建てビルになっている ( ゜Д゜)ポカーン
 うおおおおお。時間の流れってゴイスー。マジで場所を間違えたかと焦りましたとも。
 校舎内をうろうろするも、それらしき場所がのし。
 致し方なく親切そうな窓口のお姉さんに聞くと
「2021年に大学院校舎が出来るので、その時まで閉館しているんです。」
と、微笑みながら言われました。
 2021年って・・・弟さん卒業して何年後よ?
 意味ないぢゃん! orz
 そんなのってアリですかあああああ。
 しかしセピの珍生において、こういう出来事は意外とアリ
 ちなみに↓は、新しく出来ていた校舎で見つけた「本日の不思議」ちゃん。

 なぜか二階中空に向かって造られている自動ドア。
 なんだ、ここは。
 ここからスパーダーマンでも出入りするんかい!
 (;´Д`)y─┛~~ ムッハ~ (←やさぐれモードに入っている)

 気を取り直して、恵比寿駅に向かう。
 実は恵比寿ガーデンプレイスには「恵比寿麦酒記念館」という場所があります。
 入場無料。ビールが出来上がる過程や、エビスビールの成長の過程が分かりやすく楽しく勉強出来るところですが。
 そんなことはどうでもいい。
 目玉は記念館の終着駅。
 そう、ビールのテイスティングラウンジ(有料)があり、そこで10分たっても泡が減らない黒ビール等飲めるわけです。
 ビール好きの七犯さんに、是非ともこちらをご紹介しなければ、と思ったわけです。
 当時付き合っていた人が恵比寿駅近辺で働いていた為、セピは大学時代学校から恵比寿駅までをよく往復したものです(遠い目)
 歩くこと10分。
 七犯さん
「あの、今恵比寿行きのバスとすれ違いましたけど?」
 そんなましゃか!?
 真実を確かめる為にGPSに聴く。
 めっちゃ反対方向に向かっていたことが判明 orz
 すいませんです、七犯さん。私、典型的な「地図が読めない女」なのかも(涙)
 私のナビゲーションに私自身も不安を感じた為、素直にバスに乗って恵比寿駅へ。
 さあ、来た。ガーデンプレイスなり
 先ほどの資料館での汚名返上するべし。
 なんたってアナタ、四種類の飲み比べセットで飲むギネスの美味さは例えようもなく。
 まさに一発逆転のチャンスなり。
 午後5時、日が傾き微かにオレンジ色を帯びた空。
 頃合もばっちし良い感じw
 意気揚々と、記念館に行ったところ。
「5時閉館です」と、職員に笑顔で言われる orz
 マジでぇ━━━Σ(´□`ノ)ノ━━━!?
 すいません!申~~~~し訳ありません!!
 リサーチしてなかった私が悪いんです。かくなる上は、ハラキリでご勘弁をををを~~。
 どうしようもなく段取りがなってない私に、天使の笑顔で
「いやあ、旦那にどう話したらいいか。オイしすぎて困っちゃいますよう。」
と仰って下さった七犯さん。
 その優しさに心打たれつつ、「分かってんのか、オラ」とドスの効かせながら銃口を腹に押し付けられているようなプレッシャーを感じつつ。
 新宿にある、セピのとっておきの店にお連れしました。
 勿論、行く前に携帯にて開店しているかチェック。
 休日区分の「無休」という文字が、こんなに美しく見えたことはございません(涙)

 かくて、美味しい鳥料理と味噌煮込みうどん、美味しいお酒でご勘弁頂きました。
 お手打ちにされても致し方ない失態でした。
 本当にすいませんでした、七犯さん。
 そんな失態を犯しつつ、「なんて私ってオイしいのかしらと思ってしまっている私に懲りず、また一緒に黒い飲み会を致しませう。
 そんな七転八倒(←まさに最後まで倒れている)な一日でしたが、本当に楽しかったでした。
 負け惜しみではありませんよ(笑)
 七犯さん、どうもありがとうございました~~~ノシ


