元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

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音楽室5号 第21章

2021-07-08 06:43:11 | 音楽室5号

 


第21章
(むく様は美男子)



 町の真ん中にぐるりを灌木で囲われた、いつも埃立っている処刑場がありました。

 今日も精神病患者が一人、ギャッヴィの発明したカミソリ式絞死刑台の餌食となり、両目に特大安全カミソリの刃を突き立てた生首が受け皿の上にキチンとキウィのデザートの様に置かれていました。

 執行人でもあるギャッヴィの仕事熱心のおかげです。生首


「おーい、ギャッヴィ。

 又、患者をめっけてきたでぇ~。

 こいつ、この寒いのに旅行中なんだとさ。

 それに、この年で。」


 その旅行者は、どう見ても初老のスナフキンみたいです。


「おお市長さん、そりゃ異常だわ。

 ちょうどいい。今、こいつ(カミソリ式絞死刑台)がワシに腹減ったと催促しておってなぁ。

 分身のワシ(ドッペルゲンシュタイナー)を喰わしてやろうかと思っていただよ。

 ハハ。」


 と言ってギャッヴィは横2メートル縦3メートル高さ4メートルの黒い立方体を、なめるように見上げました。

 最上部にキラキラ輝く黒塗りの安全カミソリが、その不気味な箱の内側に向かってたくさん並んでいました。


「まぁ市長さん。

 寒かろぅ、早くこっち来てあったまんしゃい、茶でも飲んだらよかぁ。」


 「すんまへんなぁ、ギャッヴィ。」


 市長さんは旅行者の首輪をしっかりと握ったまま、小さな死刑囚待ち合い室に入ってきました。

 もちろんギャッヴィも瞳をエメラルドの様に光らせて。


 室内には瞳を夜明けの金星の様に輝かして何かをじっと待ち続けているキーホーがいました。

 キーホーはギャッヴィと市長さんと旅人が、のっそりと湯気のように現れると、彼らに向かって尋ねてみました。


「あのぅ、出口は?。」


 すると三人は、まるで今そこで、目の前でビッグ・バン(宇宙の誕生)が起きたのを目撃したかのように、アゴをムンクの叫びの様に、ずり落として驚愕と病的なおびえの表情を作りました。


 そして、三人は揃ってまわれ右をしてキーホーを無視しました。

 キーホーが何を言って何をしても、三人は何も見えず何も聞こえない、という態度をとり始めたのです。


 もちろんキーホーは、あのカラス女の時のように心底“ほっと”しました。

 そして三人が直立不動のまま茶をすすり、話を始めるのを黙って聞いていました。


 市長さんが、ニコニコしながら首輪を嵌められた死刑囚の旅人に向かって言いました。


「君は死刑だ。」


 すると旅人は、


「はい。」


 と、にこにこして返事をしました。

 そこへ、うつろな目を光らせている死刑執行人のギャッヴィが話に加わりました。


「まぁまぁ。旅人さん。

 いくらあなたが気狂いだからといっても、こちらだって慈悲の用意ぐらいはあるんだよ。

 話によっちゃ情状酌量の余地もありうる。

 ま、死刑はまぬがれんがね。ふふ。

 死肉を赤犬に喰わしてやる事くらいは、してあげるよ。」


 旅人は直立不動のまま体を曲げて、深々とおじぎをすると煮えたぎったお茶を、ギャッヴィの顔面にぶっかけました。

 ギャッヴィは熱湯でジュージューと赤らんでいく顔を奇妙に歪ませ、フフフフフと笑って舌なめずりをしました。

 市長さんは自ら、チンチンいっているお茶を頭からぶっかけて、湯気を立ち上らせながら、アッカンベーをしました。


 驚いたキーホーは思わず、


「ハイヨー!シルバー!。」


 と叫んでしまいました。※。


 とたんに三人は険悪な表情になり、まるで吐瀉物でも見るようにキーホーを横目でグサリと睨みました。

 もちろんですよ、キーホーは、もう心底震えちゃっていましたね。


 しばらく沈黙の空気風船が続き、それを両手でパンッと市長さんが破きまして、


「さぁ、話してごらん。」


 と旅人をうながしたのです。


 旅人は星空の彼方から声を引っぱり出しました。


「はい。」




 ※注。
  何の意味も無い。又、意味の無い事を書いてしまった。
  「とっかーん、すすめ~」でも別によかった。

 



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