今日も、いつもの様にタバコの上を、お日様が照らしだした。 夜明けだ。 朝陽のシュプレヒコールだ。 起きろ。 起きろ。 飛び出た。 外へ出ろ。 みんな陽気に外へ出ろ。
彼はビルによって影になった歩道を歩いてやって来る。 慣れたしぐさでタバコに火をつけ、スゥーっと一服。 “ゴホッ ゴホッ ごほごほごほっ!” 彼はタバコを吸っている。 しかも、咳き込みながら。
「オォい、6回目の検定どうだぁ?」 「落ちた。」 「ワッハハハ、ワッハハハ ぶげぎょぎょぎょぎょー!」 もう笑いのマトになっているのです!
でも、本当にブン殴るなんて恐ろしくてできません。もし相手が死ななかったらと考えると身がすくみます。 さぁて、とうとう俺が死ぬ事にしました。
さあー、線路に寝転がり、最後の1プク!! 「ああ、うめぇ!うまかったぁー!」 おや、電車が猛スピードでやって来た。 「やや!吸えたぞ!美味しく吸えたぁ・・・」 「ぼかぁ幸せだな・・・・・・・・スパスパ・・・」 が、おそかった。
次の電車が赤い肉片に気づいて停車した。 頭蓋は砕かれ脳味噌はグチャグチャ。
夜明けだ。 朝陽のシュプレヒコールだ。 起きろ。 起きろ。 飛び出た。 外へ出ろ。 みんな陽気に外へ出ろ。
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UFO襲来 |
ある晴れた秋の午後でした。一台のUFOらしきものが地球に近づいて来たのです。それはTVやインターネットで全世界に中継されました。 私はヤホイという者で、UFOの権威でした。それで、幸いな事に、UFOは日本に着陸しそうなので、私もかり出され、現場を見に出掛けたのです。 私と仲間のUFO学会の人たちが着くと、ちょうどUFOが地面に着地したところでした。取材陣や研究家や高名な学者や野次馬が大きな輪になって取り囲んでいました。 パニックを抑えるためか機動隊が人々をUFOに近づかないように最前列で囲みを作っていました。背後には自衛隊がしかるべき場所に配置されているようでした。 私たち、いやおそらく様々なメディアを通して見ている全人類が、相当な緊迫感で凝視していました。現場にいる私たちは、なおさらでした。 着地すると、すぐに私たちの目の前にある小さな黒い点が、大きくなり、そこからスルスルと白く輝く階段状のものが伸びてきて、中から人間にそっくりな宇宙人たちが出てきました。人々は喝采の雄叫びを上げました。 宇宙人が私たちとただ一つ違っていたのは、彼らは後ろ向きに歩いて来たのです。UFO学の権威である私は親善大使として選ばれ、一人で近づいて行きました。そして彼らの一人が後ろ向きのまま近寄ってきて、私に一冊の本を渡しました。が、渡すときは、くるっと前向きになりました。 その本には何やら私たちへのメッセージみたいなものが書いてありました。私は、さっそく解読するよう言語学者に手渡しました。宇宙人たちは大歓迎を受け、地球上のあらゆる要人たちにもてなされる事になりました。 その後、宇宙人たちは要人たちのもてなしを全て無視して、何やら訳の分からないことを、やっていました。誰が、どんなやり方でコミュニケートしようと一向に通じないので、取りあえず無害なようなのでメディアの監視の元で、彼らのやりたいようにやらせておかれました。地球はお祭り騒ぎでした。 じきに彼らは、今度は前を向いたまま後ろに歩いていってUFOの中へ戻り、飛び去って行ってしまいました。人々の熱狂は、彼らが去った後も、まだ続いていました。 地球全体が熱狂の渦に包まれている間、私たちのグループや一部の学者たちは、冷静に研究を続けていました。 そのうちに本を手渡しておいた言語学者が私のところに来て言いました。 「おかしいんだ。途中まで解読できたが、どうしたわけか文字が後ろからどんどん消えてゆき、コピーやコンピュータに入力した文字データも全て消え失せて、しまいには本まで消滅してしまったんだ。私の目の前で。」 私が、じゃあ消えるまでに解読した分の内容は?と聞くと、これまたおかしなもので、彼らは地球を超コバルト反重力装置で一瞬のうちに消したが、どういうわけだか消滅した後にまた現れたという内容だと言うのだ。 そして宇宙全体の法則が狂い始めているんじゃないか?それも、この地球を中心に、と考え、その前代未聞の現象を調査しに地球に降りてきたところあることが、分かったそうだ、“それは・・・”で後は消えてしまったのだそうだ。 しかし私には、もう分かった。奇怪だが信じぬわけにもいかない。彼らは私たちと逆元の世界にいるのだ。 私たちが未来へ向かって生きているとすれば、彼らは私たちの過去(つまり彼らの未来)へ向かって生きているのだ。だから彼らは後ろ向きの姿で歩いていたのだ。 すると彼らの過去で消滅した地球は私たちの未来で消滅する訳だ。じゃあ、もうすぐじゃないか。 しかし彼らが、地球を壊す前に見た地球は何か?それは私たちにとって未来の地球である。となると彼らは私たちにとっての未来の地球を消滅させると共に、自分たちにあってはならぬ過去を目撃した。彼らは地球を消滅させると共に自分たちの過去をも壊してしまったのだ。彼らの時間軸を自らの手で狂わせてしまったのだ。 それで地球は消されても、消えていなかったのだ。彼らは私たちの過去に向かって進んでいたのだから。となると消す以前に彼らが目撃した地球が無くなるということは、彼らにとっては過去が無くなるという事だ。 ということは彼らが超コバルト反重力装置を使用して消し去る前に見た地球は、存在してないはず、ということになる。だとすれば彼らの過去もなくなるんだ。壊れた過去は彼らの存在を許すはずがない。要するに、彼らも消滅するんだ。 本の内容による分析がこういう結果になると、その後あらゆるメディアによって全世界の人は信じ込んだ。しかし情報は一人歩きし始め、様々な誤解とデマにより、もうすぐ地球の最後がやって来るというものに変わって行った。地球は消えないはずだったのだが・・・ 世界中の人間は奥底にハルマゲドン願望を持っていた。これがいけなかった。人々は、どうにでもなれと、暴れ狂ったのだ。私自身も集団暗示に掛かり思考停止状態に落ち入った。どうせ死ぬのなら、何でもしてやれ。人々を殺しまくり、女を強姦し、暴れ狂った。