追悼

2007-04-19 22:05:12 | Weblog

 鴨志田譲氏、2007年3月20日肝臓癌にて死去。
 それはあまりにも衝撃なニュースでした。
 今までも食道静脈瘤にかかって病院に担ぎこまれたり、アル中が元で血反吐を吐いて病院に入院したり、アルコールのせいで精神病院に入院したりと、様々な「境目」を渡り歩いてきた方ですが。
『最後のアジアパー伝』が刊行されたのが2007年1月16日。そのわずか2ケ月後に亡くなるとは、思いもしませんでした。
 全5巻のアジアパー伝は、巻を追うごとに不思議な切なさを帯びてくる。
 当初は、銃弾をかいくぐってリポートした戦乱の地の思い出が主だった。
 アルコールの夢の中で会う「友人」との対話。
 子供の頃からの友達土肥さんと過ごす北京の夜。思い出す高校生の頃の「度量試し」。
 父親の生まれ故郷ハルピンの地。
 磁石が北を指し示すように。
 彼は少しずつ何処かに回帰しようとしているように感じらました。
 命の砂が指先から零れ落ちるのを、ただじっと見つめているように。
 目の前を流れゆく時間を、静かに諦観しているような雰囲気がありました。
 吸い込まれるようなその静けさ。
 思わず抱き締めて「ここにずっといるから」と伝えたくなる、その淋しすぎる空虚さ。
 アジアパー伝は、まさにカモちゃんの人生の吐露だったのかもしれない。
『最後のアジアパー伝』の巻末後書きで、カモちゃんはこのように書いてます。
「ついこの間、病床に臥している横で、母が急に子供の頃の私を思い出したのか、その仲良しの子供の家に初めて遊びに行った日の出来事を話し出した。」
 ひたひたと迫り来る死神を足音を、カモちゃんだけでなくお母様も聞いていたのだろうか。
「心が爆ぜている。」
 そう書いた彼の心は、今はもうこの世にはいない。
 彼は未熟な人間だったと思います。
 でも未熟がゆえに、誰にも出来ない足掻き方で、命の形を知ろうともがいていたと思います。
 激しくて、殺伐として、熱くて、哀しくて、愛おしい、彼の生き様。
 それはいつも、私にパッションを与えてくれました。
 心から、ご冥福を祈ります。 

 鴨志田譲氏の追悼会があります。
 4月28日(土)16~18時
 東京丸の内・パレスホテル 2階 ローズルーム
 是非とも馳せ参じ、彼という人間が生きた軌跡を見つめたいと思います。

ダヴィンチ展に行って来ましたw

2007-04-17 23:28:49 | Weblog


 この前の日曜日、ダヴィンチ展に行ってきました
 タダ券が手に入ったはいいが、この前の日曜日が期限だったので。
 GWに集中するんじゃないかな~~~と思っていたのですが、いやー物凄い人。
 一瞬回れ右して帰ろうかと思うくらいです(意外にも30分待ちですみました)

 さて、今回の目玉は「受胎告知」
 思ったより広い部屋で、思ったより小さい絵を、めちゃめちゃ間近で見てきました。
 アレやね。油絵ってのは、凄いですね。
 こんだけ時間が経っているにも関わらず、まるで今筆が離れたばかりかと思われる程、つやつやしてました。そして国立博物館が特注した硝子ケース。本当に存在感がない。手を伸ばせば絵に触れられるのではと思える程でした。


「受胎告知」は、天使ガブリエルがマリアに子供を授けると伝える場面。
 天使の足元に咲く百合の花とか、遠景の見せ方とか、そのへんばっかり解説されてましたが。
 まあ百合はね、いいんですよ。
 ダヴィンチ・コードでも「百合」は大切なキーですしね。
 そんなことより私が気になったのは、マリアが読んでいるの方。
 この場面で一番適切なのは「聖書」ですが、ぶっちゃけこの段階ではイエスは生まれてないわけで。
 では、彼女が読んでいる本は「聖書」ではないとなる(旧約聖書ってのも、ちょっと強引)
 調べてみたのですが、文献には「聖なる書」とだけしか書かれてない。
 これね、実際間近で見てみると、黒文字と赤文字の入り混じった本なんですよ。
 一体何なの!?彼女は一体何を読んでいたの~~~!!(ワクワク)

