goo blog サービス終了のお知らせ 

元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

一夜

2021-03-13 07:48:00 | 夢洪水(散文・詩・等)
一夜


 
 “行き詰まった。夜だ。もう夜だ。”

 遠山清治は中央線に揺られながら窓外の濡れた様な青闇を見つめていた。四谷の手前で時計盤が7:00を指していた。

 遠山はサラリーマンであった。いくつか会社を変えたが、同じ様な仕事を同じ様な場所で同じ様な時間で、これというミスも無く長い間こなしていた。行き詰まった。

 彼は、窓ガラスに映る車内の人々を一人一人

「こいつは利口そうだ、死ね!次、何だこのガキは、何もわかりゃしねぇのに、したり顔して自分に陶酔してやがる。死ね!お前は・・・」

 と彼の死刑宣告は続いていた。

 “確かに俺は行き詰まった。”彼は何度もつぶやいた。

 これといって起伏のない彼の日常は突然、この帰宅途中の中央線の中で一つの破局を迎えた。

 電車は新宿駅のホームに滑り込んで行った。彼のアパートは中野で、同じ年の妻と5才の男の子が彼の帰宅を待っているのだ。

 彼は新宿駅に降りた。彼は、そのまま人ごみに混じって東口へ抜けた。



 階段を上る時、隅に横たわっているホームレスの人々が目に付いた。“とても、ああは、なれない。俺には責任ってヤツがあるしな・・・”そう思った。

 しかし彼の意識の奥から落伍願望が、ぐんぐん沸き上がって来た。

「皆、死刑だ。しかし俺こそ死刑だ。自分に宣告する。お前は死刑だ!」

 彼は夜の新宿繁華街に白い息を、吐きながら自分のぼんやりした罪の意識に苦しんだ。

「なんてことだ。俺こそ俗物だ。罪人だ。薄汚いブタ野郎だ。へらへら薄ら笑いを浮かべて、嘘で固めて、傷つけるのを楽しんで、自分を精一杯可愛がって・・・ああ、このままでは破滅する。この社会は根底が腐りきっていやがる。崩壊だ!ガラガラと崩れ落ちてコッパミジンに消しとんじまう!」

 派手な服装をし、人を見下しきった目をした若者が3人彼の行く手をさえぎった。

「ねぇ、おじさん、寄って行ってよ、3千円でいいからねぇ。可愛い娘が気持ちよぉ~く抜いてくれるよ~、3千円だけで、後は女の子と合意の上で何しようと自由だからさぁ~ねぇ」

 キャバクラか何かの呼び込みだった。遠山はその目つきを不快に思って無視して近くの喫茶店に入った。TVゲームの激しい音が彼の神経をいらだたせた。

「ああ、水戸黄門になりたい。・・・いやいや権力とは罪悪だ。暴力だ。ああ、じゃあ仮面ライダーで我慢するか・・・」

「いや、一文字隼人より、不動明の方、すなわちデビルマンの方が、ずっと良いかも知れない。俺には、そっちの方がふさわしい。」

 コーヒーを注文して彼はゲーム機の投入口に100円硬貨を入れた。まだ、こんな懐かしいゲーム機が、あったんだ。忘れていた・・・スペースインベーダー・・・

 何やら数十匹の怪物が、たった一つの砲台に向かって爆弾を投下してきた。彼は、すべての怪物たちのするがままに、させた。コントローラを放してボゥっと見つめていた。

 瞬く間に、彼の砲台は全滅してゲームは終わってしまった。砲台残数ゼロ。彼は心の中の細い竹の棒がポキンと折れたようで、泣きださんばかりであった。

「ああ、必死の攻撃を続けなければ、いつまでも続けねば。なんだ!なんだ!この砲台は俺自身じゃねぇか!もう抵抗はやめだ!俺は死ぬぞ!この砲台たちみたいに、一気にパッと消えちまうんだ。」

 コーヒーが来た。一滴も飲まず、彼は店を出た。酔いどれが通りにあふれていた。

 様々な音楽や声が混じり合って、そこは街にいるというより、新宿という巨大な店(ダンスホール)の中でバカ踊りしているようだった。



 日本人は何をしているのだ。オレは、どこへ向かっているのだ。

 彼は夜空を見上げた。星など一つも見えなかった。


 


kipple

否笑悲笑話(ひしょひしょばなし)

2021-03-12 08:54:35 | 夢洪水(散文・詩・等)
否笑悲笑話
(ひしょひしょばなし)



人間は、ちんけだぁーーーーー!

今日も彼らの顔は笑いに満ちていた。
彼らは何を笑うのだろう?

彼らの一人が言った。
“うははぁ、俺は正直者なんだぁ~”

他の人々。
“うわははははは、まったぁ~!”

彼らの一人が言う。
“あいつはアホ、アホだ、ぎゃはは~”

他の人々。
“わっはっはぁひゃひゃ、やっぱなぁ~”

俺も笑う。
“げへげへへ、うははははぶぶぶぅ~”

彼らの一人が俺に言う。
“お前は、いい奴だなぁ~あひゃひゃ!”

俺は言う。
“そぅかぁ?へへへ~あはあはあは”

彼らの一人が俺に気づかれない様に言う。
“アイツは嫌な奴だ、ぐへへ”

偶然、俺は聞いてしまう。
そして俺は彼にこう言われる。
“でへへひゃひゃ、冗談、冗談、あはあは”

俺は言う。
“そーかぁ、あはあはあははははぁっ!”

彼らの一人が俺に言う。
“俺、結婚するんだ!うひゃひゃひゃー!”

俺は言う。
“おめでとう!幸せになってぇ~♪あはあはは!”
俺は離婚したところだった。

彼らの一人が俺に言う。
“俺、自殺するよ!えへへへへぇ~!”

俺は笑いながら言う。
“ふぅ~ん。うひゃひゃひゃひゃー!”
結局、彼は自殺なんてしない。

彼らの一人が俺に言う。
“俺、昇格試験に合格したよ、うわははっはぁ~!”

俺は言う。
“うはぁ~あははは~、おめでとう!”
俺は、リストラされていた。

俺は彼らの一人に言う。
“俺、やっと再就職決まったよぁ~うわはははぁ!”

彼は言う。
“俺、自主退職させられたよ、うへへへひゃひゃ!”

