【メタセコイアとは】
・スギ科メタセコイア属の落葉高木。端正な樹形や四季折々に変化する葉色が美しく、各地の公園、庭園、街路などに植栽され、高速道路のインターチェンジに特に多い。イルミネーションを括り付けてクリスマスツリーにされることもある。
・「メタセコイア」とは「絶滅した後になって発見された杉」といった意味。メタセコイア属の樹木は白亜紀から古第三紀にかけて北半球に広く分布し、日本にも自生していたことが化石から判っているが、新第三紀に絶滅したと考えられていた。
1941年に京都帝国大学講師(当時)であった三木茂博士が化石の属名として命名していたが、奇しくも同年、地元民の口コミを元に中国西南部(四川省と湖北省の境)の磨刀渓という部落を訪れた中国農林省の王戦氏が生きたメタセコイアの標本を持ち帰り、数人の学者らの研究を経てその存在を明らかにした。発見した当初、王戦氏はスイショウと誤認していたという。
・メタセコイアが日本に渡来したのは1950年のことで、アメリカで育苗された100本の苗木が全国の植物園などに配られたのがきっかけ。メタセコイアは挿し木でどんどん増え、成長も早いため今ではまったく珍しい木ではなくなった。
・葉は羽状複葉と呼ばれるタイプのもので、長さ1センチ、幅1~2ミリの線形の小葉が対になって二列に並ぶ。葉の表面は青味がかった緑色、裏面は淡い緑色で、新葉は特に柔らかく、触れるとサラサラしている。
・葉は秋にレンガ色になって小枝ごと落下するが、紅葉する様が美しく、曙杉という別名がある。個体によって枝が水平に出るものと斜め上に伸びるものがあり、前者は後者よりも成長が遅く、幹の下部がより太くなる。
・メタセコイアは雌雄同株で、2~4月に雌雄それぞれの花を咲かせる。雄花は黄褐色で長く垂れ下がった枝に並んで咲き、雌花は緑色で枝先に一つだけ咲くため、あまり目立たない。日本では開花しないことが多いとされ、蕾で終わることもあるが、肥沃地では多少開花する。花言葉は「平和」「楽しい思い出」。
・秋になると長い柄がついた小さなサクランボのような球果ができる。球果は直径2~3センチほどで、10月頃には褐色に熟すが、冬の間じゅう枝に残り、翌春に落下する。球果には幅の広い翼を持った種子が含まれ、これによって容易に繁殖できる。
・幹は真っすぐに伸び、原産地では直径2.5mにもなる。赤褐色をした樹皮は薄く、樹齢を重ねると縦に裂ける。メタセコイアは成長が極度に早いため、その材は粗くて柔らかく、材木としての価値は乏しいが、稀に建材、家具材に使われる。かつては枕木に、そして中国の原産地では棺桶に使われた。
【メタセコイアの育て方のポイント】
・成長がきわめて早く、1年で1~1.5mも伸びる。日本に植栽され始めてまだ60年ほどであるが、メタセコイア研究の第一人者であるアメリカのチェニー博士は200~300年もすれば樹高50mに達すると推定している。剪定は可能だが、芽を出す力が大変強く、切ってもすぐ元どおり(あるいはそれ以上)になるため、一般家庭には向かない。
・日向を好み、極端な日陰では生育が悪い。また、水中でも根を張るほど湿気を好み、乾燥の激しい場所は向かない。
・以上の条件を満たした場所であれば、病害虫に強く、耐寒性も高いメタセコイアの雄大な樹形を堪能できるが、冬季は小枝ごと落下した葉がポロポロと崩れやすく、掃除に手間が掛かり、周囲の花壇は落ち葉に埋もれやすい。また、ラクウショウほどではないが樹齢を重ねると四方に張り出した根が地表付近に現れ、歩行を妨げる可能性もある。
【メタセコイアの品種】
・紅葉期のメタセコイアは一時的に黄金色になるものだが、その発色が特に強い個体や、夏でも葉が黄緑色になる個体があり、それらを特に「黄金メタセコイア」あるいは「ゴールドラッシュ」などと呼ぶことがある。
【メタセコイアとラクウショウとの違い】
・メタセコイアの別名「ヌマスギモドキ」とは、沼杉=ラクウショウに似ているという意味。ラクウショウの枝は下へ垂れやすく、遠目でも判別できるが、それは自然樹形の場合。剪定を繰り返された両者の区別は遠目では難しい。しかし、近付いてみると葉の生え方が異なるため区別できる。ラクウショウは細かな葉が、細い枝から互い違いに生える「互生」だが、メタセコイアは一箇所から対になって生える「対生」となっており、その違いは冬芽を見ても分かる。