 ダヴィンチ・コードのように、「ダヴィンチの絵画に隠された謎に迫る」というコンセプトではなく、ダヴィンチが哲学者で科学者で医者で物理学者だった、というような研究の成果を見せる「ダヴィンチ展」でした。まあ、それなりに面白いですが、いかんせんリアルな手記とかは日本に持ってこられなかったらしく。
 絶妙に複製された手記が展示されてました。
 うう~~残念。
 映画を見た方の為に、少しだけ「最後の晩餐」ブースがあったのが笑える。
 でも、イエスの隣に座っている人を「マグダラのマリア」とせず「ヤコブ」としてました(笑)
 で、やっぱり何度見ても「最後の晩餐」は腕が一本多い
 ユダの手じゃないけど、ナイフ持っている手があるんですよねえ(ワクワク)
 絵画にこういうちょっとした「謎かけ」を入れるのって、凄く高尚な遊び心だと思う。
「最後の審判」でも、ミケランジェロは自分を描いていたりするじゃないですか。
 いいですよねえ。
 アガサクリスティが、謎かけを残して失踪した時みたいな、堪らないセンスを感じるわけです。
 セピもそんな高尚な小説が書きたいですのう。
 文学的に高尚ではなく、ネタ的に高尚ってのがマタ、いいですね。

「ダヴィンチ展」の感想。
 ん~~~まあまあ。
 それ程強烈な感動はないが、さりとてつまらなくもないという感じですか。
 ま、ものは試しに見てみるのもアリ!って思いますよん。


シビレ

2007-04-16 00:41:30 | Weblog

 起きたら、左腕が痺れていました
 一体なんじゃろー?と思いつつ左肩(首筋のところ)を押すと、吃驚するくらい痛い。
 もともと肩こりな方ですが、それでも「痺れる」ってことはなかった。
 その時私の頭に飛来したもの。
「本当は怖い家庭の医学」

 ちょっと前に、「腕が痺れて肩が痛くて、でも暫くしたら直ったが、それが実は命に関わる病気の前兆だった!」みたいなのがやっていたんですよう。
 普段この手の番組見ないんですけど、その時はたまたま見てしまっていて。
 で、ちょっとビビってしまったわけですね~。
 会社に電話して午後出勤に。
 それから整形外科に行きました。
 レントゲン写真を撮り、先生がその写真を見せて解説。
「首のこの骨がずれてます。」
 マジでぇ━━━Σ(´□`ノ)ノ━━━!?
「もともと首の力が弱いみたいだねえ。」
 (;´Д`A ```そうなんスか?
「それで首筋が張って、炎症を起こしたみたいですね。」
 ∑( ̄皿 ̄;; ンガァーーー!!!
 こ、怖いですねえ。
 よくコキコキ首を鳴らしていたのもよくなかったのかも?
 レントゲン写真から骨がずれているのを目の当たりにするのは、結構リアルにくるものがあります。
 特に下向いて撮った写真とかね、その骨が「ぽこっ」と出てるんですよ、上に。
 ・゜・(ノД`)・゜・ひいいいいい

 一応骨のずれを直してもらい、電流を通して血液の流れをよくし、薬と湿布をもらって病院を後にしました。
 本日は、出来ればお休みした方がいいということなので、心置きなく休みました。
 ε=ε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノ わ~~~~いww(←駄目っ子)

 でもまさか骨がずれていると思わなんだ。
 病院、行ってみるもんですねえ。
 枕の位置とか、もうちょっと低くした方がいいのかな?
 色々と考えさせられるセピなのでした~~~~w

闇の階段を登る

2007-04-12 22:05:54 | Weblog


 辛くて苦しくて、どうにもならないくらい。そのことしか考えられない。
 そんな状況にいる人は、今の自分はまるで無明の闇の中にいる心地がするのだと思う。
 例えばそれが、「結果を待ち続けなければいけない」とか「時間が解決するしかない」という類のものならば、本当にかわいそうだし大変だと思う。
 その背に手をあてて肩を抱き締め、痛みを共感しようと思う。
 同じ暗闇の中に身を浸し、少しでも孤独を和らげてあげたいと思う。

 でも。
 そこに明かりがあるのに気付かず、目を閉じ耳を塞いで蹲っている人にはどうにも対応が出来ない。
 ただ顔を上げれば道があることが分かるのに、あえて暗闇ばかりを見つめている人。
 勿論抱えている問題で一杯一杯になっていて、混乱状態なので光があることに気づかないという場合もある。
 そういう人は、問題を整理し自分の気持ちを冷静に見つめなおすようアドバイスをすれば、自分から進むべき道を見つけてくれる。そして晴れ晴れとした顔をする。
 でも、問題を整理して自分の気持ちを見つめなおし、尚且つ「次の行動」が見えているのにやらない人もいる。
 傷つくことを回避することばかり考えている。そして結局一歩も進めず、ただ「辛い」としか言わない。
 それは問題を解決したいとは勿論思っていても、結局「動く勇気」を出すことを回避しているようにしか見えない。
 逃げることに言い訳しているようにしか見えない。
 言い訳を言い訳と認めず、ただ目の前にある不幸に酔っているだけにしか見えない。
 そして同情されたがっているようにしか、見えない。
 
