伊丹空港スポット
JAL、P&Wエンジン搭載の「777」全機退役 1年前倒し
日本航空(JAL)が米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製のエンジンを搭載した米ボーイングの大型機「777」を全機退役させたことが5日、わかった。米ユナイテッド航空が同型エンジンを搭載した777で部品落下事故を発生し、2月以降に運航できない状態が続いており、退役時期を1年前倒しする。早期の退役で整備コストを抑える。
PW製エンジンを積んだ777は13機あり、2021年3月期中に6機、22年3月期に7機を退役させる予定だった。全機退役に伴い、21年3月期に数十億円規模の特別損失が発生する見通し。事故発生までは羽田―福岡など国内線の主要路線で運航させていたが、ユナイテッド航空の事故以降、国土交通省の指示で全機運航を停止している。国交省の停止指示が解除されるまでは売却先への運航もできない。
座席数やファーストクラスの数をほぼ変えずに代替できるJALの機材は欧州エアバスの大型機「A350」に限られているものの、新型コロナウイルスの影響で旅客数が減少していることなどから、輸送は別機で代替できると判断した。具体的には、A350の伊丹空港乗り入れやボーイング787の新千歳空港乗り入れで対応している。
通常であれば新たな機材が空港に乗り入れるには、数カ月かけて整備体制などを整える「基地化」が必要だ。今回は国交省の協力を得た緊急対応として「基地化」をせずに、申請から1カ月程度で乗り入れが実現したことも退役前倒しの背景にある。公共交通の維持に必要な対応だと判断したとみられる。
PW社エンジンを積んだ777は全日本空輸(ANA)も19機保有し、全機運航を停止している。ANA関係者によると、同社は777の前倒しの退役には否定的だが、「前の世代のエンジンでコストもかかっている。二酸化炭素(CO2)排出を抑制する意味からも新しい(エンジン搭載の)777や787に替えていく必要がある」としている。
新型コロナウイルスによる航空需要の蒸発は長期化しており、欧州の航空大手も老朽機材の退役を前倒ししている。英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は20年7月、保有する「ボーイング747」31機全てで前倒しでの退役を決めた。24年にかけて運航を終える計画だったが、旅客の激減を踏まえて即時実施する。
国際航空運送協会(IATA)は、旅客需要がコロナ前の水準に戻るのは24年と予測している。経営体力を温存するための退役前倒しは、今後も出てくる可能性がある。