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脳の病気iPS細胞で再現成功

2020-01-05 10:21:11 | 健康・医療
神戸大学などの研究チームは、ヒトiPS細胞を使って脳の一部の「下垂体」ができない患者の病気の状態を試験管内で再現することに成功した、と発表しました。

病気の原因遺伝子のひとつが分かったほか、他の下垂体の病気の原因解明や治療法の開発に役立つ可能性があります。

この病気は先天的に脳にある下垂体がうまく形成されず、ホルモンの分泌が減少する「下垂体機能低下症」と呼ばれています。下垂体は「ホルモンの司令塔」と呼ばれ、成長ホルモンなどの分泌を制御します。

下垂体低下症になると、成長が止まったり疲れやすくなったり、不妊や血圧低下などが現れたりします。生まれつき下垂体が正常に形成されていない先天性下垂体形成不全の患者のほとんどが発症しますが、これまでホルモンの補充で症状を抑えるしかありませんでした。

研究では患者の血液からiPS細胞を作製し、試験管内で分化させ変化の過程や遺伝子などを解析しました。その結果遺伝子変異によって、下垂体の隣にある視床下部から分泌されるタンパク質が欠乏すると、下垂体形成に悪影響が出ることが判明しました。

やや専門的になりますが、正常な細胞ではホルモン産生細胞まで分化できるのに対して、この患者由来のiPS細胞ではホルモン産生細胞に分化できませんでした。

その分化過程を詳細に調べた結果、下垂体分化に必要な転写因子LHX3が発現していません。またこの患者の遺伝子をエクソーム解析で調べたところ、OTX2遺伝子に変異が同定され、これが原因の可能性が高いと考えれらています。

この患者由来のiPS細胞におけるこの遺伝子変異を修復したところ、正常な分化が回復したようです。下垂体は隣接した脳の一部である視床下部との相互作用によって分化維持されています。

この実験モデルには試験管内で下垂体と視床下部を同時に作ることができます。それを利用して今回の原因が視床下部にあるのか、下垂体にあるのかを解析し、視床下部が原因であることを突き止めました。

視床下部から分泌されるFGF10が下垂体におけるLHX3の発現に重要であることを見出しています。下垂体機能低下症は、先天的要因以外でも腫瘍などで発症します。研究チームは他の要因についても同様の方法で発症メカニズムの解明に取り組んでいます。

iPS細胞を利用した再生医療も進展していますが、非常に高額の費用がかかっているようです。その点今回の研究のような、病態の再現への利用は創薬への応用と共に、iPS細胞の良い応用方法と考えられます。

通常では取り出すことができない病態細胞のメカニズムの研究などが進んでいくことを期待しています。


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