 そういう人は、かつての自分と重なって見える。
 辛い状況に酔って、甘さに流されていた頃の私。
 うじうじと悩んでいるより、そこから立ち上がってぶつかっていく方が、よっぽど辛い。
 立ち上がってこの苦しみから出て行くより、誰かの優しい同情にぬくぬくと包まって、時間が解決してくれるのをぼーっと待っている。
 それは、物凄く他力本願で勝手な行動なのだと今なら分かる。
 
 誰かと分かり合う為には、外堀から攻めていくのはけして間違いではない。
 でも外堀を埋めることだけに従事していては、結局真実に辿りつくことは出来ない。
 その人がどう思っているか。その人がどう感じているか。
 それは結局直接聞いてみるしかないのだ。
 でもぶつかっていく勇気が持てない。怖気づく気持ちは分かる。
 分かるけど、同情はしない。
 勇気は他人からもらうものではない。時間がもたらしてくれるものでもない。
 自分の中から生み出すものだ。
 誰かに同情してもらっても、生まれない。
 ブツかって、失敗して。でも立ち上がってブツかって。やっぱり失敗する。
 歯を食いしばって七転八倒しているけど、それでも上手くいかなくて。でも諦める気にはなれなくて頑張り続ける人なら、そんな人の愚痴ならいくらでも聞けるけど。
 ただ同情して欲しい人の愚痴は、もう聞けない。
 
 私自身、完璧な人間じゃない。
 失敗することばかりです。
 でもいつも、光を探している。
 暗闇と思えることも、一段階段を登れば見えてくるものがあるはず。辛くても、少しだけ登ってみよう。運よく状況が見方してくれればいいけど、ともかく納得がいくまで頑張ってみよう。
 そんな風に、足掻きながら生きています。
 だから偉そうなことは何ひとつ言えないけど。

 自分の弱さに酔うことを、私はよしとしない。
 私自身も、他人に対しても。
 何とかしたいならば、顔を上げて。辛くても立ち上がって。膝が痛くて動けないなら動けるようになるまで待ってもいい。でも必ず前に進んで。
 最近私に悩み事を相談して下さる方々に、私はそれを言いたい。
 私は無意味な同情はもうしません。
 弱さに逃げているだけの愚痴も聞けません。
 でも頑張り続けるならば、どこまでも応援します。
 
 幸せになることを、諦めないで。
 でも辛いことを乗り越えた先に、幸せがあるということを忘れないで。


月の光のその下で(ショートショートショート)

2007-04-08 21:12:03 | ショートショートショート


 車椅子に乗ってたどり着いたその場所を見て、彼女は眉根を寄せた。
 哀しく顔を曇らせ、顔を背ける。
 僕を見上げる彼女の瞳には、怒りさえ滲んでいた。
「なぜ・・・。」
 零れる言葉を無視して、僕はブースへと近づく。
 手馴れた手つきでスイッチを入れていく。
 次々とライトが灯り、僕らの面前にきらきらと輝くステージが浮かび上がった。
 ここが、始まりの場所。
 僕らの、始まりの場所。
 彼女はまだ、僕を見つめている。
 あの頃、彼女の足を包んでいたのはトウシューズだった。
 今、彼女の足を包むもの。
 それは痛々しいくらい真っ白の包帯だった。