そのうち本当に巨大な閃光と共に地球は滅んだ。 * 「どうも、我々と友好を結べる惑星は無さそうだな。」 「ああ、あんなに苦心惨憺たる芝居をして確かめているが、その結果、合格した星は一つもないとは・・・消えてしまう本のトリックにも気づかないみたいだ。」 「ああ、この宇宙中の知的生命体の住む惑星全部が、あんなに凶悪な本心を持った連中だらけだとしたら本当に恐ろしいことだ。我々は全部の星を消しちまわにゃならないや・・・」 「次の惑星の住人たちの平均的知能指数は?」 「250くらいだ。」 「よし、では空から、その惑星の金や金銀財宝でも、ぶちまけてやるか・・・・・もう下手くそな芝居は面倒だからやめにしよう・・・」
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kipple
日付はいらぬ。思い浮かんだ事を全て書け。
そして、その女は、俺のレコード板をフライパンがわりにして目玉焼きを焼いた。(俺は、あとで、それはいとこのイワコちゃんだと、決めつけた。)彼女は身体を黄金色に輝かせて部屋を出て行った。 俺は目覚めると、さっそくレコード板に針を落とした。ハリは、レコード板を一気に駆け抜けて、空中へすっとんでしまった。俺は憤怒を覚えた。何故、俺は、こんな目にあわねばならんのだ。俺はイワコちゃんに何をしたというのだ。 俺は激しい孤独感に襲われた。 それから俺は寝間着のままで階段を駆け降りて、おかあさんに言いつけた。 「おかーさーん!イワコちゃんがねーーーーーっ!・・・・・・」 おかあさんは、どこにもいなかった。 フト窓外を見ると緑色の車がガレージから出てきた。おや?運転席には、イワコちゃんが乗っている。俺は焦った。車は遠ざかり、遠ざかり、すぐに緑の点になった。 俺は家の中にたった1人残されて、絶望感を感じていた。あたりが次第に赤く染まってきた。俺の目が充血しているのだ。赤い涙を流した。世界は血に染まっていた。決して夕暮れのドロドロじゅるじゅるの真っ赤な煮え立った太陽が染めているわけではなく、俺の目が充血して目玉に血のベールがかかっていたのだ。 俺は、ただ青い海と空とやわらかな風が欲しかった。
島の中央に小さな山があり、標高100mほどだ。山には横穴があって、俺は穴の動物たちをM1ライフルで掃射して、生活道具を中に運んだ。乗ってきたモーターボートからガソリンを抜き、それで火をつけて燃やし、二度と自分で島から出れぬようにした。さっぱりした。 生活して行くのは思ったより簡単だった。食い物は必要なだけ島の動物や魚をとって殺して食えばよかったし、涌き水も豊富にあった。元来、身体が丈夫なせいか怪我も病気も殆どしなかった。俺は昼間は島をぶらついて狩猟したり持って来た文学を読んだり(ゲーテやドフトエフスキーは何度読んでも飽きなかった)して過ごし、夜は穴で寝た。爽快そのものだった。何もかもが充実した。俺は生きてる。自分の力で生きている。全身が幸福感に満たされ、生命の輝きを身を持って知った。 俺は何度も山の頂きに勇者のようにしてサバイバルナイフを太陽に突き刺して凝立し、世界に向かって絶叫した。
ある日、どしゃぶりが続き熱を出した。熱はいっこうにおさまらず、たぶん俺は肺炎になった。俺は死ぬんだなと思った。俺は自分の力で生きてきた、毎日がぬるい平凡な他人どもとの生活になんか比較にならないほど充実した人生を送った。俺は偉い!偉大だ!! しかし死ぬ間際に俺の口から意外な言葉が飛び出した。 「おかーーーさーーんーーっ!僕ぅーーー!さびちーーーーいっーー!」 えーー?何てことだ!う・嘘だろーーー!そして俺の人生は終わった。 人生って!何だぁぁぁぁぁぁああああ~! |
こんなもんが、いつの日からオレのポケットの中にあったか分からない。そいつはレーザー銃だ。 最初は誰かが何となく悪戯のつもりでオモチャを入れたのだろうと思っていた。オレは、ちょっとふざけて自分の部屋の目覚まし時計を撃ってみた。時計は跡形もなく、空中に消えた。 こんな代物が今現在の科学力で作れるのか?不思議だった。オレは今、途方に暮れている。そして銃を握ったまま、つけっぱなしになっているTVをボォッと見つめていた。 しばらくしておかしな事に気づいた。無いのだ。いつもTV画面の隅の方に表示されている時刻が映らないのだ。いつもなら画面の左上に7:05という具合に映っているはずだ。 オレは、ちょっと不安な気持ちになり、マンションから出て、しばらく歩いた。そして不安は的中した。すれ違う人々は誰も腕時計をつけていない。途中で友人に出会ったので、こう聞いてみた。 「やあ、お前さぁー、何で時計をしてないんだよ。」 すると友人は不思議そうな顔をして、 「えっ?何だい? ト ケ イ ? 何の事だ?」 と、答えた。 オレは苦笑いを浮かべ、“いや、何でもない”と言って彼と別れ、駅に向かった。駅ビルの正面にいつもでっかく貼り付いている時計は、やはりなかった。商店街や回りのビル群の時刻表示も、やはり無かった。 いったい、この銃は何なのだ?何のため、何者によって、オレのポケットに入れられたんだ?そして、この奇妙な出来事はなんだ!オレの自宅の目覚まし時計を撃っただけで、全ての時を刻むものの存在と、その概念が消えてしまうとはね!で、撃った本人からは、その概念だけは消えないという訳だ!オレは時計の存在を覚えているからな! オレは、しげしげとその銃を見た。すると白と黒の2つのボタンが付いていた。切り替えスウィッチのようだ。オレは、さっき白のままで時計を撃った。じゃあ、黒にして撃ったらどうなるんだろう? やってみよう。取りあえずスウィッチを黒に切り替えて、オレの嫌いな犬を撃ってみよう。この辺には、わんさか犬好きがいて、キャンキャンキャンキャンひっきりなしにないてやがる。うるさくてしょうがねぇ。そしてオレは、自宅に戻りながら、なるべく人気のないところで、キャンキャンうるさくないている近所の犬を撃った。犬は消えた。 ?同じ事なのか?いや、違う。撃った犬は消えたが、向こうの家の犬は存在している。そうか!この黒ボタンは、撃った対象だけを消しちまうんだ。犬の存在と概念の全てを消し去るには白ボタンに切り替えればいいわけだ。 そしてオレはボタンを白に切り替えて、他の家の犬を撃った。あたりがシーンとした。犬の鳴き声は、もうどこからも聞こえてこない。やはり、そうだ。この世界から犬は完全に消滅したのだ。犬という概念さえ消滅したので飼い主から文句が来る事もない。犬なんて最初っから飼った記憶が無いわけだから。 さあて、オレは凄いものを手に入れてしまったぞ。オレは、どうするべきか?この銃を、みんなに公開すべきか、オレだけの秘密にしておくべきか。決まってるじゃないか、そんなこと。オレの為に使うんだ。オレは、この銃によって嫌いなものを、この世から全て消し去り幸福をつかむんだ。
