私は公民館の戸口のところで不安そうに待ってる弟のところに直行して、ギュッと腕を握って引っ張って、さっさと公民館を出てったよ。相変らずカンカン照りで暑い暑い、霊安室はひんやりしてたので余計に、むわ~っと感じるわ。気づくと、まだマスクとかしてたんで全部取って、ポイって道路に投げ捨てた。さて、どうしようって、私の手を強く握り締めてる弟の顔を見ると、けっこう泣けてきて、いとおしくて抱きしめた。そんで青い顔して汗だくで震えている弟の耳元で、そっと、でも物凄く力強い小さな声でささやいた。
「まっかせなさい!このお姉ちゃんにまっかせなさい!親戚縁者なんて最近は、お年玉もケチる嫌なやつばっかだ!引き取られるなんて、まっぴらよ!ねぇ!あんたも、そうでしょ!」
って弟は、こくんと、うなづいたよ。やっぱ感じてたんだな、親戚なんかに引き取られたら、それこそ、生命保険でもかけられて殺されるのがオチだ。私は死んでるから、えへへ、いいけどさ、何たって弟は本当にまだ生きてるわけだし、独りぼっちの天涯孤独だ。よしよし。まかせないさい!たとえ幽霊だろうが何だろうが、あんたを全力で守ってやるからさ、立派な男に育ててやるぞ!そして、さらに物凄く力強い小さな声で私は弟に囁いた。
「ど~んと、お姉ちゃんの豊満な小さな胸に飛び込んで、大船に乗った気持ちで、まーかせなさい!あったしはねー、幽霊になって旅に出て、スーパーウルトラ・ハイパー・ブースターを装着してきたのよ!見てよ、この私の身体を!うりうり!活力に満ち満ちてるんだからさ、一つ一つの細胞がチョー活性化して亀石の上で神のゴールデン・スーパーエナジーを受けて、死んでいようが幽霊だろうが、もう関係ないから!とにかく、ここに!あんたの目の前に私はちゃんといるよ!全身全霊でお肉の塊1つで、100万馬力で、チョッパーバイクで、あんたと一緒に荒野の人生ハイウェイ、大爆走だ!思いっきり充実して生き抜いてやろうよ!ケータイもパソコンもTVゲームも、そんなもんもう、いらなーーーい!生身で勝負だ!ドンとこいっ!何故、ベストを尽くさないのかぁ~!」
やっと弟が笑った。ふぅ~よしよし、良い子だ、うしっ!
ねぇキャプテン、あんたに影響受けたせいで、私は生きてる幽霊になっちゃったよ!本当なら焼け死んで昇天してたんだね。弟たった一人残してさ。よしっ!キャプテン!あんたに宣言してやるわ!
私は、キャプテンみたいにゴミ屑みたく殺されたりしませ―ん!
私は、死にましぇーん!
だってもう1度、死んでるし、しかも、このスーパーウルトラ・ハイパー・ブースターを装着した私は、今、限りないエナジーに満ち満ち、人生を!全身の細胞から湧き出す生命力!身体中に刻み込まれた、この黄金のド活力で全力を振り絞って乞食でもなんでもやって、このダイヤモンドの絶対に傷つかない図太い神経と無敵の内臓と!カツ丼と!不屈の精神で、人生を!人生を!絶対に生き抜いてみせる!何が何でも幸せになってやる!肉肉幽霊として幸福に生き切って見せる!気合ダッシュと根性ラッシュ!
私は炎天下の中、座り込んで弟を思いきり抱きしめると、タオル地のハンカチで汗を拭いてやって、それから、すっくと背筋を伸ばして立ちあがり、ピッカピッカに輝く大空に向けてバッと両腕を広げガニマタで地面にどっしり足をつけ、腰を落として、涙こらえて、ふんばってふんばって、拳を握り締め変身したてのハルクみたいに雄叫びを上げたよ。
「うがぁー!キャープテーン!あんたはゴミ屑みたく死んでったけどさー!あったしは死んでも死なない100万馬力のウルトラ少女だーい!キャプテーン!あんたの得た自由ってなんだったのさー!ホントは死にたがってたんじゃないのー!あったしは思いっきり、これから自由に生き抜いてみせるよー!キャプテーン!あんた、やっぱし、ダッセーよ!時計を捨てて手にしたのは自由じゃなくて、そりゃ死だよー!わかってたんでしょー!キャプテン!私はケータイや掲示板を捨てて本当の自由を手にしてムチムチの肉肉エナジー満載幽霊として爆裂ダッシュで生き抜いて見せるぞーーー!
それが私!それが私の幽霊道!」
さよなら、キャプテン・アメリカ!
そして、有難う、キャプテン・アメリカ!生身の幽霊はキャプテンさまさま!
いいかーキャプテン!私の名は!今から!
ゴースト・キャプテン・ジャパーーーン!略してG・C・J!
何が何でも生き抜いて、本物の自由の旅にでる幽霊なのだー!参ったかー!
これで、話は終わりにするね。何たって、これから私のケータイ・メール・掲示板、神経いらいら糞くらえ!の本物の人生がはじまるからだよ。でもさ、ちょい、気になるっていうか、う~ん、幽霊って本当に死ねないのかなぁ~?って!死んでたまるかぁ~♪成仏なんてヤナこった~♪
じゃね、ばいば~い!たぶん、もう会う事もないね!
今まで聞いてくれて有難うね!そっちは生きててね!
あーばよ!
ニカッ!
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