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元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

あっしは、kippleってぇケチな野郎っす! 基本、自作小説と、Twitterまとめ投稿っす!

低脳大学生(シリーズ:其の国)

2021-03-20 07:47:39 | 夢洪水(散文・詩・等)
低脳大学生
(シリーズ:其の国)



来る日も来る日も、俺はやる気が無かった。

俺は、この大学4年間、何をして来たのだろう?

ただ、のんべんだらりとサークルで遊んできただけだ。

女とヤル事しか考えてなかった。

だが、奴は、違っていた。

小説家を志す奴は、この4年間必死だった。

そんな奴が今日、死んだのだ。

彼は、いつだったか俺に人の生命の短さ、一日の重さを話してくれた。

俺は今になってその言葉に胸うたれるのだった。

奴は、自分の死期を知っていたのだろう。

彼は、全骨癌だった。

彼は、ここ三ヶ月間、一歩も外に出ずに書き続けたのだ。

その生命の結晶となったワープロ原稿が今ここにある。

素晴らしい小説である。人生を高らかに謳い上げている。

読んでいるうちに、どんなに人生が大切か身に染みてくる。

一生懸命に真面目に生きるという事は素晴らしい事なんだ!

レイプ・サークルで何10人も女を犯したところで何になる!

奴は童貞にして、こんなに人を感動させる小説を書いた!

素晴らしい!死ぬ事が分かっているからこそ出来たのか?

いや、違う!奴は、ひたすら真実を一生懸命に書き残したのだ!

俺は、自分が恥かしい、俺は愚かだった。

俺は彼に対し、又、自分に対し、こう誓ったのだ。

「俺は絶対、この小説を出版してみせるぞ!」

一人の青年が生命をかけて書き上げた、この素晴らしい小説。


それから俺はワープロ原稿をバンバン、プリントアウトした。

そして、俺は懸命になって、恥も外聞も捨て出版社を駆け回った。

何十社回っただろう、どこもダメだった。

どこの会社も商業性に欠ける、売れないの一言であった。

結局、金儲けか!真面目な本は売れないってぇーか!

糞豚どもめ、何が商品性だ、カネの操り人形どもめが!

俺は、あきらめずに何度も何度も片っ端から足を運び交渉した。

秋が来て、冬が来て、まだ俺は日本中の出版社を駆け回っていた。


そうこうしているうちに俺は就職戦線から投げ出されていた。

俺と一緒に遊び回っていた奴らは皆、内定をとっていた。

余裕で、合コン、女、女、と遊び回っていやがった。

俺は、ひとりぼっちになってしまった。

完全に孤立してしまった。

これから俺を拾い上げてくれるような会社は無かった。

俺は、奴の書いた小説の原稿をメチャクチャに破いた。

奴のせいだ!この小説のせいだ!俺はバカだった!

結局、バカなのは命がけで小説を書いてた奴の方だった。

俺が奴に感化されて、バカにならなければ就職決まって余裕だった。

うぉおおおぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉーーー!

奴のせいで、俺は奈落のズンドコだぁーー!

俺は自分のアパートで大量に出力した奴の小説を片っ端から破いていた。

こんなものぉぉぉおお!こんなものぉぉおおおおお!

お前のせいで!お前のせいで!俺の人生は狂ったぁぁー!


その時だった。

部屋中に散乱したワープロ原稿が真っ赤に染まった。

俺は一瞬ドキリとした。

何故か奴の血が原稿からドロドロ滲み出したのかと思った。

違った。

俺は、背中に異様な圧迫感を感じ背後を振り向いた。

窓が開いていた。

そして、そこから、子供の頃に見た、真っ赤なドロドロの太陽、じゅるじゅるじゅるじゅるオレンジの空いっぱいに煮たって溶け出してこぼれ出してきそうな夏の太陽が、俺を照射していた。

今は、冬だ、これはなんだ?こんな夕陽は有り得ない。しかし、どう否定しても、ここにあった。


ドロドロ、じゅるじゅるの背後からとてつもない巨大さと迫力で真っ赤にバチバチ燃えながら覆い被さってくるみたいだった夏の夕暮れのとろける太陽が、あっという間に窓に向かって迫ってきた。

その窓の向こうに、いつのまにか、あんまりの激しい逆光で真っ黒い影になった人間たちが現れて、俺に言った。

「其の国は其の国は其の国はいいぞいいぞいいぞ行けるよ行けるよ行けるよ君も君も君も行けるぞ行けるぞ行けるぞ」

俺が、その国の事を知ったのは、それが最初だった。


 


kipple

低脳中学生ABC(シリーズ:其の国)

2021-03-19 08:25:04 | 夢洪水(散文・詩・等)
低脳中学生ABC
(シリーズ:其の国)



僕たちは、3人だったぁー!

暑かったぁー!

空気は、ずしぃんとしていたぁー!

街は相変らずの騒音を作っていたぁー!

僕たちは静かだったぁー!

異常なくらいだったぁー!

僕は、たっぷりとぉーーー!

欺瞞の気勢を特立させていたぁー!

しかぁーしっ!

低脳な彼らは気づかなかったぁー!

僕は瞳を輝かし、顔を、ひきしめー!

口は勝利者の満足感をたたえていたぁー!

低脳Aが言ったぁー!

「オゥイお前、数学はどうだったか」

数学ー!

僕は今日のテストのため連日連夜!

我利!我利!我利ぃーーー!

それだけを、つぶやき学んだぁー!

そこで僕は、こう答えたぁー!

「ああー、そうだなぁ、まぁ良くて50点だろうなぁ、
全然やってねぇもんなぁ、でも何もしないで50点くらいは、いくだろう」

低脳Bも、言うぅーーー!

「そうだよなぁ、何にも、しなけりゃぁ50くらいだろう、 
 俺だって、そんなものだろうー」

だが、低脳Aは、違っていたぁー!

「俺は昨日がんばったんだ!      
 でも30点くらいしかとれないだろう」

僕は、胸糞悪くなったぁーー!

薄汚い奴め!アホウメェぇぇええーーーー!

同情を求めていやがるぅぅぅーー!

甘えるなぁー!

僕は、すぐに阿諛したぁー!

「そんな事ないよ。     
 50点はとれてるよ。」

低脳Aはぁー、

「そうかぁ?」

なんて言ってニヤリニヤリ始めたぁー!

自分が情け無くなったなぁー!

手が震えていやがるぅー!

僕のテストの結果は予想通り95点だったぁー!

低脳Bも、やはり98点とっていたぁー!

低脳Aは25点だったぁーーーー!

でも僕はぁー!

実はぁー!

こんな世界、嫌だぁーー!

欺瞞だぁー!

嘘つきあいだぁー!

嫌なんだぁーーーー!

何だか回りが真っ赤っかでー!

放課後の屋上に立ってぇー!

絶望的に振り向くとぉー!



子供の頃に見た、真っ赤なドロドロの太陽、じゅるじゅるじゅるじゅるオレンジの空いっぱいに煮たって溶け出してこぼれ出してきそうな夏の太陽が、そこにあったぁーーー!

現実の太陽はこんなんじゃなーい!

でも、あったぁーー!

ドロドロ、じゅるじゅるの背後からとてつもない巨大さと迫力で真っ赤にバチバチ燃えながら覆い被さってくるみたいだった夏の夕暮れのとろける太陽が、あっという間に僕の目の前にやってきたぁー!

あんまりの激しい逆光で真っ黒い影になった人間たちが、目の前の太陽と僕の1cmの間にゾロゾロと現れて、言ったぁーーーー!

