Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

Surface GOのネットワーク接続の問題

2021年09月08日 | Weblog


買ったばかりのSurface GOが急にネット接続できなくなった。色々調べたがわからず
Microsoftのサポートとか見てようやく治った。もしかしたら同じ症状で悩んでいる人がいるのかもしれない。接続できないと分かったのはwindows updateした後だった。見るとネット接続されていないので調べてみるとネットワークアダプタ自体が見つからない。

windowsシステムツール(スタート>windowsで探せます)でデバイスマネジャーを起動してネットワークアダプタを見るとあるではないか。Surface GOにはIntel WiFi 6 AX200というネットワークアダプタがあり、そのプロパティを見ると「このデバイスを開始できません コード10」というエラー表示が.....ネットで調べてアダプタをアンインストールして再起動すると自動的に上記のアダプタが再インストールされるとあるので実行。再インストールされるがそれでもまた同じエラーメッセージがプロパティにでてる。....詰んだ

Microsoftのサポートページを読んでようやく解決。

https://support.microsoft.com/ja-jp/windows/windows-%E3%81%AE-wi-fi-%E6%8E%A5%E7%B6%9A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%82%92%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%81%99%E3%82%8B-9424a1f7-6a3b-65a6-4d78-7f07eee84d2c

それによると更新プログラムによっては不具合が出るとかいう話で、直前に更新したプログラムをアンイントール。


もともとオプションの更新プログラムなのでする必要もないのだが、新しいセキュリティ強化の言葉に惹かれて更新してしまった。強制更新以外のオプションプログラムの更新は気を付けたほうがいいという典型例....もしかして同じ症状で原因がわからないという人は更新プログラムのアンインストール>再起動をお試しあれ

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下諏訪温泉に行ってみる

2013年02月26日 | Weblog
 別に温泉ブログにするつもりはないのだが、なんとなくそろそろ温泉のおいしい季節も終わるなあと感慨にふけっていたら、もう一回位行きたくなった。日本人というのは本当に幸運で、温泉地と呼ばれるところはごまんとある。温泉というレジャーが一般的でなおかついたるところにあるというのは世界を見回しても日本だけだろう。一方で選択肢がありすぎてどういう基準で選ぶかという問題もあるが、まあ適当に決めてみる。

 株式市場もあったまってきたし、このパワーが持続できればいいなあと考えていたら、やはり自分もパワーを貰おうと考えると.....やはり神頼み? 神様がいて温泉地なんてごまんとあると思うけど、そこはとんでも科学風(非科学的)に考えてみる。日本列島の地質学的な大きな特徴として中央構造線の存在があげられる。中央構造線とは日本列島を横断する大きな谷のようなもので衛星画像でも確認できる巨大なものだ。



 中央構造線は西は九州から四国を横切り、長野をとおって関東に至り千葉県の銚子沖を抜ける大渓谷ともいうべきものだ。興味深いのはフォッサマグナ地域を隔てる糸魚川-静岡構造線とぶつかって(フォッサマグナのどこをとおっているか分からないが)関東に抜けている。中央構造線はまたパワースポットとの関連性を指摘する(自称)専門家が多い。



 パワースポットとして有名な磁場ゼロ地域と呼ばれる分杭峠が中央構造線上にあり、諏訪大社、豊川稲荷、伊勢神宮、それに(ちょっとずれているけど)高野山、石槌山(日本七霊山のひとつ)などがある。その中でも諏訪大社位置する諏訪湖はフォッサマグナとの境界になる糸魚川-静岡構造線と中央構造線がぶつかる場所の断層が湖を形成したとされており、しかも諏訪大社で最も古いとされる前宮が置かれたのがその線上であることが確かめられています。

 おぉぉ、一気に胡散臭くなってきた。



最初は春宮。下諏訪駅から徒歩で15分位。現地に行って初めて知ったのだが、いわゆる諏訪大社とは春宮、秋宮、本宮、前宮の4つの神社の総称で、出雲大社とか春日大社とか1つの社の事でないというを初めて知った。また、諏訪大社は男の神様と女の神様が祭られており、下諏訪にある春宮、秋宮は女の神様。上諏訪方面にある本宮、前宮は男の神様が祭られている。また季節によって神様は遷座なされるようで、今の時期は女の神様は春宮におり、3月になると秋宮に移動するとのことだ。行ってみないと分からないことだ。