俺は彼らの一人に言う。
“君は俺の心を本当に分かってくれる友人だよなぁ、あはは~”

彼は言う。
“そうさ!俺たちゃ親友さぁ、ぷっ!うはははははぁ~”

笑う。いつも笑う。

俺は親友に言う。
“俺、死ぬよ、あへへへへぷぷぷ!”

彼は言う。
“ぎゃはは、ばぁか、お前が死ぬかぁなんでだぁ、ぷっ!”

結局、俺は自殺なんてしない。


今日も彼らの心は悲しみに満ちていた。
彼らは何を悲しむのだろう?



 


kipple

ガチャ目の猫

2021-03-11 07:48:12 | 夢洪水(散文・詩・等)
ガチャ目の猫


つい、この間のように思えるのだが、あれは私が大学に入って最初の夏休みの事だったから、もう10年になる。今の私は、あの頃の私の10年後としては信じがたい退屈な日々を送っている。あの頃の私は現在の私の、この気の狂いそうな程、無為な日々を全く予想できなかった。世界の輝きは死ぬまで失せる事など無いと、おそらく、思っていた。しかし、輝きは、すぐに失せ、沼でもがくような重い沈黙が生活を覆い尽くし、設計された都市空間から逃れられなくなった。思うに、この沈滞は、あの頃にも、すでに輝きの沃野の底を、そろそろと下水のように流れ続けていたに違いない。私は、それから目を、そらしていたのだ。目をそらしていられるだけの期待感と若い生命力があったのだ。


私は、この10年前の夏の事を一度も思い出さなかった。チラチラと幾度かは私の心のどこかで顔を見せていたのかもしれないが、あらためて思い起こすという事はなかった。それ突然、10年後の夏になって私を揺さぶり始めた。二度と訪れることの無い幸福の瞬間として。

今の私にとっては、この記憶はこの上も無い苦痛である。これからの私は磨り減るだけなのだ。完全な無に向かって、ゆっくりと消滅していく。私は10年前の夏に出会った人々に一人も会いたくない。何故って皆、私と同じように10年老いてしまったのだから。願わくば全員、10年前の夏の終わりと供に死んでくれ。彼らは永遠にあの夏にこびりついているべきだ。しかし彼らのうちの少なくとも一人はまだ生きている。

彼女は、まだ生きていた。私が思い出に苦しめられるようになったのはNHKの「心の病気」という番組で偶然に彼女の姿を発見してしまったからなのだ。「スパイダー」という映画を録画しようとしてタイマーのGコードの入力を間違えたらしい。会社から帰ってビデオテープを巻き戻して再生すると、いきなり彼女に対面してしまった。彼女はそれによると現在、重度の精神病患者として、どこか人里離れた隔離病棟で生きている。画面は一瞬、白い個室から看護人に付き添われて頭を上下左右に震わせながら連れ出される彼女を映しだし、院長が現在の精神病院の運営方針について語る場面に変わった。

私はテープを巻き戻して何度も何度も繰り返して、その一瞬の場面を見た。間違いないと思う。その裏づけもある。彼女は、あの夏、私の前で何回かパルビツール系の睡眠薬を飲んでいた事があった。彼女は緑色のナップザックに大量の、それを入れていた。彼女はそれを幸福の源と呼んでいた。私はパルビツールが精神を破壊するなんて当時は知らなかったし、彼女の神様を冒涜するような事を言って止めさせようなんて気も無かった。

さて、私は彼女がどこかの山裾の精神病院で隔離されて薬漬けにされ、それをNHKの取材班が批判的にとらえていても何もしない。私は会社に通い続ける。しかし彼女を見たことが私に何もしなかったかというと、とんでもない。彼女は0.何秒かの映像の中から私に小さな地獄を植え付けた。私は、あの記憶に追撃された。ありありと風の匂いや夜の海の細やかな月明かりや肩に止まった虫の羽音まで、手に取るように鮮やかに、あの夏は私の頭の中で、あふれんばかりに実体化した。人々の言葉のひとつひとつが完璧に繰り返される。彼らは過去から私に語りかける。

(全てはとっくに終わっているんだ、早く死ね。早く死ね。)

私は平日は定時まで仕事をし、郊外の閑静なマンションに帰りビールを飲み、野球中継を見て眠り、休日は女の子と映画を見にいき、帰りに何となく高層ビルの最上階に行ったりして生きている。それ以上の事は何もない。私は、あの思い出に追撃されて以来、同じ悪夢を繰り返して見る。その内容は聞いた者を笑いに誘う。

それはガチャ目の猫の夢なのだ。夢の中で私はスクランブル交差点の向こうに歌舞伎町の入り口が見える国鉄新宿駅東口の出口の近くで待ち合わせをしている。人々がひっきりなしに行き交う。平凡な光景。おそらく午後4時頃だと思う。黄色い陽が人々の影をのばしている。切符販売機の近くにある大きなアイボリーの柱に僕は寄りかかって待っている。今、勤めている会社の連中がちらほらとやってきて私に挨拶をする。10人くらいが集まり、私を取り囲んでザワザワと何かを話している。私も最初は皆と普通に談笑しているのだが、彼らの背後にある青ペンキで塗られた鉄のゴミ箱の中で何かが蠢いているのが気になってくる。談笑している仲間の影でよく見えないが確かに何かがゴミ箱の紙屑の中で動いているのだ。私は嫌な予感がして見ないように目をそらしているのだが、ついに、はっきりと、その何かを見てしまう。ゴミ箱のへりから顔を覗かせているのは目の焦点の合わない猫だった。猫の両目は上下左右にバラバラに揺れ動き、いっこうに調子を合わせない。体はあちこち毛が抜け落ちて皮膚病にただれている。そして汚らしく黒ずんで見える。私が慌てて目をそらすと、ガチャ目の猫はカサコソカサコソとゴミの中を音をたてて動き、私の視界の隅に飛び降りてくる。とたんに会社の連中は私の存在に気づかなくなり、私と猫だけが人々の知覚からポッカリと放逐されてしまっている。そして、誰もが談笑している中で私はガチャ目の猫に襲われるのだ。私は人々の間をぬって逃げ続ける。ガチャ目の猫は凄まじい薄気味悪さとスピードで私を追い回す。

