中学時代からの親友から、ある日メールが入りました。
「緊急!すぐ逢いたい」とのこと。
一体ナンジャラホイ、と思いつつ、その日たまたま仕事が早く終わったので彼女と会ったわけです。
そしたら
「子供が出来た~~~。」
とのことでした。
パンツァ~イ \(*T▽T*)/ パンツァ~イ
いやあ。嬉しかったです。
彼女も彼女のパートナーさんも、なんというか、すっごくいい夫婦なんですよ。
仲もよく、お互いフォローしあって、きちんとラブラブ。
何より、彼女が「姉妹のような親子」になりそうな、そんな性格なんです。
子供が大きくなった時、「一番の親友はお母さん」って言いそうな感じ。
いつも一緒に同じ目線で見てくれる。彼女はそんな女性です。
だからねえ、きっと子供が出来たことで、彼女の人生がより一層幸せになるだろうなあって思えて。
それがとても嬉しかったんですよう。
私自身は、自分の人生において「結婚」も「子供」も興味がないのですが。
人にとって基本的に「結婚」も「子供」も、幸せになる為の大切なファクターだと思ってます。
だから純粋に祝福したい。
そして、私は。
「時々家に遊びに来る、お母さんの友達の、きっぷのいいおばちゃん」になりたい(笑)
海外では、赤ちゃん誕生数週間前に「これから産まれてくる赤ちゃんのためのお祝い会」をします。
それはベイビーシャワーと呼ばれるパーティです。
普通のパーティと違うのは、招待状に「コウノトリ」のイラストがあること。
お客は必ずプレゼントを持ち寄ること。勿論赤ちゃんグッズ。
大概は女性オンリー。
お酒はなし(主賓が妊婦ですから)
子供を産む準備って、果てしなく色々なものを用意しないといけない。特に乳児の頃は、1ケ月毎にびっくりするくらい大きくなりますから。
肌着は1ケ月ごとに買い替えないといけない。
経済的にも辛いわけです。
体が自由に動かない妊婦に、それを全てやれっていうのは酷なので、プレゼントで集めちゃえ~~~っていう発想から生まれたパーティなのかもしれません(憶測)
ちなみに写真は、ベイビーシャワーで定番の「オムツのケーキ」です。
全部オムツで出来てます。中にベイビーオイルとかも入っています。
なんと、こういうオムツケーキでも「ブランド」があるようで。凄いですよね~~~。
海外ドラマSex and The Cityの登場人物が、このベイビーシャワーの様子を見て
「母親ってカルトだわ。」
と、言っていましたが・・・。ちょっと頷けます(←シドイ)
子供が欲しいと思わない私ですが。
ちょっと憧れるのが「名付け親」
いいですよねえ。「名付け親」って。素敵です。
まあ、子供の名前をつけた人ってことじゃなくても、子供の精神的なサポートとなるいわゆる「ゴッドマザー」ってのに憧れるんですよう。
ま、しかし。
親友は別に子供に「洗礼」をすることはないでしょうし。私が公的な「ゴッドマザー」になることなはいと思いますが。
でも私的には、「お母さんの親友」として、沢山可愛がってあげたいなあって思います。
まだ生まれてもいませんが。
幸の多い人生を歩まんことを!!
