Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

Keppel Infrastructure Trust(シンガポール)

2015年03月23日 | 海外REIT研究
 REIT投資に別段飽きたわけではないのだが、タイのインフラファンドに続いてシンガポールのインフラファンドにも投資したのでブログに書いておく。くどいようだが、個別銘柄の推奨ではないので投資判断の参考等に利用しないでください。今回投資したKeppel Infrastructure Trust(KIT)はシンガポール上場のインフラファンド(Business Trust)で、シンガポールに投資したことがある人ならKeppelの名前を聞けばぴんと来るはず。シンガポールの大手コングロマリットで石油、造船、環境などの重工業が中心の会社がスポンサーになっているBusiness Trustと聞けば納得がいくだろう。知らない人はまあ、自分で調べてみてください。

 今回投資しようと思ったのはKITの事業がとてもユニークということではなく、同業のCity Spring Infrastructure Trustと合併してシンガポール上場のBusiness Trustで2番目に大きくなるというのがその動機だ。時価総額が出かければいいというものではないのだが、小型で魅力的な利回りの銘柄があっても経済環境とりわけ銀行の融資環境が厳しいといくらビジネスモデルがユニークでも苦境に陥ったり、スポンサーの都合で上場廃止されたりするケースがある。やはりある程度の時価総額がないと長期に投資できない。海外市場を毎日のように目を皿のようにして見ているわけではないので、気が付いたらなんかえらい株価になってたりすることがある。

 それで今回いつ合併するのかはこれからのアナウンスだと思うが、KITとCITの合併に注目してみた。但し、ここで留意する必要があるのはまだディールが完了していないこと。さらに合併に伴って新株発行が予定されていることから、投資する人はタイミングをよく考えて行動すべきという点だ。私は面倒なのでもう投資してしまった。まずKITとCITのそれぞれの事業ポートフォリオを見てみる。



 KITのポートフォリオだが、今回のディールは実はKITとCITの単純合併でなく、KMCという会社をスポンサーのKeppel Corporationから買収する。(しかも51%買収という微妙な数字) つまりスポンサーから事業を買収してその持分を得るというスキームが入っていてこれがややこしい。ブレスリリースも合併スケジュールなどが詳しく載っていおらず、いったいいつ完了するかわからないが、特殊利害関係人(つまりスポンサーのKeppel Corporation)とのディールが入っているため、監督官庁からの認可が必要でかつ手続きが結構複雑なためにスケジュールがよくわからない。

 それはともかく、KITは今回の合併前は負債はなかったが、結構地味なポートフォリオで時価総額も小さかった。やっている内容はまともだが、上下水道処理場・ごみ焼却場がメインで特に見るべきものはなかったのだが、KMCの資産買収によって発電事業が上乗せされることになった。しかも1300MWのCCGT(コンバインド・ガスタービン発電設備)というから結構でかく、合併後も大きなシェアを占めることになる。上下水道・発電ともに事業のボラティリティは小さいと推測されるからBusiness Trustとしては配当の安定性に寄与するだろう。



 CITのポートフォリオはデータセンター、ネットワーク通信設備、海水淡水化設備、都市ガス、海外電力事業となっており、これもまともだ。海外電力事業というのはオーストラリアとタスマニア島を結ぶ電力ケーブルを保有している。何故、タスマニアとも思ったが、理由はわからん。CITはKITと比較すると少し大きめのBusiness Trustだが、負債があり、ギアリングがかかっていた。54%というは強烈に高くはないが、低くはない数字で、合併によりギアリングは39%に大幅に低下する。



 地域別の売上高は上記の通り、シンガポールがメインだが、オーストラリアでの売り上げが25%だ。その25%業態別売り上げでみたElectricity transmission(送電事業)がそのまま入る。上下水道・ごみ焼却施設合計で20%、ガスで12%だが、今回の合併によりKMCから買収した発電事業がポートフォリオに占める割合が最大となる。


 時価総額は19億55百万シンガポールドル(1700億円)とシンガポール上場のBusiness Trustでは2番目の大きさになる予定だ。



 気になる配当利回りだが、combined baseつまり、統合が実現したらという前提だと7.3%になる。海外のREIT市場も世界的な金融緩和によって10%台というのは怪しげな奴を除けば姿を消している。7%台というのもアジア市場のREITでも少なくなりつつあり、時価総額が大きいものでというとほとんどなくなっている。Business Trustに関していえばまだ7%台というのは結構あり、投資としてはまあいいかなという感じ。但し、中身はよく見た方がいいだろう。特にスポンサーとか。シンガポール上場Business Trustではなんと日本のアコーディアゴルフが設立したAccordia Golf Trustが10%でトップだ。確かにBusiness Trustではあるが、どちらかといえばREITなのでは? 10%の利回りというのもゴルフ場という性格と稼働率に大きく左右されるという点から納得。買いたいかというと、むむむ...まあ買ってもいいけど。でもスポンサーの都合で上場廃止とかされるリスクもあるし微妙。単独スポンサーで時価総額が小さいのはそういった上場廃止リスクを考慮した方がいいだろう。アコーディアゴルフに関して言えば、10%の配当利回りと聞くと、がぜん興味がわく投資家も多いだろうが、いくつかの注意点を指摘しておく。第一に10%の予定配当利回りは初年度の一株当たりの配当可能利益6.2セントに非計上的項目として2セントが上乗せされている。つまり次年度にはこの2セントは剥落することが予想されており、利回りが必ず低下する。標準化NDI(Net Distributble Income)として6.8セントを予想しているが、入場者数が減少しないという前提に立っている。実際の株価パフォーマンスを見るとIPO価格から22%下落しており、やはり投資家は冷静にこのファンドを見ている。

 最後にKITの2012年からの過去3年間から直近の株価パフォーマンスを載せておくが、まあ、世界的に株価が上昇しているので割り負けているのは確かだが、まずまずかな。
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TRUE Telecommunications Growth Infrastructure Fund (TRUEIF)

2015年03月19日 | 海外REIT研究


 日本でもREIT等の非伝統的な証券が投資家に認知され始めており、資産運用の多様化が進んでいる。東証などは更なる国際化のためにインフラファンドの上場などを検討しているとしているが、実際に上場するまでにはまだ時間がかかるだろう。事業投資ファンド等ではシェールガス・石油等に投資するMaster Limited Partnership(MLP)なども有名になっており、日本からの投資も相当入っているとの話も聞く。日本人投資家はどうも熱しやすいというか「シェール革命」に踊って投資したはいいが、相当やけどしているんじゃないかとの懸念もある。

 どうも日本人は「新しいもの」が好きでMLPなどと耳慣れない言葉を聞いただけでわくわくする人が多いのか、まあわからなくもないけど。私自身もMLPに興味があったけど、それを聞いたのはだいぶ後になってからでしばらくすると原油価格が相当下落していた。かなり早くから知っていたら多分投資していたかもしれない。(人のことは言えないということだ)

金融緩和の長期化からREITの投資妙味もだいぶ薄れてきており、「やはり王道の株かな」とも思っていたが、手ごろなインフラファンドが海外で上場しているので投資してみた。念のため申し添えると銘柄の推奨などではありません。個人の投資日記なので投資判断の参考にはしないでください。

 インフラファンドと言っても別段目新しい投資でもなく、昔から「Business Trust」と呼ばれていたものだ。REITが資産の裏付けとして不動産があり、その賃貸収益をユニットホルダーに分配するのとは異なり、裏付け資産が事業全体であるというのが特徴となる。MLPも厳密には少しちがっているが、Business Trustの一形態であるといってもいい。それでもって色々考えたのだが、本当は米国上場ものを考えていたのだが、適当なのがなかったのでタイ上場のTRUE Telecommunication Growth Infrastructure Fund(TRUEIF)に投資してみた。

 インフラファンドが対象とするものは主として鉄道、水道、空港、通信、電力、道路、港湾、再生エネルギーなど幅広い分野が対象となるが、TRUEIFの対象は名前の通り通信インフラを対象としたインフラファンド(Business Trust)だ。通信インフラファンドの場合、大別すると① パッシブ資産(通信用電波塔、光ファイバーケーブル)と②アクティブ資産(通信用送信装置、受信装置)に分かれている。通信用インフラの場合、オペレーター毎にこれらの資産を建設するのではなく、たいていの場合、複数のプロバイダーが電波塔をシェアするのが(タイにおいては)通常のケースであり、インフラファンドは特定のプロバイダーに依存することなくポートフォリオレベニューの分散化ができるのがメリットとなっている。タイのインフラファンドは上場REITと同じく90%以上の収益を投資家に支払えばパススルー課税となるため、通常のREIT投資と同じくメリットを享受できる。

 TRUEIFは時価総額679億バーツ(2559億円)、2013年12月27日に上場された比較的若いファンドだが、時価総額は結構大きい。実績配当利回りは5.76%だが、上場が2013年末なのでNormalizeした場合の配当利回りはよくわかない。グーグルなどでは8.02%となっているが、Indicativeなものかもしれないので注意する必要がある。



 名前が変なのでいったい何者と思ってしまうが、スポンサーはまともだ。伊藤忠と全面業務提携をしたタイの大手財閥CPグループが過半出資しており、18%のマイノリティ出資だが、チャイナモバイルといった大手企業が出資しているtrueという通信サービス企業がスポンサーとなっている。事業内容もまともだ。



 TRUEIFは前述の定義言えばタイ全土をカバーするパッシブ資産(通信用タワー、光ケーブルなど)を資産の裏付けにしたBusiness Trusであるということができる。親会社のtrueの資産をBusiness Trustに組成したようなもので、形の上では三菱地所や三井不動産が自社所有物件を拠出してジャパンリアルエステートや日本ビルファンドを組成したのと似ている。タワーの顧客別で行くと半分がtrue向けで、残りの5割はAWC(Asia Wireless Communication)とBFKTの2社になっている。ポートフォリオの構成は直近に資産買収したので若干の変動がみられるがタワーが43%、FOC(光ファイバーケーブル)が57%とややFOCが多くなっている。



