南町の独り言

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お札の刷り増し

2011-08-13 11:21:09 | 経済
不可思議かつ深刻な現象が起きています。
米国債の格付けが下がったのに、米国債が買われており、長期金利が低下しました。
(売りたくても売れないし、あふれているマネーの他の行き先がない)
リーマンショック後米国は金融緩和(QE1、QE2)でドル紙幣を3倍も刷り増しをします。
市中にばら撒かれたドル紙幣で、米株式市場も一部潤いました(10年11月3日ダウ平均11,000→12,500)が、多くは新興国への投資に回り、米国実体経済にはあまり影響しませんでした。
米国債の格下げの情報により株式市場からマネーは一気に引き上がり株式急落(11年8月8日10,800)、その反動は金や資源などの先物市場に表れています。
景気が悪いときはお札を刷り増しし金利を下げればよいとされた古典的経済学は、あまりにもグローバル化した現代にはそぐわなくなっています。

米国からあふれ出したマネーが、どれだけ各国の物価を押し上げているのかを、朝日新聞(8月12日)がまとめています。
この数字はは07年6月から11年6月の消費者物価指数の上昇率です。
米国:8%、英国:14%、中国:15%、ブラジル:24%、インド:45%、ロシア:49%。
円高の日本だけが、マイナス0.3%でした。
世界経済の原動力であった米国のエンジンを吹かそうとなりふり構わずマネーを放出しても、それは投機マネーに変質して新興国のインフレを招きます。
その結果、物価上昇で所得の低い人の暮らし向きは悪くなり、社会不安が起きていきます。
大国の金融政策が世界中に影響を与える時代、金本位制の時代はありえなかった事態が各国で起こりつつあります。

こうしたなかで産経新聞が次のような見解を11日のトップ記事で扱っていました。
「米国は3年前のリーマンショック後、お札を3倍も増刷した。
中国や欧州も追随したが日銀だけは応じなかった。
日銀が大量の復興国債を市場から買い上げると、国債の消化は円滑になる。
超低金利の資金は米欧市場にも行き渡り、国際金融市場の安定につながる。
この過程で円は売られるので円高は止まる。
日本は増税なしで持てる金融資源の一部を復興・再生に投入すれば、世界に貢献できるのだ」

産経新聞らしからぬ軽い見解にちょっと驚きました。
復興国債の買い上げまでは賛成しますが、その後の処置も語らずに、あたかも増税なしのままで財源が調達できるが如きの意見に私は同調できません。
日本国債の信用不安が起こり暴落したときになにが起こるか、「消えた年金」どころの騒ぎではありません。
100兆円を超える年金資金が国債購入に充てられている現実を考えるとき、復興国債の発行の裏側には確実に増税が仕組まれますし、それなくして日銀が復興国債の買い上げをするはずもありません。
増税に賛成するかしないかではなく、やるしかない状況に追い込まれていることや、増税の方法について考えるような世論をつくりだしてほしいと思います。
(増税に喜ぶような国民は一人もいませんが…)