南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

自殺する種子

2009-08-03 08:53:29 | 読書
今日は晴れ間ものぞいていますが、いったいいつまでこの長梅雨は続くのでしょうか。
先日バス停でお会いしたおばあさんが『こんなん(梅雨)が8月まで続いたのは35年ほど前にあったきりだよ。稲も伸びないし、畑の野菜もこれじゃあ駄目だ』とぼやいていました。
今朝の新聞記事によると、東海地方の梅雨明けが最も遅かったのは、55年前(1954年)の8月2日だったそうですから、観測史上での記録を塗り替えるのは確実です。
お百姓さんも大変ですが、消費者も野菜類の値上がりで大変になりそうです。
まずは食料の確保が第1ですが、食の安全も考えていかねばなりません。

新型インフルエンザ(豚インフル)も片付いておりませんが、狂牛病や鳥インフルエンザの恐怖もまだまだ残っています。
世界中には飢えに直面する人々であふれ食糧供給不足が叫ばれていますが、一方では工業的農業の拡大による食の安全も大きな問題となっています。
遺伝子組み換えの問題点や、家畜の餌に投与される抗生物質の問題、さまざまな角度から世界の食を支配しつつある穀物メジャーや巨大なアグロバイオ企業の実態が本書では描かれています。

題名の「自殺する種子」とは、生命を育み、生命を次世代に伝えていくという生物のもっとも根源的な種の機能を、バイオ技術で奪い取られた種子のことです。
いうなれば“自殺種子技術”を種に施すことで、その種から育つ作物に結実する第2世代の種は、自殺してしまうのです。
昔から農家は次の季節に備えて種を取り置いておきましたが、その種が自殺してしまえば農家は毎年種を買わざるを得ません。
信じられないことですが、よく見ると私の周りの農家でももうすでに種の取り置きはしていません。

畜産物に対する飼育も昔と様変わりです。
広々とした草原で飼われていた牛や豚、庭先で走り回っていた鶏などはとんと見かけません。
狭い牛・豚舎や鶏舎にぎゅうづめとなっていれば、病気にもかかりやすくなります。
そのために餌の中に抗生物質を投与し菌に対する抵抗力をつけます。
しかしそのうちに抗生物質が効かない耐性菌が出現します。
強い病原性に変異したウィルスが“鳥インフルエンザ菌”などと呼ばれるようになります。
読めば読むほど食への関心が高まる1冊でした。

自殺する種子―アグロバイオ企業が食を支配する (平凡社新書)
安田 節子
平凡社

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