Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

S&Pケース・シラー住宅価格インデックス(9月発表分)

2009年10月16日 | 金融市場
 S&Pケース・シラー住宅価格インデックスは全米主要都市の住宅取引価格を金額加重した指数
で10都市版指数と20都市版指数の2つが発表されている。指数は2000年を100として計算され
ており、指数を見れば2000年からどの程度価格が上昇しているのかがわかるようになっている。
10大都市圏指数(10-City Composite)はボストン、シカゴ、デンバー、ラスベガス、ロサンゼルス、
マイアミ、ニューヨーク、サンディエゴ、サンフランシスコ、ワシントンの10大都市圏の指数から算出
される。この10都市指数はシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で先物と先物オプションが取引され
ている。このように金融市場でも上場されているデリバティブが存在することから投資家、アナリスト、
エコノミストなどの市場関係者に注目されている指標となっている。 一方、20大都市指数は上記の
10大都市圏に、アトランタ、シャーロット、クリーブランド、ダラス、デトロイト、ミネアポリス、フェニック
ス、ポートランド、シアトル、タンパを加えた指数でニュース等でケース・シラー指数と報道されている
場合、この20大都市指数の事を指すことが多い。



 既に報道でもいろいろなコメントがなされているが改めて全米の住宅市場がどのようなトレンドに
なっているのかを見てみよう。インデックスの最新値は7月時点であるが、既にその3ヶ月前から下落
トレンドに変化が見られている。この数字を見て米国の不動産市況は回復に入ったとの見方がされてい
るがそのような見方に傾いている理由は第一にインデックスレベルが2003年のバブル発生前の水準
に戻っていること。第2点目としては前年同月比で下落はしているものの、3ヶ月連続で前月比で上昇
していることをあげている。なお、ケース・シラーと似たような指数でHPI(OFHEO)指数というのが連邦
住宅金融庁から発表されている。HPIは全米50州をカバーする広範囲な住宅価格指数でケースシラー
と似た統計手法によって処理されている。ケース・シラーもHPI指数もリピート・セールス手法(同じ不動
産が異なる時点で複数回売買されたときの価格から不動産価格の経年変化を示す価格指数を作成す
る方法)で算出されている為、信頼性は日本よりも上であると考えられる。このような統計手法が採用で
きるのは日本と異なり米国では土地にそれほどの価値がなく、建物の価値が高いことから売買も頻繁に
起こることから可能な手法だ。そのHPI指数であるが、下図のようなグラフだ。

  
                
 同じ価格変化のグラフだがHPIとは収録期間が異なっている為、一見して似てないように見えるが、実
は同じトレンドになっている。HPIはケース・シラーよりも広範囲だが、データはファニーメイとフレディ・
マックの2社からのデータを下に作成されている。これはどういうことを指すかというとファニーメイ、フレ
ディ・マックの保証を受けた通常のモーゲージによる売買記録の統計ということ。即ち、サブプライム分の
データが含まれていない。一方、ケース・シラーはローンの種類に関係なく売買記録のみを利用している
ことからこちらの方が信頼性が高いと主張する者もいる。一方でケース・シラー指数では地域的なカバレ
ッジに難点があり、全米13州のデータがない。従って除外されている州での価格変化が大きいとケース
シラーでは補足しきれないという問題点がある。しかしながら、今回に関しては両指数とも同じトレンド
を示しており、特段の問題もないようだ。オバマ政権になってからの支援策が功を奏したのか、Fire sale
(投売り)が終了したのかは微妙な判断ではあるが一時のパニック的な動きは収束したと見てよいだろう。
因みにインデックスの中身を詳しく見る人はあまりいないと思うので載せておく。私も中身については
調べて初めて見た。



 全米20都市のインデックスは6月対比では1.6%の上昇となっており、低下した都市はラスベガスと
シアトルの2都市のみである。6月は1.4%の上昇なので価格トレンドだけを見ると反発しているようだ。
これが本当に不動産市況の回復になるかだが、価格指数のみだけでは物事の本質には迫れない。
経済環境が価格上昇を許すのかどうかを見てみよう。



 上の図は住宅差押件数、失業率、延滞率などを示した図であるが、これを見ると本当に終わったの
かは疑問だといわざるを得ない。左のグラフでは中古住宅販売と競売通知をグラフ化したものである
が、競売が増加するに従い、中古販売が伸びている。それはそうだろう。日本でもそうだったが、競
売は基本的に投売りだ。売却する本人の意志ではなく、債権者である銀行が回収する為に行うもので
あるから売り惜しみは存在しない。そんな中で住宅販売が活況なのは当然ともいえる。なにしろ安い
のだ。裁判所からの競売通知の増加は将来の中古住宅販売が堅調になることを予想させる。これは
先行指数だからだ。問題は右の図であるが、競売物件の種になるローンの延滞の増加が止まってい
ない。データは四半期なので6月までだが、どうやらこのトレンドは続きそうだ。好調な経済指標も
「だまし」である可能性はまだありそうだ。

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