「其の国は其の国は其の国はいいぞいいぞいいぞ行けるよ行けるよ行けるよ君も君も君も行けるぞ行けるぞ行けるぞ」



kipple

其の国(シリーズ:其の国)

2021-03-18 09:40:40 | 夢洪水(散文・詩・等)
其の国
(シリーズ:其の国)



いつの頃か、その国の噂が僕の耳に届いた。

子供の頃の夏の日、窓辺にゆれる風鈴とBACKの小麦色した風景が、僕に笑いかけてくる。そんな時から、その国の噂は僕の心のどこかに、ひっかかってたみたいなんだ。

子供の頃に見た、真っ赤なドロドロの太陽、じゅるじゅるじゅるじゅるオレンジの空いっぱいに煮たって溶け出してこぼれ出してきそうな夏の太陽。

ドロドロ、じゅるじゅるの背後からとてつもない巨大さと迫力で真っ赤にバチバチ燃えながら覆い被さってくるみたいだった夏の夕暮れのとろける太陽は、いつも猛スピードで畑を横切って逃げていく僕の影を細く細く、走っても走っても、どんどん細く、細くしてくる。あれは、たぶん何かの合図だったんじゃ無いだろうか?あの空間の中の、どこかに入り口があった、僕には、そう思えてなら無い。

僕は、その国に入る資格が生まれつきあるんだと思う。でも、子供の頃は、そんな事、ちっとも知らなかったわけだし、今なら、もっと確実な別の方法で、その国の事が分かるんだ。だから、その国へ行くには、どうしたらいいかって事も。


さて、僕は今、19才になったんだけど、現在より過去の注目すべき心的損傷から話すのが当然だよね。現在の僕は、過去の傷跡と戦い破れて、他人たちの不思議な指命感によって、この上下左右、全て白いカベの病室に閉じ込められちゃったわけだ。ここは個室で、とても狭く、全部、白でドアも白で、後ろが白いベッドで、前が白い蓋の便所穴で、右横にドアがあって、朝昼晩と看護人が食事を運んで来たりする。左横は閉ざされた白い窓。でも、窓を開けることは難しいが白いカバーをはずして外を鉄格子越しに見ることならできる。

あ、ちゃんと言っておかないと悪いね。僕は精神異常者ってのになっちゃったんだ。「21世紀の精神異常者!」って看護人の女が笑いながら僕を革ベルトで両手を縛って、バシバシ警棒で殴って喜ぶんだ。「21世紀の精神異常者」って面白い言葉なの?僕は、とっても迷惑だ。

さて、僕が、これから話す事は、どこか、あの「河童」の話に似ているんだなぁ。僕の今の状況も、あの小説にそっくりさ。だって、やっぱり窓から、よくのぞきに来るんだよ。そりゃ、河童じゃないけど、あの国の人々によく似た人たちがね。


モノゴコロ?やっぱり物心っていうのかな?ようやく、この社会や交流のシステムを理解するまで、僕は両親や作り出された、あの健康ぶった良識に、とても忠実な少年だったんだ。ぽっかり浮いた幻想を、バカみたいに妄信してたんだよ。ちっちゃな事だけど、たとえば、僕が商品を買ったり外食をしたりすると、店の人は凄く親切にしてくれる。

僕は、それが結局、金に媚びている姿だなんて、全く思えなかったんだな。皆、僕が他人を好きなように、他人も僕を好きなんだ、好きで好きでたまらないから、優しく優しくし合うんだろうって考えてた。まさか、お金を貰いたいがために、そうしているなんて思いもしなかったんだな、これが。

TVやマンガでよく見ていたんだ。お金に揺り動かされている人は悪い人だってね。お金のために人を殺したり、人を騙したりしてる人は、いつかきっと、良い人にやっつけられてしまう。こんなことさえも、信じていた事が、どこか食い違うと知るようになったわけさ。だって、お金のためだと、正直に人を殺したり、悪い事をしてる人より、実は、お金のためなのに正直に人を殺したり悪い事をしないで、うそっぱちの笑顔で、人を欺き、侮蔑している人の方が、よっぽど嘘つきで悪辣なんじゃないのかな?悪い事を良識の幻想で騙しちゃって、騙さず素顔を出してる悪人を避難して、平気な顔で生きてる。こりゃ大悪人だよ。僕は、絶対に、そう思うんだ。

僕が、こんな事を言うと、大人たちは、とたんに不機嫌になって、こう言うのさ。

“生きるためには、金が必要だ。いつまでも、そんな子供のようなこと、言ってたらだめだ。結局、生きてくためには仕方ないのさ”

そりゃないよな。子供の頃には甘い幻想で、夢を見させて現実を抑制しておいてさ。大人たちの間には、あくどい暗黙の了解が、できあがっちゃってるんだよな。僕は、どしても、それが許せなくて、お金を儲けてる人、つまり、働いてる人を正直にどんどん殺していったんだけど、何で僕が悪者にされちゃうのか良く分からないんだ。だってお金の為に働いている人間なんて、やっぱり一番悪いよ。僕は昔、見たアニメやマンガみたいにただ、お金のために働いている悪人を片っ端から殺していく良い人なのに、本当は。

それで、結局、こんなところに閉じ込められちゃって毎日、山盛りの薬を飲まされて苦しめられているんだ。なんだか、これじゃ僕の方が悪い人みたいじゃないか。せっかく僕は、お金のために働いてる悪い人をやっつけて正しい正直な世の中にしようと良い事をしてきたのに、絶対におかしいよ。でも僕は、そんな悪のシステムなんかに絶対に負けないんだ。モノゴコロなんて、インチキに、お金のために動く悪人になって、生きろって事じゃないか。僕は正直に生きたいんだ。お金のために動かない善人のままで生きたいんだ。


あああああああああああ、ちょっと興奮してきちゃたのかな。正義感に燃えてくると僕は、いっつも頭も身体も苦しくなるんだ。あああああああああああああ、痛い、痛い、げーげーく・苦しいよぅ。

あああああああ、あっと、ふぅふぅ、肝心なことを言ってなかったね、はぁふぅ、その国の事。うぐぅぐぐ・・・噂によるとね・・・あっあっあっうううぅう・・・その国には、お金が無いんだ・・・ぎゃぁっぁ!

ぎゃぁぁぁーーーー!ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!

はぁふぅ、これは、かなり確実な噂なんだ・・・・・

うぎゃぁあああああぁぁぁぁぁぁぁー!!


はぁぁぁああ、く・薬、薬、薬を飲まなきゃ、こうして、両手いっぱいの重度安定剤とやらを、ごくっと。ごっくっんっ、と。はぁふぅ、ああ、僕は、こんなトコに悪人どもに監禁されて、こんな風に薬を飲まないと苦しくて死にそうになる身体にされちゃったんだ、はぁはぁ、全て、お金の為に働く人間どものせいだ。ここの職員も全員、同じ悪人だ。みんな殺さなきゃ、ちっとも僕みたいな善人が救われないんだ。

あああ、薬が効いてきて、頭がボンヤリしてきた。そう、だからお金のために働いてる人間を全部、殺さなきゃならないわけだけど、あんまり多いんで僕には無理だし、きっと誰にだって無理なんだ。そんなぁー、正義は負けますかー善人がやっつけられちゃうんですかー、そりゃ、あんまりですよー、ううう、あああ、って、すぐに僕は悪人達にこんな風にされちゃったから諦めの弱い心に誘惑されそうになるんだけど、その国の話を聞いてから、考えが変わったんだよ。逃げだ、なんて言わないでよね。

世界中のお金の為に働いてる人を全部殺すのは、たぶんもう無理だから、お金の無い、その国へ行けばいいじゃないか、って。ね、いいでしょ。その国に行ってしまえば、お金のために働いてる人なんかいないんだから、お金が無いんだから、あははははお金が無いんだから、あはは、お金の為に働く事はできないわけじゃん、あはははは


あはははははははははは。あはははははははははあははははあはあはぁあはぁあはぁああ、目の前がぼんやりしてきたぞ、、、そう、こんな時なんだ、あの人達が窓からのぞきに来るのは。

ああ身体がだるくなって頭もだるくなって眠くなってきたけど、僕には分かるんだ、窓を開ける、窓を開けるんだ。この白いカバーを外せば鉄格子付きの窓から外を見ることができるんだ、はぁ、がんばれがんばれ・・・・