 もう一つのFOCの方だが、資産買収したのでキャパシティが3倍になっており、上場時と比較しても資産規模がタワーを凌駕するようになっている。プレゼン資料には稼働率が7割で残りが未稼働資産が埋まることで成長ポテンシャルがあると主張しているが、まあ、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。



 最後に損益を見てみるが、さすがに大型株であるだけ、売り上げもそこそこ大きい。



EBITDAで200億円超えているわけだから日本のREITと比較してもかなり大型の部類に入る。確かにタイ全土で展開している通信用タワーとFOCを裏付けにしているわけだからそのくらいの大きさにはなる。タイには空港施設を裏付け資産としたSamui AirportというREITにも投資しているがそれよりも大きいと思う。それと気になる配当なのだが、四半期配当なのかどうか会社のHPではわからなかった。というか普通のREITやBusiness TrustのHPだとDividend Historyとか載っていて当然なのだが、なんか作りが普通のと違っていてよくわからない。2014年のプレゼン資料で見た数字を逆算して今の株価に当てはめると7.49%となる。これがIndicativeな配当利回りかもしれない。というか、よくわからない。


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海外のREIT投資(15) - Sunlight REIT(香港) 決算

2010年09月11日 | 海外REIT研究


 前回、あまりエキサイティングではないと書いてしばらくしたら何故か株価が上がり始め
気がつくと利喰える水準まで来てしまった。特に材料らしいものはないのだが、先日本決算が
発表されたので少しだけレビューしてみよう。ただ、発表された内容を見ると事前の想定の範囲
に収まっており、特にサプライズはなかった。このREITは正直ディスクロが良いとはあまり言え
ないが、最低限のディスクロはしている。まず損益計算書を見てみると内容はやはり事前の想定
通り。なお、当法人の決算期は6月なので2010年6月期決算の話である。



終わった期のPLでみると賃料収入が3.6%増加しており、コストが若干低下したこともあって、
NPIが5.4%増加した。損益計算書に最も大きな影響を与えたのが保有不動産の鑑定評価額の
変動で前年度は8億ドルの減少に対して終わった期は13億ドルの大幅な増加となった。それに
してもポートフォリオ全体の鑑定評価額が1年で1割以上上昇するというのはどうなんだろうか。
実際に上昇したのかもしれないが、ちょっと信じられないというのが正直なところ。但し、算定で
利用したと考えられるキャップレートはオフィスが4.15%から4.65%、リテール部門で4.0%から4.75%
となっているからはやりキャップレートの低下が大きく影響したと考えてよいだろう。



 経済環境の好転が主な理由と考えられるが、稼働率の状況を見てみると興味深い内容が見られる。
まずリテール部門はほぼフル稼働になり全体でも98.8%と極めて高い稼働率になっていること。第2
に当法人のオフィスポートフォリオは248 Queen's Road Eastを除けば全てがグレードBの不動産である
が、そのBグレードの稼働率が大きく上昇している。これは経済環境がかなり好転していることを示し
ており、香港の経済環境は日本の「回復」よりもかなり早くしかも大きいことを示している。やはり
中国本土に近いというのがメリットを受ける理由なのであろうか。因みに当法人の持つグレードBの
不動産だが、数は多いが規模が小さい。10百万ドルを超える物件は3件で残りはそれ以下の物件で
投資家があまり評価しない理由もこのポートフォリオの質によるところが大きいだろう。

(鑑定評価)

 鑑定評価は前述の通り大きく上昇した。前年度が93億64百万ドルだったが、期末では107億
22百万ドルと14.5%も上昇した。オフィスポートフォリオで12%、リテールポートフォリオで17.1%
の上昇とリテール物件の鑑定評価が大きく上昇した。実は鑑定評価の上昇ぱ別のプラス効果をもた
らす。それはギアリングの減少だ。ここで言うギアリングとは総借入れの総資産に対する比率をいい
簡単に言えば負債比率。LTVとは少し異なる。前年度末に39.7%だったギアリングは35.3%と大きく
低下した。これにより純資産は53億19百万ドル、1ユニット当たりで計算すると3.4ドルと前の年と
比較すると23.2%上昇した。冒頭に株価上昇の理由がよく分からないとしたが、敢えて理由を考え
ればこれがその理由となるだろう。

 バランスシートにも少し言及すれば、39億5千万ドルの借入れ金利は銀行との借り換え交渉によって
終わった期末平均約定金利3.5%が今年度には2.978%と50bp低下する予想だ。仮に稼働率が
変化しない前提でいけば金利コストは20百万ドル低下することが予想される。こう考えると結構な
ポジティブ材料があって株価が上昇したとも思えるが実は当法人にとってのプラスは他の香港上場
リートにプラスである。実際に他の香港リートを見てみると似たようなチャートになっており、ほとんどの
銘柄が同じ時期に上昇している。従って株価上昇はどちらかといえば香港経済回復によるマクロ要因で
あることが分かるだろう。(下図参照)



 Sunlight REITはファンダメンタルズからみると決して優良銘柄とはいえないので、はやり少し売って
エクスポージャーを減らした方がいいかもしれない。とりあえずその方向で検討。


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海外のREIT投資(14) -Sunlight REIT(香港)

2010年06月11日 | 海外REIT研究


 Sunlight REITは香港のオフィス・商業を運用する複合型REITで時価総額29億HKドル(353億円)、
1株当りの純資産2.87ドル、純資産倍率0.67xで評価されている。2006年12月に
香港のメインボードに上場したが、実はこのREITは上場以来公募価格を上回ったことがない。
アナリスト・投資家の評価が低く、利回りも10%近辺でうろついていたが、リーマンショック
後には株価が暴落し1ドル割れまでいった。その時点は20%以上の配当利回りになり後で
考えればのこが絶好の買い場だったんだが、当時は利回り20%なんてごろごろしていたので
買いという判断は難しかったかもしれない。その後、株価が回復すると意外にも株価は
堅調に推移しており直近の株価水準は1.9ドルを中心に横ばいの状況になっている。




 当法人のオフィス、商業の複合型であるが、組入物件数でみるとオフィスが12物件、商業が
8物件になっており、立地で見るとオフィス物件は香港島に集中しており、商業施設は分散して
位置している。物件数で見るとオフィスの方が多いのだが、収入ベースでは商業のほうが多い。
さらに当法人か"Big 3"と呼んでいる物件が収入ベースで圧倒的な比率を占めているのが特徴で
ある。そのBig 3とはオフィスの248 Queen's Road East、商業のSheung Shui Centre、Metro City
Phase Iがそれに当たる。






 売上げベースで見ると248 Queen's Road Eastが24.4%、Metro City Phase Iが20.6%、Sheung
Shui Centreが23.7%となってあり、合計すると68.7%を占めている。加えて鑑定評価ベースで見た
場合では7割がこの3物件で占めている。従って、当法人はこの3物件を中心にして見るのが妥当
だ。

(248 Queen's Road East)

 40階建てのAクラスオフィスビルで、ビクトリア湾を一望できるWanchaiエリアに建っている。
地下鉄のWanchai駅から歩いて10分の場所にある。1998年竣工。37万6381平方フィート
テナントベースでは政府機関(22.4%)、運輸・輸送(21.9%)、IT・テレコム(15.3%)、広告・コンサル
ティング・金融(13.7%)、ファッション(5.8%)。直近中間期のNPIは45百万ドル。鑑定評価額は
27億40百万ドル


(Sheung Shui Centre Shopping Arcade)

 2階建てショッピングアーケードで3階に保育施設とカーパークがある。Sheung Shui KCR駅と
繋がっており、Lok Ma Chau Spur線と接続する予定である。1993年竣工。賃貸スペース、12万
2339平方フィート。レストラン(26.8%)、銀行・証券(17.3%)、ファッション(15.4%)、医療・
健康(10.1%)、教育(9.2%)、家電(4.1%)、宝石・メガネ(3.4%)。直近中間期のNPIは43百万ドル。
鑑定評価額22億86百万ドル

(Metro City Phase I)

 3階建て商業施設。地下鉄Po Lam駅につながっており、東Kowloonで最も大規模なショッピング
モール。1996年竣工。18万8889平方フィート。レストラン(32.2%)、教育(15.0%)、銀行証券
(13.3%)、医療・健康(10.3%)、理髪・フィトネス(6.9%)、インテリア・家具(6.8%)。直近中間期の
NPIは35百万ドル。鑑定評価額は17億62百万ドル。




 業績は好悪混在だが、どちらかといえばよい材料が少ない。好材料としては経済の回復によって稼働率
が回復していることだ。2009年の3月から改善傾向が続いており、直近の3月にはオフィスポート
フォリオで94.3%、商業部門では99%とほぼフル稼働になっている。ポートフォリオ全体の稼働率でみる
と95.8%になっている。一方、レント水準もわずかであるが改善している。オフィスのレントは直近で
20.3ドル/平方フィートと去年3月と比較すると1セント改善。商業部門は42.5ドル/平方フィート
と昨年3月と比較すると4セントの改善になっている。

 しかしながら業績自体は低迷している。中間期で売上げが1.8%増加し、NPIも0.8%増加となったものの、
金融費用の増加で配当可能利益は11.9%減少。中間期の配当は6.88セントと前中間期の9.29セントと比較
して26%の減配となっている。また資産運用会社に支払う運用報酬をユニットでなく、半分をキャッシュ
にしたことも影響している。



 Lease Expiry Profileも実はあまり良くない。2011-12年にかけて集中的に更新契約を向かえオフィス
で73.9%、商業で70.3%が対象となる。但し、前にも述べたが当法人は主力3物件で収入ベースの7割近くを
占めている為、仕方がないことではあるが、もう少しテナントベースで更新期限の分散をはかるべきなん
ではないかとも思える。




 ギアリングは38.7%とそれほど悪くもないけどよくもない。下の図のデッドマチュリティプロファイル
を見てもらうと判るが、分散しておらずあまり良い形に見えない。金利スワップでヘッジしており、平均
の金利水準が3.5%程度と現在のドル金利を考えると本当にヘッジして良かったのか考えるところだ。
ギアリングに関しては改善している主たる理由は鑑定評価が上昇したからで現在の水準が保守的といえば
そうとはいえない。資産取得の計画がないことから下げる理由もないのだが、成長性に乏しいことはあき
らかだ。金利コストに関してはメインバンクであるHSBCと交渉して一部金利水準のカットに成功したが、
改善効果は限界的だ。



