Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

財産債務調書制度の新設

2015年02月07日 | 金融市場
 確定申告の季節がやってきて、税理士を雇っていないし、雇う気もない私にとっては申告作業に時間を取られる季節だ。株式などのの金融資産所得が中心だが、一応実物不動産もやっているし、とりもなおさず海外にある証券口座からの所得は自分で計算しなくてはならない。税理士はドメな人が多いのでこの辺はわからないだろうし、雇うだけお金が無駄になるので税理士は雇っていない。外国証券口座からの所得は配当所得がメインであまり売買していないので所得の把握という点ではそれほどの苦労はないのだが、外国税額控除の計算のために配当の支払い調書の収集(法第95項に規定する財務省例で定める書類に該当)と外国源泉税の計算が面倒だ。一番面倒なのは売買が発生した時の損益の把握で、どういうわけか外国の証券会社のステートメントには簿価が載っていない。時価主義というのはわかるけど、税務申告するときには簿価は必要だろうにと思うのだが、この辺が不思議なところだ。だから海外口座ではなるべく売買しないでバイアンドホールドできる銘柄に絞っている。

 税制改正で国外財産調書が創設され、海外に資産を持つ投資家は提出する義務を負った。厳密にいえば昨年1月1日以降の確定申告だが、周知期間として1年が設定されている。つまり今年の確定申告はマストであるということだ。昨年の確定申告では様子見で出さなかったという人が多かったという話が雑誌に載っていた。何を様子見しているのかはよくわからないが、おそらく申告書を提出したら税務署がやってくるのではと恐れている人が大半だろう。私の場合は昨年の確定申告時に提出済みだ。別に悪いことしているわけではないので来るなら来いという感じだったが、来なかった。(別件の大したことない用事で税務署が来たが)



 上記に書いてある通り、調書を提出せずに国外財産からの所得漏れが発覚すれば加算税が課されることになる。加えて不提出なら刑事罰もあるというかなり厳しい処置だ。こんな制度はなくしてもらいたいが、要するに海外での所得を申告してない人が多いという事実がこの制度を生んだということに他ならない。税務調査が恐ろしいという人は結構いるかもしれないが、私は何回も税務調査を受けてきたが(税務署に来てくれというケースも自宅に税務署員が来たこともある)、有用なアドバイスを一つ。ちゃんと申告していれば全然怖くありません。私の場合は計算間違いとか、税法解釈の違いを理解してなかったケースがほとんどで、税金をごっそり持っていかれたことはない。むしろ、この金額で税務署員がわざわざ自宅までやってくるなんてという感想すら持った。

 ただし、今回、自民党、公明党の税制調査会が発表した平成27年度税制改正大綱は問題ありと考えている。タイトルにも書いたが従来の財産債務明細書を「財産債務調書」に格上げするという内容だ。これは所得2000万円以上または資産3億円以上の個人に調書の提出を義務付けるという内容だ。税をより補足しやすくするという趣旨だとは思うが、国外財産調書とは別に国内外すべての財産の申告を義務付けるものだ。要するに相続税対策が主眼だと思うが、めんどくさいことはやめてほしいというのが個人的な感想だ。因みに大綱の中身は以下の通りだ。



 私個人の不満は国内は特定口座があるじゃないか、預貯金にしても国税のシステムであるKSKで把握できるだろうに。どう考えても国税の怠慢にしか思えない。まあ、逆にいえば相続税などで巧妙かつ悪質な脱税もしはく租税回避行動が目立つということかもしれない。税金は少ないほうがいいというのは心情的にも理解できるけど、脱税事件のニュースを聞くたびに、「そんなに税金はらいたくなかったの?」という気持ちも一方ではある。富裕層増税の国会議論なんかはいつも不愉快だけど、ルールに則って税金おさめてればこんな話にはならないんじゃないかといつも思う。ピケティの「21世紀の資本」が巷で人気になっており、「そうだ、そうだ富裕層にはもっと課税しろ」なんていうのがメディアでの正論になりつつある。でも、日本の課税システムはかなり公平だし、消費税の逆進性云々よりも所得税・地方税の累進性によって富の分配機能は他の国よりもかなり正常に機能していると思うんだけど。