僕は身体中から力が抜けていくのに逆らって頭の中心にギュッと力を込めて、一生懸命に白い窓カバーを外すと、やっぱり、外は、あの子供の頃に見た、真っ赤なドロドロの太陽、じゅるじゅるじゅるじゅるオレンジの空いっぱいに煮たって溶け出してこぼれ出してきそうな夏の太陽があって、その物凄い陽射しの中から、ほら、あの人たちが鉄格子の窓の外側に逆光のせいで影になっていっぱい並んで、窓に近寄ってきて顔をくっつけてきて、せぇーので、囁くんだ。その国の事を。

「あるよあるよあるよホントにあるんだよ、あるよあるよあるよ、行けるよ行けるよ行けるよ君も行けるよ行けるよ行けるよ君も、影の影の影の記号の記号の先っぽ、先っぽから入るんだよ、入るんだよ、こうしてこうして僕たちは僕たちは、こういう夕陽の夕方にこういう夕陽の夕方に必ず必ず来て、来て、この鉄棒を少しづつこの鉄棒を少しづつ削っていくから削っていくから、この鉄棒がはずれて出ることができるようになったらこの鉄棒がはずれて出ることができるようになったら、こういう夕陽の夕方にこういう夕陽の夕方に、僕たちについてくるといいよ僕たちについてくるといいよ、悪人のいない正直な善人だけの国に連れて行ってあげるから悪人のいない正直な善人だけの国に連れて行ってあげるから、でも、その国の事は誰にも言っちゃダメだ、その国の事は誰にも言っちゃダメだ、だって悪人が知って入ってきたら台無しだ、だって悪人が知って入ってきたら台無しだ、その国の名前も口にしちゃダメだ、その国の名前も口にしちゃだめだ」

そこらへんまで聞いてると僕は身体が重くなるのに耐えられなくなって頭が途方も無いボンヤリ状態になって、ふにゃふにゃと崩れるように倒れ込んで寝てしまうんだ。

もう、あああ、ぅうううぅ、だぁめぁだぁ、早く、その国、キップル国・・・あっと口にしちゃいけないんだ、ああ、あああ、行けると、ああああぅううううう、いいなぁ~ずずずずずずずずずずずぅぅぅぅ

Zzzzzzzzzzzzzz・・・・・。



kipple

星よ、音よ

2021-03-17 07:54:50 | 夢洪水(散文・詩・等)
星よ、音よ


彼女は夏の夜になると、とても陽気にはしゃぎだす。

僕が彼女を拾ったのは2年前の冬だ。

彼女は夏の夜に生きている。

あとは死んでいる。

彼女は夏の夜以外、笑わない。

遠く遠く、地球を離れて。


 この惑星には夏の夜と冬の昼間しかない。

一年は二百日、しかし一日の時間は地球よりは遥かに長い。

僕たちは岩山のふもとに小さなバラックを建てて住んでいる。

僕の同居者は彼女と、ケンタウルスのゼリルという生物だ。

ゼリルは死なない。

今日から夏の夜が始まった。

彼女は明るく笑い始めた。

彼女はゼリルをイジメ始める。

ゼリルは

「やめてくれ」

という。

彼女は面白がってやめようとは、しない。



 この惑星は、地球の3倍の大きさ。

海はないが、雨は降る。

雨は地下に消える。

おそらく、地下は恐ろしく巨大な水溜まりなのだろう。

大きな火口が、ところどころにあり、そこから水は空に蒸発していく。

何故、海がないのか?

あまり考えた事もないが、何年か前、太陽系から来た奴が、僕に聞いたことがある。

僕は言った。

「そんなこと気にしてなんになる。
 きっとこの大地は、とても水分を吸収しやすくできているんだよ」


 そいつは納得しなかった。

大地から水を採集し始めた。

結局、そいつは、こう言って去っていった。

「さっぱり、わからない。これは普通の土だ」


 普通の土とは何を基準にしているのだろうか?


 この星の夜の始まりは美しい。


食料はゼリルだ。

ゼリルは何にでもなる。

僕たちはゼリルを喰う。

ゼリルは悲鳴をあげるが別にどうでもいい。

ゼリルは死なない。

ゼリルは食べない。

排泄もしない。



 今年も彼女は、はしゃぎまくり、大パーティーの計画をたてている。

近所の住人や近くの惑星の生物を呼び寄せて、どんちゃか始めるのだ。

 近所の住人といっても、この星に住んでいる知的生命体は、たったの20。

住人達は彼女に促されて僕らが、ナスカⅡと呼んでいる平原に大きな屋外ドームを作っている。

そこにバンドを入れ、ホログラム・ムービーを上映し、バカ騒ぎをするつもりなのだ。



 今年の出しものは・・・・・星の・・・星の・・・・・・と・・・

       星・・音・・・星と音・・・・・・



 出しものの名目なんて、どーでもいいのだ。


 どうせ、皆、ゼリルをいっぱい連れてきて機銃掃射やバズーカで、殺しまくり(もっともゼリルは死なないが・・・)、退屈をはらすのが目的なのだ。


・・・・・・そしてパーティーが始まり、大騒ぎが始まる。


・・・・・・何人か死亡者がでる。


・・・・・・しかしゼリルは死なない。


 パーティーが終わり、彼女は憂鬱な顔になり冬の昼間を迎える。

 誰しも家に籠もる。

何かを、何かを思い出すのだ。

外に出ると、とても、つらいのだ。

僕は、どうという事はないが・・・・・・・・



 皆、年をとり老いて死んでいく事を考えるのだ。

僕たちは皆、ゼリルと違って人生に閉じ込められている。


 夏の夜の終わりに、彼女は、それを思い知るのだ。



kipple

a 友

2021-03-16 08:32:01 | 夢洪水(散文・詩・等)
a 友



 
 私の心は最近、ことごとく変わって来ていた。

 私は、一人家に籠もってここ半年間あらゆる文学小説を読みまくった。

 そして人間の真実、この世界の真実とは何かを探求する癖がついてしまった。

 その間、一人の男が変に私に近づいてきて私の友人となっていった。

 その変な感じの男は妙に口が臭かった。

 私は、その友人が好きでも嫌いでもなかった。

 しかし彼の持った、風変わりな頑迷さが時々私を不快にさせた。


 ある日、その友人が私の下宿にやってきた。

 近頃、毎日のようにやってくる。

 煙草を吸いながら話す彼の顔に私は魅力というものを見出せなかった。

 彼の話す事は、すべてくだらない下品な事ばかりである。

 私は唯、調子を合わせて笑ってやるのだった。

 次第に私は彼の事を軽蔑し始めていた。

“いったいお前は人間の在り方というものを考えた事があるのか?”

“まっとうな人生・まっとうな生き方を考えた事があるのか?”

“お前は、この世界の構成要素だと言う事を考えた事があるのか?”

 と内心で思いながら友人の話を楽しんで聞くふりをして笑った。


 ある日、その友人と映画を見に行く事となった。

 私には、彼の他に全くと言っていいほど友人がいなかったのである。

 私はいつも、色々な事を語り合える友を欲していた。

 理想の友を心の底から、ずぅっと欲していた。

 しかし彼は、その理想の友とは食い違いすぎた。

 現象の奥底に潜む真実や崇高な人生について語り合う相手ではなかった。

 彼の脳は、下品で猥雑極まりないネタしか持ち合わせていなかった。

 そして私は、この友人をますます軽蔑していった。

 映画館へ行く途中の電車の中で彼と雑談をしていた。

 そして私は彼が決して私の言う事を信じないのに気づいた。

 私が私の心の底にある真摯な想いを懸命にしゃべっても彼はウワの空でしか聞いていない。

 しかも私の真剣な話のこしを折ってくだらない品性下劣な話をさも自分が良く知っているように話すのだ。

 私は、これほど不快だった事はかつて無かった様な気がした。

 しかし、やはり私の顔は仮面の笑いを作っていたぁあ!

 私は心の中で彼を何度も何度も殺していた。

 そして、この地獄の友人ごっこは当分続くのである。

 私は彼を笑いながら、いつまでも殺し続けるのだ。

 気が狂うまで・・・・・・・・・・

 

ぎゃははは!わーはっはっはぁあ!