 今回の減配によって配当利回りは7%程度に下がったが、下期の動向についての開示はなく業績がどの程度
上向くかは定かではない。稼働率が改善しているのは唯一のプラスだが、バランスシートの状況が芳しくな
い。香港のREITはLTVで45%までが上限だが、あまり余裕がないことからさらなるレバレッジをかけること
もできない。新株発行によるエクイティも一度も公募価格を上回っていないので難しいのではないだろう
か。ノンコア資産の売却も視野にいれるとのコメントもあるので一部資産の売却は可能性がある。どちらに
せよ、エキサイティングとはいえないのは確か。


ブログ更新のモチベーションが切れた。回復するまでしばらくお休みします。ついでに旅行に行ってきます。


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海外のREIT投資(13) - Cambridge Industrial(シンガポール)

2010年05月21日 | 海外REIT研究



 ケンブリッジ・インダストリアル・トラスト(CIT)はシンガポール上場の産業分野特化ファンドで、
物流・倉庫、製造業施設等に投資している。2006年7月にシンガポール市場に上場し、43
拠点、面積で65万6千平方m、時価で9億66百万ドルの資産を有している。施設は全てシンガ
ポールの産業ゾーンに位置している。シンガポール市場に上場しているREITは海外の資産特化
や国際分散投資をしているREITが結構あるが、このREITはシンガポール100%のREITだ。





 上記の地図を見ても分かるが、シンガポールは小さい国なのでほぼ全国に施設が点在している。
産業用がメインということで日本の産業ファンドのようなイメージを持つかもしれないが、実際の当
法人の顧客ベースは物流・軽工業などが主体で、例えば物流・倉庫部門では3PL、サプライチェーン
マネジメント。軽工業ではエレクトロニクス・コンピュータ周辺機器、医療用機器、情報機器などの
IT関連組立てがメインである。産業・倉庫ではケーブル、アルミ製品、配線基盤、金属のほか、その
他産業用途では印刷、精密エンジニアリング、金属加工、プラスチック成型などに関連する倉庫施設
など様々な顧客が対象になっている。アジアのハブとしてのシンガポールの特徴がよく出ている。
大分類で見てみると製造業36%、建設・エンジニアリング36%、物流・倉庫が34%という比率になって
いる。




とりあえず、下に当法人のポートフォリオの写真を掲載しておく。43拠点あるので全ては載せ
られないが、一部を掲載。まあ、写真を見たからといって何かが分かるわけでもないのだけれど
もイメージないよりはましなので載せておく。でもやはり物流施設とかビルの写真では何もわか
らないのは確か。




 とりあえず中身を見てみよう。その前に株価等について書いておくと現在株価は51セント、時価総額
は4億43百万Sドル(287億円)、1株当りの純資産は59セントだから株価純資産倍率は0.86倍。
配当利回りは10.4%(実績ベース)となっている。時価総額はそれほど大きくないものの流動性に関して
は個人投資家には十分。出来高100万株を切る日もあるが、だいたい100万株以上の出来高はあり、1000万
株近くできる日もある。

 当法人の主張する強みは以下の点に集約されよう。(1)ポートフォリオの44%のテナントはシンガポール
ニューヨーク、香港上場企業。(2)顧客上位10位のテナントからの収入がポートフォリオ収入の6割を超える
(3)7年-15年の長期契約では固定のエスカレーション条項を入れており、レント収入の安定性と成長性
を担保。上位10社はしたのグラフの通りだが、最も売上げの多いCWTはシンガポール上場大手の企業、
2番目のYCHもシンガポールの物流企業だ。



 業績の方はというと実は停滞している。下のグラフに不動産収益とNPIの両方を載せているが、よく言えば
安定している。悪く言えば停滞。特に2008年1Qから停滞しているのがわかるだろう。これはやはり、
リーマンショックによる金融機関の貸し渋りの影響を受けているのがひとつ。景気の悪化によるところもある
と考えられるが、現時点では財務のリストラを優先しているのが影響していると考えたほうが良いだろう。


 バランスシートの方だが、LTVが44.4%。ギアリングが42.6%。高いとは言い切れないが、低い
ともいえずバランスシートに関しては可もなく不可もなくといったところだ。有利子負債のコストは5.97%と
まあ.....これも普通。デッド・マチュリティプロファイルで留意する必要があるのは2012年2月償還の
390百万Sドルのシンジケートローンの存在であるが、金融危機でない限りそれほど心配する必要はないと
思われるが市場環境がどうなるかは予測できないので抑えておく必要はあるだろう。



もうひとつ投資家にとって注目すべきなのは現在のLTVの水準ではなく、当法人が今後の適切なギアリング
レシオを30-35%と目標としていることで、そのためには資産売却、エクイティなどのイベントリスクが
存在することに留意する必要がある。法人側はノン・コアアセットの売却など考えているらしい。さらに今年
度に入り当法人は初めてDRPを実行した。DRPとはDividend Reinvestment Planの略で配当を
受け取った投資家に投資口再投資のオプションを付与することである。配当の権利を獲得した投資主
は現金で配当を受け取るか株式で受けるかを選べる。再投資を選択した投資家は2%ディスカウント
で株式を受け取れる。投資家に取って配当を複利で増やすことができ、さらには市場価格よりも割安
に手にできる。

 キャッシュの方がいいんじゃないかと思われるかもしれないが、投資先に魅力があって保有する株式
価値を増加させたい場合(株価変動はこの場合考えない)、DRPは魅力的である。例えば、2人の投資家
がおり、1人がキャッシュをもう一人がDRPを選択したとしよう。キャッシュを選択した投資家は受け
取ってそれで終わり。一方、DRPを選択した投資家はディスカウント分だけ価値を増やせる(株価が変動
しないという条件はあるが)。さらに次の配当では再投資した分の配当の増加があるだけでなく、
DRPによって株式の希釈化の影響を受けない。キャッシュを受け取った人は株式が増加した分、持分
が減少していることになる。即ちDRPは複利で配当を増やすことができる。

 当法人はDRPでキャッシュの社外流出を抑えギアリングを下げる手段として位置づけているが、実際に
DRPを選択したのは投資主の10%程度。配当利回り10%でtek up ratioが10%なら1%程度になる。
つまりそれほど効果はなかったというわけだ。やはり、ギアリング低下の主力は資産売却で1Qに
Toh Guan Eastを売却したことで21百万Sドルを手に入れた。



 直近の業績も実はそれほど芳しくない。前四半期比で減少しているが、前年比ではプラスを記録しており、
正直、ぱっとしない。取りあえずの目標が財務リストラなので拡張計画もなくむしろDRPと資産売却に期待
といわれてもそれほど興奮する話でもない。良い話がないわけでもない。当法人の稼働率は99.9%を維持し
ており、きわめて高稼働率を維持している。これはシンガポールの市場平均と比較して8%以上高い。また
2010年1Qに契約期限がきたテナントは全て契約を更新した。



 Lease Expiry profileを見ると2010年は1%、来年で3.4%、再来年で2.5%とほとんど契約更新がない。
したがって再交渉時の値下げ圧力というものを今後3年間は受けないことを意味しており、キャッシュフロー
の安定性に寄与することだろう。



投資先としての判断だが、正直言ってどっちでもいいやという感じ。悪くはないんだろうけど。なんというか、
投資妙味という点であまり訴求力がないのが残念。因みに持ってはいるんだけれど....

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海外のREIT投資(12) - First REIT(シンガポール)

2010年04月02日 | 海外REIT研究
 First Real Estate Investment Trust(FREIT)はシンガポールに上場しているヘルスケア特化
のREITで以前、ブログにもアップしたPrkway REITと内容が少し似ている。当REITは2006年
12月に上場したシンガポールで初めてのヘルスケア特化のREITだ。スポンサーはPT Lippo
Karawaci Tbkでインドネシアで最大規模の不動産会社(ジャカルタに上場)。またこれも以前紹介
したLMRTのスポンサーだ。現在の時価は0.84Sドル、時価総額は2億31百万Sドル(151
億円)と小ぶりだが、流動性はそこそこあるので投資家は流動性リスクをそれほど気にしなくて
もよいだろう。(但し、個人投資家の場合に限る)配当利回りは8.1%、株主資本271百万
ドル、純資産倍率0.85.


このREITがParkwayと異なっているもっとも大きな差はその地域展開でシンガポール、 インド
ネシアの2カ国展開となっている。ご承知のとおりシンガポールの人口は470万人程度であ
り、所得水準が高いといっても小さな市場だ。したがってポートフォリオの構成比はやはりイン
ドネシアの比率が圧倒的に高く、インドネシアに特化しているといってもいいかもしれない。そ
のような観点からすればインドネシアのリスクを考慮して投資する必要があり、リスクは必ずし
も小さいとは言えない。ただし、インドネシアの人口は2億3千万人おり、2050年には人口
は3億人を超えることが予想されている。中国、インドを除けばアジアで最大のポテンシャルを
有していること一人当たりのGDPは3986ドルとようやく所得水準が高まってきていること。
また国土が広く、広範に人口が分布している中国と違い、全国民の人口の半分がジャワ島に集中
しているという点にもビジネスのオポチュニティを感じる。