万治の石仏。高さ2メートルほどの半球状の自然石の上に、ちょこんと仏頭が乗っている。何とはなしにイースター島のモアイに似ている。伝説によれば諏訪大社に大鳥居を奉納する際に石工がこの石を材料にしようとノミを入れたところ、血が流れ出し恐れをなして作業を中断し阿弥陀如来を刻んで建立したといわれる。2002年から2007年にかけて仏頭の首が5センチ伸びるという怪現象が起きた。また芸術家岡本太郎がこれを見て大絶賛、何度もこの石仏を見るために当地を訪れたという。名前の由来は胴体に刻まれている「万治三年十一月一日」から来ている。石仏の回りを三回回って祈ると万病を治すとも。当然、回ってみた。



 秋宮。春宮と作りが同じなので一枚目との区別がつきにくいが別の場所にある。訪問時は神様は春宮にいるので不在。因みに女の神様とは八坂刀売神(やさかとめのかみ)といい、男の神様の奥さんです。



 諏訪湖。糸魚川-静岡構造線の断層運動によってできた湖で構造湖(亀裂によってできた湖)。従って、最大水深でも7.2m、平均4.7mととても浅い。冬になると凍結する。凍結した時に氷がせりあがる現象が起き、これを「御神渡り」と呼ぶ。一説では男の神様が女の神様のもとに通ったことでこれが起きるとされた・御神渡りが発生すると神事が執り行われいろいろな吉凶を占う。記録では少なくとも14世紀から行われている。訪問当時は半分氷が解けてしまっており、御神渡りは見られなかった。



 本宮。男の神様のいる所。男の神様とは建御名方神(たけみなかた)で出雲の国譲りに抵抗し敗北して諏訪まで落ち延びたとされる。また諏訪大社には御柱祭という奇祭があり、7年に一度材木を切り出して坂から落とすという神事で死人も出ることがあるという荒っぽいものだ。かなり大昔から行われており、少なくとも平安時代以前から行われているらしい。こういう長い伝統を持つ祭祀はたいていの場合、国などから無形文化財の認定を受けるのだが、あまりにも危険な祭りの為、国の指定を受けられないそうだ。



 前宮。最も古くからある社で、最初にできたものらしい。古文書よれば、出雲で敗れた建御名方神は諏訪地のやってきたときにすでに土着の神がいたという。その土着の神を追い出して今の地に来たとの言い伝えがある。それを考えると出雲からこの地にやってきた部族が土着の部族を駆逐したと解釈ができるが、まあそんなところだろう。



 諏訪湖の氷は半分解けたといってもやはり東京よりも寒い、つららができるほどた。因みにこの写真は尖石縄文博物館の建物。ここには国宝に指定されている縄文のビーナスと呼ばれる土偶が展示されている。実物が展示されている。見てきました。

 ということで、パワースポットをまわったが、自分がパワーを得ることができたかと言えば.......................全くわかりませんでした。


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鬼怒川温泉に行ってみる

2013年02月20日 | Weblog
株式市場も好調、REITもまずまず。円安傾向の継続とやることがあまりない。新規公開したコンフォリアと日本ロジスティクスだが、コンフォリアは少し買ってみたがロジスティクスは見送った。いくらなんでも高すぎないか。物流REITだよ。地価が上昇してNAVが上がると思っているのだろうか。地価の高い場所に物流倉庫は作らないだろう。それとも稼働率が上昇・レントの上昇を想定しているのだろうか。アマゾンや楽天などのネット通販が送料無料で激しい競争をしているのに、レントは上がらないだろう。稼働率の上昇にしてもかなり高い稼働率を想定して物流倉庫を建てているわけだから、そんなに上がらないんじゃないのか。まあ、それだけ市場が熱狂している証拠だろう。産業ファンドが一時分配金利回りが10%を超えていたのが懐かしい。