三日月の寝台で、月の少女はそっと目を開きました。
しんと冷えた静けさに満たされた夜。
少女はふっと、溜息を吐きました。
どうしてかしら。声にならない声で呟きます。
きらきらと光る星達の囁きも、少女の心を満たしてはくれません。
通りすぎる流星の、涼やかな眼差しにときめきを感じることもありません。
瞳を上げるとそこに、紅く燃える光が見えました。
こんなにも遥か遠くにいるというのに。
その暖かさが美しさが気高さが、少女の胸を貫くのを感じました。
少女はそう―――恋をしているのです。
叶わない恋だと分かっていても・・・それでも少女の瞳は追いかけてしまうのです。
ひまわりが見上げるように、うっとりと。
誰にでも優しく抱き締めるような眼差しを向ける、光の少年。
月の少女は、太陽に恋をしているのでした。
真昼の空で、少女は寝台から伸ばした足をぶらぶらと揺らしました。
地上では、小さな電気達が沢山、綱渡りをしています。
黒い線の上を、一歩一歩踏みしめながら。
それでも驚く程のすばやさで歩いていきます。
一人の電気が、彼女の視線に気付いて顔を上げました。
「やあ。」
彼は上手にバランスを取りながら、彼女に挨拶をしました。
「こんにちは。」
彼女も笑顔で挨拶しました。
でも、なんだか上手く笑えません。
そんな彼女の様子に、敏感に彼は気付きました。
「どうしたの?元気ないみたいだけど。」
「うん・・・ちょっとね。」
言いよどむ彼女の顔を見て、彼はふっと笑いました。
「好きな人が出来たんだろう?」
少女は吃驚して声も出ません。
彼はにっこりと笑いました。
「太陽に恋するものは多い。そんなに不思議なことじゃないさ。彼ほど雄大な存在はいないもの。」
「そう・・・そうなのよね。同じ空にいるのに、私は見つめるだけ。それが辛いの。」
少女は重い溜息をつきました。
そんな様子をじっと見ていた彼は、少しだけ悪戯っぽい微笑みを浮かべて言いました。
「大丈夫。近いうちに、彼に会えるよ。」
「本当!?いつ?」
「そう・・・多分数週間すれば・・・きっと。ニンゲン達が噂してた。真昼に夜が訪れる日が来るって。」
「真昼に夜?」
「うん。僕も、それ以上は分からないんだけどね。」
電気の青年は照れたように笑いました。
本当でしょうか?
いつもただただ遠い存在だった太陽の少年に会える?
何度も夢に見たことです。
それが叶えられる・・・まるで不思議な御伽噺を聞いたような心地がしました。
電気は笑って手を振って行ってしまいました。
月の少女はそれを、ぼんやりと見送りました。
ある日の夜。
少女は、彼女を呼ぶ声で目が覚めました。
見ると、あの電気の青年がいました。
「なあに?」
「あのね、いいことを教えてあげる。」
「いいこと?なんなの?」
「明日、彼に会えるよ。」
「明日?」
途端に、少女の目がぱっちりと開きました。
「本当に?本当に彼に会えるの?」
「うん。間違いない。」
少女は半信半疑でしたが、それでも嬉しさでぽーっとなりました。
太陽の少年に会える。
それは夢の中の人に会うような、とても現実感のないことでした。
ああ、それでも。
彼に会えるのであれば。
月の少女の胸は、痛い程高鳴っていました。
息をするのも苦しいほど、彼女は太陽の少年に恋をしていたのです。
「明日・・・。」
少女は、噛み締めるように呟きました。
待ちに待った朝が訪れ、少女はそっと空の軌道を歩いてゆきます。
前方を見ると・・・軌道の先に・・・太陽の少年がいるではありませんか。
少女の胸が躍りました。
電気の青年の言葉は正しかったのです。
とうとう少年と会えるのです。
少女は嬉しさのあまり体が震えるのを、止めることが出来ません。
ゆっくりとゆっくりと、踏みしめるように近づいていきます。
段々と彼女の体は熱くなってきます。
それもそのはず。少年は太陽です。
近づくにつれ、その熱はどんどん強さを増していきます。
それは熱いというより、痛みでした。
眩しくて閉じようとする瞼を無理にこじ開け、彼女はそれでも進んでいきます。少年が優しい微笑みを浮かべているのが、微かに見えました。
少女は、自分の体が焼けて溶けていくような気がしました。
意識が霞み、視界がぼやけ、それでも足をなんとか前へ前へと進めます。
やがて。
少女は少年の前へとたどり着きました。
何か言わなければ―――そう重いながらも、貫く痛みに声が出ません。
震えながらも、そっと少女は手を差し伸べようとしました。焼ける手は重く、微かにしか上げることが出来ませんでした。
それでも、少年には彼女の想いがしっかりと伝わってきました。
「やあ。」
鈴を鳴らしたような、奇麗な声が聞こえました。
幻でない証拠に、少年は微笑んで自ら手を伸ばし、少女の手を取りました。
「やっと会えたね。」
ええ。そう言いたいのに、体が動きません。少女は微かに首を動かしました。
「ずっとずっと君に逢いたいと思ってた。遠くから・・・遥か遠くから、君を見てきたよ。」
本当に?