それが目覚めるまで続き、その夕暮れの空間からは一歩も抜け出ることは無い。誰も助けてくれないし、ガチャ目の猫の追跡は決して容赦してくれない。


私は目覚めると何事も無かったような顔で身支度をして会社へ向かう満員電車に飛び込む。あくびをして眠そうに平凡な群集の一片に同化する。いつか、あの夏の光景が私の平凡への化身を凌駕してしまうまで・・・・・・・・



私は会社では評判がいい。誰にもにこやかに応対する。誰とも楽しく話す。

仕事も良くできるし、陽気で明るい感じのいい人だと思われてる事を知っている。

でも、

私が、こんな想いを抱いて生きている事なんか、誰も知らない。誰も。

私は、こんな想いを抱いて生きている事なんか、誰にも言わない。

誰にも。




 


kipple

ネジまわし

2021-03-10 08:12:44 | 夢洪水(散文・詩・等)
     ネジまわし     




社会は機能し続けている。

殆どの人々は、それぞれの生活のために、

同じような日々の中に埋没して静かに人生を営んでいる。

しかし、全てが一様では無い。

それぞれの苦しみが、ある。

それには質と量との差があり、

それは完全に!絶対的に!

その中に死というものを内包し前提として存在する。

それは不安や恐怖を招く。

人々は生きていく限り、

それらから逃れる事はできず、

死から逃れようとする限り、

凡庸な日々に埋没する事を止むを得ずとしている。

殆どの人々がだ。

殆どの人々は生きることに懸命なのだ。

そのエネルギーは、どこから発されてるのか?

果たして、

そのエネルギーを失った人々は、どうなってしまうのか?



私は最近同じ夢をよく見る。


それは深海の夢だ。

途方も無く深く、途方も無く暗い、深海。

そこに途方も無く巨大なネジがある。

大きさを比較できるものは無いが、夢の中で、

ネジは圧倒的な巨大さで私に迫って来る。

地球と同じくらいの大きさに思える。

いっさい光の無い暗黒の中でネジが見える。

ネジの頭部が私の目前に、どんどん迫って来る。

巨大な円形で、周囲に微妙なギザギザが付いてる。

ネジは途方も無い暗黒よりさらに深い暗黒だ。

だから私にはネジが見える。

私は暗黒の深海の中、どんどん近づいてゆく。

どんどんどんどん、暗黒の、さらに暗黒へ。

私が近づいているのかネジが近づいてくるのか?

わからなくなってくる。

やがて、私の視界、いっぱいにネジが広がる。

そして私の視界はピッタリとネジの頭部に嵌る。

そこで、初めて、ジッという音がする。



ガッガッガッガッガッガッガッガ・・・・・



私の視界はネジと一緒に回り始める。

ネジは私の視界と一緒に回り始める。



ガッガッガッガッガッガッガッガ・・・・・


私とネジは一体化し、ああ、そうだったのか。


私は、ネジまわし、なんだ。

私はネジまわし。

私はネジまわし。

いつの頃からか、真っ暗な中で、より真っ暗なネジを巻く。



ガッガッガッガッガッガッガッガ・・・・・


私はネジまわし。


回れ、回れ、世界よ回れ。

回れ、回れ、人間たちよ。



私は最近同じ夢をよく見る。

それは人間社会の夢だ。

殆どの人々は、それぞれの生活のために、

同じような日々の中に埋没して静かに人生を営んでいる。

しかし、全てが一様では無い。

それぞれの苦しみが、ある。

それには質と量との差があり、

それは完全に!絶対的に!

その中に死というものを内包し前提として存在する。

それは不安や恐怖を招く。

人々は生きていく限り、

それらから逃れる事はできず、

死から逃れようとする限り、

凡庸な日々に埋没する事を止むを得ずとしている。

殆どの人々がだ。

殆どの人々は生きることに懸命なのだ。

そのエネルギーは、どこから発されてるのか?

果たして、

そのエネルギーを失った人々は、どうなってしまうのか?



ガッガッガッガッガガッガガガ・・・・・



ガタッ・・ガガガガガギギギガゴゲゴゲゲゲッゲッゲギュイーンギュィーンズガッズガッギュルルゥゥゥギギギガガガガガガッズゴゴゴーーーーーーーーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブチッ・・・



 


                 kipple


アデニンシトシングアニンチミンてろりずむ

2021-03-09 08:10:59 | 夢洪水(散文・詩・等)
  アデニンシトシングアニンチミンてろりずむ  

激しい頭痛に襲われはじめて三日目。俺は会社を休んで近所の脳神経科に行った。熱も無い。吐き気も怠さも無い。ただ、ハンマーで脳を内側から絶え間無く打ち続けられるように耐えがたく痛むのだ。左側だ。


医者はレントゲンを撮った後、俺に脳の写真を見せながら言った。

「特に異常は、ありませんね。原因は何か精神的なものじゃないんですか?最近、特に強いショッキングな出来事にあったとか。仕事で過度のストレスを気付かぬうちにため込んでいるとか。何か思い当たるような事はないですか?」

俺は「まったく無い」と答えた。俺は映画の配給会社に勤めている。そこで俺は宣伝企画を担当している。試写会にやってくる客の反応を見たりして宣伝に、どのくらいの予算をたてるかを検討したり、ライターに依頼したコピーをどう使うかを考えたりする。時間は結構自由だし、元来映画が好きなのでストレスを感じることなど滅多に無い。人間関係も、とても好い。俺は遊んでいるような気分で働いている。

まあ、自分の気に入った映画が試写会で無反応だったり、評論家に酷評されたりすると少しは腹が立つときがある。でも、俺は映画というものは、特に優れたものは、ごく個人的な次元で見る人間の心をヒットすると思っているから、さほど気にならない。万人の心を打つ映画が優れた映画だとは決して思わない。

俺は気楽に働いている。ショックやストレスの気配は無い。今年、三十五才になり、子供はいないが結婚していて、妻とも順調にやっている。妻は福祉関係の経理をやっている。俺も妻も安定した収入を得て、安定した日々を送っている。ローンも無いし特に不満も無い。医者の指摘は外れている。

診察は、それで終わった。医者はしばらく様子を見て治らなかったら、また来なさいと言った。俺は一応、「はい」と答えたが、もう一度行く気はなかった。この医者じゃ何度来ても無駄だろうと思った。精神のせいにされちまう。心の病気にされちまう。そうじゃないんだ。頭痛が止まらない原因は他にある。

遺伝子だ。俺の遺伝子のせいなんだ。俺の遺伝子を使って誰かが何かを語りかけているんだ。頭痛というかたちをとって。過去からか、あるいは未来か?