消しまくっているうちにオレはあることに気づいた。それは人間の欲望や、抽象的な概念まで消すことができるのだ。例えば、競争心、憎しみ、病気 、嫉妬、暴力、などだ。それらの概念に想いを凝らして頭の中でその言葉を繰り返し、自分の中で例えば憎しみを増幅させて、誰でもいいから人間にむけ、白ボタンで撃てばいい。 オレは消しまくった。他の抽象概念は、例えばオレの嫌いなヘビメタ音楽に想いを寄せて、再び頭の中で「ヘビメタ消えろ、ヘビメタ消えろ・・・」と繰り返しながら思い切りヘビメタを憎んでヘビメタのCDを撃てば、この世から無くなった。オレは、この銃によって超能力者になってしまったらしい。まあ、この銃あればこそだ。
それからオレは、もっともっと嫌な物事を消しまくった。そして、オレにとってだけ、この世は、素晴らしく住み心地のよい世界に大変貌した。オレ以外の奴には全ての犯罪行為の存在や概念さえ分からないし、元となる欲望まで消してしまったから、悪事を思いつく事はあり得なかった。 この銃で消し去ったオレ自身の中には、色んな犯罪欲動が渦巻いていたがな。競争心も嫉妬も・・・おかげで、オレは大金持ちだ。美しく良い妻を金と力で得て、暖かい良き家庭を作った。そして子供が産まれて、本当に、う~ん、まったくもって素晴らしい世界になった。
ハッと気づくと、息子がオレにじゃれてきた。可愛いものだ。オレは笑いながら寝ぼけまなこで、そばにあったオモチャのピストルで息子を撃った。息子は、キャッキャッと喜び、床に落ちてる銃を拾い上げて応戦した。 しまった!気づいたときは遅かった。息子はオレを例の銃で撃ってしまったのだ。しかも切り替えボタンは黒、すなわちオレだけを消し去るモードにされていた。油断した、つい、うとうとしている間に肌身離さずに持っていた銃がポケットから落ちてしまったのだろう。 ということはオレの存在が無くなってしまうのだ。そしてオレは、もう消えていた。
「オレの嫌な、オレにとって邪魔なものばかりじゃないか。そうか、オレが撃ったものは全て、この世界に来ていたのか。くそうぅ!」 オレは、いつもの癖でさっそく消しちまおうとポケットを探った。無い。もちろん、もう、その銃は無いのだ。この世界に銃は存在してないのだから。 オレは、これから出会うだろう無数の嫌な出来事を考えているうちに、気が遠くなってきた。 |
kipple
(どっちんおとこ)
クラーッシュ!クラーシュ! どっちん! クラーッシュ!クラーシュ! どっちん!
どこから来たかも知らねども! どこのどいつか知らねども! 俺は、どっちん男です!
ばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃ
俺はイワオを待っている。 イワオは非常に無口だった。 俺は何度かイワオを憎んだことがあった。 俺はイワオが無口なのを利用して 俺の意見をイワオに押し付け イワオに無理やり俺の理論を納得させた。 そして俺はたっぷりと優越感に浸った。
雨が土にあたった時の飛沫のおかげで 俺は自分の足元を見る事が出来なかった。 物凄い どしゃ降りだ。 そのどしゃぶりの中に俺は傘もささずに突っ立っているのだ。 俺の目の前の湖も、すっぽりと この雨の情景の中につつまれてしまっている。 泥水は勢い良く湖に向かって流れて行く。 俺の足のあたりの泥が、どんどん前に削られていく。 俺は土の中にズブズブと、めりこんでいく。
しかし雨水のおかげで壊れたらしい。 文字盤には針がなかった。 映画のスクリーンが溶けていくような景色を見ながら 俺は、どんどん土に埋まっていった・・・
俺が悪かったぁぁぁぁぁああ!!
ばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃ
俺は、どっちん男! 俺は、どっちん男! 俺は、どっちん男! 俺は、どっちん男! 俺は、どっちん男! 俺は、どっちん男! 俺は、どっちん男!
ばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃばちゃ
どっちん! クラーッシュ!クラーシュ! どっちん!
どっちん! どっちん! どっちん! どっちん! どっちん! どっちん! どっちん! ・ |
やって来た男 |
さんざん、にぎわって地球上をくまなく覆い尽くした情報ネットワークも何の意味もない。一人じゃ何の意味もない。ざまぁみろってんだ。オレは人間が大嫌いだった。ネットワークを駆使して現実に接しなくとも同じ事だった。裏で操作してるのは人間であることには変わりないんだ。人間はイヤだ! そう、オレは人間嫌い。そのオレ様が、たった一人、この惑星で生き残ったってぇんだから、まさに思うつぼよ。どっかの神様は粋な事しやがるって訳だ。 “うん?” 何だ?この音は。警報装置が何かを捕らえたぞ!何だ、人間だ!まさか。世界中の生命感知装置を駆使して、また衛星からも地上の生命反応を分析して生き残りの人間がオレしかいない事を確認したはずだ。何かの間違いじゃないのか? 何故だ?どこでどうやって生き延びやがった。あらゆるシェルターは壊滅したはずだ。ここだけが奇跡的なエアポケットだったはずだ。 しかし間違いない。これは人間の反応だ。しかもオレには分かる。凄く嫌な奴だ。嫌な奴がやって来る時、千里先からの足音も聞こえるって言うじゃないか。それだ。 あああ、凄く嫌な奴がやって来る。人間の中でも特別に嫌な奴だ。オレ以外に生き残った、もう一人の人間。あああ、せっかく一人になれたのに。 長い長い土の道を、その男は遠く地平線の向こうからやって来た。 オレは近づいて来る男を、じっと見つめ続けた。 彼は案山子のような男で、黒いサングラスをしていた。 オレは震えて身動きできずに見つめ続けた。 ずっとずっと呆けたように見つめていた。 気づくと望遠鏡に超アップで彼の顔が映っていた。 彼は、とっくにオレの目の前に来ていたのだ。 そしてオレが望遠鏡から顔を離すと彼は言った。 「世の中にはなぁ、嫌な奴がたくさんいるぜ。オレが知ってる人間には4種類あるんだ。頭が良くて現実的な奴、頭が良くて空想的な奴、頭が悪くて現実的な奴、頭が悪くて空想的な奴。