 こんな図を出して日本には格差がない。格差問題なるものは存在しないと主張するつもりは全くない。しかし、日本は「旧ソ連や中国共産党すらなしえなかった偉大な社会主義国家」の例えもあるように分配制度は機能している。しかもかなりうまくいっている。個々の事例を取り上げてこんなにひどいというのは簡単だし、メディア受けもする。でもそれはマクロ的に正しいわけではない。上の表は平成11年からのジニ係数の変化だが、グロスの数字。つまり名目数値は確かに上昇しているが、富の再分配により格差はちゃんと埋められている。第一、国税が把握している給与所得者数4645万人の内、4割に当たる1901万人は所得税率は10%以下だし、納税者の53%に当たる2711万人は給与所得者が収める所得税の11.4%を負担し、所得上位8.3%に当たる385万人が税収の61%を負担している。(国税庁 平成25年民間給与実態調査)
 国会なんかでの議論(特に共産党とか)で、「格差是正どころが富裕層を優遇している。とんでもない政策だ」とか聞くと、ちゃんと数字見てから言えと突っ込みたくなる。格差問題はある。でも、メディア受けしそうな論調の本質は格差問題ではなく、「お前の財布には俺より10万円多く入っている。だからずるい」と言われているような気がしてならない。

 話がかなり脱線してしまった。財産債務調書の話だが、ひどいとは思うが、義務化されたときにどう対応するかが問題だ。実は従来からある「財産債務明細書」は提出義務があるが罰則規定がないのが問題とされていた。今回の大綱では義務化の実施と申告漏れに対する加算税の導入があるが、国外財産調書とは違い、不提出による罰則規定は盛り込まれなかった。個人的には国内資産の補足は海外に比較すればかなりできるはずなので納税者の負担を増やすこの制度の導入は反対だ。どうも国税の怠慢としか思えない。国内預金は仮名口座は禁止されているわけだし、不動産は固定資産台帳がある。有価証券は特定口座があり、国税にはKSKがある。いったいなんで導入するのか理解に苦しむ。どう考えても国税が楽しようと考えた制度にしか思えない。ちゃんと申告していれば加算税は課されないわけだから、提出なんかしないほうがいいかとも考えるが...もう少し考えてみる。

 
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日経平均先物ミニを使ってみる

2010年09月09日 | 金融市場
何社もの証券会社に口座を持っていると管理は大変だが、やはり各社それぞれに特徴が
あり、一長一短があって1社に統一するというのも難しい。例えばマネックス証券の場合
は手数料は安くはないが貸し株設定が楽だったり、リサーチが手に入るとか。三菱UFJ証券
ははっきり言って使い勝手は最悪に入るがリサーチの量と質は他社を凌駕していたりする。
SBI証券はトレーディング機能で微妙に他社を上回っていたりする。カブドットコムはネット
証券としては一番中途半端でどれが良いというのはあまりないが、アラートメール設定とか
細かいリマインド機能は優れていたりする。松井は...いやよく分からんです。サービスは
ないがトレーディング機能は優れているらしいがトレーディングしないんで....
一方で、駄目なのは大和証券、野村證券、みずほ証券などの対面型だ。大和はリサーチ
が充実しているのがまだ救いはあるのだが、野村ははっきり言って駄目だ。こういうのは
実際に利用してみないとわからないことが多い。

 数社の証券会社を利用するといくつか問題が出てくることがある。一つは管理が大変で
あることは言うまでもないが、もう一つはキャッシュポジションの管理だ。無論全ての証券
会社に一律に同金額を預けるということはしておらず主力として位置づけているのは2社
程度。それでもいくつかの口座のキャッシュポジションを合わせると意外に馬鹿にできない
金額になる。例えば主力で利用している証券のポートフォリオ構成は以下のようなグラフと
なっている。金額は省略。