「白く美しく光る君の姿が、この孤独な天空の中で唯一僕を慰めてくれる存在だった。」
優しい少年の言葉に、少女は微笑みました。
嬉しさで胸が一杯になり、耐え切れないような痛みや眩しさを忘れました。
「君が・・・。」
その後の言葉は聞こえませんでした。
少女は体に強い力を感じました。軌道が動いているのです。少女はなんとか踏みとどまろうとしました。でも、体力のない体ではどうにもなりません。
少しずつ、少しずつ、少年から引き離されていきます。
少女は懸命に少年を掴もうとしましたが、もう小指すら動かすことは出来ませんでした。
その時少年の体がふっと動いて、少女に覆い被さりました。
少女は眩しさのあまりに目を瞑りました。
珊瑚色の少女の唇に、激しく燃えるような熱を感じました。
でもそれは、一瞬のこと。
「大丈夫・・・また会える・・・。」
囁くような、少年の声が聞こえます。
「何年・・・何十年・・・何億年の先に・・・僕達はまたここで、短い逢瀬を交わそう・・・。」
子守唄のように波うちながら、少年の言葉が少女を包み込むのを感じました。
少女は頷き、ぎりぎりに保っていた意識を手放しました―――。
三日月の寝台に横たわりながら。
少女は相変わらず、遠くの太陽を見つめています。
それでも、その口元には微笑みが浮かんでいます。
激しい火傷をおった少女の唇も、ようやく完治しました。
でもそんなことは、ちっとも気になりません。
「約束があれば、会えると分かっているなら、辛くはないわ。」
呟く少女の目が、きらりと光ました。
そうして目を閉じて、暖かい眠りの中へと沈んでいきました――――。
最近感動した本。
それは東野圭吾の『手紙』です。
映画化されてると、友人に指摘されるまで気付きませんでした(笑)
映画の方では主人公は漫才師を目指してますけど、原作ではミュージシャンです。
誰もがぼーーーーっと聞きほれてしまう声の持ち主、という設定。
まあ、この点だけは、ちょっと「いいかげんだなあ」と思わなくもない点ですが(苦笑)
物語は、主人公のお兄さんが強盗に入るところから始まります。
お兄さんはどうしても弟を大学にやりたかった。
しかしお金がない。
彼はお金をすぐに作る必要があった。
でも、あてがない。
そういうわけで、一人暮らしの金持ち老人の家に忍び込むわけです。お金をある程度奪って、すぐに逃げ出すつもりで。
こっそりと忍び込み、百万円を奪う。
そのまま去ろうと思った時、天津甘栗が目に入る。それが弟の好物だと思い出し、それもポケットにねじ込む。ふと、部屋の中に物凄く大きいテレビがあることに気付く。貧乏な生活をしてきたから、そんな大きいテレビを見たことがなく、思わず電源を入れてテレビを見てしまう。
物音に気付き、無人だとばかり思っていた犯人は、家主の老婆と鉢合わせ。逃げようと思うも、家主が騒ぎ出してしまう。黙らせようと思い、反動でうっかり殺してしまう。
そして彼は無期懲役を受け、刑に服すわけです。
兄からはずっと、月1で手紙が届く。
弟は、「殺人者の弟」というレッテルの中で、大変辛い人生を歩むことになります。
そして最後に、弟は兄に対して、ある重大な決心をするわけです。
この物語で語られるのは「差別」です。
実際に犯罪を犯したわけではない弟さんは、「犯罪者の弟」ということで、様々な差別を受けます。
そして夢も、結婚も、仕事も、あらゆることで苦難を強いられます。
こういう種類の差別は、「ああ、本当に起こるだろうな」ということを、読んでいて強く感じました。
「犯罪者の弟」に対する人々の態度は同じ。
憎しみ丸出しの目で見ることはなく、ただただよそよそしい。
でも、「排斥」が目の中に宿っている。
物語の中で、とある会社の社長が言います。
「差別はあね、当然なんだよ。」
と。
なんで当然なんだ!と憤る主人公に、彼は言います。
「大抵の人間は、犯罪から遠いところに身を置いておきたいものだ。犯罪者、特に強盗殺人などという凶悪犯罪を犯した人間とは、間接的にせよ関わり合いにはなりたくないものだ。ちょっとした関係から、おかしなことに巻きこまれないともかぎらないからね。犯罪者やそれに近い人間を排斥するというのは、しごくまっとうな行為なんだ。自己防衛本能とでもいえばいいのかな。」