脳神経科を出ると、目の前の高層ビルに貼り付いた巨大なスクリーンでイラクのテロのニュースをやっていた。俺の目の前を群集がゴチャゴチャと原生生物のような感じで動き回っているが、気にせずに俺はスクリーンを注視した。スクリーンにビン・ラディンが登場した。彼は俺に語りかけるように何かを口篭もるように話していた。俺は、そうしてしばらくビン・ラディンやイラクで殺された米兵のニュースなどを見ていた。そして、気付くと、頭痛が少し軽くなったようだった。

遺伝子。過去にしろ未来にしろ、人間にとって最も普遍的な欲望とはなんだろう。性欲か。食欲か。違う。俺は、それらには満たされている。人間にとって最も普遍的で、俺が満たされていない欲望、それは何だ。スクリーンでは各国の外交官や技師がテロにより殺されたニュースを何度も何度も流していた。俺は、「テロ」という言葉にひっかかった。「テロ」「テロル」・恐怖。頭の中で、そう呟いてみると、不思議な事に、ますます、俺の頭痛は軽くなっていった。

俺は恐怖に満たされていないのではないか。恐怖を与える事と、恐怖を与えられる事、両方ともだ。恐怖とは実は人間の太古からの普遍的な欲望で、それは人間が人間である限り、未来へも限り無く、続いて行くのではないだろうか?俺は再び、スクリーンに映し出されたビン・ラディンを注視した。解ってきた。俺の遺伝子に語りかけてくるのは、この男だ。この男は恐怖の媒介者なのだ。人類が太古から、そして未来永劫に、その遺伝子の中に刻み付けられた恐怖という欲望のメッセンジャーだ。この男は記号に過ぎない。ただ現代において忘れ去られた人間の根本的な欲望が、きっちりと遺伝子に刻み付けられているということを伝えているのだ。

それは恐怖だ。

俺は、スクリーンの中のビン・ラディンにうなずくと、今からテロリストになる事を固く固く心の奥底で決意した。だが、どうしたらテロリストになれる?いや簡単だ。勝手になればよいのだ。俺は自宅に帰って、妻を殺害し風呂場でバラバラに解体して喰い、インターネットで時限爆弾の製造方法を調べた。材料は量販店で簡単に入手できた。火薬はインターネットで取り寄せた。そして、かなり本格的な時限爆弾が完成した時、俺の頭痛は嘘のように小さくなっていた。間違いない!俺はほとんど治った!あと少しだ。原因は恐怖の枯渇だったのだ!

これで、あとはこの時限爆弾を適当な時刻にセットして霞ヶ関界隈でもブラブラし続ければ良い。俺は、いつ爆発し自分が吹っ飛ぶかという恐怖に満たされ、爆発すれば、うじゃうじゃと腑抜けのように蠢いている群衆どもを大量に殺せたという与える恐怖に満足するだろう。

俺は紙袋に無造作に時限爆弾を突っ込んで、家を出た。そして、霞ヶ関で降り、六本木方面に向かって六本木ヒルズを目安にブラブラと歩き始めた。俺は、大声で犯行声明を怒鳴り散らして歩いていったが、誰も俺のことを気にしなかった。なるべく関わりたくないのだ、こいつらは。

「俺は覚醒した!俺は長い間、遺伝子に刻み込まれた最も人間にとって重要な欲望を抑制してきたのだ!人間は高度な社会や技術に溺れて重要な事を隠してしまったのだ!本物の人間の充足を否定してしまったのだ!嘘を信じて生きているのだ!ビン・ラディンは俺に語りかけ、俺の頭痛は殆ど消え去った!俺はアルカイダだ!テロリストになれば、お前たちも閉塞感や不安が吹き飛び、生きている実感が必ず湧いてくるのだ!身体中が打ち震える程の充実感を覚えるのだ!ビン・ラディンは俺に言った!ひらけごま・・・」

そこで俺は爆発し粉々になって吹っ飛んだ。回りの高層ビルにも衝撃が伝わるのを見た。周りの人々も俺と一緒に爆風に巻き込まれて吹き飛んで行くのが解った。俺は、遺伝子が悲鳴を上げた恐怖の欠如を完全に克服した。死ぬ間際に、頭痛は完全に消え去り、これ以上の快感は絶対にないだろうと思える充足感に満たされ、究極のスッキリ感を味わった。俺は、幸せものだ。



ひらけ、ごま!
ひらけ!遺伝子!




                   kipple


月のかけら探し

2021-03-08 07:58:52 | 夢洪水(散文・詩・等)
   月のかけら探し   



隣人を愛するな。

己れの罪を悔い改めるな。

自ら命を断て。

(バラ十字団の三つの忠告)


人生は全て言い訳によって語り尽くされている。神様からの夢の伝達によると、僕は1981年に生まれ、2021年に死ぬことになっている。それだからといって特にどうという事はない。果てしないように思える時の流れの中で、ほんの40年間、僕がこの世に現れただけの事だ。僕は特にたいした奴ではない。言ってみれば、ゴミかクズだ。とにかく生きて死ぬ。40年間のカレイドスコープは泡だ。それに関しては何の意味もない。意味があるのは、今、今、だけだ。この一瞬だけだ。僕は二十歳の頃、そう考えた。