 新興国と聞くと高齢化とは無縁にも聞こえるが、インドネシアでの人口増加率は1980年か
ら1990年にかけて1.97%、90年から2000年では1.42%と大幅に鈍化している。また人口
増加率が1%台というのも我々日本人投資家にとって意外感を覚える数字ではないだろうか。ま
ず理由として考えられるのは一人当たりのGDP増加による出生率の低下だ。これは日本でも経験
していることでもあり、所得水準の向上にともない、出生率は低下していく。下世話な話だが、
所得で余裕が生まれると人は夜の生活以外にも時間とお金をかけるようになるものなのだ。さら
に平均寿命の上昇によることも大きい。平均寿命が延びるとやはり出生率が低下する。これは婚
期が遅れていくためでもあり、男性、女性ともに所得水準の上昇、平均寿命の伸びにより婚期が
伸ばされ、出生率が低下していく。インドネシアではすでにそれが起きはじめている。要するに
今、日本で起こっていること、またこれから起こることはアジア各国で将来必ず起こる出来事で
あることだ。例えば、韓国での少子化は深刻になりつつあり、出生率は1.19と日本よりも低く
なっており、移民政策の見直しなどが行われている。台湾では少子化により現在毎年30万人の
大学入資格者がいるが、10年後には20万人を切り、台湾の大学の3分の1が閉鎖されるとの
予想がある。最大の人口を誇る中国では2033年に15億人とピークを迎えた後、減少する予
想がされている。また労働人口はそれに先立つ2016年に9.9億人とピークを打ち、人口ボ
ーナスの効果が切れてくる。


(ポートフォリオ)

 そのような予想を元に投資アイデアを考えるとやはりヘルスケア分野に強みを持つアジアREIT
は選択肢のひとつだろう。当REITのポートフォリオはシンガポールに3箇所の介護施設、イ
ンドネシアに4拠点の計7拠点を展開している。具体的な構成ではシンガポールに3つの介護施
設(672ベット)、インドネシアでは3病院(531ベット)、ホテル・カントリークラブが1(197室)
というものとなっている。拠点数ではシンガポールとインドネシアが1つ多いだけだが、売上げ
利益構成比ではインドネシアが圧倒的だ。建設中を含む8つの施設の内、インドネシアの
Siloam Hospitals Lippo Villageがポートフォリオの43%を占めており、さらにSiloam
Hospitals Kebon Jerukが24%。この2つの施設でポートフォリオの67%を占めている。(鑑定
評価ベース) それを聞くと所得水準の低いインドネシアでの事業展開は大丈夫なのかとか、リ
スクはどうなんだろうかという疑問がわく訳だが、実のところそれほど心配する必要はないだろう。



下のポートフォリオの写真を見てもわかるとおり、介護施設、病院ともになんだかホテルライク
な概観をしており、実際に顧客はインドネシア、シンガポールの比較的所得水準の高い人たちを
対象にしているようだ。このようにジャカルタ郊外10km以内にポートフォリオを所有してお
り、空港からのアクセスの良さなど考えれば、ミドルクラス、アッパークラスの所得層を対象に
していることがわかる。



 例えば、Siloam Hospitals Lippo Villageのケースで見ると、ジャカルタ郊外に位置する病院
で2007年には、米国のJCI(Joint Commision International)認証(注)を受けた最初のイ
ンドネシアの病院で高い医療水準を達成している。これはインドネシア国内の患者だけではな
く、いわゆるメディカルツーリズム(高度な医療行為を海外で受けること、日本でも心臓手術や
日本で規制されている医療行為を米国まで出かけて受ける人がいることなどから、ひとつの産業
として認知される)の事業ポテンシャルを持つ。

(注)
JCI 認証とは、国際医療機関評価委員会から全世界の医療機関を対象に、厳格な国際標準医療
サービス審査を経て医療機関に発給する認証制度である。JCI 認証を受けるためには、患者の安
全と良質の医療サービス提供を目的として、患者が病院に入る瞬間から退院までの治療の全過程
に対し、11分野、1,033 項目にわたる細密な評価を受けなければならない。(因みに日本ではJCI
認証を受けている病院はほとんどないのが現状)


(業績)

 業績は実の所、とてもスローな成長だ。よく言えば安定成長。悪く言えば低成長。但し、配当
の安定性という点からすればとても安定している。成長が低い理由は簡単といえば簡単でギアリ
ングが低い。ポートフォリオの成長自体が遅いというのに尽きるだろう。まあ、考えてみればポート
フォリオを急拡大しても富裕層はそれほど拡大するわけでもなく、また一定水準の医療スタッフ
を集めるという点から考えても徐々にポートフォリオを拡大するしか手はないだろう。ギアリン
グが低いということはそれだけまだ拡大余地があるということから評価してもよいだろう。








(成長戦略)

 安定しているといっても、成長してもらわないと困るのも確かだ。2011年中ごろにはシン
ガポールでがんセンターが完成する見込み。ベット数は公表されていないが、年間で119万S
ドルの収入が期待されている。今後の物件で建設中なのはSiloam Hospitals Semanggi and
Mochtar Riady Comprehensive cancer treatment Centreでインドネシアで恐らく最初のがんン
ターが今後数年で完成する。但し、業績は来年の中ごろまでほとんど変わらないことが予想さ
れる。

 さらにインドネシアのリスクといえば、やはり為替だろう。インドネシアルピアの変動リスク
は当然あり、為替の変動による鑑定評価のボラティリティはあることには留意する必要があるだ
ろう。

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海外のREIT投資(11) - Ascendas India Trust(シンガポール)

2010年03月29日 | 海外REIT研究


 アセンダス・インディア・トラスト(AIT)はシンガポール上場の不動産に特化した事業信託で
その名前の通り、インドのに特化したファンドだ。シンガポールの事業信託法の下で組成された
ファンドで厳密にはREITではなく、事業信託ではあるが、シンガポールの投資信託法の不動産
投資信託ガイドラインに準拠しており、REITライクな性格を有している。インカム収入の90%
以上を分配する事をコミットしており、分配金はシンガポールの所得税が免除される。(パスス
ルー課税であるという意味....だと思う) さらにギアリングの上限は35%と定めており、格付け
を一定要件を満たせば60%まであげることができる。2009年12月末の純資産は647百万
Sドル(420億円)、1ユニット当たりで85セントとなっている。現在の株価の98セントはプレ
ミアムがついていることになる。配当利回りは直近3四半期の年率換算で7.8%になる。

 AITは2004年12月に私募投信として組成された後、インドの不動産市場に投資する初め
ての不動産投資信託として2007年8月にシンガポール証券取引所のメインボードに上場した。
2009年12月末には時価総額7億シンガポールドル(455億円)。ポートフォリオはインドの
強みでもあるIT産業の比率が高く、4つのビジネスパークのほとんどがIT関連となっている。

 4つのビジネスパークはHyderabad、Bangalore、Chennaiのインド中南部に位置している。
International Tech Park Bangalore(ITPB、180万平方フィート)、International Tech Park
Chennai(ITPC、 125万平方フィート)、The V(128万平方フィート)、Cyber Pearl(43万
平方フィート)の4つのビジネスパークをあわせると477万平方フィートの広さがある。テ
ナント構成を見るとIT関連63%、研究開発5%、金融1%、その他IT関連で27%と圧倒的にIT関連が
多い。IT関連という形で見れば9割以上となり、単一業態のエクスポージャーが高いという
点に留意する必要がある。但し、すでに承知しているようにインドはグローバルなITアウトソー
シングの受け皿となっていて、IT一辺倒といっても影響するのはインド経済でなくグローバルな
経済動向がリスク要因となる。



 先ほどの4つのビジネスパークだが、Hyderabadに2箇所存在しているので、3地域となるが、
その3地域のエクスポージャーはほぼ均等になっている。地域的な偏在があるというわけではな
い。繰り返しになるがITアウトソーシングの受け皿であるインドではIT関連とはインドの内需と
あまり関係がないと考えて差し支えないだろう。それは顧客のブレークダウンを見ればあきら
かである。インド国内企業と多国籍企業(MNC)の比率で見てみるとMNCの比率が9割を占めており
インド企業の比率は1割にも満たない。国籍別で見ると米国が7割になっているが、米国経済の
リスクが高いということには必ずしもならない。なぜならば、多国籍企業は米国に多いのが第一
の理由であり、それらの多国籍企業でグローバルに展開していることからやはりグローバル経済
の動向が最もリスク要因として挙げられるだろう。




 なお、上位10社の売上げに占める比率は30%となっており、Affiliated Computer Services、
Applied Materials、Cognizant Technolgy Solution、GM、Invensys Development Cneter、Merrill
Lynch、Pfizer Pharmaceuticlaなどの多国籍企業郡が顧客の上位を占めている。

 (バランスシート)

 バランスシートは比較的健全だ。デットプロファイルを見ても現在のギアリングが19%と低い
水準に留まっており、借入れ余力はまだあるように見える。またスポンサーがシンガポールで最大
規模のREITの運用しているアセンダスグループであることから信用上のリスクはそれほどないと
考えてもよいだろう。但し、留意すべき点は最大60%までのギアリングがかけられることになっ
てはいるが、それは一定の格付け要件を維持するという条項があり、これを満たしているのかどう
かは確認できなかった。それでも35%までの引き上げは可能であることから140百万Sドルの
借入れ余力は現状であることになる。デットファイナンスに関してはすでに2015年12月満期
で25億インドルピー(74百万Sドル)での借入れに成功しており、5.255%クーポンまた
は330bpスプレッドでの60百万Sドルの3年無担保社債の発行を実施しており、今後の拡張
資金はすでに確保したことになる。

 一方でマチュリティ・プロファイルを見るとデットデュレーションが短いような気もするが、
インドのような新興国は常にインフレ気味で金利水準が高いことから長期での調達では金融費用が
高くなるデメリットがあることは確かであろう。またローンもシンガポールドル建ての比率が高い。
従って、為替変動による損益が発生することも留意する必要がある。因みに調達コストは加重平均
ベース、税効果を含むネットベースで6.2%となっている。



(売上・利益成長・成長戦略)

 過去5四半期の売上げ水準の推移を見ると意外に停滞している。停滞している理由は新規物件の
追加が特段なかったのがその理由だと思われるが、NPIベースでは伸びている。これはコスト削減
などの効果があったことが大きいが、この状況がいつまでも続くわけではない。やはり利益成長の
ためには新規物件の追加取得が必要だ。3Qの状況を見てみると売上げは4%の増加に対してNPI
は13%の増加になった。増加の最も大きな理由としては運営費用・メンテナンス・警備コスト及び
その他運営費用の減少によってコストが10%の減少となったことだ。




