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ガン細胞の「アキレス腱」を発見

2021-09-15 10:25:46 | 健康・医療
医学の進歩は目覚ましいものがありますが、日本の死因のトップとなっているガンについても日々新しい発見がされています。

ブリティッシュ・コロンビア大学の研究チームが、ガン細胞の「アキレス腱」とも呼ぶことができるような重要な酵素を解明したと発表しました。

ガン細胞が集まってできる「固形ガン」は、成長するための酸素や栄養を血液から得ています。しかし腫瘍が成長すると、作られる血管が間に合わないなどの理由で、全ての部位に栄養や酸素が行き届かなくなり、低酸素環境に陥ります。

この様にガン細胞は従来の血管では足りなくなるために、新たな血管を常に作り出しています。この血管は本来のものとは異なり、脆弱なものとなっていますので、この「血管新生」を止めることによって、ガン細胞を死滅させるという試みが一時盛んになりました。

いくつかの血管新生阻害剤が見つかって入るのですが、残念ながら実際に使えるまでには至っていないようです。またこの低酸素状態が続くと、ガンは悪性化することも分かっています。

今回の研究で、低酸素環境で腫瘍を活性化しているタンパク質(酵素)が「CAIX」であることが分かり、いわばこれがアキレス腱であることが解明されました。この酵素は他の臓器へのがんの転移を促進しています。

このCAIXという酵素のついては詳しくは分かりませんが、炭酸脱水酵素9といわれるもののようです。これは金属プロテイン酵素と呼ばれる亜鉛を必要とする酵素で、二酸化炭素と水を炭酸水素イオンと水素イオンに変換する酵素です。

研究チームは、ガン細胞はCAIXに依存して生き延びており、これは最終的に「ガンのアキレス腱」になり、CAIXの働きを阻害することでガン細胞の増殖を効果的に抑えることができるとしています。

今回の発見により、乳ガン、膵臓ガン、肺ガン、大腸ガンといった致死率の高いガンの新たな治療法の足掛かりになることが期待されています。すでに研究チームは、CAIXを強力に阻害する化合物として「SCL-0111」を特定しており、現在フェーズ1の臨床試験を実施しています。

マウスを使った実験では、乳ガン、膵臓ガン、脳腫瘍にその効果が実証されているようです。ただしCAIXは正常な臓器にも存在していますので、健康な細胞も攻撃してしまう副作用が懸念されています。

またCAIXがフェロトーシス(鉄依存性細胞死)によるガン細胞の死滅を阻止していることも判明しており、こういった方向からのCAIXの阻害も効果があるとしています。

ガンの重要な酵素が見つかれば、それを阻害することによって増殖を止め治療薬となるとは限りませんが、ガン特異性がどの程度あるかが問題になるような気がします。


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