ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

C型肝炎との攻防の30年

2019-06-17 10:29:07 | 健康・医療
C型肝炎という病気をよく耳にしますが、この原因ウイルスが発見されたのはわずか30年前の1989年となっています。

当時肝炎ウイルスはA型とB型が知られており、治療法もこの2種に重きが置かれていました。ところが輸血後肝炎や原因不明の非A非B型肝炎が増加してきて、これらの肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)が原因であることが突き止められました。

「肝臓の病気」というと酒の飲み過ぎが原因とされていましたが、実際には国内の肝硬変の半数以上、肝臓ガンの70%以上がHCV感染に由来することが明らかになってきました。

C型肝炎は自覚症状が乏しいため感染に気付きにくく、献血や保健所の検査結果が報告されるにつれ、日本は驚くほどのHCV汚染国であることが分かってきました。現在70歳以上の20人に1人以上が、1度は感染したことがあるという計算になるようです。

HCVは主に血液を介して感染します。感染経路としては、汚染された輸血や血液製剤、入れ墨、消毒が不十分な器具でのピアスの穴あけ、覚せい剤などの注射器の使いまわし、などが考えられますが、原因不明であることも少なくありません。

多くのウイルスは、感染しても免疫機能によって排除され自然治癒しますが、HCVは3割程度しか排除されず、7割は持続感染となり、この状態で20~30年経過すると肝硬変や肝臓ガンを発症します。

HCVが発見されて以来、長い間抗ウイルス作用のあるタンパク質「インターフェロン注射(IFN)」が治療の中心でした。

当初は効果がみられるのは20~30%で、抗ウイルス内服薬の併用や、2004年には血中に長くとどまるように改良された「ペグIFN」が開発され、約半数でHCV排除が可能となりました。

ただしIFNをベースとした治療は、発熱や倦怠感などさまざまな副作用があるため中断例も多く、高齢者や体力の弱い人には不向きでした。この1990~2013年では、ウイルスが排除できるのが53%、再発27%、無効ないし中断が20%となっていました。

それでもこの時期はIFNは大きな役割を果たしたといえるようです。2014年にIFNを必要としない、内服のみでウイルス増殖を抑制する、画期的な新薬が登場しC型肝炎の治療は新しい時代に入りました。

登場したのはHCV直接阻害剤(DAA)といい、HCVの増殖にかかわる遺伝子領域に直接作用してウイルスが増えるのを防ぎ、消滅させる薬です。この薬剤名は省略しますが、2014年から2015年にかけて続々と発売されました。

これらは当初1錠7万円と高価なことで話題にもなっていました。現在はこの価格も下がり、初めてDAAで治療を受ける人は、ほとんどが治るという非常に優れた薬剤となっています。

このようにC型肝炎は、治療すれば確実に治るという大きな進歩があり、現在に至っているようです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