 




その後、私は、この世をはかなんで24才で首をくくり

その友人は幸福な家庭を築き長生きしたと伝え聞く


 


kipple

UFOとジジイ

2021-03-15 09:12:24 | 夢洪水(散文・詩・等)
UFOとジジイ


ワシはジジイじゃ、悪いか!ぺっぺぇーっ!好きでジジイやっとるわけじゃないんじゃぁー!なかなかジジイ以外になれんのじゃけっけ!もう、ワシは自分がいったい何才で、どのくらいの間、何10年?ひょっとして何百年?ジジイをやっとるのかも、もう、よく分からなくなっとるんじゃぁぁー!ふんだらぺっぺー!ふんだらぺっぺー!

たいていの人間の脳は人間の作り出した法則なら理解できるんじゃ。理解できぬという事も理解できるんじゃ。

しかし、どんな奴でも、さっぱり分からんし、それ故にできるだけ、そんな事を考えずに生きようとする問題があるのじゃわい。実は、これが根源的な最も重要なものなのだわな。それは、ワシたちが何故、望んだわけでもない、この泥沼世界にポイと生まれて、死ぬのか?って問題だわい。いったい、何故? 誰も知らないんじゃ。

さて、実は、ワシたちは、最も初歩的で基本的で完璧に共通な問題の答さえ見出せずに、このボール、球状のかたまりにへばりついて主人公づらして生きているのじゃ。なんて愚かで生意気なんじゃ!

果たして、ワシたち以外、あの理性とやらをもたぬ昆虫や魚たち、飛行を自力で成し遂げる小鳥たち、彼らが知っていないと誰が言えようか。何故、生き、死ぬ、のかも分からぬ我々に何故、言えようかのう。

・・・言ってごらん、簡単じゃよのぅ。バカモノめって!

ラヴじゃ。

彼らは知ってるんじゃわ。赤トンボは知っているんじゃ。コウノトリも知っているんじゃ。メダカの兄弟も知っているんじゃ。

深遠なる意識と心を持つもの、我々、君ら、僕らは、それ故に知らないのじゃ。じゃぁ何で、お前は、知っとるのけ?と君らが思うのも当然だわわな。実を言うと、ワシは、2001年、9月11日、にUFOから与えられたビジョンによって知っているだけなのじゃ。これを完全に言葉に還元するのは不可能じゃ。言葉は、たいした機能を持たないのじゃ。

ワシは、その日、まだ、中学一年生で、下校の途中で、黄砂現象の真っ只中を歩いておった。あたりは、まっ黄色に染まってな、夢精した次の朝みたいじゃったわい。

そのUFOは、あのメビウスの輪を横軸に、ぐるぐるぐるぐる回転させたようじゃった。ビリビリと何千もの電光を、彼方へ彼方へと、放っておった。もちろん、ワシが、その電光が、あのアメリカ帝国の方角へ向けて放っていた事を、あとで知ったわけじゃ。

あれから何10年たったかのぅ。人間、皆、アホになったわい。あれは思うに、アホアホ光線だったんじゃないかのぅ。人間を全部、アホにしてしまうきっかけを作ったんじゃないのかのぅ。お前が悪いお前が悪い、俺は正しい、俺は正しい。かぁー!なんて愚かなんじゃぁー!最も根本的な問題さえ、さっぱり分からぬくせに、なぁにが悪いだの正しいのじゃ?アホアホじゃ。

あの頃、改革だ改革だって金科玉条の如く、ペラペラしゃべる口の達者な連中がTVや何かで喋っていたのを、ワシは幼心に覚えておるが、果たして変わりたい奴、なんぞ、本当におったのかのぅ。さらにその後、グローバルだイノベーションだデジタル化だ多様性だLGBTだSDGsと再び金科玉条の如く、ペラペラしゃべる口の達者な連中がTVや何かで壊れたエンドレステープの様に押しつけがましく喋り出し、実の無い偽善欺瞞だらけの虚妄な言葉ばかりが空中を無数に飛び交い、メダカもミミズも知ってる事さえ知らないアホどもがアホ丸出しで湧き出しおって、世界中でアホアホになっちまったんじゃのぅ。アホに磨きがかかって狂っちまったんじゃ。

しかしなぁ、何で、UFOはアホアホ光線をアメリカに放ったんじゃろ?ワシも、アホになってもうて、よう分からんわい。アホアホ光線でアホになった連中が飛行機で貿易センタービルやペンタゴンやらに突っ込んだんじゃっけ?その後、興奮してエキサイトした人々がさらにアホアホ光線の餌食になって、イラクを侵略して滅ぼし、数々のテロリストを産み出し、次に新型コロナウイルスとやらのスットコドッコイなパンデミックが起きたんじゃっけのぅ!そこで人類全体にトドメのアホアホ光線が放たれ、ついにパーフェクト・どアホ脳が世界中にひろがったんじゃが、何でやねん。

何でUFOはワシにビジョンを送ってきたんじゃろ?人間だけがアホなんじゃと、な。ま、あれから何10年も過ぎて、人間は皆、ゾンビになってしもうたがな。アホアホ・ゾンビじゃ。死んでるから死なないのじゃ。死んでも生きてるんじゃ。ますます、何故、生き、死ぬか、分からなくなったのぅ。なんせ、死んで生きとるんじゃけのぅ。人生、永遠時代じゃと。

ワシは、最近、そんな事ばかり考えておって、不眠症ぎみなんじゃ。ゾンビも寝るのじゃよ、そんな事も知らなかったけ?

女房は言うんじゃ。

「煙草を吸うと、眠くなるそうよ」

でも、煙草は身体に悪いからのぅ。ワシは、ちょっと女房には言えないような欲求が、最近、下半身にムラムラと湧きあがってきてのぅ。友人のゾンビ・爺いに相談するんじゃ。

「煙草を止めて、毎朝、縄跳びでもすりゃ、女の一人も抱けるわなぁ」

と赤らがおの友人ゾンビは言うんじゃ。


ああ、しかし、禁煙始めて、4日目に、ああ、また吸ってしもうたわい。ああ、あとに残るのは、また、アホアホな自己嫌悪だのぅ。むん?ひょっとしてUFOは我々、人間を襲撃したのかのぅ?まあ、よく分からんが、とにかくワシは、今日も明日も明後日も、ずぅぅっぅっと宇宙人様のために労働に励むんじゃ!やることがあるってのは幸福なことじゃのぅ、しかし。ありがたやありがたや。ワシは死なないしのぅ。ぶはははは。



人類は絶滅している。人類を同士討ちさせて全滅させ、地球の新たな支配者となったバルタン星人は、ゾンビ光線を受けてビジョンを見た10億ほどの人間を生きる屍として残し、彼らの奴隷として使役している。




kipple

エリック・サティのゆりかご

2021-03-14 09:35:00 | 夢洪水(散文・詩・等)
エリック・サティのゆりかご



人間に選択できる自由など、たった2つしか無い!

それは“子孫を残さぬ事と!自らの意志で死ぬ事だ!”

と!埴谷雄高は言い続けた!




隣人を愛するな
己の罪を悔い改めるな
自ら命を断て

って何度も何度も、バラ十字団は忠告した!
大いに共鳴したエリック・サティは入団し幾多の曲を提供した!


のちにコーディー・ジャレット級のギャングになり、文学作家になり、タイムトラヴェラーになり、さらにサイボーグになり、さらにそれからアルカイダになり、最終戦争の口火をきった『ザマミロ』氏は、のちにジェイソン級の殺人鬼となった私に、幾度も幾度も、この2つの自由と3つの忠告を繰り返した。


『ザマミロ』氏は銀行強盗に入った時、「女房と子供のいる奴は前に出ろ」と言って、前に出て来た奴を片っ端から血まみれにして、

「僕ちゃんは、家族というものが大嫌いだぁぁっぁぁぁぁぁぁあああ!」

と、マイクロホンで、怒鳴るのだったぁぁああああ!!


