『音楽室5号』
第23章 (私は、あなたを綺麗にしたい)
という事で、旅人は市長さんとギャッヴィに処刑場へ引きずり出されて例のカミソリ式絞死刑台に押し込まれ、あっさりと血と肉片に変身してしまいました。
市長さんとギャッヴィは、ポンポンと両手をはらうと、ニッコリして、
「今日は、とても良い事をしたね。」
と、頷き合っていました。
その時、受け皿の上の旅人の生首から、しゅうしゅうと細かいクォーク(超素粒子)の様なものが立ちのぼり、次第に輪郭を整え、ついには例の淋しげな少女の絵になったのです。
絵の中の旅の少女は、薄暗い納屋の奥で見ているキーホーに優しく微笑みかけてきました。
キーホーは、すっくと立ち上がるとランプを倒して外の広場に飛び出して行きました。
「君は!君は透明な少女じゃないか!。」
納屋に火の手が上がり、市長さんとギャッヴィが擦れちがいに駆けてゆきました。
阿波踊りを踊りながら。
少女は絵の中でキーホーに「おいでおいで」をしましたので、キーホーは絵の中に飛び込んでゆきました。
すると、そこは出口だったのです。
くいっと体が引っぱられるような感じがして、気がつくとキーホーは音楽室三号の板戸の前に後ろ向きで突っ立っているではありませんか。
あたりには黄色い靄が立ち込めていました。
どうやらシルクロードの砂が舞い降りているようです。
廊下は、ふんわりとしてとても静かです。
キーホーは踵を返すと、三号室の板戸を思いきり両足でキックしてから四号室に向かいました。
今度こそはと思いをこめて、いささか疲れの出てきたキーホーは、そぉうっと四号室の板戸を開いたのでした。
KIPPLE
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