98%は証券に投資しておりフルインベストメントに近い状況になっているが、それに他の証券会社の
キャッシュを合計すると実際のキャッシュポジションが増加することになる。加えてキャッシュポジ
ションの運用として位置づけている銀行預金を加えると意図したキャッシュポジションよりも
増加することになる。当然ながら相場に弱気であればキャッシュポジションは増えても良いが、
相場に強気であったり意図している組み入れにしたい場合は各社のキャッシュポジションは
邪魔な存在だ。

一番良いのは強気の銘柄を買いますというのが答えになるが既に十分持っていたり、投資金額
に足りなかったりすることもある。例えば現在、日本株はほとんどの銘柄は100万円以下で購入
できるが、ファーストリーテーリングのように100万以上の銘柄もある上、合計すると買えるんだが、
口座キャッシュでは買えない金額だったり、もしくは買いたい銘柄自体が思い浮かばない。
でも強気というケースもでてくる。現在は相場に強気で買いたい銘柄はとりあえず買った。もしくは
株価がターゲットにきたら買いたいという状態。そんな時に合計すると意外に多いキャッシュポジ
ションはやはりうざい。



 そんな時に思いついたのが日経平均先物だ。但し、日経平均先物はNotional value(想定金額)
が1000倍。即ち日経平均が9000円なら1枚で900万円となる。個人投資家の中には証拠金
金額で考える人がいるが、それは間違っていて実際に自分がどの程度のリスクを取っているのかを
考える場合、Margin(証拠金)でなく、Exposure(エクスポージャー:実際にリスクにさらされて
いる金額で考えるのが合理的な投資家の行動だ。時々、「自分は先物に100万円投資して100万
儲けた」といっているのは実際には1000万とか2000万円のリスクエクスポージャーを取って
5%とかのリターンをあげたことにしかならない。要するにレバレッジと投資金額を混同している。まあ、
かといってレバレッジを否定する必要もない。20倍、50倍のレバレッジをかけて儲けることは
悪いことではないが、それは個々の投資家の投資スタイルによる。個人的にはレバレッジをかける
のが嫌いなので信用取引とか先物はいままでやってこなかったが、買いヘッジ目的の先物利用は
私にとっては好ましい。

 かといって1枚900万というのはやはり多い。基本的にフルインベストメントしているんで
必要枚数はそれほどない。また日々のトレーディング機会がどの程度あるのか全く分からない
のでやはりナンピンできるサイズの先物となるとミニが最適だ。100倍であるから通常の先物
の10分の1。1枚で90万円なので高値でつかんでも何回かナンピンできる。ということで
実際にやってみた。

 どこでやっても似たようなものだと思ってはいるのだが、設定・申し込みが簡単だった
SBIで執行した。マネックスは少し面倒な上、先物口座を開設するとMRFが強制解約される。
これはシステムの都合上らしいが、いくらゼロ金利といっても先物を利用するとMRFが強制
解約され、先物以外で運用している純粋なキャッシュポジションが金利なしの預かり金扱い
になるというのはうっとうしいというよりも顧客に不利だ。SBIはその点、解約されることは
なく、先物口座は別勘定で管理されており、通常のキャッシュポジションから先物口座に
証拠金を「振り替え」することで管理されている。両社の考え方は一長一短があって、
マネックスの場合にはMRF運用の権利を失う変わりに先物・株式を一体運用する機動的な
運用が可能である。SBIはMRF運用の権利は失わないが証拠金口座という別勘定を設定す
る必要がある。また証拠金振替はリアルタイムでなく、1営業日かかるので機動的な運用
を断念する必要がある。トレーディング目的でなく、純粋なヘッジ目的なので振替のリアル
タイム性は要求されない。またMRF解約はいやだったのでSBIとした。