「全く、その通りだ。オレも同じ事を思っている。だから人間どもの存在する現実には耐えられないんだ!」
「君となら、うまくやれる。」
彼は不満そうに顔を斜めに歪めて出ていった。再び、彼は遠くへ遠くへ、去って行った。オレは、それを再び高性能の望遠鏡で見つめ続けた。 嫌な奴の音が、次第に小さくなっていく。ちぇっ!あれが可愛い女の子だったらなぁ。事もあろうに、オレの一番嫌いな人間、オレ自身がやって来るとはなぁ。 オレはオレなんかと暮らしたくねぇんだよぉ~! オレはオレと暮らしたくないので小型原子炉の温度を上昇させ炉心溶解を起こして自爆した。 荒野には汚染された空っ風が吹いた。
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kipple
父親が死んだ時、ヤッケス青年は、あまりのうれしさのために、2階の窓から大声上げて飛び出しかねなかった。 次に、彼の気の弱い母親が、父親の後を追って手首をカッ切った時、やはりヤッケス青年は心臓が目から飛び出すくらいの狂喜に見舞われた。 人前では、必死に厳荘な顔つきをして見せたヤッケス青年は、こらえきれず、時折、くちびるを横に長くひきつらせた。 弟のミックは、心から涙を流した。 ヤッケス青年は、その弟の姿を見て、ますます、おかしくなって、見る度に“ブッ ブッ”と、小さく吹きだした。 莫大な財産は2等分された。
ある日、彼は密猟をしている男を見つけ、背後から忍び寄り、斧で叩き殺して、散弾銃と弾丸を奪った。 そして、頭のすぅっとする満月の夜に、月光のスポットライトを浴びながら、口笛を吹きながらその男の死体を邸の裏庭に埋めた。 ある日、弟のミックがやって来た。 その晩、兄弟で酒を飲み交わしている時、ヤッケス青年は今までの自分の心情を吐露したくてたまらなくなり、大声で泣きながらミックに抱きつき、こう言った。 「俺はオヤジの悪名のため、いつも虐待され、からかわれた。世界中の人間は俺に敵意を持っているんだ!その中には殺意も含まれているんだ!だから、もう、俺は人里で生活する事は出来ないんだ!」 ミックは黙って聞いていた。そして兄の頭をぎゅっと握りしめた。 ミックは一晩中、狂ったように泣き叫ぶヤッケス青年の傍らでじっとしていた。そうする事しか出来なかった。 翌朝、泣きわめき酔いつぶれ、テーブルの下で吐瀉物の中でぐっすりと眠っているヤッケス青年に“それじゃ、僕は帰るね”と声をかけ、ミックは疲れて悲しい顔をして帰って行った。
妄想の中で、いつもヤッケス青年はスーパーサイヤ人やゾッド将軍や「アキラ」の鉄雄以上の超能力者となって、永遠の唯一の彼の理解者である恋人と供に地球上のすべてを破壊し、人間どもを指一本で残虐に殺しまくるのだった。 一週間に一度、ヤッケス青年は町へ下りて、買い出しに行った。そして、その度に、その時々に接する人々に対し強烈な憎悪と不可思議な愛情を抱いた。 その旅人は20才くらいの大学生風の2人の男だった。 その夜、ヤッケス青年は、その2人に酒をふるまい、ぼつぼつこの辺の地理の説明をしているうちに、いつの間にか論争になってしまった。 「何故、こんなところに一人で暮らしているんですか?」 「何故、人が嫌いなんですか?本当は自分が嫌いなんじゃないんですか?」 「何故、人を恐れるんですか?本当は自分が怖いんじゃないんですか?」 「何故、人を憎むんですか?本当は自分を憎んでいるんじゃないんですか?」 「惨めですね。あなたは弱虫ですよ。こんなところで一人っきりで暮らしていたって、何も変わりはしませんよ。自分で人と交わりながら自分自身を変えていかなければ。」 ヤッケス青年は次々と自己矛盾を指摘され激怒し、わめきまくった。 「おめえらが、そうやって俺を傷つけてるように全人類は無言で俺を傷つけてるんだ!認識しろ!認識だ!お前らの中の俺に対する悪意を!」 ヤッケス青年は暴れだし、ボトルを割り、グラスを投げつけ、テーブルをひっくり返して狂気の如く吠えた。 「死ねぇ~、みんな死んじまえぇぇえええ!」 2人の旅人は目を丸くしてヤッケス青年の大暴れをじっと静観していた。 しばらく喚きちらし2人の旅人を糞味噌にののしり世界中の人間を罵倒していたヤッケス青年は、何だか急に恐ろしくなり、土下座をして謝り泣きながら自分の振る舞いをわびた。 それからヤッケス青年は壊したグラスや家具類を、しくしく泣きながら、丁寧にかたずけて、床を拭きワックスをかけ綺麗に元通りにして、再びニッコリとひきつった笑顔を浮かべながら2人をもてなした。 2人は呆然として、ヤッケス青年を見ていた。そして今度は黙ってヤッケス青年の神経を気づかいながらもてなされた。 次の日、彼らが昨夜の無礼な発言を詫び、一宿一飯の御礼を言って去ると、その後ろ姿をヤッケス青年は猟銃で狙い、引き金をひいた。 しかし、弾は外しておいた。ヤッケス青年は何度も何度も2人に向けてカラ撃ちして“ばぁか、死ね。ばぁか死ね。”とつぶやいていた。
