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原因不明の慢性腎不全、遺伝子解析で解明へ

2023-02-19 10:59:27 | 健康・医療
近年慢性腎臓病が増加しており、約8人に1人で1330万人の患者となり「新国民病」ともいわれているようです。

慢性腎臓病(CKD)は全体が悪化して腎臓が働かなくなると人工透析が必要になるため、患者は「透析予備軍」とも呼ばれています。透析導入になる患者のうち14%が原因不明の腎疾患とされています。

現在人工透析が必要な患者数は34万人以上で、透析関連医療費は1兆6000億円程度を要し、国の財政を圧迫しています。透析に移行する前にCKDの患者を治療したり、進行を遅らせたりすることができれば医療費の圧縮にもつながります。

腎臓は体の中に溜まった老廃物を血液からろ過し、尿として体外に排出します。その働きが低下した状態がCKDで、食欲不振や吐き気、だるさ、疲れやすさ、記憶力低下といった「尿毒症」の症状が表れます。

さらに悪化して腎臓が自力で働かなくなると、機械によって老廃物を除去する人工透析が必要になります。これまでCKDは高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病がきっかけで発症すると考えられてきましたが、前述のように14%が原因不明であり研究が進められています。

東京医科歯科大学の研究グループは、遺伝子パネル検査によってCKDに潜在する遺伝性腎疾患の解明を進めています。次世代シーケンサー(NGS)技術による網羅的な遺伝子解析により、CKDの遺伝子背景を研究しています。

ここ数年でCKDの発症には遺伝子要因が多くのかかわりを持つこと、成人CKD患者の約1割は単一遺伝子の変異によるもので、大半は7種類程度の遺伝子が原因であることが報告されてきました。

研究グループはある医療機関の人たちを対象に透析に至った、腎臓病の原因不明の92人の患者の網羅的遺伝子解析をしたところ、10%ほどで事前に診断されていなかった遺伝性の疾患が確認されました。

こうした「隠れた病気」のうち、ファブリ―病という遺伝性の希少疾患は細胞内小器官の1つ「ライソゾーム」内のある酵素が働かなくなったり欠損したりして発症します。正しく診断できれば、不足している酵素を投与する「酵素補充療法」で治療ができます。

ほかにも「ネフロンろう」という遺伝性の希少疾患が見つかったケースもありました。網羅的な遺伝子解析は、このように原因不明とされるCKDに隠れている病気を明らかにし、適切な治療に繋げて透析に至る時期を遅らせたり、根治法が確立していない場合でも予後を予測できたりする可能性につながるようです。

今のところパネル検査で確定診断に至る場合は60%程度にとどまります。これは遺伝子解析技術の課題に加え、未だに認知されていない新たな原因遺伝子が存在する可能性もあり、残る40%の患者については2万種類の全遺伝子を解析することで、新しい原因の発見も目指しているとしています。


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