 実際の画面が上図の通りで通常の日経平均先物の下にミニが載っている。先物を見て気が
ついたのだが、現在の先限月がディスカウントになっている。意外というか投資家が先行き
にかなり安値懸念を抱えていることがこれで分かる。当限の9月と先限の12月では0.5-0.8%
程度のディスカウントが常態化している。先物価格の形成は教科書に譲るとして通常は先限に
プレミアムがつく。デフレ時代だからディスカウントになるという意見もあるかもしれないが
通常はプレミアムの計算にはリスクフリーレートを利用する。この場合には日本の短期金利が
それにあたるのでゼロでない場合には理論価格はプレミアムになる。それがディスカウント
であるのは投資家心理が極めて冷え込んでいると見るのが正しい。




 能書きはともかく実際の取引画面は上図の通り。ミニの流動性が気になったが、板を見て
見ると意外にある。というか個人投資家にはこのくらいあれば十分だ。投資金額も少なくて
済むし、流動性もある。日本の投資環境はここ10年で大きく改善されたと実感できるが、
一方で日本の投資家の質の悪化や投資マインドの冷え込みは救いがたい。もっと日本に
目を向けよう。新興国もいいけど、日本人が日本に投資しなくなったらますます日本から
有望な企業は生まれなくなる。

 取引はあっという間に終了。今回は全体のキャッシュポジションのヘッジでなく、SBIの
キャッシュ部分をヘッジしたので枚数は少ない。また下がれば枚数を増やして全体の
キャッシュポジションをヘッジしていく予定。上がれば何もしない。今回はミニを数枚
約定価格8955円。安い。ディスカウント状態だ。どうなるかはしばらく時間がたてば
分かる。


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S&Pケース・シラー住宅価格インデックス(9月発表分)

2009年10月16日 | 金融市場
 S&Pケース・シラー住宅価格インデックスは全米主要都市の住宅取引価格を金額加重した指数
で10都市版指数と20都市版指数の2つが発表されている。指数は2000年を100として計算され
ており、指数を見れば2000年からどの程度価格が上昇しているのかがわかるようになっている。
10大都市圏指数(10-City Composite)はボストン、シカゴ、デンバー、ラスベガス、ロサンゼルス、
マイアミ、ニューヨーク、サンディエゴ、サンフランシスコ、ワシントンの10大都市圏の指数から算出
される。この10都市指数はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で先物と先物オプションが取引され
ている。このように金融市場でも上場されているデリバティブが存在することから投資家、アナリスト、
エコノミストなどの市場関係者に注目されている指標となっている。 一方、20大都市指数は上記の
10大都市圏に、アトランタ、シャーロット、クリーブランド、ダラス、デトロイト、ミネアポリス、フェニック
ス、ポートランド、シアトル、タンパを加えた指数でニュース等でケース・シラー指数と報道されている
場合、この20大都市指数の事を指すことが多い。



 既に報道でもいろいろなコメントがなされているが改めて全米の住宅市場がどのようなトレンドに
なっているのかを見てみよう。インデックスの最新値は7月時点であるが、既にその3ヶ月前から下落
トレンドに変化が見られている。この数字を見て米国の不動産市況は回復に入ったとの見方がされてい
るがそのような見方に傾いている理由は第一にインデックスレベルが2003年のバブル発生前の水準
に戻っていること。第2点目としては前年同月比で下落はしているものの、3ヶ月連続で前月比で上昇
していることをあげている。なお、ケース・シラーと似たような指数でHPI(OFHEO)指数というのが連邦
住宅金融庁から発表されている。HPIは全米50州をカバーする広範囲な住宅価格指数でケースシラー
と似た統計手法によって処理されている。ケース・シラーもHPI指数もリピート・セールス手法(同じ不動
産が異なる時点で複数回売買されたときの価格から不動産価格の経年変化を示す価格指数を作成す
る方法)で算出されている為、信頼性は日本よりも上であると考えられる。このような統計手法が採用で
きるのは日本と異なり米国では土地にそれほどの価値がなく、建物の価値が高いことから売買も頻繁に
起こることから可能な手法だ。そのHPI指数であるが、下図のようなグラフだ。

  
                