 かつてこの劇場には何百人という人がいて、奏でられるチャイコフスキーに耳を傾けながら、舞台の上で繰り広げる幻想的な世界にうっとりと魅了されたものだ。
 彼女は時に白い時に黒いチュチュに身を包み、しなやかに腕を動かしながら瀕死の白鳥になったり、王子を誘惑する黒鳥になったりした。
 でも一番輝いていたのは、クラシックバレエではない。
 コンテンポラリーだ。
 彼女が踊りは、常夏の香りがする。
 熱いラテンの音楽の中で、挑戦的とさえ言える眼差しで彼女は踊った。
 僕は彼女の背中が好きだった。
 無駄な贅肉など一つもない、引き締まった筋肉の筋。それでいて、緩やかにカーブを描いて撓る曲線の美しさ。細い彼女の体のどこに、これだけの力があるのかと思えるような跳躍の中で、白い背中がひときわ輝く様が好きだった。
 熱い火花を散らすような。
 彼女の激しさに、誰もが一瞬で恋をした。
 まるで熱に浮かされたように、誰もが彼女を讃えた。
 舞台には薔薇の花びらが降りそそぎ、誇らしく最後のポーズを決める彼女は、まるで女王のような威厳を醸していた。
 僕はただ、彼女が一番美しく映える角度を考え、照明を照らし、舞台という別世界を造ってきた。
 それが世界から託された僕の使命であるかのように。
 想いが光りの中へと溶けていく時、まるで自分が自分を超えるような恍惚感を感じた。

「事故以来、この場所には来ていなかったわ。」
 彼女はぽつりと呟いた。
「一年前、ここで踊っていたなんて――――まるで嘘みたいに感じる。」
 そう、自嘲気味に笑う。
 一年前。ここでコンテストがあった。そして彼女は最年少で受賞した。
 そしてその夜――――交通事故にあった。
 幸い、骨にも神経にも異常はなかった。
 しかし事故は、彼女の精神を大きく蝕んだ。
 踊れるようになると医者は言っても、彼女の中で何かが砕け散っていた。誰が何と言おうとも、彼女は踊らなかった。踊ることが罪悪であるかのように、彼女は踊りを憎んでいた。
「あの日。」
 彼女の車椅子を動かしながら、僕はゆっくりと言葉を紡いだ。
「君はこの場所で踊っていた。僕は照明で君を追いかけながら、踊る君の姿をずっと見ていた。」
 しんと冷えた舞台に、車椅子の軋む音が響き渡る。
「飛び散る汗も、指先の一つ一つの動きも、あの熱気も、僕は残らず覚えている。」
 キイ、と音を立てて、車椅子は舞台の真ん中に止まった。
「とても、美しかった。きらきらと輝いていた。君だけが、あの場所で真実生きていた。」
「ありがとう。」
 彼女は瞳を伏せる。
「でも、私は――――。」
「いいんだ。」
 僕は彼女の言葉を遮る。そして彼女の前に跪いた。
 いぶかしげな顔で僕を見つめる彼女に、そっと手を差し伸べた。
 僕の想いを、彼女は十二分に分かっていた。その手を払いのけることも、そのまま車椅子で舞台を降りることも、ただ背を向けることも出来た。
 でも。
 彼女は逡巡しながらも、そっと僕の手に自分の手を重ねた。
 そのまま、手を引かれて立ち上がる。
 僕は手を離し、彼女の傍に佇んだ。
 七つのライトに照らし出された彼女は、顔を上げて虚空を見つめる。
 僕はふと、どこからか音楽が聞こえてくるような気がして耳を澄ませた。空の高い高い場所から降りてくるような、小さなけれど重々しいそのメロディー。
 誰かの咳払い。
 深い沈黙を満たす緊張感。
 何百人もの視線を感じる。
 それは幻の舞台。彼女がこの場所に佇むだけで、舞台は始まる。劇場そのものが、息を潜めて彼女を彼女の演技を待っている。
 彼女はそろそろと、右足をあげた。
 真っ直ぐに伸びる足。それは緩やかに半円を描いて後ろに払われる。
 両手を伸ばし、艶やかなアラベスクを描く。
 昂然と顔を上げる彼女の瞳には、あの日の月が浮かんでいた。
 皓々と輝く月の光が、青白く彼女に降りそそいでいた。
 七つのライトは星になって、月を取り巻き夜を奏でる。
 この音楽の中で、彼女は誇り高く胸をそらせる。
 僕は彼女の背中が好きだった。
 無駄な贅肉など一つもない、引き締まった筋肉の筋。それでいて、緩やかにカーブを描いて撓る曲線の美しさ。細い彼女の体のどこに、これだけの力があるのかと思えるような跳躍の中で、白い背中がひときわ輝く様が好きだった。
 アラベスクの姿勢で静止したまま、僕は確かに彼女が彼女らしい輝きを放つのを感じていた。
 彼女の鼓動を感じる。
 熱い血潮が夜の無音を揺り動かし、波動となって僕を包み込むのを感じていた。
 