頬杖をついて窓から外の雨模様を見つめていると、ふいに涙がこぼれ落ちてきた。涙はとどめなく流れ続け、ボトボトとコーヒーの中に落ちていった。 雨でにじんだ外の風景の中からピンク色のレインコートが近づいてきた。 そのピンク色のレインコートはドアを大きく開け、小雨を伴った冷風と供に喫茶店の中に入ってきた。 目もくらまんばかりの美しい女性だった。彼女がドアを閉めると再び店はひっそりとした。 ヤッケス青年は、ずっと彼女を目で追っていた。彼は自分の前の席についた、その女性を、じっと見つめた。絶対、目をそらさずまばたきさえもせずに見つめ続けた。 その女性はホットコーヒーを品良く飲みながら文庫本を読んでいたが、背後からの不気味な視線の圧力を感じて、何気なく振り向いてみた。 後ろの席には、手を伸ばせば届きそうなくらいの位置に、目を剥き出しにした必死の形相で、こちらを直視しているヤッケス青年の顔があった。 あまりの迫力に彼女は、すぐに姿勢を元に戻し、再び、文庫本に目を落としたが、冷たい汗がツッーと額を流れていくのを感じた。 見てはいけなかった。そう彼女は思い、本に意識を集中させ後ろの男の事を忘れようと思ったが、不気味さと不信感は強まるばかりだった。 ヤッケス青年は、何故だか、今の女の態度に、凄まじい劣等感を感じて、顔が真っ赤になり、ぶるぶると全身が震えだした。 ヤッケス青年は、その女をどこかで見たような気がしてきた。ガタガタ震えながら、絶対にどこかで見た、見た、と、彼は確信を強めていった。 そして、彼は思い出した。 彼女は、ヤッケス青年の妄想世界に出てくる女に似ているんだ。妄想の中で、彼女は優しく心の暖かい彼の永遠の恋人だった。 彼と一緒に人類の文明を全て破壊し、人間たちを思う存分ぶっ殺す最高の相棒であり最愛の恋人だった。 しかし、現実のヤッケス青年は、ただ、執拗にじっと見つめ続けるだけで何も、する事ができなかった。頭がグラグラし始め身体や顔のふるえも極に達しつつあった。 “ひょっとしたら、彼女は俺の事を笑っているんじゃないか?きっとそうだ、後ろ向きでクスクス笑ってるんだ!バカにしてるんだ!” ヤッケス青年は次第に、自分が彼女に変態と思われ、あざけ笑われているという妄想におそわれだした。それは強度の強迫観念と化していった。 ヤッケス青年は、頭がはじき飛ばされそうなイラダチに襲われ、おもむろに立ち上がって、店内から雨の降り続ける外へ飛び出した。 両手を頭の上で激しく振り回しながらヤッケス青年は駐車場に向かい、自分のライトバンに荒っぽく乗り込み、思い切りアクセルを踏んで車を走らせた。 雨の中を、センターラインを無視して、狂ったように乱暴に走らせた。 途中でヤッケス青年は、猫を何匹か、うさばらしにひき殺した。ぐにゃりとした感覚で車が少し浮き上がるのが何だか少し気持ちよかった。 町の出口の近くまでくるとヤッケス青年は急に鳥が欲しくなった。車を迂回し、彼はバードショップのあるところまで引き返して元気のよいセキセイインコを2羽買った。 そして彼は車の中にセキセイインコ2羽を放し、モーツアルトの25番を大音量でかけて、狂ったようにギャーギャーわめきながら再び車を猛スピードで走らせた。 走っているうちにヤッケス青年は、ずいぶん前に死んでしまった、いとこのジュンコの事を思いだした。 “そういえばジュンコは鳥が好きだったなぁ。 そういえばジュンコは唯一の俺の理解者だったなぁ。 そういえばジュンコの死は余りにも早く残酷だったなぁ。 14才の誕生日の日に顔に筋の入った通り魔に監禁されて殺されちゃったんだ。 何回も何回もレイプされてよぉ。 もっとも、その前に俺がジュンコをレイプしていたがなぁ。 ジュンコは喜んでたよなぁ。処女を奪ってくれて有り難うって。 ヤッケスは勇気があるのね!って俺の事を認めてくれたっけなぁ。 そうだ!俺には勇気があったんだよ。昔はなぁ・・・・ 勇気を出すんだ!勇気だ!自分と戦うんだ!ヤッケス! 勇気だっ!“ ヤッケス青年は急にドーパミンがA10神経をマッハの速度で大脳新皮質を突き抜けていくような高揚に満たされ、車をUターンさせ、先程の女のいる喫茶店に引き返していった。 何だかうれしくてたまらなくなったヤッケス青年は、満面の笑みを浮かべて、まだ小雨の降り注ぐ中を車を降りて、さっきの喫茶店に向かってダッシュした。 店に入ると彼女は、まだいた!彼女は、本から目を離し、方ほおづえで窓外をみていたが、ヤッケス青年にすぐに気づいて、ちょっと彼の方をぼんやりとした目で見つめたが、すぐに元のように窓に顔を向けた。 ヤッケス青年はニコニコして彼女に近づいていったが、突然、彼女は席を立ち彼のすぐ近くを、あたかも彼の存在を意識的に無視しているかのように通り過ぎて店を出ていってしまった。 ヤッケス青年はニコニコ度が少し落ちたがまだ笑みをたやさずに、少しの間ぼんやりしていた。どうしても動けず、さらに声もでなかった。 しかし、何か頭の奥の方がジリジリ・ジリジリしてきて、顔の下半分がガタガタ震えだし、突然、弾けたように飛び上がり、“ああ、ああ、ああ”と小さく声を出しながら彼女の後を追って店を出た。 店を出ると彼女がちょうど、赤いフェラーリニ乗って駐車場を出て行くところだった。 ヤッケス青年は、その真っ赤なフェラーリニ向かって、喉に長年詰まっていた心臓を思い切り吐き出すように、 「お~い! 待て~!」 と、やっと叫ぶことができた。輝くような笑顔が戻った。 勇気だ!勇気を出すんだ!と、ヤッケス青年は思いきりエビス顔を作り、素早くライトバンに乗り込み、彼女の車を追いかけた。 彼は長い間追いかけた、再びセキセイインコを車の中で暴れさせ、モーツアルトの交響曲25番を大音量で流しながら。 長い長い間、ヤッケス青年は彼女の真っ赤なフェラーリを追い続けた。彼の車は約200M後方をピッタリ維持していた。 途中、一度、彼女はコーヒーを飲みにドライブインに立ち寄った。ヤッケス青年は駐車場からコーヒーを飲み一休みしている彼女をじっと見つめ続けていた。 その時、ヤッケス青年の脳裏に浮かんだのは、ずいぶん昔に見たスピルバーグの「激突」という映画だった。そして何だか彼は無性に可笑しくなり、鳥やモーツアルトの25番たちと一緒にゲラゲラ笑った。 彼女がドライブインを出ると再び、長い追跡が始まった。しかし、ヤッケス青年の高揚状態は急速に低下してゆき、何だかとても焦り始めた。そしてイラダチが始まった。 俺の精神は、いったい何を求めているのか!これは本当に勇気なのか?何のための勇気なんだ!俺は、何をしたいんだぁああああああ! と叫びながらも、彼はとにかく彼女を追う事だけに必死になる事にした。それだけが、とにかく今の俺のアイデンティティを支えているんだ!追うしかないんだ!