『ザマミロ』氏は、

雨に濡れると死ぬ男、人と目が合うと死ぬ男、いついかなる時も自殺したい男、いついかなる時も殺される不安におののく男、自己顕示欲が異様に肥大した男、とぉ~っても恥かしがりやの男、言う事とやる事が全然違う男、無視されたい男、すっごい甘えん坊の男、優しすぎてアリも殺せない男、何事にも無性にイライラする男。

だったっぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!



きゃっぁぁああああああああああっ!きゃぁっああ!きゃぁぁぁぁぁぁっぁぁああああああ!!



「ん?何か外が騒がしいな」

「そうね、何でもエリック・サティの霊が暴れているらしいわよ、さっきワイドショーでやってたわ」

「どれどれ」

『ザマミロ』氏はガラガラガラと窓を開けた。ガラガラガラという音。

「おい!ジョセフィーヌ!こ・これは!」

「何なの~!『ザマミロ』君ー!」

じゃーん!

「回転扉が開いたんだぁ!サティの霊が何かと共鳴して偶然開けてしまったんだぁ!」

「なにー?なにー?どういうこと~?」

じゃ・じゃーん!

「ほら、世界中の有名無名問わず悩み苦しみ志なかばで死んでいった全ての音楽家たちが投下ボンベと化して降ってくるぞ!」

「あらーあらぁ~!回転扉が、どんどん開いていくぅぅうう~~~!」

じゃ・じゃ・じゃーん!

「ねぇー!どうしたらいいの~?」

「メチャメチャに壊れた音楽を鳴らすんだ!ジョセフィーヌ!すれば奴らは耐えきれず!帰っていく!」

じゃ・じゃ・じゃ・じゃ~ん!

「中でも一番恐ろしいのはベートーベンだ!奴の第9は、この世の憎悪の裏返しなんだ!」

「でも、どうして『ザマミロ』君は、そんな事を知ってるの?」

「知ら~ん!バラ十字団と埴谷雄高の教えに決まってらぁ!」

「あら、あの投下ボンベはドヴォルザークよー!新世界が鳴ってるわ!」

「ふん、21世紀に新世界はナンセンスだ、ほら、帰ってった!」

おほほいひひあははおほほいひひあはは!

「見ろ!ジョセフィーヌ!ジョン・レノンだ!ベートーヴェンの導き手は奴だ!」

「きゃぁぁぁ!ジョンよ!ジョンよ!今、扉から落ちてきたわよー!」

ずごごごごごぉぉぉまぁぁくぅでぃびっどぉちゃぁっぷぅまぁぁんんんっっ!

「マズイ!ジョンを慰められるのは、ポールだ!ポォォォール・マッカァートニィー!だ!」

「でも、絶対ポールは来てくれないと思うわ。・・・い・生きてるわよね・・・」

「フフフ!何をジョセフィーヌ!俺がポールになるぜ!ポールといえば!」

さぁー御一緒にぃぃぃぃぃっぃぃ!

「ヘイ!ジュードだ!」

「ヘイ!ジュードだ!」

「ヘイ!ジュードだ!」

「ヘイ!ジュードだ!」

「ヘイ!ジュードだ!」

「さぁ~弾くぞぉぉぉぉおぉっ!ジョンよーー!幾多の反目はあったものの、2人で一緒に転げ回った、あの蓼科のスキー場を思い出せぇぇ!」


音を外せぇぇぇ!リズムよ狂えぇぇぇ!いけぇぇぇぇぇー!


へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
へいじゅぅうどんれっみぃだぁぁん~ゆあめいめいめい♪あれ?へい、だっだらぁだららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっだららっらぁ~だららっらぁ~♪らぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪
だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪だららっらぁ~だららっらぁ~♪




その後、少しは効果があったものの、『ザマミロ』氏の健闘も空しく、投下ボンベは地球全土に降り注ぎ、頭に来た『ザマミロ』氏は、愛するジョセフィーヌをギロチン台にかけて、憂さを晴らしたのでした。



よって、世の中は狂いっぱなしだ。



 


kipple

地獄の日曜日

2021-03-14 08:36:02 | 夢洪水(散文・詩・等)
地獄の日曜日

(1)  

 
 早朝。小鳥のさえずり。

 会社の仕事も決算期を終え、やっと一段落した。

 そして今日は日曜だ。

 私はこれと言った趣味のない男だが、たまに釣りに出掛ける。都会の人いきれから逃れて静かに川の流れを見つめるのは気持ちのいいものだ。

 釣り具を青いケースに入れながら今日の予定を思案していると、ふいにドアのチャイムが鳴った。

 三ヶ月ぶりの釣りを楽しめると思っていたので来客が来て居座られる事を思うと、気力がスゥーッと抜けていった。

“なんだこんなに早くやって来て、何か重大な用件だろうか?そうだとしたら釣りは、おじゃんだ。唯一の私の楽しみが、おじゃんだ”

 チャイムは10秒位の間隔で規則的に執拗に鳴り続けていた。

“ええい!私は出てゆかんぞ。留守だと思って帰りやがれ!”

 とむかつく気持ちで少し沈黙していた。しかし5分しても10分しても少しも狂わず、そのチャイムは規則的かつ執拗に鳴り続けていた。

 “勧誘か?いたずらか?それにしては悪質すぎる。警察に電話しようか・・・いや、そんな事したら、それで今日一日は丸つぶれだ。誰だ?”

 私は、ますますイラだって足をブルブル震わせていた。次第に冷たい汗が私の頭のてっぺんから、ゆっくりと“ぬら~”と流れ始めた。

 私は焦っていた。こうしているうちにも私の自由時間はサラサラと少しずつ崩れ落ちて消えていくのだ。

 しかし一度、居留守を使ってしまうとなかなか顔を出しにくいものだ。相手が、この卑屈な応対に憤怒して、罵声を目一杯浴びせてきた時を考えると、もう決して“ハイ”などと調子よく出てゆく事は出来なかった。

 私は釣りケースの上にしゃがみ込み、物音をたてぬようにじっとしていなければならなかった。そうして、時間は過ぎていった。

 ベルは、その規則的な調子を崩さず無情に延々と鳴り続けた。時がたつにつれ、もう絶対に出て行けないところまで私は追い込まれていった。

 もはや太陽はこうこうと窓ガラスに輝いていた。10:00とパチンコでとったデジタル時計が表示していた。

 私は「一生ここから出る事ができないんじゃ?チャイムによって人生を閉ざされた男!」などと、つまらぬ事を思い浮かべ、何かいい方法はないかと必死に汗まみれの頭をひねった。

 ふいに一筋の光明が私の絶望的になった暗い心の中に飛び込んできた。

“よし逃げよう。幸い、ここはアパートの2階だ。飛び降りる事は簡単だ。そうすれば、ここは本当に留守になる”

 私は窓ガラスを音のしない様にそっと開けて、手摺りから両手でぶら下がった。下を見ると三輪車に乗った子供が不思議そうに私を見上げていた。近所の子供だろう。このまま地面に飛び降りると、私はその子供に激突する事になる。

 私は足で空を掻き回して、子供にそこをどくように命令した。子供は無邪気そうな笑い顔を作って私を眺めていて、ちっとも、どこうとはしなかった。

 足をバタバタさせているうちに手が痺れてきた。依然として鳴り続けているチャイムは私を余計に焦らせた。腕の感覚が無くなってきた。頭がグラグラしだした。もう、どうにもならなかった。窓に這い上がろうとしても、腕に力が入らなかった。私は、思い切り叫ばねばならなかった。

「そこを、どくんだ!早くどけ!このガキ!」

 かなり迫力を出したつもりだったが無駄だったようだ。ちっともどこうとせずにニコニコ笑っているその子供の顔は、その時、悪魔のように見えた。悪魔っ子、グレムリン。

 手が、ずるり、ずるり、と手摺りを滑り始め、私の顔は真っ赤になってゆく。日光が体をじりじりと照らし、顔中の血管がはち切れそうに膨らみ、目の前がかすみ始め、私は全身の力が、サラサラと砂のように抜け落ちてゆくのがわかった。

 すぅっと手が離れて、私は子供の小さな笑顔に向かって落ちていった。天地が逆転するような感覚で、グシャッという音と供に地面が私の全身をひっぱたいた様だった。痛みなど感じている余裕は無かった。

 少し茫然となって、しゃがみ込んでいた私は、“ピンポーン”というチャイム音で我にかえった。足首が痛いのに気づいた。見ると赤く肉まんのように膨れていて、自分自身が非常に痛ましく思えた。

“さて、子供は?”