「私を轢いたのはね、恋人だったの。」
 彼女は舞台に佇んだまま、下を向いて呟いた。
「私が踊るのを、ずっと応援してくれていると思ってた。でも違ったの。ずっと憎んでいたの。あまりに長い時間憎んできたから、ダンスが憎いのか私が憎いのか分からなくなってしまったのね。」
 だから、彼女もダンスを捨てた。捨てようと思った。
 不幸は全て、ダンスに閉じ込めて葬ってしまおうと。
 でも――――。
「でも、やっぱり出来ない。」
 彼女は顔を上げる。
「この場所が好き。この場所の匂いも、佇まいも、照明の熱さも眩しさも。何もかもが、私に生きている実感を与えてくれる。」
 彼女の中に刻まれるビートが、彼女を駆り立てる。
 体中を巡って、彼女は知らずに踊り出す。
 それが、彼女なのだ。
 踊りの中でこそ、彼女は自分を認識出来る。
「また、踊りたい。」
 そういう彼女の言葉を、僕は両手で抱き締める。
 喝采が聞こえる。
 彼女に恋し、彼女を讃え、彼女を突き動かす沢山の人々が、彼女の名を叫んでいる。
 彼女はポーズを決め、じっと音楽が流れるのを待っている。
 緞帳はゆっくりと開かれる。
 ライトは煌きながら、彼女を一番美しく映えさせるだろう。
 僕はうっとりと目を閉じて、その熱気に身を浸すのだ。
 月の光のその下で。
 彼女の舞台は今、幕を開く―――。 


バラについての戯言

2007-04-07 19:49:52 | Weblog

 先月末小説の締め切りに追われていて、全然記事をUPすることが出来ませんでした。
 というわけで、今回は「バラ」についての戯言をみっちり語ってみやうかと。
 どうも最近「バラ」について考えたり、触れたりする機会が多くて。
 そういう縁があるんですかねえ(どんな縁だ)

その1 青い薔薇
 国立科学博物館で、3月24日より「青い薔薇展」が催されます。
 薔薇もそうだしカーネーションもそうですが、「青」という色は出せないと言われていたそうな。
 理由を簡単に説明すると、薔薇の細胞内にいくつか「酵素」があり、それの化学反応によって色をつけているわけですが、「青」を作るための酵素を遺伝子的に創ることが出来ないからです。
 で、なら酵素を作ってしまおうよ!という発想になり(憶測)
 ペチュニアの遺伝子を使い、ペチュニジン(←青色を生み出す酵素)を誘導する事に成功。
「ムーンダスト」月の光と名づけられたそうな。うーん、美しひ~ww

 今回の展示会は「青い薔薇」だけでなく、色々な珍しい薔薇も展示されているとのこと。
 というか、古代の花から現代のテクノロジーを結集した「青い薔薇」まで、花の歴史を見てみよう!な展示会とのこと。
 まあ、見ても「ふ~~~~ん」な感じかもしれませんけど(シドイ)
 それでもやっぱり「青い薔薇」は見てみたい。
「紫の薔薇」展であれば、『ガラスの仮面』ごっこして遊ぶんですけど(意味不明)
 とにかく、楽しみです。


その2 rule of rose

 最近やっている、パッケージだけ見て衝動買いしたPS2のゲームです。
 少女&犬、というスタイルでゲームを進めていくホラーアクションですが。
 デメントのような感じかなあ、と思ったのですがデメントより酷い
 舞台は孤児院&飛行船。
 殆どがでっかい飛行船の中で物語は進んでいきます。
 出てくる人物は少女と少年達。
 アクションモードは少ない。しかもバイオのように殺したら復活しない、というものでなく殆どが無限に湧いて出てくる為、強制戦闘以外は逃げるが勝ちなのがよろしくない。
 視点切り替えも悪い。ゲーム中何度「もおおおおおお!!と叫んだことか。
 主人公ジェニファーは「気弱」という設定ですが、なんでそんな小さいガキどもに苛められて何もせんだがや?と疑問に思ってしまいます。ビビリ方が異常。
 少女達が作る「薔薇の貴族」という社交界に入る為には貢物が必要で、社交界に入れないものは苛められる、という設定自体がねえ。
 苛めのシーンとか、生々しくて見るにたえない
 まだ、バイオみたく「人間にあらざるもの」をばんばか撃っていく方がいいわー。