 こういう時は何をしてもうまくいかないので温泉に行くことにした。場所は鬼怒川にした。電車で2時間で行けるとてもお手軽な場所だ。何十年も前にそれこそ小学校の修学旅行で行った記憶があるのだが、記憶がぼやけていてどんな場所か忘れてしまったというのも理由の一つだ。



 冬の鬼怒川は寒い。夏がやはりピークシーズンらしいのだが、温泉地にしては寂れてしまっている。やはり海外に行く人が多くなって日本の観光地もすたれてしまったか。外国人観光客もほとんどいなかった。



 泊まったホテルは駅から徒歩5分の鬼怒川金谷ホテル。評判は良いらしい。実際に良かった。お風呂の写真はないが、こぎれいでよい。但し、狭いけど。せっかく来たのだろから少し観光してみる。日光は電車で30分くらいで近いので行ってみる。鬼怒川自体は川下りとかあるのだが、冬は閉鎖中。



 東照宮までの参道の木漏れ日。運よく晴れていて寒いながらも気分の良い日だった。



 まあ、いわゆる東照宮だ。東照宮をじっくり見ると一時間半かかるらしいが、やはり寒い。鬼怒川でおのぼりさんの真似をして日光江戸村、東武ワールドスクエアを見て回る。



 人がいない。料金はデズニーランド並みだが、ちょっとという感じ。



 東武ワールドスクエア。要するにミニチュアセットが置いてある。まあ、これを見に電車で行くほどでもないが、鬼怒川・日光を回った時に暇をつぶすという感じだ。観光というよりも静かに過ごすというのが目的だったのでその目的は達成した。宿泊中、テレビもネットもほとんど見なかった。こんな感じでゆっくり過ごすというのは意外に難しい。観光地に行くとやはり何か見て回らねばという強迫観念に囚われ投宿先でのんびりすることは普通の人には難しい。夜中にふと外を見て東京では考えられないくらいの満点の星を見れたのは今回回った東照宮・江戸村・ワールドスクエアを凌駕する感動した景色であった。残念ながら写真技術がないので星空の撮影には失敗した。あれは一体どうやったら撮れるんだ。

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猪苗代温泉に行く

2012年12月24日 | Weblog
 特に理由があったわけではないが、露天風呂付き客室に泊まりたくなった。露天風呂がある温泉は結構あるしそれは珍しくない。宿泊客専用の露天風呂というのもあることはある。だが、その中身は部屋の外に風呂桶がおいてあって、蛇口をひねってお風呂を楽しむというものが多く。単に外にお風呂がありますよ程度のものでしかないのが多い。一度河口湖の温泉宿で露天風呂付き客室というのにとまったのだが、それだった。見ると結構がっかりする。普通の人は源泉かけ流しの温泉が独占できると思いがちだが、温泉ですらないものが多く、泊まった人の多くはたいていがっかりする。

 たまたまネットで見てみたらイメージに近いものがあった。猪苗代湖の近くの温泉だ。別段、福島頑張れと思っていこうとしたわけでなく、探していたら福島県の猪苗代湖だった。というわけで、源泉かけ流しの各客室に露天風呂があるという宿にいってきた。お風呂自体も大きくて、10畳近くある。



 意外と近くて東京からは新幹線・在来線乗り継いで2時間30分位でついてしまう。こんなに近いのに天気は大違いで、言ったのは12月の中旬だったが、12月に入ってから大雪がずっと続いていたそうだ。

 

 雪化粧の庭園を眺めがら露天風呂というのは結構風情がある。外は寒いが、温泉につかってぼーとする。なんとも至福の時ではないか。猪苗代湖といえば、スキーとかで有名らしいが、ウィンタースポーツは興味がないし、それ以外は観光名所もほとんどないので温泉以外することはない。それがいいという人にはお勧め。



 露天風呂独り占め。ああ、なんという贅沢。因みに泊まった旅館だが、静楓亭(せいふうてい)という旅館。1泊2万7千円-3万8千円(2人で行く場合、1人なら4万5千-5万円)

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東日本大震災とりあえずまとめ(2)