 同じ価格変化のグラフだがHPIとは収録期間が異なっている為、一見して似てないように見えるが、実
は同じトレンドになっている。HPIはケース・シラーよりも広範囲だが、データはファニーメイとフレディ・
マックの2社からのデータを下に作成されている。これはどういうことを指すかというとファニーメイ、フレ
ディ・マックの保証を受けた通常のモーゲージによる売買記録の統計ということ。即ち、サブプライム分の
データが含まれていない。一方、ケース・シラーはローンの種類に関係なく売買記録のみを利用している
ことからこちらの方が信頼性が高いと主張する者もいる。一方でケース・シラー指数では地域的なカバレ
ッジに難点があり、全米13州のデータがない。従って除外されている州での価格変化が大きいとケース
シラーでは補足しきれないという問題点がある。しかしながら、今回に関しては両指数とも同じトレンド
を示しており、特段の問題もないようだ。オバマ政権になってからの支援策が功を奏したのか、Fire sale
(投売り)が終了したのかは微妙な判断ではあるが一時のパニック的な動きは収束したと見てよいだろう。
因みにインデックスの中身を詳しく見る人はあまりいないと思うので載せておく。私も中身については
調べて初めて見た。



 全米20都市のインデックスは6月対比では1.6%の上昇となっており、低下した都市はラスベガスと
シアトルの2都市のみである。6月は1.4%の上昇なので価格トレンドだけを見ると反発しているようだ。
これが本当に不動産市況の回復になるかだが、価格指数のみだけでは物事の本質には迫れない。
経済環境が価格上昇を許すのかどうかを見てみよう。



 上の図は住宅差押件数、失業率、延滞率などを示した図であるが、これを見ると本当に終わったの
かは疑問だといわざるを得ない。左のグラフでは中古住宅販売と競売通知をグラフ化したものである
が、競売が増加するに従い、中古販売が伸びている。それはそうだろう。日本でもそうだったが、競
売は基本的に投売りだ。売却する本人の意志ではなく、債権者である銀行が回収する為に行うもので
あるから売り惜しみは存在しない。そんな中で住宅販売が活況なのは当然ともいえる。なにしろ安い
のだ。裁判所からの競売通知の増加は将来の中古住宅販売が堅調になることを予想させる。これは
先行指数だからだ。問題は右の図であるが、競売物件の種になるローンの延滞の増加が止まってい
ない。データは四半期なので6月までだが、どうやらこのトレンドは続きそうだ。好調な経済指標も
「だまし」である可能性はまだありそうだ。

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REIT投資家が最も恐れるシナリオ

2009年08月23日 | 金融市場


 現在フジテレビ系列で「東京マグネチュード8.0」という番組を放送
している。東京直下型地震が発生したというシナリオの想定を元に
死者18万人、負傷者20万人、被災者15万人と関東大震災を上回
る規模の災害が発生するとされている。1981年の建築基準法の改
正による新耐震基準導入、平成に入り耐震改修促進法の制定など、首
都圏での耐震化構造物は増加しているとはいっても大正時代との人口
密度の違いなどから正直、シュミレーションの数字は甘いのではない
かという気もする。

 当然、そうなった場合には首都圏にポートフォリオが集中している
REITは全滅だろう。少なくとも数年間は無配となる可能性は大いにあ
る。このアニメを見て思うのだが、耐震化というのも結構幅が広くて
倒壊しないということは、地震後に使用できるという意味を必ずしも
意味しないということだ。耐震等級というものがあるが以下のような
ものである。


(耐震等級1)

 「百年に一度の確率で発生する地震(東京では震度6強から震度7程
度)の地震力に対して倒壊、崩壊せず、数十年に一度発生する地震(東
京では震度5強程度)の地震力に対して損壊しない程度」