東京だ!ここには俺の昔の大学時代の友人たちがたくさん住んでいる。なんて事だ!ついに東京まで追ってきてしまったぞ!と考えているうちに、都会のラッシュの中に彼女の車は消えていってしまった。 見失った!俺の現在の唯一の救いを見失ってしまった!もう、彼女の家に侵入して犯して殺した後、バイオメカノイドとして再生させて2人で人類を滅ぼすことも出来ないじゃないかぁ! く・くそぉおおおおおおおおおお! あたりにはビルが林立し、すでに雨は降っておらず、都市の鋭角的な夕暮れの風景がヤッケス青年の脳を直撃し、何だかとてつもなく鬱でセンチメンタルな感情に彼を落とし込んで行った。 ヤッケス青年は車の速度を落とし、鬱々と考え込んだ。 “俺が今までやってきた事。それは脱俗だ!森の奥でたった一人で暮らし俗な欲望と世界中の俗物どもと交渉を持つことを断ってきたんだ!脱俗したんだ!俺は素晴らしいんだ!ざまあみろ!ここで蠢いている大学の仲間共はゴミと化している事だろう!かっかっか!自慢してやろうじゃんか!俺がお前らと違って、どんなに崇高な立場にあるか、知らしめてやろうじゃないか!きっと奴らは俺を羨望の眼差しで見るだろう!” ヤッケス青年は、それから、彼がどのようにして偉大な聖者になったかを自慢するために、その事に対してかつて仲間だった友人たちがどのように反応するかを確かめようと決心した。 そしてヤッケス青年は、かつて大学時代にとても仲の良かった友人たちを、かつての記憶をたよりに次々と訪問していった。 ある奴は大手の会社でずっと働き続け真面目に結婚して、すでに子供が2人いた。ある奴はプロのロッカーになって大勢のファンを獲得していた。また、ある奴はやっと司法試験に受かり喜びの真っ最中であった。 彼ら皆、尋常ではないヤッケス青年の様子に気づき、口々にこう言った。 「今、何をしてるんだ?」 ヤッケス青年は、友人たちの彼に対する軽蔑の視線を強く感じ、口汚く罵りながら、今自分がどんなに優れた生き方をしているかを説明した。 「俺は無職だ。働くなんてゲスな奴隷野郎みたいな事はできねえんだよ!俺はな、聖者になったんだぜ!たった一人で脱俗してな!脱俗だ!分かるかてめぇらに!俺は世界中で一番なんだ!てめぇらはゴミ以下だ。俗物どもめ!お前らのせいで、こんなに世界は息苦しいんだ!」 と、かろうじて彼は言ったが、友人たちの方が上手だった。見抜いていた。 「お前、30才にもなって、何をしているんだよ。俺たちはちゃくちゃくと自分の人生を築き、社会に役立とうと思って一生懸命やってるんだ。お前は、ただ逃げてるだけじゃないのか?からむのはよしてくれ、皆、忙しいんだから。もう来ないでくれよ。迷惑だ。君は君の、その脱俗とやらを続けて森の中で一人で死んでいけばそれでいいんだろう?」 と、友人たちは皆、このような事を言って自分の生活の中にヤッケス青年を入れようとはしなかった。
最後に彼は
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僕は時間をなくしてしまいました。 もう誰も僕には気づきません。当然、あの娘も。
時間をなくすって事がだよ! どういう事だか君に想像つく? 僕の姿は誰にも見えないんだよ。 でも僕は宇宙の始まりから終わりまで、ぜぇ~んぶ、いっぺんに見えてしまうんだ。 例えば、僕がこうなる前に住んでいた地球。 そこに見えるのは、塵からアメーバからウュルム氷期から、あなたや、爆発や、全部。 何から何までゴッチャリ詰まってるんだなぁ。 君たち、君たちは、全てと一緒に動いている。 生きている。とんでもないことだよ、これは。
バカだなぁ、君たちは時間を持ってるじゃないかぁ! 時間は、僕を隠しちゃうのさ。わかるよなぁ。 君たちは幸せだよ。時間は、隠れみのだもん。
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kipple
諸君!なんて言ってもどうせ「諸」がつく程、読まれやしない。ああ、オレ、バカだなぁ。 さて、とりあえずノンフィクションなので正確をきさねばならないのだろうが、残念な事に僕には「正確」をきす自信がない。 何故かと言えば僕は何もかもさっぱり分からないし(まあ、自分の守護神が鉄人28号のコントローラだって事くらいは分かってるけど)それだけに、みんな気味が悪い。 例えば人間は何故、地球上でこうして支配者側になったのか、何故、僕はすでに作られた、この炭酸ガスのめくるめく世界にポンと生み落とされなきゃならないのか。 宇宙の前には何も無かったのか、無とはどういう事か。これを正確に答えられる人がいたら僕は喜んで靴の底を舐める。(わけねぇだろ。うそつき!とつぶやくだけさ) ご容赦していただきたい。ちなみに正確とは「事実にあっている様子」という意味だそうだ。さらに様子とは「なんらかの判断や感情をもたらす主観的な物事の状態」だそうだ。 まとめて言うと正確とは「事実にあっていて、なんらかの判断や感情をもたらす主観的な物事の状態」となる。この主観的と言うところがミソである。 さらに主観的とは・・・伝々と掘り下げていきたいところだが、うんざりして、どうせ結果はメビウスの輪なんだ、と。どこまでいっても、ぐるぐるとフィンガートラップ。 これは「文字、言葉とは何ぞや?」のちょっとしたヒントになる。僕は、ここで言語学をとやかく言うつもりはないので、あとは想像にまかせるよ、ゴン太くん。 でも、ちょっと、いいね?悪いね、ゴン太くん。ある古代民族の言語には対意語というものが無かったそうだ。つまり善と悪、低い高い、正・誤・・・これらは皆、一語で表されたんだ。 もちろん固有名詞について言ってるんじゃないよ。頭のいいゴン太くんには、ちゃんと分かるよねぇ。 もし、これが抽象名詞の起源ならば、どうどうめぐりは当たり前。そしてこの「主観的」と言う意味づけは実に気がきいているわけだ。 世の中に、あふれかえっている言語表現は皆、「インチキ」という言語表現に落ち着きそうだ。ああ気味が悪い。ゴン太くんは気味悪くないかい?
やっぱり、これだってユングの主観の世界だって考えると、インチキ(主観)をインチキ(ユングの主観)でインチキ(文字・言語)によって種明かししてるんだから、ああ気味が悪い。
さて僕が、これから何を書くかというと、わけの分からぬ宇宙の片隅にポッカリ浮かんだ丸長の玉。 そこに住んでる人達が、どんなに情報とかのインチキに攪乱され、又、擁護されてゴキゲンになっているかというバカバカしさについて分析しようってわけだ。ども!
「つまりはこうなんだ結局。人間が塵から作られた事を諸君はよく考えてみなくちゃいかん・・・・・・しかしだな、そんな惨めな出だしのわりに人間はまずまず、うまくやってきたじゃないか。・・・」
ちなみにエントロピーの法則というやつのおかげで宇宙さんは「T×S」という公式によって、そのうち死んでしまうらしい。もっとも気が遠くなって金玉が抜け落ちてしまうほど先の話だが・・・・ さて、地球が今から、どのくらい前に出来上がったかは諸説あるけど地質学では26億年前から始生代、原生代・・・という具合に始めている。 では大幅に見積もっても、少なくとも四捨五入して30億年前には絶対に?地球は出来上がっていたはずである。 地球の原形完成を30億年前と勝手に仮定するぞ。宇宙年齢が55億才とすると地球は30億才、なかなかの風格じゃないか。新参者め!ビシッ!ビシッ!