2011年05月10日 | Weblog
4. 通信インフラの混乱

 当然、これは予想されたことだが、大規模な通信障害が発生した。直接的な被害地である東日本だけでなく、被害が比較的軽かった関東地方でも情報伝達の遅れが目立ち、解消されるには日をまたぐ必要があった。ドコモの発表によれば3月12日17時現在で、6720局の無線基地局が使用不能となった。そのほとんどが東北地方で、東北全体で設置基地局数が11,000局であることを考慮するとかなりの数の基地局が影響を受けた。



 auは東北6県、関東を除外したベースで1933局が震災直後にサービス停止に追い込まれた。(全体では3680局、IT復興円卓会議) ソフトバンクに関してはリリース自体が見当たらないが、同じくIT復興円卓会議の資料では3800局の基地局がダメージを受けたとされている。10年前と異なり携帯が通信手段の主力となっていることから、今回の震災で連絡が取りにくかったことを実感した人は多いと思うが、実はどんなに対策をしても地震直後は連絡ができないようになっている。なぜなら、携帯会社の方で発信規制をかけるからで、NTTドコモの場合東北、関東地方で音声で最大80%の発信規制をかけた。ソフトバンクは70%の発信規制。auに関してはなんと95%の発信規制をかけており、携帯がつながるわけないのだ。加えて固定電話でも発信規制がかけられ、NTT東日本は90%の発信規制をかけたので、携帯だろうが、固定電話だろうが、つながらない。但し、パケット通信は状況が異なっていてドコモが宮城県で一時的に30%の発信規制を実施したが、ほとんどの地域で発信規制をかけなかった。私も当日、携帯がつながらないのでメールを送った記憶がある。結局、こんな時に頼りになるのは何かといえば、やはり発信規制がかけられていない公衆電話ということで、電話の前には行列ができることになる。しかし問題はその公衆電話の設置台数で、みんなが携帯を持つようになって公衆電話なんか使わないものだから、設置台数が激減している。次の地震の時にはなくならないでほしい。ユニバーサル基金で補てんする必要があるんじゃないか?



災害時に電気とともに復旧が早いのが通信で、auのケースでみても1週間後の18日には障害の残っている基地局が500局以下となっており、1週間で8割方が復旧した計算になる。同じベースでの比較ができないものの、NTTドコモの場合、17日後の28日には9割の基地局が回復している。今回は福島の原発事故があって30km県内での復旧作業ができないことから、実質的な回復はもう少し高かったと推定してもよいだろう。



 携帯電話にその主役の座を奪われた固定通信であるが、その地味さゆえに被害状況があまり報道されなかったが、NTT東日本のプレスリリースによれば加入者電話・ISDN・フレッツ光回線合わせて震災当日に1000の通信ビルで障害が発生し151万8900回線の被害が報告されている。中継伝送路90か所、通信建物、全壊18ビル、浸水23ビル、電柱流出・折損、約6万5千本、架空ケーブル流出・損傷6300kmとなっている。国際通信、企業間通信を担うNTTコミュニケーションの場合、VPN、VANネットワークを中心に1万5千回線に障害、国際通信には直接的な影響はなかったものの、3本の日米回線、1本の日中韓回線に影響がでた。KDDIの固定通信はauひかり、メタルプラス、au one net合計で39万回線に障害が発生。海底ケーブルは茨城沖3か所、神奈川沖1か所、銚子沖6か所で障害が発生したが、これは3月15日には復旧している。

5. いまそこにある危機

 震災当日からの押さえておくべきポイントを可能な限り列挙してみたが、無論、これだけではなく、例えば当時の道路事情であるとか、物流の状況であるとか、それに伴うガソリン不足、計画停電による企業への影響、液状化現象の状況などいろいろな現象面で押さえておくべきことがたくさんあるのは事実である。しかしながら、それらをすべて網羅的にとらえるのは政府の仕事として期待したい。東北地方の復興は強く願うものだが、それとともに今後の首都圏にも起こるであろう地震についても考えざるを得ない。地震学者によれば関東での地震は「起こる」ものである。とはいっても100年単位での話で、生きている間に起こるかどうかはわからない。それでもこの国住むものとしてはそれに対する心づもりは必要だろう。地震調査研究推進本部地震調査委員会が発行している全国地震動予測地図2010年版で見ても結局、日本という国に住んでいる限りそれはやってくる。