 今後の成長に関しては2010年から11年にかけて追加取得が予定されている。現在の保有物件
面積の35%にあたる170万平方フィートに拡大する予定である。その内Zenith(74万平方フィート
ITPC)、Park Square(45万平方フィート、ITPB)の2件合計119万平方フィート分に関しては2010
年半ばにも完成する見込みであり、今年後半から来年にかけての売上げ成長が期待される。



 一方で懸念材料も少なからずある。まずは今年から来年にかけて完成する170万平方フィートを
新規顧客で埋めることができるのかという点だ。インドは成長しているといっても、IT特化でグローバル
な経済環境の影響を受ける業態であることから、景気の腰折れがあったときにどうなるのかという点
は常に留意する必要があるだろう。さらに2011年には現在リースしている契約の35%が満了と
なる。契約更新が多いことから新規物件との競合も考えられるし、レントへの影響など若干不安な点が
あるとみてよいだろう。



 リスク要因は確かにいろいろあるとはいえ、インド不動産市場へのエクスポージャーを持つことがで
きるという点や、スポンサーの安心感、成長ポテンシャルなどを考えると面白い投資対象であると言え
るだろう。インドの強みといえばやはりITでIT技術者の給与水準が日本の5分の1、韓国の3分の1、
中国の2分の1とスキルのある技術者を最も安く雇用することができる国である。加えてインドでは
英語が通じることなど中国の技術者と比較しても優位性が高い。中長期の投資という観点ではポート
フォリオには入れておきたい銘柄だ。

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海外のREIT投資(10) -Ascendas REIT 第3四半期決算

2009年10月27日 | 海外REIT研究



 Ascendas REITが第3四半期決算を発表した。金融危機以降ほぼ一年が経ち、バランス
シートの中身も大きく変化した。営業収益は5%増収となり、NPIも11.7%と二桁の増収と
なっている。まとめた表は以下の通り。海外リートの中でも結構長く持っている銘柄で
その間ずっと配当を受け取っているのでそこそこのリターンにはなっている。金融危機の
時には流石に含み損に転じたがその後の株価の上昇は結構ドラスチックだった。トレーディング
の機会は何度もあったが、結局バイ・アンド・ホールドで良かったかもしれない。



 NPIの増加は賃料改訂や不動産関連営業費用の低減が4割程度プラス寄与したのに加え、
2008年に投資した物件のフル寄与が6割程度あったと分析されている。期中には
空港物流施設のPlot6、Plaza 8 Changi Business Park Phase 2の完成があり、既に稼動
している。2009年の1月から当法人は投資主割当増資、第3者割当増資、社債の発行
など積極的にエクイティを実施したことで発行済み株式数は4割増加。一方で、配当は
13.2%の減少に留まった。さすがにこれだけ増資するとギアリングは大きく低下しており、
総負債は18.6億ドルから14.06億ドルに減少、レバレッジは41.4%から、30.5%
に低下している。


 市場で懸念されていたCMBSは8月にローンに切り替えられ、担保の設定されていない
物件が20億ドル、31物件に拡大し、借入れ余力が拡大した。2010年の3月に3億
ドルのローン返済があるのみでキャッシュフローを圧迫するバランスシート上のリスクは
激減した。デットプロファイルもかなりなだらかになってきており、2014年まで、最
大の返済額は395百万ドル(2014年)であり、金融市場の動揺によるショックはほとんど
防げると考えてよいだろう。

 ポートフォリオの稼働率は9月末現在で96.8%、MTB(Multi-tenanted buildings)でみる
と93.3%となっている。MTBとは1顧客にまる貸ししているビルでなく、複数のテナントに
リーシングをしているビルをさすが、MTBはAscedasのポートフォリオの54%を占めており、
またマルチテナントであること言う事は中小ユーザーが多くなる為、景気の影響を受ける
と考えられている。現状を見る限りにおいては稼働率の低下が見られるものの、比較的高
水準を維持しており、シンガポール市場の平均稼働率を上回っている。

 とはいったものの、当法人がリスクから開放されているわけではない。センシティビティ
アナリシスでは稼働率もくしはレント水準が5%低下するごとにNPIが3.7%減少する。10%
低下するとNPIが7.5%。一方、分配金レベルでみると17%ずつ減少していくことになる。



 金融危機を大型増資で乗り切っただけあってバランスシートリスクはほぼなくなったが、
不安材料はやはり景気の状況だろう。全体の稼働率も前年と比較すると1.2%減少、MTB
ベースでは2.3%減少しており、景気低下の影響はあると考えるのが妥当だ。当法人の
契約では94%との顧客との間で賃料に関してコミットされているという強みがあるものの、
契約更改となれば別である。レント水準も2008年をピークに徐々に低下してきており、
下げ止まり感はまだない。平均リース契約期間も5.5年から4.9年に短縮しており、
特に来年、再来年の契約更改を合わせると3割に上るためそのときの経済環境の状態は重要
である。目先は特に問題がないもののアジア経済の回復がどの程度になるかは依然として
注目する必要がある。とりあえず保有継続でOK。

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海外のREIT投資(9) Champion REIT(香港)

2009年10月26日 | 海外REIT研究
 
 Champion REIT(冠君產業信託)は香港証券取引所に上場しているオフィス・商業の複合
型REITで総資産446億香港ドル(5352億円)、時価総額153億ドル(1839億円)
のアジアのREIT市場でも時価総額トップ10に入る大型REITである。当法人はビクトリア
湾を挟んだ両岸に資産を保有しており、香港島にはCitibank Plaza、九龍半島のMongkok
地区にはLangham Placeを保有している。



 総資産が大きいにもかかわらずポートフォリオは極めてシンプルなのは興味深い。2物
件の内、6割に当たる3168億円の資産はCitibank Plazaとなっている。残りの4割はLangham
だが、Langhamはオフィスと商業に分かれており、オフィスが12.8%、商業が20.5%となっており、
商業のほうが鑑定評価額は高くなっているが、賃貸可能面積ではそれほどの差はない。やはり
場所柄が鑑定評価に影響していると思われるが、Mongkokはオフィスとしての人気はいまいちの
ようだ。



(保有資産)

 Citibank Plaza - 香港のCentral駅のそばにあるCitibank PlazaはCitibank Tower、
ICBC Towerに加え558台収容可能な地下駐車場、商業施設を併設するオフィス・商業コン
プレックスで、当法人はICBC TOWER、商業エリア、地下駐車場の全てとCitibank Towerの4
フロア分を保有している。フロア面積が160万平方フィート。高さ205m、47階建てのビ
ルで、1992年竣工。賃貸可能オフィス面積117万平方フィート、同商業面積4万3千
平方フィート。テナント数78、稼働率97.39%となっている。やはり香港の中心部だけあって
テナントの7割が金融機関だ。その点でいうとリーマンショックの影響は受ける可能性はあ
ると考えるのが妥当だろう。これについては後で議論する。



 Langham Place - 九龍半島のMonkokにあり、59階建てのオフィス棟と15階建ての商業
モール、250台収容の駐車場、42階建ての5つ星ホテルからなる商業コンプレックス。フロア
面積155万平方フィートで2004年竣工の比較的新しい物件だ。Langhamの総面積の55%
がオフィス、残りの45%が商業モール向けとなっている。



(業績動向)



 業績は回復基調にある。営業収益は3.1%の増加となったが、NPI(Net Property Income)が
817百万ドルから877百万ドルへと7.2%の増加が大きく寄与したと考えられる。また
昨年の下期に鑑定評価の評価減が62億ドル減と大きくマイナスとなったが、今上期には鑑
定評価が23.8億ドル程回復した。回復した大きな理由は保有しているCitibank Plazaが
前下期と比較して8.4%の増加に転じた事と、Langham Placeも5.7%の増加となったことが要因
となった。鑑定評価額の増加は景気回復に伴い商業不動産の売買価格の上昇により、キャップ
レートが低下したことを挙げているが、本当にそれでいいのかという疑問も少しある。

 バランスシートは改善している。この理由は明快で昨年上期にファイナンスを実施したから
である。2008年5月27日に46.8億ドルの転換社債の発行、29.6億ドルの第三者
割当増資を実施したことで大幅な稀釈化が発生したが、その分ギアリングが36%から33.3%
に低下した。ギアリングがあまり低下していない理由はLangham Placeを買収したからであり、
もともとこのファイナンスは買収資金の調達が主たる目的であった。幸いにも金融危機前にに
増資に成功したことで財務的なリスクを低減させたという幸運な面もある。なお、発行した転
換社債はクーポン1%、2013年6月3日償還で転換価格は3.92HKドルである。当面の財
務リスクは低下しているものの2013年までに株価が回復しない場合(現在3.28ドル)、
社債償還のリスクが出てくることにも留意する必要がある。
 
 売上げの増加は評価してよいだろう。Langham Placeの買収は昨年の上半期に起こったが、
単に金融危機の影響を売上げ面では受けていなかったことと、Citibank Plazaのレント水準
が上昇したことで売上げの増加が見られたことである。(下図参照) Citibank Plazaの増収
は若干テクニカルなところがあり、上半期の売上げの大半は新規契約賃料が占めており、契
約更改による減収効果が少なかったことが挙げられる。この点については注意が必要だ。



(成長戦略)

 Langham Placeの買収という重要なイベントをこなして資産規模の拡大に成功したが、今後
の成長戦略に関しては不透明の部分が多い。また上期のの業績は確かに堅調であったが、下期
の業績は懸念される事項が多い。もっとも懸念される事項はレント更改のタイミングが来年の
2010年に集中していることだ。売上げ寄与が最も高いCitibank Plazaで54%と半分が契約の
更改時期がくる。下の図では40%が契約が更改する部分と、14%がレント改定の時期にきている
為、来年は重要な年だ。加えて2011年には3割のテナントが更改の時期を迎えることから
経済の状況がパフォーマンスに決定的に影響を与える可能性が高い。 Langham Placeに関して
も状況は似ており、ショッピングモール部門で43.7%でその全てが契約の更改だ。レント
のレビューと契約の更改では契約更改の方がハードなネゴとなる。フリーレントをどの程度含
めるかとか賃料の設定など単なるレントのレビューとは異なると考えられる為、影響がプラス
となるには経済状況の改善が必要である。



