旅とエッセイ 胡蝶の夢

ヤンゴン在住。ミラクルワールド、ミャンマーの魅力を発信します。

今は、横浜で引きこもり。

あの香り

2018年12月10日 20時16分31秒 | エッセイ
あの香り

 バラの香り、そこはかとない梅の花の香。入れたてのコーヒーから立ち上る香り。美味そうな食物の匂い。思わず足を止める鰻屋から漂う匂い。カレーの湯気。シチューの湯気。焼き煎餅のショーユの焦げた香り。
 綺麗な女の人とすれ違った時の、あっいい匂い。でもたちまち消える。

 今日は残念ながら、良い香りの話ではない。と言ってウンチ系じゃあありません。やーね。

 薄着の季節、半袖のわきから流れ出る香り。そう、腋臭の話だ。この話し、嫌な人はここでラインアウトしてね。

 どこだったか忘れてしまった。印度だったかな。安宿の交渉がうまくいって、部屋に案内された。ちゃちいドアを開けた瞬間、わっと流れてきた匂い。うっとなって、口と鼻を押さえた。でも目にまで流れ込んできてチカチカする。匂いは実体だろ。微小な液体?固体?それとも気体なの?
 匂いの本体はベットだ。旅先ではたまにあるが、ここまで強烈なワキガ臭は珍しい。あーあ、と思ったが、かなり安かったんで部屋替えはしなかった。匂いは慣れる。5分も経つと鼻が麻痺して気にならなくなる。でもいったん外出して戻ると、ウッゲー。

 若いころ、セールスの仕事で5人の男女(男x3,女x2)で車に乗っていた。あの当時は毎晩のように飲み歩いていたから、その日も飲んだ帰りだったんだろう。みんな若いし、女の子の一人は飛び切りの美人なのに気さくで楽しく、男どもは盛り上がっていた。
 しかし、しばらく走っているうちに、会話が途切れがちになり、テンションが下がってしまった。やがて沈黙。後ろの席では、窓をソーっと開けている。実は助手席に座っている女の子から、強烈なXXX臭が流れ、狭い車内に充満してきたのだ。
 でも本人は全く気づいていない。しばらくは、その子が1人でしゃべっていた。ここまで無自覚なのには驚いた。今まで幸せな人生だったのね。願わくは、そのまま気付かずに人生が続きますように。
 その助手席の子が真っ先に降り、またねー、また明日。ちょっと走ると、車の窓を全開にした。意地悪じゃあない。本当に息が苦しかったんだ。

 でも後席の男が1人怒っている。「何で窓開けるんだよ。楽しんでいるのに。」その男、腋臭が好きで好きでたまらないそうだ。
 どこか影があり、大学に8年いて、アメリカの刑務所に入っていたとかいないとか。その事と関係があるのかどうかは分からない。でも男曰く、「顔なんかどうでもいいんだ。あの匂いがたまらねー。」

 助手席の女の子は、あまり可愛いとは言えず、性格もきつかった。男はその日以来、彼女にアタックを繰り返したが、彼女は最後まで男を嫌っていた。
 世の中、なかなかうまくは行かない。











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