 ちなみに画像は私の撮ったrule of roseオモシロ画像。
 題して「宙を掻くブラウン」
 時折こんなバグが発生してました(笑)


その3 豚のバラ肉(=ベーコン)

 海外ドラマSex and the Cityや洋画を見ていて思ったこと。
「あんたら、ベーコン好きやねえ」
 Sex and the Cityでは、主人公の女4人が土曜日に恒例の「ブランチ」を取りながら、男の話をするわけですが。ブランチのメニューってのが大体にして↑の写真のような感じ。
 必ずたまぎょベーコン、それから大盛りサラダ
 大概、マクドナルドのマフィンみたいなパンの上にポーチドエッグが乗っていて、それを潰してとろりと湧き出す黄身にベーコンを浸しつつ食す、という感じ。
 映画「アヴァロン」や「アイランド」でもそうですが、向こうのベーコンって黒い
 どこまでカリカリに焼いてんねん!!とツッコミが入るくらい。
 あまりにカリカリなので、手でもっても「へな」っとしないんですよ。
 むしろそれはジャーキーでは?と言いたくなるくらいです(笑)
 でも、美味しそうwwww

 最近は暖かくなってきましたし、友人とオープンカフェでブランチするのが楽しい季節になってきましたねえ。先日もしたのですが、相手が花粉症だったのでちょっとかわいそうでした(笑)
 今月中に仲の良い女友達と、ブランチの約束www
 楽しく美味しく、素敵な一時をすごしましょうぞ 

見知らぬ をんな(ショートショ-トショート)

2007-04-04 23:27:46 | ショートショートショート

 

「貴方、もうお歸りになるの?」
 女の声にはっとして、ネクタイを締める手を止めた。
 眠ってゐたとばかり思つてゐた女は、ぢっと天井を見つめてゐる。
 裸の肩が剥き出になってゐるのが見えた。
「いや、その。雪が降り出してきたから。積もる前にね。」
 私は齒切れ惡く、言ひ譯をする。
 本当は女が眠つてゐる間に、出て行かうと思ってゐたのだ。
 昨夜は仕事で遲かった。
 今日は行きずりの情事だが、二晩續けて遲いのは流石に不味い。
 私は女の傍にいき、ベッドに腰かけた。
 女は私を見ることもなく、瞬きすらしなかつた。
 眞っ直ぐ瞶める瞳は、恐ろしい程澄みきってゐた。
 そこには一切の感情がなかった。硝子玉のやうに、竒麗な竒麗な瞳だった。
 身動きもしない姿は、肌の白さのせゐもあり、まるでよく出來た人形のやうに見えた。

 どうも最近姙娠のせゐか、妻の感情の起伏が激しい。
 いつも疲れた顏をして、ぐったりとになつてゐることが多い。
 さうかと思へば、突然理由の分からぬことで激昂したり。かと思へば、突然求めてきたりする。
 安定したでゐることが一番と想ひ、なるべく穩やかに接するやうに心がけてはひるものの。
 どうにもかうにも、私自身の氣持ちがささくれて仕樣が無い。
 氣分転換に、名も知らぬ街の女に声をかけ、そのまま飮みに行ってみた。ちよっと飮むつもりが、あっといふ間にベッドに倒れこんでゐた。
 一体何がどのやうにしてさうなったのか。詳しくは覺えてゐない。
 覺えてゐるのは、身体の燃えるやうな熱さとしっとりと濡れた眼差。
 崩れた口紅と、からみつく腕のしなやかさ。
 私は独身の頃の、あの体中力が漲るやうな感覺が蘇ってくるのを感じた。
 激しい高ぶりの後の、すっと冱える空白を思い出した。
 さう、私は知らないうちに男といふものを見失ってゐたのかもしれない。
 それから、申し譯ないと想ひつつも、見知らぬ女とワンナイトスタンドを樂しむやうになってしまった。
 帰っても、どうせ食事の支度などしてはゐないのだらう。冷えたテーブルに突っ伏して、妻は空ろな目をして中空を見据ゑてゐる。つはりのせゐなのか、經症を患つてゐるのか。判斷などつかない。
 妻には出來るだけ優しくする。そのかはり、少しくらい目を外してもいいぢゃないか。
 私はそんな風に自分に言ひ譯をしてゐた。