 このグラフでは震度6以上に見舞われる地域のマッピングを示したが、実はこれを震度5以上で見た場合、日本地図はそのほとんどが真っ赤になる。つまり、地震とは日本人にとって避けられないものだということだ。かといって、このマップは地震が明日くるとか、来年くるとかいうものでもない。自然のスケールで「いますぐ」というのは1000年単位であったりするし、人間の感覚でとらえられるものではない。地震学者もそんなことは言えないので「確率論的」と前提条件を付けざるを得ない。ところで、地震と言っても千差万別で今回の東日本大震災のような海溝型地震もあれば、内陸部の活断層が動くこともある。地震調査委員会では地震カテゴリーという分類でマッピングをしたものを発表している。



 カテゴリーIは想定東海地震のような震源断層を特定できる地震でしかも発生のオーダーが100年単位で規則的にやってくるもの。カテゴリーIIは海溝型でも震源が特定できないもの。カテゴリーIIIは活断層など浅い地震でしかも低頻度のものを指す。レポートをよく読むと、カテゴリーI以外は要するに「来るかどうかよくわからない」というのが定義だとかんがえてもいいんじゃないか。結局、数百年単位で発生しているカテゴリーIは比較的アカデミックな解明はされているが、それ以外は全くわからないと言っているのに等しい。関東地方はそういう、よくわからない地震源からくる地震が多いと言っているに過ぎない。また、カテゴリーIIの確率が高いといっても東海・東南海・南海地震の影響は関東地方も直接的に影響する。要するに首都圏はどのようなタイプであれ、影響を免れない。結局、「気を付けてね」と言われているだけだ。

 それでも、地震発生確率だけを考えれば、宮城県沖地震の発生確率は99%だった。(震災発生前に発表された数値) 想定東海地震は87%、東南海地震は60-70%、南海地震は60%とカテゴリーIの海溝型地震は高く、実際に東北大震災は発生した。この数値は交通事故に会い負傷する確率2.4%よりも高く(交通事故で死亡する確率は0.2%)、空き巣に狙われる確率3.4%よりも十分高い数字である。なお、蛇足だが、マップの数値は地震動超過確率で発生確率でないことに留意。



 首都圏の住人としてはやはり自分の住んでいるところがどうなのかという点に興味が湧くわけだが、上の図がそれだ。予想した通りというか、やっぱそうなるかという感じ。色分けはされているが、自分の住んでいる地域の色が薄いからと安心してはいけない。最も濃い地域では震度6以上の揺れが起こる確率が高いという意味であり、色が薄いのはその確率は低いが震度5強とかの揺れは起こってしかるべき地域だ。従って逃げ場は東京にはない。今回の東日本大震災で特徴的であった津波の影響だが、中央防災会議の平成17年の首都直下地震対策専門調査会のレポートでは最大で1m程度の津波が襲うとしている。



 但し、1mと言っても今回の震災で想定を上回る津波が発生(想定よりも10cm)したことからシュミレーション結果は変更される可能性が高い。また、東京は海抜ゼロメートル地帯が多いことから浸水被害はある程度の被害をもたらすと考えてよいだろう。高級感を漂わせていた湾岸地域の物件の人気が衰え、八王子とか東京西部の物件が人気化しているのも今回の震災がなせる技だろう。また長周期地震動の影響で高層ビルの住人が不安感を抱いていることからしばらく湾岸地区の人気は回復は難しいかもしれない。しかし、人のうわさもなんとやら、人間は忘れっぽい生き物なので数年たてばまた人気化するんじゃないか。津波よりも怖いのはやはり火事だ。今回の震災でも理解した人が多いと思うが、救急車両は都内の交通渋滞で全く役に立たなかった。震災で火事が発生すると救急車両は無力だ。平時であれば、火事が発生すれば消防を呼べばすむのだが、大地震が発生した時は呼んでも無駄だ。むしろ、規模が小さいうちは自分たちでなんとか消化する努力が必要になってくる。



