“EUを創った男”と呼ばれるフランスのドロールは、1983年の雑誌インタビューでこう話しています。
「ドルの気紛れな動き、強い経済力を持ちながら世界的な責任を取ろうとしない日本のかたくなな態度、そして高金利と貿易の衰退に苦しむ第3世界の問題。
こうした問題に取り組むためのただ一つの選択は統一ヨーロッパであり、それができなければ没落しかないのである」
(日本放送出版協会「EUを創った男」より)
それに対して国家主権こそが生きる道であると真っ向から対立したイギリスのサッチャー首相。
イギリスも日本と同じ島国です。
その昔その昔の17世紀末にイングランド国王(今のイギリス)がオランダ高官に宛てた手紙の一節にこんな文句がありました。
「この国の連中ときたら愚かしいまでに自分たちのことばかりに夢中になって、外国で何が起こっているのかについてはほとんど関心を寄せていない。
まるで地球上にはこの島しか存在しないかのごとくだ」とヨーロッパで頻発していた事件にほとんど関わろうとしなかったイングランドの国民性を嘆いています。
(剄草書房「イギリスとヨーロッパ」より)
この国民性とイギリスのトップリーダーの世界観が、イギリスEU不参加の原因でもあります。
なぜイギリスはEUに参加していないのかという単純な疑問を解くために本を読んでみましたら面白い歴史に出会えました。
ヨーロッパとアメリカの狭間で自らの将来を思い描くイギリスと、アジアとアメリカの狭間で今後の進路を模索する日本、戦勝国と敗戦国の違いはありますが、同じ島国としての共通性もいくつか見られます。
かつて7つの海を支配してきた大英帝国、過去何回も国家としての決断を迫られてきました。
イラク戦争においてアメリカにつくべきかヨーロッパの国々と手を組むべきか、単一通貨ユーロに加わるか否か、その時々でイギリス政界は大きく揺れました。
混乱が続くイギリス政界に登場した“鉄の女”サッチャー女史は、新自由主義の旗を立て保守党を率い三度総選挙に勝利しました。
日本の小泉政権も5年5ヶ月にわたる長期政権でしたが、サッチャー政権は11年半もの長きに渡りました。
サッチャーは当時のEC統合の在り方に疑問を抱いており、「社会などというものは存在しない。
あるのは個々の男と女、そして家族だ」と言ってはばからなかったそうです。
これに対してEC統合を訴えてきたドロール委員長は正反対の世界観を持つ指導者でした。
「個人は社会抜きに人格を完成し得ない。
個人が他人に貢献できるよう、社会が自己実現のための空間を提供すべきである」
サッチャー流の個人と国家の構図を、まったく相容れることのない世界観です。
トップリーダーの世界観は大きく国のあり方を変えるという典型的な例です。
鳩山首相の世界観を私は好きですが、みなさんはいかがですか。
そしてあなたの世界観はどんなものでしょうか。
いつの日か、そんな議論を肴にして一杯飲りたいですね。
今日はこれから今年初めての花見会です。
どんな桜が見られるか楽しみです。