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海外のREIT投資(10) -Ascendas REIT 第3四半期決算

2009年10月27日 | 海外REIT研究



 Ascendas REITが第3四半期決算を発表した。金融危機以降ほぼ一年が経ち、バランス
シートの中身も大きく変化した。営業収益は5%増収となり、NPIも11.7%と二桁の増収と
なっている。まとめた表は以下の通り。海外リートの中でも結構長く持っている銘柄で
その間ずっと配当を受け取っているのでそこそこのリターンにはなっている。金融危機の
時には流石に含み損に転じたがその後の株価の上昇は結構ドラスチックだった。トレーディング
の機会は何度もあったが、結局バイ・アンド・ホールドで良かったかもしれない。



 NPIの増加は賃料改訂や不動産関連営業費用の低減が4割程度プラス寄与したのに加え、
2008年に投資した物件のフル寄与が6割程度あったと分析されている。期中には
空港物流施設のPlot6、Plaza 8 Changi Business Park Phase 2の完成があり、既に稼動
している。2009年の1月から当法人は投資主割当増資、第3者割当増資、社債の発行
など積極的にエクイティを実施したことで発行済み株式数は4割増加。一方で、配当は
13.2%の減少に留まった。さすがにこれだけ増資するとギアリングは大きく低下しており、
総負債は18.6億ドルから14.06億ドルに減少、レバレッジは41.4%から、30.5%
に低下している。


 市場で懸念されていたCMBSは8月にローンに切り替えられ、担保の設定されていない
物件が20億ドル、31物件に拡大し、借入れ余力が拡大した。2010年の3月に3億
ドルのローン返済があるのみでキャッシュフローを圧迫するバランスシート上のリスクは
激減した。デットプロファイルもかなりなだらかになってきており、2014年まで、最
大の返済額は395百万ドル(2014年)であり、金融市場の動揺によるショックはほとんど
防げると考えてよいだろう。

 ポートフォリオの稼働率は9月末現在で96.8%、MTB(Multi-tenanted buildings)でみる
と93.3%となっている。MTBとは1顧客にまる貸ししているビルでなく、複数のテナントに
リーシングをしているビルをさすが、MTBはAscedasのポートフォリオの54%を占めており、
またマルチテナントであること言う事は中小ユーザーが多くなる為、景気の影響を受ける
と考えられている。現状を見る限りにおいては稼働率の低下が見られるものの、比較的高
水準を維持しており、シンガポール市場の平均稼働率を上回っている。

 とはいったものの、当法人がリスクから開放されているわけではない。センシティビティ
アナリシスでは稼働率もくしはレント水準が5%低下するごとにNPIが3.7%減少する。10%
低下するとNPIが7.5%。一方、分配金レベルでみると17%ずつ減少していくことになる。



 金融危機を大型増資で乗り切っただけあってバランスシートリスクはほぼなくなったが、
不安材料はやはり景気の状況だろう。全体の稼働率も前年と比較すると1.2%減少、MTB
ベースでは2.3%減少しており、景気低下の影響はあると考えるのが妥当だ。当法人の
契約では94%との顧客との間で賃料に関してコミットされているという強みがあるものの、
契約更改となれば別である。レント水準も2008年をピークに徐々に低下してきており、
下げ止まり感はまだない。平均リース契約期間も5.5年から4.9年に短縮しており、
特に来年、再来年の契約更改を合わせると3割に上るためそのときの経済環境の状態は重要
である。目先は特に問題がないもののアジア経済の回復がどの程度になるかは依然として
注目する必要がある。とりあえず保有継続でOK。

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