(耐震等級2)
 「上記の地震力に対して1.25倍の地震に対抗できる」

(耐震等級3)
 「上記の地震力に対して1.5倍の地震に対抗できる」

というような定義だが、最近耐震性をアピールしている多くの建物は耐
震等級1がほとんど。制震、免震をアピールしていいても耐震等級が1
以上はそれほどない。等級2以上だとコストが上がるためだ。等級1でも
ウソをついているわけでもない。等級1というのは倒壊、崩壊はしないが、
損傷を受ける可能性はあると解釈したほうが良いだろう。その場合のコ
ストを考えるとちょっと頭がくらくらしてくる。平成7年の阪神・淡路
大震災では木造家屋を中心に39万戸の住宅が損傷を受け、10万の全
壊家屋を出した。また鉄筋コンクリート造、鉄骨造りの建物も建築基準
法上OKでも倒壊した建物や手抜きなどによる被害を受けだ建物が見られ
た。崩壊、倒壊を免れたからといって、追加コストなしにそのまま使え
るということはありえない。少なくも、倒壊を免れたビルは再度補強工
事が必要となりコストが発生する。

 このアニメを見て思うのはやはり分散投資が一番ということ。地方物
件を組み入れるREITや海外のREITもヘッジ手段としては常に検討すべき
ということだ。  というより...やはり地震が起こらないことを祈っておくの
が正解かな。

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JREIT格付け一覧

2009年08月04日 | 金融市場
 直近のJREIT各社の格付け一覧。R&IのHPからも閲覧可能

コード    投資法人名                                  格付け    アウトルック
----------------------------------------------------------
3226    日本アコモデーション投資法人                 AA-    [安定的]
3227    MIDリート投資法人                    A      [安定的]
3229    日本コマーシャル投資法人            (BB)     
8951    日本ビルファンド投資法人              AA     [安定的]
8952    ジャパンリアルエステイト投資法人                AA     [安定的]
8953    日本リテールファンド投資法人           AA-    [安定的]
8954    オリックス不動産投資法人             A+    [ポジティブ]
8955    日本プライムリアルティ投資法人         AA-    [安定的]
8956    プレミア投資法人                      A+    [安定的]
8957    東急リアル・エステート投資法人          AA-    [安定的]
8959    野村不動産オフィスファンド投資法人       AA-    [安定的]
8960    ユナイテッド・アーバン投資法人            A+     [安定的]
8962    日本レジデンシャル投資法人             (BB)     
8964    フロンティア不動産投資法人           AA-    [安定的]
8966    クレッシェンド投資法人                 (BB+)     
8967    日本ロジスティクスファンド投資法人         AA    [安定的]
8968    福岡リート投資法人                            A+    [安定的]
8970    ジャパン・シングルレジデンス投資法人           BB+    [ネガティブ]
8973    ジョイント・リート投資法人                       (BBB+)     
8974    ラサールジャパン投資法人               A-    [ネガティブ]
8976    DAオフィス投資法人                   (A-)     
8977    阪急リート投資法人                    A+    [安定的]
8978    アドバンス・レジデンス投資法人             A+    [ネガティブ]
8981    ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資                A      [ネガティブ]
8982    トップリート投資法人                           AA-   [安定的]
8983    ジャパン・オフィス投資法人                 (BB+)     
8984    ビ・ライフ投資法人                               A     [安定的]
8985    日本ホテルファンド投資法人                BBB+ [ネガティブ]
8986    日本賃貸住宅投資法人                       BB+  [ネガティブ]
8987    ジャパンエクセレント投資法人               AA-  [安定的]

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官民ファンド設立でREITは復活するか

2009年08月03日 | 金融市場
 既に報道されているのでご存知の方もいるかもしれないが、現在国土
交通省で「不動産市場安定化ファンド(官民ファンド)の設立・運営に
関する検討委員会」というものが開かれている。その目的を簡単に言え
ば資金的に困窮しているREITのリファイナンスを支援する。還元すれば
REIT救済のためのファンドの設立が検討されている。検討会は6月に一回
7月に2回開かれ、3回目に中間とりまとめの報告が作成された。8-9月まで
に最終報告が作成される予定。当然のことながら投資家サイドでは歓迎
ムードが一般的だが、その中身に関してはあまり知られていない。今回
その中身について検討をしようと思う。

