HISモバイル 破格「月290円」これで採算とれるのか
石野純也・ケータイジャーナリスト

旅行会社大手のHISと、格安スマホの老舗の日本通信が合弁で設立した「HISモバイル」が、新料金プランを5月上旬から6月上旬に導入する。料金は、データ通信量が100メガバイト(MB)以下の場合、最安で月額290円。多くの利用者をカバーできそうな7ギガバイト(GB)プランも月990円で提供する。ここまで安い料金でHISモバイルは採算が取れるのか。
乗り換えのシニア層を狙う
290円のプランはデータ容量によって料金が変動する。100MB未満の場合は290円で、100MB以上になると、1GBまで550円になる。スマホでアプリをダウンロードしたり、動画を見たりすると、すぐに100MBは超えてしまうが、データ通信をほとんど使わない人には割安な料金プランだ。シニア層など音声通話が中心の人にはお得な料金体系と言えるだろう

HISモバイルの狙いもここにある。今後は3Gの電波が徐々になくなっていくからだ。KDDIはすでに3月末で3Gのサービスを終了し、ソフトバンクは24年1月、NTTドコモは26年3月に終了する予定。通話が中心の利用者も4G、5Gに移る。今後4年間で乗り換え需要が拡大するとみられる。
通話主体の利用者を取り込むため、音声通話料は30秒9円に設定した。通常の大手通信事業者は30秒22円で、HISモバイルの料金は半額以下だ。1回5分以下なら何度でも掛けられる「5分かけ放題」は月500円、「完全かけ放題」は1480円で提供する。こちらも他社に比べて安い。5分以内の通話しかしない人なら、データ容量100MB未満の290円と合わせて月790円で回線を維持できる。
どうして安くできたのか
消費者目線では、お得な料金プランに見えるが、290円の月額料金でどうやってサービスを維持していくのか気になる。

リアルの店舗を増やす
一方で、現在HISモバイルの販路はインターネットが中心で、通話が中心の利用者に十分届いていない。そのため、同社は今後フランチャイズ方式でリアルな店舗を増やしていくという。
1号店は群馬県太田市に開設。空き店舗など、コストの安い物件を活用して、店舗数は徐々に増やしていく。HISの知名度は高いだけに、サービス内容をきちんと周知できれば利用者を伸ばせそうだ。