読んでいて、はっとしました。そして同時になるほど、と思いました。
殺人という犯罪は、誰もが憎むと思う。そしてそれを行ったのが「身内」で、当人は関係ないと分かっていても、「一歩ひいてしまう」人が殆どなんではないかと。
道徳的見地から「差別してはいけない」と思いつつ、でも「関わり合いになりたくない」と本能的に感じる人が殆どなんではないかと。
そして、そういう「差別」は、きっと誰の心にもある。
八百万の神の国日本は、例えば宗教や人種や肌の色で差別するということはあんまりないと思います。珍しいものに対して警戒心があっても、「排斥」とまではいかない。
でも、「村社会」「和の社会」から飛び出した者に対しての「排斥」は、いつも徹底している。
そしてそれは大抵、「家族ぐるみの排斥」です。
私自身、「犯罪者の息子」が友達にいます。彼の親の罪状は「殺人」ではありませんでした。
自分が「犯罪者の息子」なんだと教えてくれた時の私の反応。
「へ~そうなんだ~」でした。
彼は彼。そう思いました。そりゃ色々大変だったろうなあ。そんな風に思いました。
彼は今でも親しくさせて頂いてます。
でも彼の親の罪状が「殺人」だった場合。それが正当防衛ではない「殺人」だったら。
同じように思ったか。
私には自信がちょっとありません。
多分「そうか・・・そりゃ厳しいよなあ。」と思うと思うし、だからって絶交したりはしないと思う。
多分「親は親。子は子。同じじゃない。」と思って、今までと変わらない交友関係でいくとは思う。
でも、やはり「一歩ひく」瞬間がありそうな気がします。
差別をなくそう。
そんな風に声高に言う人に、私は聞きたい。
「犯罪者の身内って聞いて、貴方はひいたりしない?差別しない?」
この種の差別は、どんなに道徳的にエラいことを言ってる人にも起こりうると思う。
だから、この『手紙』には、とても人間の生の姿が描かれていると思いました。
人は、結局「差別」なくして生きられないんだろうな。
排斥する心が「いじめ」を生み出すから、結局「いじめ」もなくならないんだろうな。
それが人間の「本能」なのかな。
同時にそれは、「人間の哀しさ」だよな。
そんな風に思って、涙が止まりませんでした。
この作品は、そんな風に色々なことを考えさせてくれました。
是非とも、沢山の人に読んで頂きたいです。
最近なんだか、「迂闊にも感動して泣いてしまった」ことが多い(笑)
海外バラエティーで「クワ・アイ」という番組があるんですが。
男性の服装・髪型・家のインテリア等々コーディネートして大変身。
そして、意中の女性にウフフするという番組です。
超!どうでもいい内容なんですけど、なぜか見てしまう。
その中で長年ハゲを隠してきた男性が、「自分を変えたい」と「クワ・アイ」に応募。
んで、スキンヘッドになってしまうわけですが。
「自分の気持ちを変えれば、周囲が変わっていく。
周りがどう思うかじゃない。君がどう思うかなんだ。」
とコーディネーターに言われ、彼は自分の中の弱さに気付く。
で、その弱さを断ち切る為にも、カツラを燃やします(しかもバーデキュー用グリル機で)
迂闊にもねえ。ここでウルルっときてしまったのですよ。
他にもですね、先週末「スパイダーマン3」を見に行った時のこと。
正直、「スパイダーマン2」で、子供が“We won't tell nobody.(誰にも言わない。)”と言うシーンで号泣する当時の彼氏にかなり引いたのですが。
今回・・・泣きました ・゜・(ノД`)・゜・
ええ、もう、不覚にも。ぽろりとね。
最後の方のパーカーとハリーの会話がね。
ぎゅ~~~~~とハートを鷲掴んだのです(はっきり言ってMJ邪魔モノ)
やばいですわ。スパイディで感動だなんて。
一体どうしたんだ、私。
まあ感動するのはいいこと。
それは感受性がまだ潤っているってことですから(と照れ隠し)
うっかりスパイディで泣いてしまった私ですが。
今週末は映画「ハンニバル・ライジング」を観に行こうかと思っている次第。
しかしですねえ。
この若造に、あのアンソニー・ホプキンスと同等の演技が出来るのかいね?(暴言)
カニバリズムでとんでもない頭脳を持った精神科医で、これほどの凄まじい「静かな」狂気を演じられる役者ですよ?