 とあたりを見回してみたが、その姿はどこにも無かった。何処へ消えた?何て素早いんだ?と首を傾げていると、突然後ろから

「グォォォーーーーゥ!」

 と恐ろしい叫び声が轟いた。私は驚いて、“ひゃっ”とばかりにつんのめって、頭を地面に又、したたかぶっつけてしまった。

「けらけらけらけら。けらけらけらけら。」

 と背筋をススキで逆撫でされるような子供の笑い声がした。子供は私の真後ろにいたのだ。私は顔を真っ赤にして、ありったけの怒りの表情を見せつけて子供を睨んだ。子供はちょっとたじろいだ様だったが、すぐに、

「ふん。」

 と憎たらしく鼻を鳴らして三輪車をこぎ始めた。

「こらっ、待て!どこのガキだ!こら!」

 と私は震える声で叫んで立ち上がろうとしたが、足が痛くて思う様にいかなかった。私が、ようやく体勢を立て直すと、すでに子供は曲がり角に消えていくところだった。チャイムはまだ鳴り続けていた。

 何故?何故こんなにも私は惨めな思いをしなければならないのだ?留守を装って、じっと耐えていたり、子供にあざけ笑われたり。もとはと言えば私のひねくれた気まぐれがいけなかったのだ。少し待てば来客は留守だと思って諦めて帰るなどと言う、せっかくやって来た相手の気持ちも考えずに自分勝手な考えがいけなかったのだ。

 しかし、今さら、このこのとドアの前に立っている相手に会いに行くのも、何だか余りにも惨めで情けない。どんな顔をして行けばいいのだ?さあ、どうしたらよかろうか。とにかく早くここを立ち去らねば・・・そして、とにかく、私はようやく痛い足を引きずって歩き始めた。・・・その時、チャイムの音が止んだ。

 今までの私の聴覚は、ほとんど鳴り続けるチャイムの音だけに支配されていたので、一瞬、全世界から全ての音が消え失せてしまったような錯覚にとらわれた。

 そして曲がり角の向こう側から“ピシッピシッ”と小石をはじく足音が、次第に大きくなりながら近づいて来るのに気づくと、今度は私の聴覚世界を足音だけが支配し始めた。私は緊張して足の痛みも忘れて、曲がり角に目を凝らし、じぃっと待ち続けた。

ピシッピシッ

ピシッピシッ

ピシッピシッ

ピシッピシッ

ピシッピシッ

ピシッピシッ

ピシッピシッ

 ゆっくりとその男は曲がり角に姿を現した。

 それは、やはり、偏執的にチャイムを鳴らし続け、今日の私の休暇をぶち壊した憎むべき犯人の姿であった。なぜなら、その男の人差し指は長時間チャイムを押し続けたために赤くはれていたのだ。 


(2)  

 
「香川信介!」

 思わず私は叫んでいた。そして私の悲鳴に似た叫び声を聞きながら、彼は昔とちっとも変わらない、人を心底見下した笑い顔を作った。

{・・・10年間・・・。何もない、何も残さぬこの10年間。長くて、短かった空白の10年間。それを、この私に無理矢理、与えたのが、貴様だ!貴様だ!何故だ!何故!何のためにやって来たのだ!今さら何があるというのだ!どうでもよい。もう、どうでもよいのだ・・・}

 
「久しぶりじゃないか。森崎司郎君。裏から、こそこそ逃げ出すとは、いかにも君らしいネェ、くっくっく。俺様を6時間もドアの前に待たせておいて、家の中で何をしていたんだい?部屋の隅に縮みこまってブルブル震えていたんじゃねぇのか、へへへ、ケッ。許せないねぇ。その自閉的な餓鬼のような歪んだ卑劣な態度。俺は何も貴様を殺そうってんじゃぁないんだよ。まあ、そうコソコソするなよなぁ。・・・」

「何をしに来たんだ!か・香川。何故、今ごろ・・・」

「おっと何だぁ?その言い方は。貴様、恥ずかしくないのか。バカみたいに6時間も居留守を使い。・・・なぁにが独立理想国家樹立のQ革命だ!貴様が一番嫌っていた偽善行為そのものだろうが!」

「もう俺には、Q革命も何もない。何も関係ない。もう何も言わないでくれ。居留守を使ったのは悪かった。今日は一人で休みたかったし、君だとは思わなかったのだ。しかし、もう全ては終わったはずだ。10年が過ぎた。もう俺は10年前に死んでしまったのだ。・・・」

「ふん、負け犬だな。まあ、とにかく部屋に入れてくれよ。俺のガキを見ただろ。庭で見張ってたんだよ。子連れで参上ってわけだ。いい子だろぅ?」

 子供。近所の子供じゃなかった。“カラカラカラ~”とペダルを回す音がして、先程の憎たらしい三輪車の子供が現れた。相変わらず、無邪気そうな、残酷な小悪魔の笑顔を浮かべて。


(3)  

 
 部屋に入ると香川はさっそく酒を要求してきた。“酒はないか?酒はないか?”とつぶやきながら、香川は勝手に戸棚を開けて、とっておきのナポレオンを取り出してラッパ飲みを始めた。そして言った。

「お前はひきょうもんだ。お前のおかげで俺は仲間の情報機関によって検挙されたんだ。そうだ、そうに決まっている!お前が「反黒シャツ隊」の地下組織のオルガナイザーだと俺をチクりやがったんだろう!ぬけぬけと、こんな、あんちょくな暮らしをしやがって!何が「理性と欲動の均衡による進歩的勝利」だ!フン!」

 顔を赤くして彼はしゃべり続けた。

“ちがう!”と私は心の中で叫んだ。

(お前が私を罠にはめたんじゃないか。お前が「赤シャツ隊」からのスパイだったのだ。お前は自分がスパイである事が発覚するのを恐れて、わざと私を逃がし、そして自分が捕まってみせた。私に裏切り者の汚名をきせて。・・・だが証拠は何もない。ずる賢い奴だよ、お前は。でも、もう今となっては全てが無駄だ。黒シャツ隊もQ革命立可町さえも永久に壊滅したんだ。私は、今はただ善良なる一市民として静かにこの国で暮らしたいんだ。・・・しかし、私は、あの時、盟友の柴田を鉄パイプで殴り倒して逃げた。死んじまったかもしれない。もう思い出したくないんだ。それだけで私は苦しんできた。それだけで私は、いかにぬれぎぬだとはいえ、きっと許されないのだ。)

 
 突然、チャイムが鳴り出した。まただ、また誰かが来た。よりによってこんな時に。

「オイ!先輩!せ~んぱ~いぃいい!あけろぉおおおおおおお!