 ファンドの目的は不動産市場での買い手であるREITの破綻が市場に負
のスパイラルを起こし、経済活動に悪影響を起こすのを阻止するのが第一
の目的である。不動産市場の流動性を高め健全なREITの育成を図るのが
主たる目的となっている。とりわけREITで問題となっているのは投資法人
債の存在で現在では投資法人債の買い手がほとんど存在しておらず、金融
機関も償還資金の為の新規融資にかなり慎重になっている。これは高い格
付けを誇るREITでさえ状況は変らず、資金繰りから破綻するREITが続出
するのではないかと市場関係者は予想していた。暦年ベースでみると償還
スケジュールは

2009年  670億円
2010年 1508億円
2011年  680億円

となっており、とりわけ今後3年間のリファイナンスを支援するのが官民フ
ァンドの目的である。ファンドも設立から2年半で解散する予定になってお
り、緊急支援の色合いが強い。特に今年にリファイナンスを迫られるREIT
は日本レジデンシャル、日本ビルファンド、プロスペクトリート、クレッ
シェンド、日本プライムリアルティ、日本賃貸住宅などがあり、日本ビル
ファンドを除けばほとんどのREITがリファイナンス問題に直面する。
当面、1000億円の資金を準備し、支援ファンドを設立する予定で償還需要
の資金貸付をメインにファンドを運用する。既に日本政策投資銀行、野村
証券をアセットマネジャーにし、住友信託を受託者として設定するとみら
れている。この官民ファンドだが、今年に償還を迎えるREITにとって必ず
しも救世主とはならない可能性がある。以下にその理由を記しておこう


(1) 格付けによる制約が課される可能性がある。

 中間とりまとめには明記していないが、官が出資することから間接的に
税金が使われることになる。従ってモラルハザードを起こすような融資を
行うことはできない。従って、貸し付けたい者の線引きとして格付けが利
用される可能性が高い。報道ではBBB格以上と言われている。 現在、BBB
以下のREITとしては日本コマーシャル、日本レジデンシャル、ジャパンシ
ングル、ジャパン・オフィス、日本賃貸住宅などが上げられる。日本レジ
デンシャルは伊藤忠が買収しアドバンスレジデンスと合併との報道もあり、
格付けは改善される可能性が高い。日本コマーシャルもスポンサーはつく
だろう。ジャパンシングル及びジャパンオフィスは投資法人債を発行して
いない。プロスペクトはBBB格ではあるが、JCRである。プロの機関投資家
の間ではJCRでBBBならR&Iでは2ノッチ以上下と考えるからかなり厳しいか
もしれない。日本賃貸住宅はR&IでBB+でアウトルックがネガティブ。普通
なら対象にはならない可能性がある。

(2) 借入れコストが高く、借りると業績下方修正のリスクがある。

 中間とりまとめに書かれているが、官民ファンドは税金を使うといっても
官が損するようなことは絶対にできない。しかもエクイティ出資などの
キャピタルゲインは考えられないので貸付によって十分なマージンを得る必要があ
ることから貸付条件は借り手にかなり厳しい。ベースレートはTIBORであるが、
スプレッドはLTV、資産規模、P/NAVから機械的に算出されるスプレッドマトリックスを
利用して決定される。スプレッド幅は150bpから550bpでAAAでも取らない限り
200bp以上のスプレッドが確実に必要となる。従ってファンドから借りることは
ペナルティの金利水準で資金手当てをすることに等しく、業績の下方修正要因
になりうる。しかも当然有担保で借りることになる。

 ところでこの官民ファンド自体、設立のスケジュールから考えるとどうやら日本レ
ジデンシャル、日本コマーシャルの救済を目的としているようで、あまり他のREITの
ことを考えていないふしがある。9月にファンドが設立されるのも償還が9月
11日(60億円)、10月23日(120億円)にぶつけようとしているし、来年の3月
には日本コマーシャルが7月、9月に日レジの償還がある。この2つのREITは破綻し
たパシフイックの傘下で現在スポンサーがない。しかも規模がでかい。この2つが
破綻すると上位REITでも返り血を浴びかねない。現在は市場が落ち着いて
きているが、下位REITの破綻リスクはまだなくなっていないことに注意すべき
だろう。