 経済環境に関しては実際の数字は改善の兆しは見えていない。下の図は香港のリテール売上げ
の数字とLanghamの数字だ。Langhamの売上げは健闘しているが、やはりマクロ環境の影響は受け
ている。第2四半期の香港のリテール売上げは5.4%のマイナスとなっており、経済環境が改善し
ているとは言いがたい。香港の通貨はご承知の通り香港ドルであるが、米ドルとのペッグをして
いるのでドル安の影響を受けている。香港は当然資源も何もないので大陸からの物資で生活が成
り立っていると考えれば、人民元の対米ドルへの上昇で実質的な物価上昇が見られていることに
なる。一方で、所得は香港ドルのままであることから実質賃金が下落。当然小売売上高に影響す
ると考えるのが自然だろう。




 投資判断としては微妙な所だ。分散投資という観点からは香港のリートは押さえておきたいと
ころだ。また物件のロケーションやクオリティなどを考えても物件数は少ないものの悪くないも
のだと考えられる。配当利回りも8%弱となっており、それほど悪くない。バランスシートは転換
社債の償還リスクは存在するが、ギアリング水準も低目となっておりリスクはそれほどないだろ
う。また現状の株価でみるとNAVに対するディスカウントが42%となっており、とりあえず保有で
いいのだろう。購入したタイミングがそれほど良くなかったので含み益もそれほどないが、もと
もと長期の配当期待で投資しているのでこのままホールド。但し経済状況はよく注意する必要が
ある。

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海外のREIT投資(8) CPN Retail Growth(タイランド)

2009年09月30日 | 海外REIT研究

 タイのREITはいくつかの点で特徴があり、投資対象としても検討してもよいと考えられ
る。まず第一にその地理的な条件でASEAN諸国のほぼ中心に位置しておりカンボジア、
マレーシア、ミャンマー、ラオスと接しておりシンガポール、インドネシア、中国、インド等
とも地理的に近い。また熱帯気候ながら勤勉な国民性など日本とも共通する要素がある。
 タイには日本の自動車産業のアジアの生産拠点があり、タイを経由してアジア全域に
輸出が行われており、経済的にも重要な位置を占めている。タイと日本のREITの違いは
主として法的な規制がタイの方が厳しくなっているのが特徴だ。タイのREITは日本と異な
り、企業形態をとっておらず、形式としてはClosed-endのMutual fund即ち投信ファンドの
形をとっている。またレバレッジ規制が厳しくNAVの10%以上の借入れが禁止されている
のも特徴でアジア地域で最もレバレッジがかかっていないREIT市場である。
 それが逆にリーマンショックの金融危機の影響を最小限に抑えた効果もある。

 CPN Retail Growth Leashold Property(以下CPN)はタイの商業施設に特化したREITで、
タイの中心街にある大規模商業施設を2つ保有運営している。2005年8月にタイの証券取引
所に上場したREITで運用SCB Asset Management、プロパティマネジャーとしてCentral
Pattana Public Companyが当ファンドの運営に関わっている。ティッカーはCPNRF。



 保有する商業施設は2つありCentral Plaza RamaII、とCentral Plaza Ratchada-Rama III
で賃貸面積はRamaIIで93,338m2、RamaIIIが39,975m2の合計で約13万m2。総資産は113億
バーツ(316億円) 写真の通り大規模ショッピングモールが主体の商業REITだが、ロケーション
は悪くない。バランスシートは健全だ。LTVは5%。即ち、ほとんど借入れがないのが現状だ。
これは前にも述べたようにタイの法規制がREITに対して厳しく、レバレッジをほとんどかけら
いことからきている。少なくとも日本並みにレバレッジをかけられるようになれば分配金
利回りはかなり上がるのだが、現在の所、変更の可能性はないと考えてよいだろう。



(業績)

 業績についてはまず過去3四半期分のグラフを見てもらおう。



 業績は安定している。上の図は賃貸収益、純投資収益、分配金の過去3四半期の図になって
いるが、賃貸収益は直近四半期で微減、分配金に関しては同じトレンドとなっている。繰り
返しとなるが、BSの構造が極めてシンプルなため賃貸収益のボラティリティのみが業績の変
動要因となり、他のREITのように金融市場の変動による金融費用のボラティリティがほとんど
ないというのが他のREITと大きく異なる点であろう。業績が比較的安定しているもう一つの
理由は契約形態からくる。下図でみるとわかるがRamaIIの固定賃料契約が52%、RamaIIIでは
78%が固定賃料となっており、全体の固定賃料比率が比較的高い。但し、RamaIIIは固定賃料
契約の比率が高いが収入に占める割合が低く、歩合賃料がかなり大きいと想像される。



 タイで気をつけなければならないリスク要因としてはやはり政治情勢だろう。日本と異な
り、軍部によるクーデターが何回も起こっており、そのリスクは考慮する必要がある。とは
いっても前回のクーデターの際にも影響はあったものの特段の悪影響があったわけではなく
そういう意味からしてもクーデターで株価が下落したときはチャンスかもしれない。稼働率
は直近4四半期を見るとRamaIIIで低下傾向にあるが、全体の稼働率は98.1%と高水準を維持
している。特に賃貸面積の大きなRamaIIの高稼働が貢献している。



 当ファンドの契約形態をさらに細かく見てみよう。まずリース期限プロファイルを見てみ
るとほどよく分散しており、2012-2024年の比較的長期の契約が存在していることから、固
定賃料契約と合わせてキャッシュフローのボラティリティーの最小化に貢献している。



 テナント構成比については取り立てて問題はないだろう。これも適度に分散されていて、
マクロ的なリスクを除けば特段のリスク要因にはなりにくい。但し、商業施設であることか
ら当然タイ経済の影響を受けざるを得ないが、そのリスクは投資家は当然とるべきで、それを
含めた投資判断が要求されることはいうまでもないことだろう。



(成長戦略)

 タイのREITに関しては成長戦略として考えられるのはまず内部成長だ。タイの法規制によ
り、レバレッジに制限がかけられていることから借入れを増加させて物件を取得することが
できない。従って、成長のフォーカスはどうしても内部成長に重点をおかざるを得ない。可
能性として考えられるのはやはりエクイティを行って外部成長を目指すことだが、現在の環
境では困難だろう。タイのREITはこのようなレバレッジの制約からグローバルな投資家から
あまり注目されていない。むしろ、中長期的な観点で考えると法規制の厳しい現在に投資し
ておいて、将来レバレッジ規制が外れた場合にはバリュエーションが大きく上昇する可能性
もある。但し、やはり基本は業績で抑えておくのが第一であり、現在のマクロ経済環境の影
響はやはり受けている。下図はRamaII、IIIの交通量を調べたものだが、経済環境の悪化に伴
い鈍化していることが分かる。レバレッジが効かない分、経済状況に細心の注意を払う必要
があることは言うまでもない。



 現在のNAVは一口あたり10.4バーツで直近の株価9.2バーツと比較するとディスカウントは
ほとんどない。リーマンショック後に株価が大きく下がってその後急回復したことによるが、
やはりレバレッジが低いと市場が正常化すると純資産価値にさや寄せされやすい。配当利回
りは直近で9.7%。株価的にはフェアバリューだろう。それでも将来のレギュレーションの変
更などを考慮するとタイのREITには少しは投資しておきたい。

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海外のREIT投資(7) Capital Commercial Trust(シンガポール)

2009年09月24日 | 海外REIT研究
 Capital Commercial Trust(CCT)は2004年5月にシンガポール市場に上場した商業REITで
総資産69億シンガポールドル(4529億円)と最大規模のREITだ。シンガポールの中心部に11
の商業施設を保有し、敷地面積31万7千m2、テナント数500を数える。当法人は日本のREIT
とやや趣きが異なり不動産以外にも投資を行っている。クアラルンプールの不動産を保有
するQuill Capita Trustに30%投資しており、Malaysia Commercial Development Fund Pte
Ltd.に7.4%投資している。

(ポートフォリオ)

 ポートフォリオの中身は収入別の比率で言うとオフィスが74%と最も高く、リテール向
け16%ホテル、コンベンションセンターが10%の比率となっており、8割以上の収入がA
クラス物件もしくは6割の持分を保有するラッフルズシティからきている。ラッフルズシティ
はその名の通りラッフルズ通りに面し、シティホールのすぐ隣にある延床面積320,738m2の
大規模商業複合施設で28.2%の収入がこの物件からきている。Battery Road(23.1%)、Capital
Tower(12.4%)、George Street(17.1%)などの上位4物件で80.8%の収入を占めていることから
ポートフォリオの集中度が高いのが特徴である。



 テナント構成でみた場合、金融(36.1%)が最も多く、エネルギー(14%)、医療(10.1%)、ファッ
ション(6.7%)政府及び政府関連施設(6.3%)、食品(5.8%)などとなっている。比率の高い金融では
JPモルガンチェース、スタンダードチャーター銀行、野村シンガポール、HSBC、ロイズなどの
大手金融機関が顧客となっている。また上位10位の顧客で月間賃料総額の45%を占めており、
ここでも上位集中度が高いことが特徴となっている。

(中間決算)

 業績は回復している。前回分析したAscottと似ているが、第2四半期決算では純不動産賃貸
収入が外部成長もあり40%増加、減損前税引き利益は18.3%の増益となった。一方で、鑑定
評価減による評価損失計上により、590百万ドルの赤字となった。但し、前回もいったが、
これは非現金項目の費用であることから、配当には直接の影響はない。配当可能利益は93百万
ドルど前中間期と比較して29.9%の増加となった。(表参照) 配当は中間で3.33セント、前中間
と比較して3割増加。年率換算の配当は6.72セントで配当利回りに換算すると8.2%となった。