そしてね、かの有名なアウストラロピテクスさん(ゴン太くんによく似てるねぇ)が登場したのが第1氷期の最中で、約200万年前という事だ。 その前の29億9千800万年のブランクに何があったのか。1億年くらい前に大きなトカゲさんたちが歩き回ってた事くらいしか僕たちは知らない。 そしてアルタミラ洞窟に落書きした人類の原形、クロマニョン人(日本じゃ浜北人や牛川人・・・?)が、かなりまっとうな形で登場したのが約1~2万年前だ。測定法によって違うだと? じゃかぁしいいいいい!われ!だまらんかい、こらぁ! あ、ごめんねぇゴン太くん。どうしてそれがわかるのかって?同じように僕も中学生の頃、社会の時間によくブーたれてたんだなぁ。 先生は、こう答えたよ。 「地層の古さでわかるのよ」 なるほど、そういう事だ。と、純真だった僕は納得してしまったが、高校の世界史の資料には、こう説明されていた。 「C14という放射性元素の減少の度合いにより推定する。」 なるほど、そういう事だ。と再び純真だった僕は納得してしまった。が、今、僕の持っている本にはこう書かれている。 「C14を利用したカーボンテストが効果的なのは2千年前から2千5百年前の範囲である」と! 今度は簡単には納得しない。アウストラロピテクスさんは200万年前、恐竜さんは1億年前であると取りあえず決めると、やはり地層(原石と比較した水和層の厚さ)かなぁと中学校の先生に感心してしまう事になるんだなぁ、うん。 情報とは、ゴン太くん、このようなタヌキの遍歴を僕に強いるのだよ。 メソポタミアの都市国家誕生を、まずB.C3000年とすると、人類の文明は現在にいたって約5千年間という訳だ。 地球年齢の約60万分の1が「まずまず、うまくやってきた」我々人類の歴史だ。じゃあ、どんな具合に人類はうまくやってきたのかなぁ。 シュメール人を見てみよう。ど~も文明と神様は、ひっついているものだが、彼らも例に漏れず、信仰で結ばれた氏族集団が神殿づくりにせっせと励み、ついに都市文化らしき時代を迎えたのであるのねぇ。 そして出ました。ついにここで文字が発明されてしまったのだね。文字は絵と供に彫刻となり、必ず神様が関係してくるんだよなぁ。 その後、神様と言語は切っても離れぬ仲となり現実に及んで、世界をのし歩いているんだ。 さて、そんで、「神様偉い!」とばかり信仰が体系化されてゆくと必ず、どこでも階級が出てくる。差別の始まりだな、うん。 シュメール人は神官・平民・奴隷という具合。日本じゃ大王=天皇・氏人・部民・という具合。要するに強者は都合よく神様とお友達になってしまうんだぁな、これが。ま、中には自ら神様になってしまう電波系さえいるよ。 で、実はそれ結構、僕にあてはまったりするんだなぁ。僕は神だと神からお告げが来たこともあったし、高校の時、プロクシマ星系の宇宙人に誘拐されて「君は神様なんだよ」って言われて変な任務を背負ってしまった事もあったものなぁ。 僕の頭にはイスカンダルでとれた鉱石「ピカール」が埋め込まれていて、それは神の証拠で人類を救済しなければいけないと、長い間思い込んでいたものなぁ。 あ、ゴン太くん、僕の事を変な目で見てるね。それは妄想だって言いたいんだろう。でも妄想の方がリアルな時ってのも人生には必ずあるものなんだよ。え?ゴン太くんには無いって?・・・そうか・・・いいなぁゴン太くんは。 あれ?何を話してたんだっけ?そうそう強者と神様の事だったね、続けるね。 そんで弱者、敗者は次々に神様と縁遠くなり、神様のお友達の王様による神様の伝言に従う事になるんだなぁ。その結果、王様にこき使われる訳なんだよ。 あちこちに文明が出現すると人種ごと部族ごと語族ごとのそれぞれの王様と全て異なる神様がお友達になってしまうんだな。 実に神様は八方美人なのだ。それに神様は、たいてい、巫女たちによる伝言形式で情報を与えてくるのであるのだなぁ、これが。 神様は、きっと姿なくして声(幻聴)だけのものに違いない。この声をロゴスという。 しっかしだなぁ、このロゴスはメチャメチャなんだよ。言ってる事が場所・時代・状況により、たえず変わってしまうのだ。 神様は、とんでもない嘘つきか、とんでもないお調子者か、とんでもない口下手に違いない。さもなきゃ、パープーだぁ。 さて、神の都メソポタミアのシュメール人はセム語族にぶっ殺されていき、バビロニアとなりインド・ヨーロッパ語族が馬や戦車で乗り込み、またまた、あちこちで殺戮を繰り返し、ついにエジプトとメソポタミアは結びつき、オリエントは一体化していったのだぁあ! どこでもそうだが、小国が大国として統一される際には、凄まじき大殺戮の過程があるのであるな、うん。起きてる?ゴン太くん。 んんで、大国化しても変わらないのは、専制君主は必ず最高の神官、あるいは神自身として君臨する事って訳だぁ。 さりとて!これも言語と大した違いはない。ない。人々は星や動物を崇め、それによって都合のよい情報を乞うたのだからにして。自作自演の自己マインドコントロール=文明ってか。 古代から人類は目に見えぬ何者かの情報に胸をときめかせていたわけだぁ。みんな僕と一緒ね。電波が遙か数万光年の彼方から、数億年の過去から飛んで来るんでしょ。うふ。 かくして、神の情報を都合よく信じ込むことにより、あらゆる殺戮が繰り返され、そのおかげで世界は、いたるところで大きくまとまりを遂げていくのだったぁ! これは神の情報を欲望とシャッフルさせ、たとえ錯覚であれナルシズムであれ、とにかく人類の歩みに偉大なる成果として貢献していったっつう訳だぁ! なんと情報しかもたらさなかった神様が、この時に限って実力行使に出た。エジプトを血の海にしたり、海をまっぷたつに裂いたり、と。 そしてシナイ山ではイナズマによって十戒を文字として石版に刻みつけたそうな。これをトーラというそうな。インチキが次第に妄想となって未来にとどくのね。 神様も、よーやるわ。さんざん、こけおどしをやって、しまいにはお得意の情報だけ残して、めでたしめでたし。あちゃー、なんとまどろっこしいのでしょう。実にエキセントリック。別の言い方すれば、キチガイか・・・おい!不謹慎だその言葉使うな!へぇ、ども!