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月間株式市場動向(2004年12月)

2005年01月04日 | 金融市場
12 月はTOPIX で+4.6%、日経平均で+5.4%の上昇となった。10 月の機械受注、日銀短観の悪化などのマイナス材料が見られたが、事前の市場予想範囲内であったため嫌気する動きは限定的であった。年内最後のFOMC で利上げ決定が発表されると、米国市場金利上昇の悪材料を消化することでNY ダウ、NASDAQ、S&P500 が相次いで年初来高値を更新するなど高値圏で推移した。その結果、相対的に出遅れ感の強い日本株への買いが見られ、大手銀行株を中心に急上昇することとなった。原油価格が11 月末の49 ドル台から43 ドル台まで大幅に下落したことも買い安心感を誘う結果となった。
 インテルの予想外の売上高予想を上方修正により、ハイテク株への買い安心感がでたのと、ドル懸念が一時的に緩和して105円台までもどると日本のハイテク株にも買いが復活した。個別の株式では虚偽記載が問題化した西武鉄道株が上場廃止となった。また、店舗への連続放火によりドンキホーテの株価が急落した。時価総額でみた場合、TOPIXラージよりもスモールのパフォーマンスが好転し中小型株式の反発が見られた。セクターパフォーマンスではゴム製品、銀行、精密機器、輸送用機器のパフォーマンスが好転し、とりわけ銀行セクターのアウトパフォーマンスが顕著となった。三井トラストホールディングス、みずほ信託銀行、みずほフィナンシャル、UFJなどの主要銀行株の上昇率が2桁となった。輸送用機器関連ではアイシン精機、ブリジストンが好調。ハイテクではアドバンテスト、東京エレクトロン、京セラ等が上昇した。一方、不振だったセクターは石油、海運、鉄鋼などの市況関連で銘柄では商船三井、新日本石油、JFE、新日鉄などである。アコム、アイフルなどのノンバンク銘柄も下落した。

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2004年の国内株式市場の回顧

2005年01月03日 | 金融市場
2004年の暦年ベースの株式リターンは2年連続の上昇となった。年末の日経平均終値11,488.76円から計算すると7.6%の上昇になる。インカムゲインを含めると10%には届かないものの極めて穏やかな上昇となった。また日経平均の上昇は2年連続であり、企業業績の改善効果が株価に与えた影響は大きいと判断される。

今年度の全企業の増益率は昨年度と引き続き2桁の増益になり、期中の円高にも関わらず、製造業、非製造業共に大幅な増益となっている。一方で、上下で比較すると上期の大幅増益に比べると下期はだいぶ鈍化しており、これが年度下期の日経平均の上昇を阻害した大きな要因であると判断される。

また株価上昇余地が限定的であると考える根拠は大きく分けて2 つある。第一に、景気低迷が意外に長引くということである。もし、市場のコンセンサス予想通り、日本経済の景気調整は短期に終わり、すぐに景気が良くなるのであれば大型増税が前倒しで実施されよう。実際には、景気悪化により大型増税は直ちには実施されないと予想されている。 第二に、景気のピークアウトと大型増税を目の前に、世界的に割安とはいえない日本株(PER は世界と同水準の17 倍)の上値を誰が買い上げるのか、というてんである。グローバルにバリュエーションの収斂が観測され、トヨタ、ホンダ、日産などの国際優良株のPERが1桁であっても株価が上昇しない。JFE、新日鉄などの素材株の大幅増益にはある程度反応したもののバリュエーションで7-8倍と極めて低い水準に放置されているのは投資家の気迷いがあったからであると考えることができる。リスクとしてあげられたものとして①米国景気失速、②中国バブル崩壊、③円高等が挙げられ、これらに対しての明確な認識が定まらなかったのが2004年の株式市場であったといえよう。

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