シンガポールのプライムエリアにあるだけあって、他のREITとの比較では健闘している部類に
入る。気になるのは稼働率の低下だが、やはり金融危機の影響を受けており、2008年の4Qに
低下してからまだ回復はしていない。それでも稼働率は96.2%を維持しており、これは市場平
均の91.2%よりも高い。これは当法人の連とが市場平均よりもまだ低いことから解約率が他社
と比較すると抑えられていることを示している。2009年の営業収入に関しては92%の顧客から
コミットされているため、目先の不安はあまりない。



                      図CCT稼働率の推移


                      図CCTレント水準の比較

(バランスシート・見通し)

 バランスシートは問題がなくなった。その理由はエクイティファイナンスを実施したからで
ある。当法人は上期に株主割当中間発行増資を実施した。これにより828百万ドルを調達し、
ギアリングは(LTVに相当)は30%まで低下した。ファイナンスの問題も2011年のCMBSの償還まで
特にないことから、当面はバランスシートでの問題はなさそうである。6月まで26.4億ドルの
有利子負債は中間発行増資により、19.8億ドルまで低下した。固定負債の平均残存年数は2.2
年から2.7年に長期化しており、金融危機からようやく脱しようとしている。

 いくつかの好条件があるわけだが、それでも市場環境の悪化による業績への影響はいまだ無
視できない。法人は市場平均よりも低いレント状態からレントの値上げによる内部成長を主張
しているものの、現段階で内部成長の達成がどの程度可能かは不明だ。シンガポール市場は2008
年10月をピークにAクラスビルで48%の賃料下落となった。流石に海外は調整がドラスチックだ。
法人側のプレゼンテーションでは2009年に入ってから5月からの下落率が11.6%と大きく鈍化し
ていることから、市場の底打ちも近いとの見方をしている。


 また2011年までファイナンスの問題はないといってもCMBSのリファイナンスにはまだ懸念は
くすぶる。現時点ではやはり日本と同じようにCMBSの買い手がほとんどいない状況であること
から、当法人は株主割当という手段でリファイナンスしたわけだが、2011年に市場が回復して
いるかどうかはまだ不明だ。先ほどの図表で示したデッドプロファイルでもCMBSでのファイナ
ンスが多く、銀行借入が少ないのがちと気になる。恐らくコストでそうしたのだろうが、やは
りファイナンス手段も多様化してほしい。しかしながら結論としてはまだ保有でいいだろう。
やはりギアリングが制御可能なレベルまで低下したことと、シンガポールのプライムエリアを
抑えているのはやはり強い。REITの国際分散投資を目指すものにとってはずせないというのは
やはり大げさだが、抑えておきたい銘柄ではある。

バックアップのPCでこのブログを更新しているが、やはりパフォーマンスが悪いのでしばらく
更新はしたりしなかったりします。

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海外のREIT投資(6) Ascott Residential Trust

2009年09月09日 | 海外REIT研究


 アスコットレジデンストラスト(ART)はアジア地域のレジデンシャル不動産に投資
するシンガポール上場のREITでシンガポール市場に2006年3月に上場した比較的新し
いREITだ。アジア地域に幅広く投資するレジデンシャルREITという点でユニークな
投資vehicleでもある。現在は38物件3642戸を11の地域に分散投資しており、総資産
は15.5億シンガポールドル(996億円)の規模に成長している。地域分散は中国が25%、
インドネシアが5%、フィリピン9%、ベトナム13%、豪州3%、日本18%、シンガポール
27%となっている。(下図参照) スポンサーはシンガポールの不動産大手のCapitaLand
だ。CapitaLandはこのREITのほかにシンガポール最大のREITであるCapitaMall Trust
商業REITの代表格であるCapita Commercial Trust、中国ショッピングモール特化ファ
ンドであるCapitaRetail China Trust、マレーシア商業REIT Quill Capita Trust
などを運用しており、アジアでも最大級のREITマネジャーである。





このリートの面白いところはエマージング市場に52%、先進地域に48%という形での
分散投資を行っており、新興国にベットしたいがあまりリスクはとりたくないという
投資家にはぴったりかもしれない。シンガポール、日本、豪州などの先進国でのヘッ
ジをおこないつつ、ベトナム、中国などの経済成長率の高い地域に投資するというの
がこのREITのアイデアとなっている。保有物件はSomersetもしくはAscottというブラ
ンドで統一されている。例えば日本の物件はSomerset麻布、Somerset六本木、などで
ある。地域別の投資は述べたとおりであるが、利益的な寄与ではベトナムの利益が最も
大きく、次いでシンガポール、フィリピン、中国、日本、豪州という順になっている。
但し、利益構成比を見てみるとキャッシュフローが安定するとの触れ込みの先進国地域
の利益構成が低く、エマージング諸国の利益構成比が高いというのは少し注意をする必要
があるだろう。(下図参照)


     

(2Q決算のポイント)

 発表された2Q決算では鑑定価格の減価はあったものの比較的検討した部類に入るとは
思える。コアの賃貸利益は減益ながら最悪のシナリオとはならずキャッシュフローベース
で見た場合の打撃はコントロール可能な範囲にあるといってよいだろう。(下表参照)




 しかしながら、リーマンショックによるグローバルな金融危機は当法人にも少なか
らず影響した。第2四半期(4-6月期)の業績は営業収益で7%減、償却前利益で11%減少、
配当可能利益は17%の減少となった。鑑定評価の値洗いによりよる償却額61百万ドル
を差し引くと税引き後利益は3166万ドルの赤字に転落した。但し、赤字といっても
鑑定評価の減価分は非現金費用であるので配当可能利益は黒字であることに注意する
必要がある。従って配当はあり、年率換算の分配金利回りは8.13%である。また鑑定
評価額は60百万ドル減価したが、このほとんどが日本及び中国の資産の減価によるも
のである。1株当たりの純資産(NAV)は1.36ドルとなっており、現在の株価88セントか
ら見ると35%のディスカウントとなっている。金融危機後に株価は暴落したが、現在
はかなり株価が回復しており、ボトムからは倍以上の株価となり金融危機前に近づい
ている。

 営業収益ベースでの各地域別のパフォーマンスはシンガポールで41%減益、中国で
31%減益、インドネシアで12%減益となったが、豪州、日本、フィリピン、ベトナムの
各地域では増益となった(償却前利益であることに注意)。

 気になるバランスシートの状況だが、6月末のギアリング(LTVに相当)は40.7%。有利子負債
は630百万ドルとなっている。この数字だけからすれば特に問題となることはないだろう。
有利子負債の長期固定比率は70%でポートフォリオの平均固定金利は3.4%となっている。
しいて問題となりそうなのはMaturity Profileかもしれない。ファンディングスケジュール
からは2011年に有利子負債の62%に当たる389百万ドルの借換えが必要となってくる。
但し幸いなのはすべて銀行借り入れでCMBSによるファンディングでないこと。日本のREIT
は投資法人債で問題を抱えているが、海外のREITはCMBSを発行して、その償還問題が大きな
ところがあり、その点では日本と似ている。当法人はその問題からは無縁だといえるが、
それでもMaturity Profileは改善の余地があるだろう。



(投資判断)

 正直言って確信といえるほどの自信はないが、結構面白いREITだと思う。実は既に
投資はしているが、バランスシートリスクは皆無ではないが、スポンサーも信用でき
るし投資対象、戦略は面白い。バランスシートを見てふと気がついたのだが、当法人
の有利子負債の4割が円資産というのはちょと....という感じがする。でも、将来、
円安になるとこのREITにはかなりのメリットはでる。その逆はマイナスなのだが...
株価は大きく回復したが、まだNAVディスカウントは大きいのでしばらく保有でよい
だろう。

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海外のRETI投資(5) - Macquarie Office Trust

2009年08月31日 | 海外REIT研究


 豪州のREIT市場はリーマンショック後の株式暴落で大きく調整し、
その後の市場混乱で株式市場よりも下落するというかなりのボラティ
リティのある市場だ。要するにかなりリスクのある市場であるという
こと。財務基盤の弱いREITが多く、スポンサーの信用力もそれほどな
いのが多い。実際に破綻したREITが多く出たのも豪州市場である。
2008年5月を100とすると2009年の3月には70%以上も
の暴落となった。その後、豪州REIT市場は14億豪ドルの資本増強に
成功し、なんとか回復しつつあるのが現状だ。

 Macquarie Office Trust(MOF)は豪州の投資銀行であるマコーリー
グループが運用するREITで、同社は3つのREITを運用している。MOF
はオフィス専業REITで豪州を中心に不動産を保有・運用している。

(資産内容)


 MOFは40箇所のオフィスビルを所有し、500以上のテナントを有して
いる。豪州36%、アジア54%、欧州8%、米国2%という地域分散となって
いてリース契約の平均年数が4.8年、資産の稼働率は91%である。
賃貸収益は185.8百万ドル、一株当たりの利益は5.64セント分配金は
3.75セントとなっている。総資産44.3億ドル(3531億円)一株当たりの
純資産は49セントとなっており、現在の株価24セントと比較すれば
純資産倍率は0.48倍となる。分配金利回りは15.6%。

 上位テナントを見るとJPモルガン(9.5%)、豪州政府(8.8%)、AT&T
(6%)、マコーリーグループ(3%)、ウェルズファーゴ(3%)、ベライゾン、
DeTe Immobilien(ドイツテレコム子会社)、シティオーストラリア、
Telstra(豪州大手通信会社)などとなっており、顧客の70%が大手企業、
政府となっている。

(リファイナンス問題)

 他の豪州REITと同じくリファイナンスの問題が当法人を直撃、2009
年到来の14億豪ドルの償還問題で株価は大きく下落。5億ドルの第三
者割当増資及び新株発行、4.6億ドルの資産売却、配当の抑制など
で10億ドルを捻出。ギアリング(LTVに相当)は41%に低下した。さらに
9億ドルのシンジケートローンの延長、5億ドルのCMBSのリファイナンス
などにより問題の解決に当たるとしている。しかしながら、大規模な
稀釈化により配当は下期に1.5セントに減少。鑑定評価減で556百万
ドルの損失を計上した。

 (成長戦略)