僕は、ごく平凡に育ち、ごく異常な精神状態と肺結核によって、僕は、僕は、僕は、二十二才になった。今、思うのは総括的な人生には何の意味をも見出せないだろうという事だ。大学生活も終わりを迎えていた。同時にデカルトやマックスウェバーやルソーやフーコーやドストエフスキーやバタイユやフロイトやD.J.サリンジャーや太宰治やリカードやティモシーリアリーやタルコフスキーやピーターグリーナウェイやグノーシス思想やポランニーやカフカやフェリーニやマーラーやビートルズや宮沢賢治や寺山修司や宮台真司や村上龍や香山リカや金子一馬やセックスピストルズやマリリンマンソンや大槻ケンヂにも無感動になってしまった。全ての情熱が切れ切れのスコールのようにやってきて過ぎ去ってしまった。あとにはガラクタしかなくなった。飽き飽きした。友情や女の愛情もレーゾン・デーテルも全て、すっとんだ。エラン・ヴィタールがザッパリと切断された。恋人どもは次々と離れて消えてゆき、友人達は就職活動に熱中し、今まで僕と語り合ってきた人生やら哲学・思想の大問題なんか現実を前にして、あっさりと全て、おっぽりだして社会にへりくだるザマだ。僕らが熱中してきた理想とは、いったい何だったのだろう。条件の良い企業に就職して、朝から晩まで実体の無い資本主義体制に飲み込まれ、こき使われ、マイホームを築いて老化していくことが最初から彼らの本心だったのだろうか。改革思想や精神革命なんて、言葉の遊びで、女の子をくどく、かっこつけの意味しかなかったに違いない。ようするに何となく一般に俗されて若さだけの勢いで不安と無軌道と自己保身の本能に汚染され続けていただけだ。

そのように考える僕は激しい絶望と無力感と情熱喪失で動けなくなった。まだ少しは若いという事だけが救いだった。22才は、まだ若い。三ヶ月間、ねっ転がって、パンクロックを聴き、ビールを飲んで煙草を吹かしていた。そして僕は大学を卒業してしまった。友人たちは就職しガールフレンドは結婚した。人類崩壊の日々だった。ケイタイを捨て、パソコンを金属バットで叩き壊した。頭が、どんどん、おかしくなっていくようだった。アルバイトをしながら日本中をズタ袋を下げて、ぶらついているうちに、僕は南に行きたくなった。南。工場の仕事が終わって同じアルバイト仲間のカポーティの「冷血」を読んでいるギタリストの青年に、デモ・テープの制作作業を手伝ってくれるんなら金をやると言われ、僕は決意した。涼しい風の吹く夏の夕暮れだった。僕はシンセサイザーとコンピュータのプログラミングとサウンドエフェクトとアレンジ作業に関わるいろいろを一週間手伝って十万円ほど貰った。墓場から死者が起き上がって来るような音楽が誕生した。彼は、それをどうしたのかは、知らない。おそらく他の誰かに売ったんじゃないかと思う。そして、おそらく誰の役にも立たない音楽。

とにかく僕は工場を止めて給料を清算してもらい45万円の資金を元に旅行代理店をまわった。南。おだやかな島。住人なし。三週間。それが僕の希望だった。結局、一番貧相な旅行代理店の一番貧相な男に勧められたフィリッピンのサン・タ・ロサという島に決めた。その旅行代理店の男は“芸能人がよく行くところなんですよ、浜崎あゆみも行ったんですよ、スマップも・・・”と、そればかり強調していた。僕は、その島の風景と平屋で崩れそうな木造のホテルの写真が、やけに気に入り、即決した。楽園。パラダイス。海と太陽と輝く空。誰もが幸福になれる。心配だの不安だの苦しいだの、そうした負の概念を許さない。考える事も思うこともない。ゆったりと癒されあらゆる苦悩が穏かに溶解してしまう。金銭的にも体力的にも、何も問題はなかった。

そしてパスポートを取り、十日後に僕は日本を出た。MDウォークマンで「ビョーク」を聴きながら雲を見ているうちに寝てしまい、起きたらボーイング707はマニラ空港に向かって降下するところだった。マニラは夕暮れだった。マニラはフェデリコ・フェリーニの「世にも怪奇な物語」の“悪魔の首飾り”の冒頭シーンのように美しかった。僕は何だか二度と生きて日本の土を踏むことがないような気がした。誰かに手相を見てほしくなった。いや、見て欲しくなかった。とにかく、707は無事に空港に着陸し、僕はタラップを降り、機関銃で武装したフィリッピン人の間をくぐりぬけ税関を通過し、インフォメーション・センターでホテルの予約をした。ホテルは世界中のどこにでもあるホリディ・インにした。面倒臭かったのだ。金が制約されているにもかかわらず、僕は一日目で贅沢してしまった。ホテルに入ってから、サン・タ・ロサの宿泊代の計算をしてみた。三週間がギリギリの線だった。まあ、いいや、と思った。何とかなるに違いない。何に対しても、そう考える時期なのだ。あまり変わらないかもしれないが。まあ、いいや。

次の日、マニラから地元の航空会社のセスナみたいな飛行機でセブ島に向かった。暖かかった。とても暖かかった。身体が緩やかにほどけて行くようだった。回りじゅうが暖かく柔らかい光に満ちていた。飛行機はゴトゴト揺れた。気持ちが悪くなってくると同時に、何だか無性に笑いが込み上げて来た。上下左右に乗客が皆、体を揺らし続けている。僕は、クスクス、ゲロゲロ、笑っていた。人間とは余りにも大雑把に揺れる乗り物に対して笑いで反応するようだ。何故か愉快で愉快で仕方がなかった。入れ歯の缶詰を揺さ振るように飛行機はセブ島に着陸した。このちっぽけな空港にも、やはり機関銃を持った兵士が大勢、警備していた。その事は考えないようにして、僕は空港を出てバスに乗った。このバスもまた、ガタゴト揺れる。皆、上下左右に揺れている。ああ、何だか気持ち良い、愉快だ。僕は再び笑った。余りにも可笑しいので、そのうち気持ちが悪くなった。バスは熱帯樹の執拗なからみを、無造作にやり過ごして、小さな船着き場に到着した。バスは土埃と僕だけを残してジャングルに開いた小さな道を、今にも壊れそうにしてガタガタと去っていった。辺りは、しんとなった。

海に続く小道を行くと、傾いた小屋があり、その中に背が高く痩せた男がいた。色の黒いノスフェラトウ。僕はそう思った。窪んだ巨大な目、薄笑いを浮かべた口と白く突き出した八重歯。船頭。この男が船頭だ。彼は僕の顔を見ながらニヤニヤと現地語で話しかけてきた。僕はサン・タ・ロサ島まで行ってほしいと英語で言った。すると彼はOKOKと言いながら埃だらけの服をパンパン叩いて小屋の外に出てきた。僕は彼に導かれるまま小道を進んでいき、カヌーの止めてある場所で止まった。乾いた砂のような浜に無造作に木の杭が打ち込んであり、それにカヌーがロープで引っ掛けられていた。彼が、ニヤニヤ笑いながら、乗れ乗れというような合図を送り、何やら現地語と英語の入り混じった言葉で指を一本立てて何かを要求していた。僕は1ドル渡した。ドル、OK、ドル、OKと彼はニヤニヤしながら、僕がカヌーに乗ると彼も乗り込んで、青いっぱいの透き通った海に出発した。