相当の演技力じゃないと、若い頃を演じることは出来ないのではないかと思ふ。
そもそもハンニバルシリーズは、二作目の「ハンニバル」がもう頂けない。
何がって最後に腕を切り落としたところが。
あそこはクラリスを連れてかなきゃ~~。
原作者がっかりなんでないでしょうかねえ?
次の「レッド・ドラゴン」はもっとブーでした。
だから正直あんまり期待してません。
まあ、ハンニバルシリーズはとりあえず劇場で見ないとねw
サイコ・スリラー命ですから(しかし残虐シーンOnlyは頂け無い)
そうして劇場予告編でやっていて「早っ!」と思ったんですが。
始まるんですねえ。
ハリーポッター3作目「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」が。
こちらも1作目から劇場でみちゃってるのよねシリーズ。
でもね、ハリーポッターシリーズは好きなんです。
確かにベタっちゃあベタな展開なんですけど、構成に無駄がないところがいい。
全てがキーになってくるんですよね。
ちゃんとラストシーンに繋がっていくのが気持ちいい。
だから何気に楽しみにしてますw
公開は7月21日からなので、まだまだ先です。
今月はハンニバルレクターに恐怖の悲鳴をあげ、来月はパイレーツ・オブ・カリビアンに黄色い悲鳴をあげ、再来月はハリー・ポッターに熱い悲鳴をあげることになるんでないかと(意味不明)
あー。
迂闊にも、レクター博士で泣いちゃったりしちゃったりしたらどうしよう。
ナンだ。この世は全てバラ色なのか?
それともお前の前だけ雨が降っているのか!?
と、自分に突っ込んでしまいそうですわん
僕は肩に担いだ荷物を降ろして、ふっと吐息を吐いた。
目を細めて、その先を見つめる。
ここが、世界の果て。
随分長く旅をしてきたように思うが、実際はもっと短かったのかもしれない。
午前3時のデイリーニュース。
キッチンに取り残されたコーヒーマグ。
オレンジの電飾に彩られたダイナー。
ひっそりと奏でられる都会の夜が、遠くにも近くにも感じる。
白く伸びるハイウェイを見たのは昨日だったのか。テールランプの中で佇んでいたのは何年も前のことだったのか。
そしてこんな風に、縹渺とした大地にいるのは本当に現実なのか。
夢も現も、空も土も、風も光も。
全てが曖昧で、形を成さない。
ただ分かっていることは――――ここが世界の果てということ。
それだけは、確かだった。
「明日で人類が滅亡するとしたら、何をする?」
彼女はマニキュアを塗りながら、上目使いで僕を見た。
エスティーローダーのマニキュアの、可愛らしいベリーフィズ。それは珊瑚色の彼女の爪に、とてもよく似合っている。
「そうだな。まずは仕事には行かない。」
僕は寝転がったまま手を伸ばし、クラッカーを一つ摘み上げた。
ブラックベリーのジャムをたっぷりと載せる。
「それから?」
「それから―――アブサンを飲む。」
「何でアブサン?」
「昔から憧れてた。どんな飲み物なのかなって。」
僕は笑ってクラッカーを口にほうりこんだ。甘くて酸味のあるブラックベリーが、口いっぱいに広がってゆく。それは小さな黄金色の雫になって、僕の心に沁み渡っていく。
「陳腐ね。」
彼女は爪に息を吹きかけながら、くすりと笑った?