「雪が、隨分降ってきたよ。」
 私はベッドに腰かけたまま、外を見た。
 小さな窓の棧には、既に幾分か雪が積もってゐる。
 斜めに吹きすさぶ樣は如何にも寒さうである。
 電車は、止まってゐるかもしれない。かといつてタクシーで歸るにしても、大分時間がかかりさうだ。
 こんな日は地下鐵を乘り繼いでいった方が、案外早く歸られるのかもしれない。
 私は女の肩に手を置きながら、頭の中で忙しく歸る手段を考へてゐた。
「貴方、もうお歸りになるの?」
 女は、先ほどと同じ言葉を口にした。
 淋しいのだらうか?
 私は小さく微笑んで、彼女の頰にそっと手を当てた。
「うん。本当はもっとずっと一にゐたいと思ってゐるんだけどね。君も歸られなくなったら困るだらう?なんなら一に出ようか?」
 女の頰は、寒さのせゐかほんのりと冷めてゐた。
 その冷たさは、手の平に沁みわたるほどだった。
 女はやはり動かない。
 何も感情を宿してゐない瞳をぎょろりと動かし、私をぢつと見据ゑた。
「また、私を置き去りにするの?」
「また?」
 私はどきりとして、彼女の頰から手を離した。
 淡々とした言葉。瞳と同じく何の感情もない声は、しかしどこか底知れない闇を湛へてゐた。
 私は寒さのせゐだけでなく、ぞくりとした。
 女はその口元に、小さく微笑みを浮かべてゐた。
 それはどこか妖艷で、殘酷な氣配を漂はせてゐた。
「忘卻は罪。さう言ったのは貴方なのに。私を忘れてしまつたの?」
 忘卻は罪?
 私がさう言った?
 私は彈かれたやうに立ち上がった。
 思ひ出したからではない。怖くなったのだ。
 自分の中で、何かが叫んでゐる。今すぐここから飛び出せと、喚いてゐる。
 半ば驅け出すやうにして扉に向かった。
 飛びついてノブを回すが――――開かない。
 私はパニックに陷った。
 鍵は?鍵はどうだ?ノブの周りを見てみるも、鍵穴など何処にもない。ならばどうして開かない?闇雲に押したり引いたり、体当たりを食らはせるてみても、扉は少しも動かない。悠々と聳え立ち、嘲るやうに私を見下ろすばかりだ。
 どうなつてるんだ!
 私は苛々と脣を嚙む。
「無駄よ。」
 背後から、女の声がする。
 私は動きを止め、おそるおそる後ろを振り返った。
 女はベッドの上に座って、こちらを見てゐた。
 薄明かりの中で、なぜか紅い脣だけが浮き上がって見えた。
 艷々とした脣が、兩端を持ち上げるやうにして笑ってゐる。
 その奧の犬齒が、ちらりと光るのが見えた。
「貴方をずっと待ってゐたけど、もう待ち續けるのは疲れてしまったの。ねえ、貴方。忘れてしまったことを怒らないから、もう一人ぼっちにはさせないと言って頂戴。ここで朽ち果てるまで一にゐてあげるって、さう言って頂戴。」
 愛おしさうに囁く女の吐息が、甘い腐臭のやうに私にまとはりつく。
 なんなんだ一体。なんなんだ一体。
 この冷氣の中で、背中を汗が伝う。
 どうしてこの女を美しいなどと思ったのだらう。
 その目に。その口に。その微笑に。その姿に。
 こんなにも狂氣が渦卷いてゐるといふのに。
「君だけを愛してゐるって、さう言って頂戴。」
 女はゆっくりと近づいてくる。
 思ひ出せ。思ひ出すんだ。
 私は金縛りにあつたやうに動けなかった。
 窓は既に、雪に埋もれて外が見えない。
 無音の中で、女の衣擦れの音だけが妙に大きく聞こえた。
 知らないと認めることこそ恐ろしい。
 思ひ出せ。思ひ出すんだ。
 私は目を閉ぢて、必死に呟いてゐた。
 女の笑ひ声が聞こえる。
 それは吹雪く風のやうに、私を爪先から凍えさせた。