 上の図は同じく中央防災会議の資料から抜粋したが、山手線を挟むようにリング状に火災が発生すると考えられる。加えて首都圏大渋滞が加わると、韓国メディアではないが、まさに阿鼻叫喚という状況になる可能性すらある。今回の震災で少し不安になったのは、地震発生後の買占めパニックで消費者がカセットコンロとボンベを買い占めたことだ。震災が過ぎて安心しきって管理がおざなりになれば、火災を助長しかねない。買い占めた家庭には適切な管理を望みたい。また、マッチやろうそく、灯油、ガソリンなども備蓄している家庭もいるんじゃないかと考えると少し不安だ。買い占めて安心するだけでなく、管理もしっかりしたうえでの防災対策であることを肝に銘じてほしいものだ。



 災害の被害予測の内訳をみてもやはり火災による死者がダントツになっていることがわかる。想定では冬場の風が強い日の数字であるが、それによると1万1千人が死亡し、その6割弱が火災によるものだ。すなわち、予想される地震被害の内、死者に関しては地震が発生した後に死亡すると考えられている。私を含めて普通の人はそうそう火事に遭遇することはないし、ましてや火災の当事者になるという経験はそうあるわけでもないので、ぴんと来ないかもしれない。この想定自体それほど根拠がないわけでなく、前例である大正時代の関東大震災がよいというか悪い先例を残している。



6.首都圏住民として投資家として

 今回の震災を契機に改めて首都圏における地震の想定を再検証してみたが、やはり結論としては従来から言われているようなものとほとんど変化がない。また調べていながらもこの土地を離れて海外に移住するとかより安全な場所を探すというインセンティブも起こらなかった。結局、災害確率は自然のスケールからすれば明日と100年後は同義であったとしてもその土地にいる生活者にとっては同じではない。確率論的に高いからといって土地から離れるかは、投資理論で言えば、個々人の危険回避度と効率曲線がどのような形状になっているかによる。妙な例えに聞こえるかもしれないが、都市部に居住するということは、それによって得られる便益が安全地帯(例えば活断層がなく、海溝型地震の影響の少ない北海道の山間部とか、または香港などの海外とか)に居住する便益を上回っている。つまりリターンがあるわけだ。そして居住者(投資家)の効用無差別曲線が定義されて、有効フロンティアとの接点がどこかを考えればよいだけの話で、それがたまたま現在住んでいる東京であれば、なにも動く必要はないということだ。危険回避度の高い人は香港に移住したり、北海道の山間部に移るかもしれない。それでもリスクを認識しつつ東京に住み続ける。それだけの話ですな。

 何を言っているのか自分でもわからなくなりつつあるが、最後に投資家として確率的に予想される地震について考えてみよう。まず考えられるのは強烈な経済的なマイナスインパクトだ。今回の東日本大震災では発生時こそ瞬間的に円安になったが、その後強烈な円高に見舞われた。いわゆるリパトリの動きを警戒したのだろうが、首都直下地震や東海・東南海ではそうはいかないと考えるのが妥当だ。



 上の図も中央防災会議の資料からだが、東京湾北部地震、いわゆる東京直下地震ではGDPの2割が吹っ飛ぶ。額にすれば112兆円。復興費用67兆円だ。復興特需を期待する人も出てくるかもしれないが、その前に政府の財政が破たんしてもおかしくない規模だ。今でこそ、国民の金融資産が1400兆円あり、国債の国内消化率がほぼ100%だとしても10年後、20年後は違ってくる。まず国内でファイナンスできない。即ち、海外でファイナンスしないと無理な状況に陥る。また、日本の国富は金融資産1400兆円に加え、土地・建物で2000兆円あるが、まず土地建物の被害、価値の低下で、国富が大きく減損する可能性がある。リパトリで円高に進むことはあっても長期的には円高を維持することは困難であると判断するのが妥当だろう。この状況は直下型でない、東海、東南海地震でも同じことがいえる。



 規模の大小は震源が首都圏からどの程度離れているかによる。東南海・南海地震で57兆円、東海地震で37兆円。しかも海溝型地震の連動ケースは想定されていない。その時はいったいどの程度の被害になるのだろうか。首都圏被害のインパクトが日本に与える影響が段違いであるという点では異論をまたないが、それがどの程度なのかイメージしにくい。金額的には上の図の通りだが、例えば瓦礫の発生量という点でみると以下のようになる。