しばらく彼はカヌーをニヤニヤしながら、ゆっくりと淡々と漕いでいた。しだいに岸が遠くなって見えなくなり、おそらくサン・タ・ロサだろうと思われる島影が見えてきた頃、いきなり、カヌーは動きを停止した。僕は何故、カヌーが停止したのか分からなかった。一瞬、頭の中が空白になった。太陽は相変らず、優しく、暖かい光を誰も彼もが幸福感を抱かせるように浴びせていた。僕は、どうして止まったのか?と英語で彼に何度も聞いてみたが、彼はニヤニヤ笑うばかりで、ちっとも要領を得なかった。静かに時間が流れた。僕が何だか変だと思った時、彼はニヤニヤしながら片言の日本語を交えて、言った。

「アイウォナビィ、アイ、アイ、アイ、ナウ!なった。なった。今、ナッタ。ワタシは、ナウ、ナウ、今、今からイスラム国。イスラム国、解る?アンダースタンド?」

僕は唖然とした。そして彼はニヤニヤしながら後ろに置いてあったボロボロの袋からダイナマイトを出して僕の目の前でマッチで点火した。

「アイアム、テロリスト、なった。ワタシ、今、テロリストなった。ワタシ、今からイスラム国。」

と言うと彼はニヤニヤ笑いながら爆発した。輝く優しい太陽の下、透き通った海の真ん中で、大きな水柱が上がった。水上の間欠泉だ。



ドッカ~ン!



南の島。パラダイス。僕は月のかけら探しをしにきたのに、即席イスラム国に吹っ飛ばされてしまった。22才で死んでしまった。なんだい!神様の夢の伝達は嘘っぱちだった!神様なんか嘘っぱちだったんだぁ!手相を見てもらえば、どうかなったのか?いや見てもらわなくて良かった。

この世は不条理だ!不条理だ!僕が月のかけらになってしまったのか?

月のかけらは僕だった。なぁんだ、そういう事か。もう生きなくてすんだ。探し物は見つかりましたか?はい。何の悩みも無くなりました。



おめでとうございます!



 


                  kipple


空間占有等曲率

2021-03-07 09:06:46 | 夢洪水(散文・詩・等)
   空間占有等曲率   


南アフリカのドゴン族は、遥か以前、シリウス星系の運行位置を知っていた。

彼らの聖典は、“”に強く基づき、キリストの顛末にそっくりのものだ。


本質とは非本質の侵入によって、エントロピーの増減を計らずも左右されてきた。

宇宙は、本質では無い。その上なるものも本質とは異なる。

おそらく、その上なるものが創ったものがレプリカとして擬態した本質であり、

それは我々、人間において幻覚と悟ることは不可能。

しかし、このレプリカとして擬態した本質,宇宙は実に不本意なる幻覚である。

ホログラムとも言える。

宇宙は複製であり、その背後に、大きな非本質がある。

そこから来たるもの,それはデータであり、言葉の投影容物上の概念ゲームから、

ロゴスと名づけられたもの。

WISE。徳。陽。光。は、そこからやってきたデータロゴス。

非本質には、ゾロアスター教的2元論構造が想像される。

上。下。

では本質とは何か?

それは、こうだ。





では世界とは何か?

世界とは、個人のコントロールされた主観的幻影でしか有り得ず、

又、非個人にとっても同様。

唯、その背後に統合的意識、集合的無意識が横たわり、

ラテン語を全く知らない人間が、突然、ラテン語を話し始めたり、

サンスクリット語を書いたりするのは、そのせいだ!



世界は全て妄想であり、本質は無であり、

人間は、存在していない!



そして現実とは?

主観的世界である事をやめる(死ぬ)ことによっても、

永久に続く円盤メディア的螺旋状永久循環の囚われ地獄(煉獄)であり、

又、それは恐ろしい程、精密でリアルな幻覚であり、

これは、誰かの夢である。

これは、「空間占有等曲率」という。

この占有者は多くない。

彼らは擬態して、次々と表れる。

釈迦、キリスト、ムハンマド

かくして、全ては永久であり、

である。



21世紀は、そのような認識を、

空の脳味噌に白痴的に抱く事が最重要だ!



この世は散文的に創出された妄想によって成り立つ空劇。

意味は無い。

得も損も有り得ない。

空間占有者」が重なり合う時、それは起こる。

それは、起こる。

起こる。



第三次世界大戦。

又は、新世界受胎。


意味は無い

無い

実存に意味は無い。

 


                kipple


ガタガタ青年、放火を趣味にする

2021-03-06 08:29:00 | 夢洪水(散文・詩・等)
  ガタガタ青年、放火を趣味にする  



光の中白い服の少女がいたんだ!僕の方を見たんだ!

通り過ぎて、もう二度と来る事のなかろう、トキメキの瞬間なんだ!

夕暮れの街の騒音が止まったんだ!

僕は、よくないんだ!

目も、よくないんだ!耳も、よくないし、心も傾いたんだ!


体も低く重く、苦しそうに唸ってるんだ!

耳は絶えずゴウゴウ鳴ってるし、

口は人と話す事を欲しているくせに、すぐに話に絶望し黙りたくなるんだ!

しかし、僕の方は、ずるずると話を続けてしまい、

きっぱり止める事が出来ずに気分を外面の軽薄さと反対に、

とことん、沈ませ、暗くする事になるんだ!

悪いのは何だ?

いったい悪いって何の事だ!


最低とか、屑とか恥かしさとかとは別の事か!

僕が一瞬、見た美しい少女に心を染められるのは、いったい、

よくない僕の、何なのだろうか!

何か、よい事か?

9の悪の中の一つのは、9の悪によって大きく歪められ、9の悪を超えた、

強力な邪悪!陰湿さ!となって後にあらわれるのだ!

しかーし!僕はというよりは最低なんだ!

身体の、どこをどうとっても、ガタガタなんだ!


僕は昔、水の中にいたんだ!誰も、そうらしいんだ!

でも、もう誰も水の中へは帰らないんだ!