 正直言ってやばさ半分である。収入の1割弱を豪州政府から得ている
というのはなんだか安心できそうな話だが、基本的にアングロサクソン
の契約はかなりシビアで関係があるからといって潰れないという保証は
全くない。今期決算は(MOFは6月決算)は1株当たりの利益は4.14セント
に低下する見込み。配当はいくらになるかわからない。当法人にとって
成長戦略というよりティフェンス戦略といったほうが良いだろう。いか
に生き延びるかという点が重要で、生き延びれば株価は純資産まで上昇
してもおかしくない。なお、外国人投資家にとって豪州のREITは配当に
関してはうまりうまみがない。なぜなら、源泉税率が30%と高いことから
配当利回りは7掛けとしなくてはならない。また上図にあるとおり、負債
償還スケジュールを考えると2012年に大きなヤマ場があり、まだ予断を
許さない状況だ。但し、生き残るという確信を投資家が持てば株価は急
騰するだろう。実は持っている。しかし評価損大。

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海外REITの投資(4) SDR S&P/ASX 200 Listed Property

2009年08月13日 | 海外REIT研究
 豪州のREIT市場は数も種類も多いが、他のアジア市場と異なりRiskに関しては慎重に見極める必要
がある。豪州市場は自由な分、倒産するREITも多く日本、香港、シンガポールと違い、リスクプロフ
ァイルはかなり異なっている。したがって銘柄選択は重要であるが、海外市場のリサーチ情報を取る
のは困難であることが多い。日本の証券会社でも大和のように一部の海外REITの銘柄カバーがされて
いるケースもあるが、ほとんどの場合、情報の取得は難しい。一方で、リスクのある市場はリターン
の獲得機会が多いことがあるのも事実であり、海外市場に挑戦する投資家にとっては見逃せない市場
でもある。 とはいっても銘柄選択が困難である場合、ギャンブル感覚で投機に走るのは無駄に金を
捨てる事に等しい。ファンダメンタルズ情報の取得の困難な市場に投資するとすれば一番確実なのは
セクターに投資することであろう。その場合、ETFがもっともその代替手段になりうる。今回は豪州市
場のREITに投資するETFについてみてみよう。

SPDR S&P/ASX 200 Listed Property Fund (SLF)はステートストリートグローバル・アドバイザーズが
運用するETFでS&P/ASX200にトラックすることを狙うファンドである。 ファンドの構成はリテール
REITが52.5%、総合REITが33.9%、オフィスREITが7.3%、産業REITが6.27%という構成となっている。
(8月12日現在) 組み入れ比率上位で見るとWestfeildGroup(44.44%)、Stockland(13.29%)、
GPT Group(7.9%)、CFS Retail Property Group(6.19%)Dexus Property Group(6.18%)、
Mirvac Group(5.16%)、Goodman Group(5.00%)となっている。日本で販売されている国際分散型REITなど
にも組み入れられている銘柄が多く、その一方、ETFであることから運用コストが安いのがメリットであ
る。マネジメントコストが0.4%と日本でREITファンドを買うよりもコストが安い。豪州市場に上場して
おり流動性なども問題がなく、豪州のREITのエクスポージャーを持ちたい投資家には便利だと思う。 

過去1年間のに配当実績は8.07%、過去5年間の平均配当実績は8.61%である。一方でキャピタル損益を
含めたトータルリターンで見ると過去1年が-41%、過去4年の年率換算で-19.26%である。世界のREIT
市場が大きく下落したことで豪州RIETも同じ傾向を辿っている。過去3ヶ月の回復局面でのトータル
リターンは+8.71%となっているが、日本、シンガポール、香港などの市場と異なり回復は鈍い。一つ
には豪州REITのファンダメンタルズが弱いこと、回復したREITの時価総額が小さくインデックスに対
する影響度が小さいことが上げられる。

 配当だけに注目した投資は豪州市場に関しては勧められない。最も重要な点は配当に対する税制で
豪州のREITの配当に対する税率が30%と極めて高いことがあげられる。日本、シンガポールは10%、
香港のREITは無税であることを考慮すると豪州のREITに配当利回りを求めても税金だけとられるばか
りでネットのキャッシュフローが意外に小さいことに驚かされるだろう。日本の証券会社経由での
投資は勧められない。まず源泉課税が二重にかかることやコストも二重にかかることでリターンが
小さくなる。 しかしながら、海外での証券会社口座を開設しており、グローバルな投資を行って
いる投資家にとっては豪州市場をスキップするリスクは避けたいだろう。したがって豪州
REITに対する投資手段を持つことは重要であると考えている。特にボラティリティの高い市場である

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海外のREIT投資(3) - Acsendas REIT

2009年08月11日 | 海外REIT研究
 シンガポール市場のREITは香港のREITと異なり、数多くの種類のREITが上場している。アジア
パシフィック地域で最大のREIT市場である豪州には及ばないものの、比較的信頼できると思われ
るREITが多いと感じている。豪州市場は種類・数とも豊富だが、破綻してしまうREITもあり、か
なり玉石混合という感じだ。シンガポールのREITではまだ破綻したREITはなく、その分安心でき
るのも多い。私の海外REITポートフォリオでも組み入れ比率最大の銘柄はこのAcendas REITだ。
かなり昔から投資しているので損はしていない。

 海外REITの投資について少しだけ言うと、その必要性はやはりなんといっても分散投資だ。国
内の株式にも投資しているが、資産の大半をREITで運用している私にとってREITのリスクは地域
的なリスクが最も大きい。為替リスクなどは当然あるが、日本のREITだけで運用した場合、最も
可能性のあるリスクは首都圏で大地震が発生した場合である。現在、プレミアムがついている銘
柄や安心できるREITとされているものはそのほとんどが東京に集中したポートフォリオ構成にな
っている。キャッシュフローの安定性から言えば、確かに東京集中、できれば23区に集中してい
たほうがいいのは理解できるが、首都圏とくに東京直下型地震が発生した場合、資産のほとんど
を一夜にして失うという形にもなりかねない。実際、首都圏の地震は関東大震災以降起こってお
らず今後50年の間に発生する確率はかなり高いとされている。50年より先はおそらく自分はいな
いと思えるのでその先については考えないとしても生きている間に地震が起きる確率がある場合
何らかのヘッジは絶対に必要だ。これは為替のリスクやカントリーリスクよりも大きいと判断し
たほうがよい。

 Acsendas REITはどのようなREITかというと、直感的に理解できる言い方をすれば、シンガポー
ルの日本ビルファンド、ジャパンリアルエステート、もしくはシンガポールのLink REIT(香港)と
いったほうが良いか。つまり結構アンパイなREITだ。その分、バリュエーションは高く、利回り
も低い。REITにはリスクは当然あるが、最もリスクの少ないシンガポールのREITだと考えても
よいだろう。但し、リスクが少ないというは株価が下がらないという意味ではない。
以下にその特徴を記しておこう。

・First and largest business space and industrial REIT listed on the Singapore Exchange
 (シンガポールに上場した最初にしてかつ最大のオフィス及び産業関連施設のREIT)

・Has a diversified portfolio of 89 properties in Singapore comprising: Managed by
Ascendas Funds Management
 (分散されたシンガポールの89物件を保有しAscendas Funds Managementが運用)

・Baa1 corporate rating
(Baa1の格付け....意外に格付けが低かったりする)

・Total Assets of about S$4.6 bn (US$3.30 bn)
 (総資産46億シンガポールドル)

・Tenant base of over 900 local and international companies
 (900以上のローカル及び国際的な企業テナント)

 ポートフォリオは大別すると4つに分かれており、(1) Business&Science Park(30%) (2)Hi-Tech
Industrial(21%)、(3) light industrial(13%)、 (4) Logistics & Distribution Centres(27%)
の4つに分かれている。オフィスよりも産業用途が多いのが特徴だ。ポートフォリオの47%は5年以
上の長期契約となっており、その3分の1の契約がインフレ条項(CPIに連動して賃料が決定)を結ん
でいる。当REITはシンガポールのREITインデックスの19%を占めており、日本を除くアジアREIT市
場の4%を占める大規模なREITだ。顧客上位を見るとシンガポールテレコム(6%)、C&P(4.5%)、
Creative(3.6%)、Cold Storage(2.0%)、Siemens(2.0%)、TT Internaitonal(1.8%)、Hewlett Packard
(1.6%)などの優良企業へのリースが主体。分野別では電気機器(15.5%)、3PLロジスティックス
(15.1%)、機械工業(11.4%)、一般物流(8.2%)などに分かれており、景気変動リスクとは必ずしも
無縁ではないが、製造業が21%、非製造業が79%と大きなボラティリティはないと考えられる。



 直近の稼働率は先ほどの4分野毎に言えば(1)93.6%、(2)97.5%、(3)93.6%、(4)98.5%と比較的堅
調で、シンガポールREIT市場の平均を3-5ポイント上回っている。ポートフォリオ全体の稼働率
は97.1%。MTB(Multi Tenant Building=一つの企業へのまる貸しでなく、複数のテナントにリース
する複合ビル)の稼働率は94.0%だ。ポートフォリオ全体の平均契約年数は5年。


 バランスシートに関して言えば、金融危機の影響で株価が大幅に下落したが、その後回復の過程
でエクイティファイナンスに成功。有利子負債は16.09億Sドル、レバレッジは35.5%と財務内容に
問題は少ない。負債の98.2%に当たる15.8億Sドルは固定金利での調達で負債の固定比率が高く、
平均ファンディングコストは3.75%。負債の平均残存年数は3.1年である。一株あたりの純資産は
1.62ドル。年率換算ベースの配当は14.48セント、配当利回りにすると8.22%となる。現在の株価は
1.76ドルだが、今年の2月くらいには1.1ドルを割れていたので配当利回りは13%くらいになってい
た。といっても他のシンガポールのREITで20%超えていたのがあったのを考えるとやはり、投資家
はこの銘柄をアンパイであるとかんがえていただろう。日本でも同じ状況だ。

 源泉税などを考慮すれば利回りは低くなるが、比較的リスクの少ない海外のREITといえば、
このREITと香港のLink REIT位だろう。なお、四半期決算、四半期配当である。

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