「そう?案外そんなもんじゃないか?」
「私は違うわ。」
「そう?どうするの?」
「まずは世界の果てにゆく。」
僕は噴出す。クラッカーが喉に詰まりそうになって、慌てて珈琲を飲む。
「世界の果てにたどり着いたら、音楽の出番。」
「なんだろう。世界の果てに似合う音楽。」
「シックで、でもキレイな音楽がいいわ。青空に吸い込まれるような。どこまでも伸びてゆくような。」
「ビリーホリディだったら、ベタかな。」
「陳腐よ。」
彼女は肩を竦めた。
僕は微笑んで手を伸ばし、彼女の腕を取った。滑らかな白い肌をなぞり、その指先をそっと口に含む。
額を寄せて、僕らは見詰め合った。
「それで?音楽の次は?」
僕は囁く。
彼女の吐息が、僕の体を熱くする。
「そして・・・貴方と踊るの。」
「世界の果てでダンスか。それはいいな。」
「終焉のキスよ。」
「地球最後のアダムとイヴだね。」
僕達はそうして、お互いの隙間を生めるように抱き合った。
高い声がして、僕ははっと我に返った。
見上げると、遥か上空で鳥が旋回している。
荒い息をつきながら、額に滲んだ汗を拭った。
日差しが眩しすぎて、空の色が分からない。
光の粒子がそこら中に氾濫して、目が開けられない。
ここは―――世界の果て。
哀しみも苦しみも淋しさも、愛しさも喜びも幸福も、すべてが浄化され消えていく場所。
「そうだ・・・まずは・・・・まずは音楽だ。」
僕は空ろに呟く。
高く晴れ渡る空に、相応しいメロディーを。
気高く崇高な旋律を。
幽玄なるコーラスの響き。
妙なるヴァイオリンの音色。
ユーフォニアムとチューバの豊かな調べ。
僕はそっと空を見上げた。
確かに―――確かに聞こえてくる。
花びらが降りそそぐように。
幸せな音楽が、僕を優しく包み込んでくれるのを感じた。
「・・・よ・・・・人の・・・・・びよ・・・・。」
僕はかすれた声で呟く。
終焉の日。
世界の果て。
たった一人ぼっちの僕。
メロディーは続いていく。
真夏のパレードのように、暑く溶けた陽炎になって。華やかな優しい音楽が、僕を祝福してくれる。
さあ。
さあ、踊ろう。
僕は手を差し伸べる―――薔薇色の亡霊に向かって。
主よ、人の望みの喜びよ。
今こそ、世界最後のダンスを踊る時だ。
彼女は微笑みながら、芝居がかった仕草でお辞儀をする。
ドレスもなく、靴もなく、アクセサリーもない。
それでも日差しの中で笑う彼女は、何ものにも叶わぬほどに美しい。
僕の手を取り、僕は彼女の腰に手を回し、そして二人音楽に体を預ける。
くるくると僕の腕の中で彼女は回る。弾ける笑い。絡み合う視線。僕も笑って、軽やかにステップを踏む。彼女の髪がふわりと揺れる。指先で光るベリーフィズ。そして時折からだを寄せ合って、小鳥のように軽いキスを交わそう。
いつか、この光の中に僕達、溶けていくだろう。
だって今日は、終焉の日だから。
この場所は、世界の果てだから。
でも本当は―――。
世界の果てなんてどこにでもあるのだ。
薄暗いアパルトメントの片隅にも。
汚れたダイニングキッチンにも。
泡が消えたバスタブの中にも。
どこでもいい。38口径を口に咥え、静かに瞳を閉じればいい。
誰もが、世界の果てへと隠遁出来る。
そうさ、やっぱりビリーホリディは似合わない。
たゆまなく優しいメロディーの中で、言葉もなく愛を語りあう一時には。
主よ、人の望みの喜びよ。
彼女は笑っている。
それが幻でも、構わない。
淡くぼやける視界の中で、僕は自分の汚れた両手を見た。
紅く染まる両手が、微かに震えるのが見えた。
音楽は続いている。
世界はもう直ぐ、終わりを迎える―――。
GWの終盤に、酷い風邪をひいてしまいました
熱は出ないんですが、とにかく喉が痛い。
咳が止まらず、眠れない
連日残業が続き、病院にいけなかったのですが、たまりかねて昨日残業せず(っても、30分残業しました)病院に駆け込みました。
扁桃腺が腫れを通して、白く炎症を起こしているとのこと
薬を処方してもらい、大分楽になりました。
で、思ったこと。
日本での病気の時の代表的な食事って「おかゆ」ですよね。
消化によく、体を温めてくれる。
では海外ではどうか?というと。
チキンスープなんですよねえ
日本の感覚だと、「チキンスープ?なんで??」って感じですけど。
作り方は至って簡単。
鶏肉を煮込む→灰汁を取る→チキンを取り除く→バターを溶かす→出来上がり。
Σ(゜д゜;) それだけ!?