 私は蒼ざめた。金白の声だ。(香川の来訪だけで泣けてきそうなのに、あの金白までが・・・)何故だ!何故だ。今日は大凶だ。何て日だ。

 
 鍵が開いていたらしく、金白はずかずかと勝手に家に入ってきた。彼は大学時代の後輩で、筋肉質のたくましいマッチョだった。背が小さく体力の無い私を、徹底的にバカにしまくっているのだ。私は、こいつに生涯イジメられ続ける運命なのか?もう絶対に会うことも無いと思っていたのに・・・最悪の日だ。

「せんぱ~いちゃん!何してんだよぅ。暇だねぇ。まあテメエみたいなトロい野郎に彼女なんかいるわきゃねぇしな。くくっ、しかたねぇか。えっ?このウスラ。ケケ!くやしかったら、かかって来たらどうだいぃいい?かかって来いよう!へぇんだ!腰抜けちゃん!自分でチンポコ舐めてやがれ!」

 私は一回、愚かにも彼に立ち向かった事があった。そして、もちろん私は 血だらけにされて彼の靴底を1時間以上も舐めて謝ったものだ。金白は、香川をちらっと横目で見るとニヤニヤしながらアメリカンなポーズで言った。

「うん?誰だ?この男。お前の友人か!お前に友人がいたのか!けへっ!どうりでさえないツラだぜ。」

 さすがの香川も少し、むっとしたようだった。

「あのぅ金白君、何の用ですか。」

 私は低く出なければならない。(あああ、情けない)

「用?・用?ぐふっ。お前をイジめに来たんだよ!森崎さんをねぇ!」

 と金白は部屋の中をじろじろ見回しながらぐるぐると歩き回っていた。

「森崎、誰なんだ?この暴君は。」

 と香川が子供を自分に引き寄せて、そっと私に尋ねた。

「俺は、こいつの後輩の金白という者だ!」

 と大声で金白が叫んだ。その声はアパート中に響き渡った。エコーまでかかって、2重3重と重なって反響し合い、その下品な声はアパート中を突風のように走り回った。香川はド肝を抜かれたようだった。しかし、ずる賢い彼は、すぐに金白の味方になるだろう。

「あんたも森崎を嫌いなのか?」

 と、さっそく香川は金白の喜びそうな事を言った。

「ん?ああ、大嫌いだね、こんないじけたヘナモコ野郎。唯、ストレス解消にいじめるためには、格好の相手だぜ。一生涯イジめ続けてやる!それで俺様は健康で明るい人生を送れるってわけだ!十数年ぶりにやっと、こいつの居所を突き止めたんだよ!もう逃がさねぇ。こいつをイジめてないと生活に張りがないってもんだ!」

「そうか・・・。ああ、こいつはな、昔、立可町というところで仲間達を裏切り、親友を半殺しにして逃げ出した卑怯者なんだ。だから今、どんなに罵倒されようとイジめられようと文句はいえないのさ!人間として許せねぇ糞野郎なんだ。」

 香川は、さっきの青ざめた表情から、段々と残忍なニヤタニタ笑いに変わってゆくようだった。イジめ仲間が出来て喜んでいるようだった。

 私は、これから起こる事を想像すると吐き気がした。もう気分が滅入って先の事を考える事も出来なくなってきた。私の頭の中は空白になっていった。ぼんやりとした白に埋まっていった。もう私にとって全ては何でもなく、どうでもよくなった。

 2人は、ゆっくりと顔を歪め、私に近づいて来た。2人の口が、ほぼ同時に開き、汚く下劣で、恐ろしい、私の心を傷つけるには、これ以上ないんじゃないかというくらいの侮蔑と嘲笑の言葉を、もうろうとしている私に容赦なく投げかけてきた。

 私の心は、彼らの言葉の刃を浴びているうちに、何故だか不思議と静かになって行った。海の底に沈んでゆくプランクトンのように、ゆらゆらと最深部めざして私は落ちていった。底なしの暗黒の海を落ちていった。おそらく、もう私の脳神経のどこかが、プツンと切れてしまったのだろうと思った。

 私は2人にかまわず、ゆったりとソファーにもたれ、落ち着いて彼らの声を聞き、
そおっとソファーの下の出刃包丁を取った
さっき居留守をつかっている時、無意識にそこに隠して置いたらしい。


 (4)  


 
 殺人事件発生。場所:東京都杉並区寿アパート。本日午後3時。通報者:三輪車に乗った3才の子供。被害者2名。一人はキック興信所社員の金白順一と判明。もう一人は不明。両者ともスキンヘッド。他に通報者である子供が負傷。容疑者は状況から森崎司郎と断定。只今午後四時。犯人は多摩方面に逃走した模様。
 容疑者は森崎司郎。容疑者は多摩方面に自家用車カローラ(ピンク色)で逃走中。
・・・・・・報告あり。
 現在、容疑者はカローラで青梅街道、花小金井市を通過。NO練馬か51 378。
 ビーーーーー・ビーーーー・・・ジ~ーーー容疑者は、狭山湖近辺でパトカーを抜き去った模様。パトカーは数台破損した模様。2名死亡、3名重傷、3名軽傷・・。
・・・・・・容疑者の車、所沢市内の空き地に見つかる。
 容疑者は・・・
 

 

 
 午後8時30分。新宿に着いた。どこへ行こうか。街は相変わらず汗だくで蠢いている。人の群れ。人、人。

 刺し殺した時の血しぶきが点々とシャツに付着していたが、幸い赤いシャツだったので目立たなかった。それに夜だった。ああ、もう夜だ。

 私は考えてみた。何故?私は、こんなところにいるのだろう。私には、何が何だかまるっきり分からなかった。どうして私は、こんな人ごみの中を呆然と歩いているのだろう。

 そして、後ろのズボンに挟んで置いた出刃包丁を取りだして、発作的に私の前を塞いでいる2人の若者に襲いかかった。

うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 

ピシッピシッ!ザクッ!ザクッ!

ピシッピシッ!ザクッ!ザクッ!

ピシッピシッ!ザクッ!ザクッ!

ピシッピシッ!ザクッ!ザクッ!

ピシッピシッ!ザクッ!ザクッ!

ピシッピシッ!ザクッ!ザクッ!

ピシッピシッ!ザクッ!ザクッ!

 その若者2人は、スキンヘッドだった。

 
 
 遠くで釣り糸を落とす時の「ポチャン」という音が騒音と絶叫の中で、弱々しく聞こえた。  
 
 

 


kipple

銀河を駆ける高級車“マークⅡ”の悲劇

2021-03-13 16:59:21 | 夢洪水(散文・詩・等)
銀河を駆ける高級車“マークⅡ”の悲劇


 夜だった。

 オレのまわりは黒一色だった。

 オレは友人宅を訪問っつうか襲撃するため

 深夜の街道をマークⅡで飛ばしているのだ。

 時計は午前0時を指していた。

 オレは何とも知れぬ不安を感じていた。

“もう小金井あたりだろう”

 オレは浄水所を越えて、左に曲がった。

 オレの行く手には、やはり東小金井駅が見えていた。

 そして、踏切を渡った。

 しばらく行くと、オレの頭にドッと不安が色濃くのしかかって来た。

 道が分からなくなったのだ。オレは感で右に曲がった。

 15分位すると大きな道路に出た。

“ファック!ガッデム!ビッチ!何だぁここは?”

 まるで環八のような道路だ!

 オレはひたすら走った!

 やがてオレの横に見覚えのある建物が見えた。

 小金井.学科試験場だった。

 ああ?なんで?なんで?ここに出るの?


 その後ひたすら走った。

 交通違反を繰り返し、

 何回もクラクションを鳴らされて、

 そ・そして、やっと友人の下宿にアライブしたのだ。

 オレは車を止めて友人の名を呼んだ。

“金髪く~ん!金髪く~ん!”

 返事はない。

 室内は真っ暗だ。

 オエッ!普通15分で来れるのを1時間半もかかって来たのに!

 うう それに明後日は大事なテストやぁ~!

 オレは泣き泣き帰路に着いたのだった。


 しばらく中央線にそってマークⅡは走った。

 もっとしばらくしてオレは異様な苦痛を感じた。

 うう、ボウコウがマンタンや!

 突如、襲ってきた呪われた苦しみ。

 俺の目は血ばしっていた。

 スピードメーターは、ぐんぐん上がる。

 ハッと見ると最高速度20キロの道路だ。

 オレの車は60キロ、それに進入禁止道路だった。


 その後、オレはバックにきり返し、Uターン、

 と、いろんなハイテクニックを駆使してやっと脱出し、

 道路に沿って順調に走った。

 しかし苦痛はオレを虚脱状態に陥れていた。



 もうあれから、どのくらい走ったろう。

 オレの横を中央線が走っている。

 フッと、その行き先を見たとたん、

 オレはオレはオレは生理現象を伴った絶望に落ち込んだ!