それはモーゼもそうだが、世界各地に出没した救済者とか呼ばれる超能力メッセンジャーボーイたちである。これをスーパープロパガンダと名づける。 ついに情報だけでは、まどろこしくなり伝達メディアとして派手なおしゃべりエスパーを地球上に実体化させたわけだ。なぁ。 まずアジアじゃ仏陀だなぁ。なんと彼は瞑想によって天眠を得、死と再生の反復を見、宿主随念智(過去世の全ての情報)を得てしまったのだ。えれぇこったい。 これを悟りと言う。精神病理学では何というかは伏せておこう。 して、彼は煩悩を断ちきり解脱しろ、八正道により中道を歩め、そこにはカーストの差別は無いとの情報をもたらし、これは広まったぁああ! なんとギリシア哲学にも伝わり、グノーシス主義のエンペドクレスも仏陀になってしまい、どういうわけか彼はサンダルをきちんと揃えて、火口から愛の純粋飛び降り自殺をしてしまったとさ。 いうまでもなく、その後、仏教は多岐に分かれ多くの争いを生み多くの死者をだした。 又、神様が派遣したのはツァラトゥストラ、ペルシャのゾロアスターさんがいる。 彼は予知能力を持っていて、しかもプレコグだったらしい。 それにしても神様は、いたずら好きというか気が変わりやすいというか、今度は神様は善神と悪神の2神であると言い出したのだ。ここに神様の「てめぇら勝手にしやがれ」と善悪の選択を人間の自由意志に任せるという投げやりな態度がうかがえる。 彼、ゾロアスターは火こそ全て、火は全てを浄化すると言いふらし、肉体は復活すると教え、それはユダヤ教とキリスト教に大きく繋がっていったらしい。 ところでヘブライ人の超能力者、モーゼだが、彼はゾロアスターから都合のいい倫理解釈を抜き出し、唯一神はヤーウェであると言い出したんだな。 ヤーウェはヘブライ語で「ある」という意味だが、何故か当時、口にする事を禁じられていた。「ある」と言ってはいけないのだ!それじゃぁ対意語が、いっついだったってさっきの話からすると、「ある」を抜かせは「ない」になるじゃないかぁ。へへ!僕って天才。 きっと神様は「ない」に違いない。だから「ある」と人々に嘘をつかせたくなったのだ。へ?おかしいか?いいんだよ。時に神様は可愛らしく思える。バカだから。 さて、後にエルサレムに神殿を建て、これはユダヤ教となったものは言うまでもなく、例に漏れず、のちに死者の山を作った。 さてさて、旧約に「エリヤが弟子のエリシャに霊の二分の一を与え生身のまま天に昇り大いなる日が来る前に神は再びエリヤをつかはさん」とある。ん、ある。 そして出たのがスーパースター・イエスなのだぁあ!はて、エリヤがイエスか、エリシャがパウロか、ヨハネがエリヤか、バカな僕にはよくわからんが(分かる方が怖いって)、とにかく神様はマウグストゥス帝治下のユダヤにイエスを実体化させた。 ところがイエスはユダヤ教の指導者を、こき下ろしてしまったのだ。神様は口先だけで現実に目をそむけているか、遊んでいるか、とにかく可哀相なのはイエスであるな、うん。 イエスは超能力を発揮し、死人をよみがえらせ病人を治し、一生懸命弱者をいたわり隣人愛を説いたのち、民衆にも裏切られ無抵抗のまま十字架の上で串刺しにされてしまった。(本当かいな?そうかいな?) これは悲劇のヒーローとなるにふさわしい顛末で、よって後、彼は世界的な侵略性に富んだスーパープロパガンダとなり、もちろん彼の残した情報のため天文学的な死者を生んだ。 ちなみにイエスはタイムトラベルも出来たらしい。そしてイエスの最後の言葉
これは悲痛である。この時、おそらくタイムトラベルで見たものをイエスは忘れてしまったのだろう。 イエスの伝達機能としての回路は閉ざされてしまったに違いない。イエスの前にアスクレピオスという超能力者がいた。彼も又、死人をよみがえらせてしまった。 その結果、彼はゼウスの怒りに触れ、キュロワープスによってイナズマで殺されてしまった。神様というものは間接的な殺戮に対しては、ひどくルーズなくせに何故か死人をよみがえらせる事にかけては、とってもナーバスである。 神様は何を企だてているのだろうか。たとえスーパープロパガンダといえども死人をよみがえらせてはいけないのだろうか。 情報は甦った死人に対してろくな印象を与えていないんだなぁ、これが。おぞましいゾンビ。フランケンシュタインのモンスター。一滴の血液によって蘇るドラキュラ。 僕はこう思う。死=聖域だ。聖域=神のうち。ヒントは子供だ。7つまでは神のうちと。まだ聖域から現世へやってきて間もない子供は昔からよく消え失せてしまう。 笛吹きによって街中の子供たちが消えてしまう話や悪い子供をひっさらうナマハゲ、要するに神隠しは子供だけに起こるのだな、ふん。 僕は、これは子供が聖域の秘密を思い出してしまったために消されてしまうんだと思う。これから考えると神の域はおそらく、人に知られてはいけないものなのだ。やばいんだ。インチキがバレるのが。 だから一度死に、聖域に入ってその情報を持ったまま生き返る者は神にとって大変な危険人物なのであろうなぁ、うんうん。ままよ。
僕は、もう飽きてきたんだよ。 まずイスラム教のマホメット。ちなみにイスラムとは服従すべきものだそうだ。イスラム教はキリスト教を引き継ぎ、唯一神教だ。 ご存じ、アッラーフがマホメットに啓示を与え天使ガブリエルに媒介させ、それはコーランという情報になった。この宗教はイエスを否定している。何故かといえば、神の唯一性を最も重んじているからだそうだ。 次にマニさん。この人は、肉体は悪、精神は善とし、ゾロアスター教に似た善悪2元論が取り入れられている。そして、ここでもイエスは悪の原理とされているそうだ。 このようにキリスト教から影響され出現した宗教、それを生み出したスーパープロパガンダたちはイエスを悪役に仕立て上げている。 僕は思う。神様は人を甦らせたイエスを、徹底的に悪役に仕立て上げるために、その後のスーパープロパガンダたちにはイエスを否定する聖なる情報を持ち込ませた。 小物はチョロチョロ出てくるが、規模が違う。何故か?神様はあきらめたのか?それとも、もうその必要は無くなったのか。 それは、こうである。実は神的情報のネタが尽きたのである。何故、僕が知ってるかって。それはねぇ、ふふ、ちょっと神の域にスパイを放ってるんだよ。ひひひ。 後から出現した神体示現者は、ちょこざいなものでいい。彼らは、すでに前出の大物スーパープロパガンダたちによって築かれたものを多様化させていくだけなのだ。 さて、7世紀までに伝わった神的情報の大物たちは小国群を大国に統合させるため、とても役だったんだったねぇ。 各各神様の情報圏ごとにぶっ殺し合いが続き、殆ど現在の大国の原形は、この頃築かれたと言っていいのではなかろうかねぇ。 え?じゃあ、アメリカは?って?わかってないなぁ~。あああ、今、僕に尋ねたのは誰?ゴン太くん? あれ?ゴン太くんは、とっくにどっか行っちゃったみたいだねぇ。そうだよなぁ人のこんな妄想話に、さすがのゴン太くんもつきあっちゃいらんめい。 ってな事、こんな妄想に昼夜と耽っていると女の子にもてないんだよなぁ。頭もクルクル来ちゃうし。いけないんだなぁ。 もう止めたらって、いないはずのゴン太くんの声が聞こえるよ。じゃ透明なゴン太くんに話しかけよう! 僕は真夜中にこんな事ばかりを考えるのは止めたらっていうゴン太くんの忠告にしたがうんだ!妄想に浸ってうっとりするのも暫くお休みさぁ。 僕は暫く僕が全宇宙を光に導くスーパーウルトラ・プロパガンダである事や、僕の脳髄に向けて飛んでくる電波の事は考えないようにするよ。 “あれ?ゴン太くんって僕の妄想だったっけ?れれ?”
お~い!ゴン太く~ん!待ってぇ~!僕を置いてかないでぇ~
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