勿論、お好みでジャガイモやにんじんや玉ねぎなどを入れたりもします。
風邪やインフルエンザを治す民間療法の、伝統的なスープらしいです。
海外ドラマでも、風邪をひくと友達なり恋人なりがチキンスープを買ってきて「早くよくなってね」と言ってくれてます。まさに日本の「おかゆ」みたいなスタンスなんでしょうねえ。
チキンスープだけでなく↑こんな風なチキンヌードルも、風邪の時の料理の定番らしい
面白いのが、大概作って飲むよりテイクアイウトで買ってくる方が多いような(笑)
まあ確かに。熱が出てしんどい時にご飯なんか作る気になれないし。
なら誰かに買ってきてもらって、スープだから飲みやすいし、体温めてぐっすり眠った方がいいような気がするなり。
こういう日常に潜んでいる文化の違いってのも、面白いですよねえ。
私?
風邪ひいてますが、食欲は旺盛。
なんでもかんでも食べてます。
カリオストロのルパンばりです
いっぱい食べて、とにかく早く直ってくれえええええ(切実)
彼女の場合
買い物に行こうと言われた時から、憂鬱だった。
彼が買い物と言うと、それは服とかアクセサリーではない。電化製品だ。
悪いけど、電化製品なんてそう必要になることなんてないはずじゃない?
でもあたしの彼氏は、しょちゅう電化製品を見たがる。
まあ、仕事柄、新しいものや性能のいいものを必要としてるんだと思うけど。なんたらソフトがどうとか、なんたら商品は画期的だとか。どうでもいい講釈を長々話す。そんな専門的な話、分かるわけがない。付き合い始めは、相手に気を使って、頷いたり相槌を打ったりしてたけど、今はとてもそんな気になれない。横目でちらりと見て、聞き流す。むしろそんな態度で、興味がないってことを分かってもらいたい。
三軒目を回ったあたりで、足が痛くなってきた。
細いヒールの靴は、長時間歩くのに合わない。
失敗したわ。もっと歩きやすい靴を履くべきだった。
あたしの彼氏はとにかく色々見て回るのだ。あっちの店こっちの店と見て回って、散々悩んで、結局最初の店に戻って・・・その繰り返し。
一緒にいると、まるでオバサンのバーゲンにつき合わされている気がして、うんざりしてしまう。
彼が電化製品見て、私は服とか見て、後刻待ち合わせってことにして、美味しい夕食でも食べればいいと思うのに。それは嫌だといわれたことがある。そんなに一緒にいたがるなら、嫌気がさしてる私の気持ちを察してよ、と思う。
気持ちがくさくさしてきて、煙草を取り出し火をつけた。
紫煙が、夕暮れ迫る町並みに棚引いていく。
その美しさを、うっとりと見遣った。
「疲れた?」
彼があたしの顔を覗き込んで言った。
「別に。」
疲れたに決まってんでしょ。分かってよ。と心の中で呟きながらも、一応相手に気を使って応えた。
それでも、言葉の端に苛立ちが滲んでしまうのを止められない。
でも、彼はそれに気付かない。言葉通り、何ともないんだって安心して、次の店へと私を引っ張っていく。
ああ、なんてこの人はこんなに鈍感なんだろう。
私はそれが我慢出来ない。
そろそろ・・・やっぱり・・・別れるべきなのかなあ。
そんな風に思った時だった。
「ほら、見て。紅い目の麒麟がいる。」
彼の悪戯っぽい声に、はっと顔を上げた。
彼が指し示す空の下。切り取った影絵のような町並みに、ひっそりと三頭の麒麟が佇んでいた。
いや、それは工事中のクレーン車だ。でも全てを黄金色に染めぬいてしまうこの黄昏の中では、天空の星を食もうと首を伸ばす麒麟に姿を変える。
紅い目を淋しげに瞬かせ、遠い何かと交信する。
声なき声が、私の耳朶を振るわせる。
そうして思い出した。
彼は、こんな風に繊細な感性の持ち主だった。
大雑把な性格な私にはない、透き通った瞳で世界を見ている人だった。
枕元で、ギターを掻き鳴らし、少し照れくさそうに歌った彼の横顔。
キスをする時、いつも伏目勝ちに私を見るその眼差し。
腰に添えた手の温もり。
好きという感情が当たり前になりすぎて忘れてしまっていた。
彼の彼だけが造ることが出来る優しい時間。