空気の中へ、地の中へ、海の中へと散っていくんだ!

誰も、あのには戻れないんだ!

僕は、どこに散るか!地上かだ!

にされるか、に溶けるかだ!

よく回りを見るんだ!何がいる?

男だ!女だ!鳥に犬だ!

全て、消え、又、全て違う形の同じものが、やってくるんだ!

川の流れの如くだ!音があるんだ!

やけに騒々しかったり急に消えたり、一つだけになったり、繰り返すんだ!

聞く者が、いなくなったって、同じ事なんだ!

誰も、いない場所、そこにが、あるのか?

世界に、最後のたった一人の男、そいつが小説を書いたんだ!

それは意味を持つのか?

果たして、そいつは一人ぼっちで、どんな小説を書いていたんだ!?

そいつに今の僕の体験している、どんな小さな行為でも想像できるのか!


太陽に欠ける顔だ!想像するには余りにも眩しいんだ!

まっ白の、だだっ広い風景の中の一つの小さな黒点!

想像するには、余りあるんだ!

やわらかな黒髪の中に見つけた小さなツムジだ!

太陽のようにだ!・・・天与の才だ!

才は、拡散し、ぼやけて白くなり、ぷつりと断えるんだ!

精神的オナニーだ!文化はオナニーによって育つんだ!


ああああ木々が青く燃えるぅぅぅぅ!

人の魂も!目の中の青!青い夢だ!かわいい女の子!

スリップ・ノットの曲を聴いてたら久し振りに恋がしたくなったんだ!

一ヶ月前の明日、ママンが死んだんだ!

もう見栄や、かっこつけは、うんざりなんだ!

存在からの逃避だ!

薄闇の街に、ぽぅっと灯りがともり、何かが帰ってくるんだ!

逃避からの逃避は半妥協だ!ぶらさがりだ!

そして安定が望まれるんだ!お前の夢は何だ!


生活の秩序か!安定なのか!

道端での、野垂れ死にじゃないのか!


夏なんだ!

右耳では、いつもジェット機が唸るんだ!

意識はとっても白く、無意識は分からぬ願望を押すんだ!

ので、次第に行為も思考も異常なものへ走っちゃうんだ!

ただ死んだように布団に横たわり汗をかくんだ!かくんだ!

何もないんだ!気力も!生きるためのエゴも!

静かに時と風が通りすぎるんだ!

葬式の旅から戻って、もう10日たとうとしてるんだ!

僕は絶対に欠如だ!穴ぼこらけだ!どーしょーもないんだ!

煙草吸って酒飲んでゲロ吐いて眠ってブルブル震えて頭を熱くして、

悲しくて悲しくて、何も起こらないのにが流れるんだ!

世の流れに平然と従ってる奴らに会うとブルブルふるえちゃうんだ!

身体が、なんだ!

頭に来るんだぁぁああああぁあけど、

奴ら僕と異体質のように思えて何やら薄気味悪く、ただ恐ろしいんだ!

一人で、ふるえちゃうんだ!

何故、ああやって、何も退廃しないんだ!

身体、ぶっ壊したくなんないのか!

田舎の山や海、土の道で野垂れたくなんないのか!


なんにもなーいんだ!

なんにもなーいんだ!


眠りと夢とネジレたリビドーと煙草以外は!

僕の生活、何も、なーーーいんだ!

たんれんすんのイヤだぁ!

真剣に取り組むと、続かないんだぁあああ!

真剣に取り組まないと、何も、なーーいんだ!


放火を趣味にするんだ!

いつも火を持って、くだらん火の組み合わせして遊ぶんだ!



炎炎
炎炎炎
炎炎炎炎
炎炎炎炎炎
炎炎炎炎炎炎
炎炎炎炎炎炎炎
炎炎炎炎炎炎炎炎
炎炎炎炎炎炎炎炎炎


 


               kipple


アンモナイトと衆団リビドー

2021-03-05 07:48:02 | 夢洪水(散文・詩・等)
     アンモナイトと衆団リビドー     



おーさかの、こーさかくんも、

とうきょうの、すっとんきょうな君も、みんなバブブブブル?


ハーイ!

バビビブルー!

ダーメ!

バブブブルー!

ハーイ!

ブブ・・・バブブブブブルー!


アンタモニカアンモニアの中に、アンモナイトが、保存されていた。

イトシゲ君が、した、おしっこだった。

アンモナイトは、ぼうふらが、いっぱい占領して、ゲンゴローも困っていた。

ユダヤ人が来て、昔のナチからうけたジェノサイドのはらいせを、

パレスチナ人に向けて持つように、パレスチナ人を追い出し憎悪した。



民族の中にも、ひとつの衆団リビドーってなのがあってね、 それをユダヤ人ってのは昔から、他の色んな民族によって外傷を受けてきた。

だから、個人も、ほとんど好色な人が多いんだけど、それと関係なく、 ユダヤ民族的な全性欲は、いつも重い制圧下の中にあるんだ。

心の片隅に全ての人が民族的な反故感を持っていて、 性欲動も、とても強く、反故感ゆえに性への一般的価値観に不安感を持ち、 多勢と交わらずには、いられない。それが、ますます悪い方向へ進む。

経済的には、性の活力は、権利欲を呼び、なんとか劣等感を克服しようとするので、 民衆は、よく働き、国家的商売上手となる。

しかし、それは、いつか、どこかで、葛藤して、 たまって歪んで固着しつづけ退行し、それを、むりやり経済で代償させる。

しかし、飽和状態は、すぐ来ます。

パンク状態は、あのナチからのマゾヒズムPLOへのサディズムを、 呼び起こすのです。だから、あーーーーーなんだぁーーーあーー。

私は思います。

民族的リビドーの発達、部位欲動の固着、 それは、日本に非常に、よく似ています。

今や、誰でもアルカイダになれます。

隣の良い子も平凡な主婦も元気なアスリートも即、アルカイダ。

人間全部、アルカイダになる可能性があるんですよ、実際。

もうすぐですよ。新世紀・第三次ニューごちゃごちゃ世界大戦。


(2003年、東京、霞ヶ関にて   MR.X氏)