 オレの車と同方向に走ってる車が何と豊田行き。

 オレの家は吉祥寺だ!逆方向じゃねぇか!

 オレは、ずっと逆方向に走っていたんだぁぁああ!


 その後は、もう覚えていない。

 どこをどう走ったのか、とにかく真夜中に家に着いた。

 そのときは体が冷たく足がブルブル震え、

 止めどなく道端に立ちションした記憶がある。

 その水量は物凄かった。

 まるでナイアガラの滝のようだった!

ドバババババババッバババッ!

ビシュゥウウウッウッゥゥウ!

 オレはフラフラと家の鍵を探した。

 

 ない!


 家の中は静まり返っている。

 それもそのはず、もう軽く午前3時を越えているだろう。

 オレは今夜は野宿なのだろうか?

 泣いた!泣いた!泣いた!

 するとオレの優しい弟が

“おにいちゃん カギあけるね”

 との声だ!わぁお!


 もう何でも良かった。

 部屋に寝っ転がって、途方に暮れた。

 今夜は、たぬきに化かされたんだ!

 そうだ!きっと、そうに違いないんだ!

 血も凍るような夜だった。

 え?大したこと無いって?

 うるせぇええええええええ!

 むひょひょひょひょひょひょぅう!

 金髪くんは、どこに消えていたのだ?






おしまい
級車“マークⅡ

きっぷる

静穏事件

2021-03-13 07:59:08 | 夢洪水(散文・詩・等)
静穏事件



僕が海へ行った動機?

僕が、ある日、学校の帰りの電車で外を見ていたら、こう胸が、ぐぅっとつまって突然、海に行きたくなったんだ。それだけ。

そう、それで学校やめて、家の金を盗んで海に行ったの。

女?そう女はねぇ、う~ん、あれは、あの旅館に泊まって、10日目ごろかな。僕が朝、浜を歩いていると、一人淋しそうに舟の上に座して海を見てるんだ。そんで、僕が、その人に朝食を奢ってやった。 女の経歴?さあ忘れたね、うん、たしか大学の文学部に行ってたらしくて年は24か5くらいだったよ。それから、僕は、その人を旅館に連れて行った。

僕が、ねぇ28才だよって言ったら彼女信じてくれたよ。実際は20才だったけど。

僕はセールスマンだって言ったら、今度、彼女は信じてくれなかった。彼女は「セーェールゥースマンだったらぁ、もっと話しを合わせるのがうまいはずよぉ~、それにさー目が、目がさーよどんでるわぁー」と、こうだ。

僕は「そう。」と答えたのを覚えている。昔から僕は人に対して「そう。」とか「うん。」って答えることにしてるんだ。何故って、他人が恐ろしいからだよ。

その時の彼女の言葉は、僕をうれしがらせた。・・・・・・・・で、その日じゅう2人で旅館でゴロゴロして、夜が来た。

彼女は僕のカバンをゴソゴソ探して、薬を見つけた。僕が見ていると彼女は、それを机の上に置いて“びぇ~びぇ~”泣いてたっけ。彼女は何を思っていたのかねー。・・・・・・・で、フトンをしいて僕は横になった。彼女は寝間着をパジャマして着て横に座ってた。そして「死のうかぁ」と僕が最初に言い出した。彼女は「う~ん、そ、だね」と、それだけ。

薬1ビンを半分ずつ飲んで、僕らは寝た。やがて少し苦しいなと思ったら彼女はもう、すやすや寝てる。僕も、そのうち寝てしまって、朝、目がさめると、僕も彼女も生きていたというわけ。

それから2人で笑い合った。何だか可笑しくて可笑しくてしょーもなくて腹を抱えてギャハギャハ笑った。けど、急にシラけてきたんで僕は一人で海に行った。ピューーーピューーーと鳥たちが空をくるくる回ってる、得体の知れない漂流物が一杯、波で洗われてる、そういう朝の海を見ていると何となく心配になったんで走って旅館に戻った。

彼女は、いなかった。やがて僕は何となく、いやになって東京に帰った。JR東海道線でね。

家には帰る気がしないし、友人のアパートに行った。その友人が竹之内君だ。彼は僕が頼んだ時、こう言ったっけ。

「僕らはさー、親友じゃないかー、マジ困ってんならさー、いつでも役に立つからさー」

それから何日も彼のアパートにいた。たくさん金を持ってたんで、彼にほとんどくれてやった。彼はいっつもケータイで何かやってて、なんだかんだと外出して、ほとんど毎日、帰ってこなかった。たまに帰ってくると、2~3人、友人を連れてきて、ガヤガヤ騒いでいた。

そのうち、僕も、その友人たちと仲良くなっていました。


ある日、僕は、ちょっと彼らの気をモマシたく思いました。そこで、凄い恋愛話をつくったのです。

その話は、こんなのでした。僕は、その(空想の)女性と、ずっと付き合っていました。運命に結ばれた強烈な愛です。もちろん相思相愛で、いつでもお互い同士、身体を触れ合っていないと死んでしまうんじゃないかと思っていました。雨の日も雪の日も嵐の日も地震の時もピッタリと身体をくっ付け合って愛し合っていました。ついこの間まで、僕は、ずっと心の底から彼女を愛してました。いや、今でも愛しています。というのは、つい、この間、どうしてだか彼女は自殺してしまったのです。僕はやりきれません。こんなことってあるのでしょうか。何故、彼女は僕を残して一人で死んでしまったのでしょうか・・・・・・


なぁんて、言いながら僕は、ほんと、マジで悲しくなって涙さえ流しました。

その時、僕は気づきました。それは彼らの目でした。僕の言うことを、まるっきり信じてないのです。

竹之内君は言いました。

「なぁー、そんなに悲しむなよぉ。マジ俺まで悲しくなるよぉー。気を持ち直してさ、しっかりしろよー、な。」

なんて、軽蔑の混じった目で、僕を見ながら言います。

そして僕は、「ちょっとトイレに・・・」と言って部屋を出ました。ドアを閉めて、しばらく本当の涙をポロポロ流しました。すると聞こえてくるんです。彼らの言葉が。

「マジかよ?ふかぁーしっ!」「うそばっかぁ~何あれぇ~」「あんなマジ泣きみたいなことしてさーヤバくない?」「チョー甘えてるって感じよねー」「愛してますだと、何じゃそりゃー、うきゃきゃきゃー!」「ぶははははは、頭イっちゃってんじゃん!」

僕は呆然として、ふらふら外に歩き出しました。どこを歩いてたんでしょうか、僕の前を、男と楽しげに絡みながら歩いている女がいました。そう、あの人です。あの海で一緒に死のうとした女なんです。

僕は、ふらふらと彼女たちのあとをついていきました。やがて男の方は女と別れて、どこかに行ってしまいました。そのあとも僕は、ずぅっと彼女を、つけました。彼女は楽しそうにニコニコしてます。

ひとけの無い道で僕は彼女を呼び止めました。彼女は、しばらく呆然と、僕のことを見ていました。僕は何だか急に身体が震え出してボロボロ涙を流しました。

夕陽が僕の顔を明るく照らしていました。彼女も涙を流しました。“びぇ~びぇ~”と子供のように泣き始めました。僕は辛くて地面に倒れて泣きまくりました。”びょぇ~びょぇ~”と僕も子供のように泣きました。そして、今度は彼女が、「じゃ、さ、マジ、死のうかぁ」と言いました。


僕らは全面ピンク色の遊園地みたいなラブホテルに行きました。そして、今度は1ビンづつ薬を飲みました。

真っ暗にして寝ました。ファンの音が小さくヒュゥウゥウゥゥと聞こえていました。僕は言いました。「俺、セールスマンじゃないよ。年は、ちょうど21だよ、今日が誕生日なんだぁ~」

女は空気の抜けたような声で「へぇ~、そーなんだー、まーどっでもいっけど、さよなら、セールスマン君」


それが全部です。そうです、次の朝、彼女は死んでいました。



 


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