ああ、やっぱり好きなんだな。
ごく自然に、当たり前のことに、気付かされる。
だから私は、自分から彼の手のひらに自分を委ねた。
不器用な彼の、不器用な私の、不器用な愛情表現。
でも、この暖かさがあれば大丈夫。そんな風に思った。
麒麟は空を見上げて、小さく一声啼いた――――気がした。
彼氏の場合
三軒目を回ったあたりで、彼女が煙草を取り出した。
俺はそれを、横目で黙って見る。
俺も煙草を吸うので、あえてくどくど言わないけど。
でも、彼女には煙草を吸って欲しくない。
以前さらりと言ったことがあるけど。覚えているのかいないのか。彼女は俺の前でパカパカ煙草を吸っている。
女性が煙草を吸うのが駄目と思っているわけじゃ別にないんだ。ただ自分の彼女だけには、あんまり吸って欲しくないだけだ。
特に女性は肌にくるだろう?彼女は白くて奇麗な肌をしているから、煙草で台無しにするのは勿体無いって思う・・・それだけなんだけどな。
紫煙を吸い込む彼女の目が、空ろになっている。
こういう場合の可能性は3つ。
疲れている。お腹がすいている。眠い。
ぱっと見ただけでは、どれなのか分からない。
面倒臭えなあ。
俺は心の中でそっと、溜息を吐いた。
さっき会ったばかりだから、眠いってことはないだろう・・・でも彼女は比較的寝るのが遅いから、眠いってこともあるかもしれないなあ。飯は・・・食ってきたはずだから、お腹がすいているってことはない。ショッピングをして小一時間だけど・・・疲れたのか?たかだか小一時間で疲れるってのもない気がするけど、可能性としてはこれが一番高いか。
「疲れた?」
俺は隣で不貞腐れている(ように見える)彼女に尋ねた。
「別に。」
彼女はむすっとしながら応える。
別に、じゃねえだろ。俺は心の中で呟く。
一体なんなんだよ。何が不満なんだよ。
彼女はいつもこうだ。
気持ちと反対のことを言う。でもちゃんと言ってくれないと、何が嫌で何が不満なのか分からない。
俺はエスパーじゃないんだからさ。
でも彼女は、いつも気持ちを紫煙に託して中空に吐き出してしまう。言葉になりそこねた思いが白い煙になって霧散する。そして俺は、彼女の気持ちを量りかねて佇んでしまう。
俺はそれが我慢出来ない。
ちゃんと、言ってくれ。そう何度も言ってるのに。
どうして女ってのは、こう分かりにくい生き物なんだろうか。
面倒えなあ。
俺はふっと溜息を吐いて、煙草に火をつけた。
目を上げたその先に、俺は俺達を見つめる優しい眼差しに気付いた。
「ほら、見て。紅い目の麒麟がいる。」
思わず彼女に、そう言っていた。
俺の指し示す先を見遣って、彼女ははっと息を呑む。
棚引く雲の谷間から零れ落ちる黄金色の夕日。
その真ん中で、首を伸ばし紅い目を明滅させる麒麟。
彼から見たら、俺達の小さな気持ちのすれ違いなど煩い雑踏に紛れて見えるのだろう。
それとも、暖かい温もりの中に沈む幸せなカップルに見えるのだろうか。
言葉もなく、遠い黄昏を見据える。その佇まいがあんまり淋しそうで、胸が疼く。
その時、俺の手に彼女が自分の手を重ねてきた。
その柔らかい手のひらの感触があまりに優しかったので、俺は思わず小さく微笑んで彼女の肩を抱き寄せた。
そう、俺達は俺達だけの、優しい一時を造り出すことが出来る。
手を伸ばせば触れることが出来る場所に、いつも彼女はいてくれる。
それは、案外幸せなことじゃないか?
寂しさを癒してくれる彼女の温もりを、俺は精一杯大切にしていきたい。
俺は器用な方じゃないし、相手のペースに合わせるってことも苦手な方だ。だからいつも彼女を思いやることを忘れがちだけど。でも、それでも、彼女が好きって気持ちは本当だし、彼女と一緒にいたいって気持ちは揺ぎ無い。
誰よりも幸せにするなんて気障なこと、言葉にして言えないけど、それくらいの気合はあるつもりなんだ。
彼女の香りが、俺を優しく包み込むのを感じる。
そうしてここから俺達。
淋しい麒麟を見ていこう。
俺達の道程を見守ってくれる、紅い眼差しを背中に受けながら――――。