 


               kipple


狂うべきか死ぬべきか革命

2021-03-04 08:20:50 | 夢洪水(散文・詩・等)
 狂うべきか死ぬべきか革命 


毎日、毎日、気ちがいが殺されます。いつも、まともな人は、もてなされるんですねぇ。毎日毎日、気ちがいは、苦しんでいますよ。人間的って、どういう事でしょう。一年中、発情してるのは、他生物では、ごく特殊な猿しかいません。他生物は生きるために必要なだけしか食べません。まして、あれこれ解体し別生物とまぜこぜにして調理するなんて事はしません。必要以上に殺しません。


いつも、人間的より人間的ぶった非人間的な、お形式が、もてはやされているんです。根性を美化しては、いけないんです。それは虐殺です。邪悪です。

焼けた道路に耳をつけてみなさい。焼けた空気を吸い込みなさい。陽射しの下で。それは気ちがいたちを、とても喜ばせます。

彼らは、詩人なんです。

今も昔も、苦しみを自慢する程、いやらしいものは、ありません。愛する女が死にました。愛する女は砂になります。乾いた砂です。

苦しみを自慢されたものは、自ずから、偽の苦しみを作らなければ、いけません。だから、苦しみは絶対に終わりません。

そして、自慢も繰り返され、それを目的に変え、苦しみ、苦しまなかった者は、いいえぬ屈辱に見舞われてしまいます。

のこぎりの刃みたいな心。

カニの目のような重み。

粉々のグラス。

そげた頬にナイフの切れ跡。

煙。

自分の存在した跡。

空間の中の自分の型。

溶ける意識。

仏語の美しさ。

汚い目と顔。

みんな、いい奴。みんな、つまらん奴。みんな、せこい奴。みんな、めくらなだけ。みんなバカさ。みんな亡者のようさ。


路地のほこりっぽい石の上、赤い馬がたけり、いななき、過去の悲しみのような太陽が燃え。

ときはなたれた風船は、どこへ流れりゃいいのやら。

南に行けば、目が溶ける。

東へゆけば、胸が破け、北へゆけば、心は凍り、西へ向かえば脳に蜘蛛が這う。

されど、このまま、いても、苦しみは続く。

永遠の彼方へ。空気と人と壁の向こうへ。

頭だけになって、飛んでゆければ。


愛する女が死んだ。意識の奥で、何か重く、もやもやしたものが巣食いはじめた。前のサイケな色彩は消え、残光だけがチカチカする。

愛する女の音が消えた。私の心の中から、家の中から、私の顔から。頭の後ろの方で、絶えず、ノイズが聞こえてくる。

202X年○○月○○日、午後午前○○時○○分に愛する女が去ってしまったのだ。

しかし、家の扉や戸たちは、以前と変わらず、愛する女が帰ってくるのを待っているし、私も待っている。愛する女は、きっと生きている事だろう。愛する女が死んだからって、目の前で命が消え失せたって、絶対なんて事は絶対に無いし、死んだとは限らない。きっとスペインのアンダルシア地方で、大解放気分を願って、例の眩しい笑顔のロマンティックの中で本当は幸福にやってるかも知れないじゃないか。

現実の事実や実際なんて、私は信じやしない。現実や、それらは、全て、意識がとらわれてしまった、人類共通の幻想に過ぎない。そんなものは意識が反復によって、くくりつけられてしまった認識という間違った観念に他ならない。

隣に人がいたとしても、認識が存在しなければ、その人は全く、いないにも等しく、いるはずは絶対に無いのです。愛する女は、きっと、この認識の盲点を、うまく、ついて雲隠れしてしまったに相違無いと、私は考えていますね。

世間の共通なる認識方法の逆をついて、生を死に、転移させるという離れ業を演じたのだよ。分かるんだよ、マチコ。

私にはね。皆を、うまくだませても、私は、ごまかせやしないからね。けっして。生が死へ転移したのは、世間の共通なる認識の中だけで、愛する女は、あなたは、うまく、その共通なる認識の隠れ蓑をまとって、旅に出たんだね。私は知ってるよ。あなたが、何を望んでいたのか。

だって、それは私の望みでも、あるのだからね。スペインを放浪さ。あんな金持ちごかしの旅じゃなくて、本当の旅さね。ついに夢を実行に移したってわけだ。素晴らしいよ。さすが私の愛する女さ。前にも、よく言ってたよね。ガウディの建築物の中で首を吊るのが理想なんだよって。そうさ。ロマンさね。

名も無く、誰にも知られずにね。おめでとう。元気に夢を果たそうや。今頃、どこを歩いてるかな。すすき野原で夕陽を浴びてるかな、畑の土道を歩いているかな、古い街で涙を流して、人生の憂愁を感じているのかな、散り始めた北の桜の下で、後ろ手に組み、ゆっくりと歩いているのだろうか、、、いや、それは日本か、、、いや、まだ日本にいるのだな。


さあて、それじゃ、この私は、何をしようか。この生活の果てに何が見えるのか?人々に、押されて、押しつけられ生活の囲いに、ガッチリと嵌められて、私という、私の中の私自身は、いったい、、、幸福なのか?

愛する女よ、君は、どうだったろう、幸福か?皆の前の自分ではなく、自分の中の自分、自分の前の自分は、自分に対して、本当に幸福になれるのだろうか?いったい、それは、どういう事だろう。ひとつの指針は何だろう?果たして幸福の指針を、自分の心の中に持っていつづける事が、できるのか。

革命、革命、革命、カクメイ、カクメイ、かくめい。

愛する女がいなくなって世界が一変したようだ。

何もかも、部屋も、好きだった音楽も、街の様子も、今まで慣れ親しんできたものと、違う!前も濁っていたのに、もっと濁って、全てが向こうの世界、ひとつ、ずれた、触れそうで触れないとこにあるような気がする。全てが夢の中だ。自分の体でさえ、今までと感じが違う。何もかも少し、狂ってしまったみたいだ!夕陽だけが、やけに鮮やかだ。

人と話すのが、前より面倒臭く、いやだ。マチコの奴、何か手記でも残してけば、な。そうすれば、考えの一片は残るのに、何も無いんじゃ、イヤ、いや、いいんだよ。そんなものぁ、なくたってね。

私は忘れやしないさ。死んだら、又、会えるかも知れないしね。死ぬ・・・か・・・。

こうして、毎日毎日、気ちがいが殺されます。こうして、毎日毎日、気ちがいが殺されるのです!

うわっぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっぁぁんん!

(号泣!)


 


                kipple