(社)日本埋立浚渫協会の推定した首都圏での地震の際の瓦礫発生量の予測値だ。今回の震災で環境省は東北3県で2876万トンの瓦礫が発生したと推定している。(岩手県 604万トン、宮城県 1595万トン、福島県 287万トン)首都圏直下型ではなんと9000万トンと3倍以上の瓦礫が発生する。その際に瓦礫処理のシュミレーションもされているが、60か月、すなわち5年たっても処理は終わらない。想定は大正時代の関東大震災と同じ相模湾を震源とする南関東地震を想定していることから、神奈川県の瓦礫発生量が多いが、これが北関東地震の場合には東京と神奈川の数字が逆転する。因みに大正時代の関東大震災の瓦礫処理について調べてみたが、よくわからなかった。少なくとも4年以上かかったことと、東京の瓦礫は現在の豊洲や外濠地域の埋立に利用され、神奈川県では瓦礫の埋立によって現在の山下公園が生まれた。どちらにせよインパクトはけた違いであるということは確かだ。

 あまり断定的な物言いは人をミスリードするので控えたいが、個人的には現在の日本の債務状況を考えれば、再び大規模な震災に見舞われた時には政府に残された方法はインフレ政策しかないと考えている。即ち、インフレによって実質的な債務を棒引きすることだ。この手法は実は特殊な手法でもなんでもなく、歴史的にも世界各国で行われている手法だ。南米、ロシア、欧州、アフリカ、アジアで最も多用された手法であり、債務棒引きにはうってつけだ。そして高インフレによる債務棒引きは通貨暴落を伴う。

 最近話題の本に「国家は破たんする」(カーメン・M・ラインハート、ケネス・S・ロゴフ、日経BP社)がある。そのなかで面白い記述があるので紹介すると「人類最初のデフォルトは、紀元前四世紀の古代ギリシャでシラクサ王ディオニシウスがやってのけたものだという。ディオニシウスは約束手形を振り出して臣民から金を借りたのち、現在流通している貨幣をすべて返却せよとの命令を発する。...(略)....ディオニシウスは1ドラクマ硬貨すべてに「2ドラクマ」と刻印し、しかる後に借金を返済した」 古代ギリシャのインフレ統計がないのでなんとも言えないが、理論的にはインフレ率は100%になる。そして開放経済体系下では通貨は半値になると考えられる。

 無論、日本がそうなると思いたくないし、実際には税体系の抜本見直しでそのような状況は回避可能である。但し、これはさらなる大地震がないという前提が必要であるというのも事実である。


(終わり)


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国家は破綻する――金融危機の800年
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東日本大震災とりあえずまとめ(1)

2011年05月09日 | Weblog
 大震災に関してのニュースはごまんとあり、自分の処理能力を超える情報量がすでにネットに拡散しているのだが、投資の参考になるとはあまり思えないが、自分なりにまとめておこう。投資家が恐れる関東大震災ではなかったが、それに匹敵すると考えられる規模と経済に対する影響度があったことは事実だ。今回の震災によって今後発生が予測される関東地方の影響の予想にも参考となろう。東北地方の震災は心が痛むものがあるが、関東地方で同様な震災が発生した場合にはその100倍にも匹敵すると考えられ、経済的な深刻度は極めて重大でグローバル経済に対しても甚大な影響を与える。今回の震災で首都圏で発生した事象の内、予想はしていても改めて影響度が高いと実感させたことがいくつかある。

 1. 帰宅困難者の大量発生、交通インフラの麻痺

 関東地方での震災によって発生が予想されていたが、実際に起こってみると改めて深刻であったと気づかされる。3月11日の地震によって首都圏の交通機関が一時的に全面的に運転を見合わせたことで大量の帰宅困難者が発生したのはご承知のとおりであるが、東京都が翌日に公表した帰宅困難者は9万9千人に上った。これは猪瀬副知事がインターネットで公表した数字で、都内の公設帰宅困難者受け入れ施設1023施設で受け入れた人数を指しており、百貨店、主要駅、民間の飲食店などの施設、ビジネスホテルなどにとどまった広義の帰宅困難者を含んでいない。実際には20万人、いや30万人以上の人が都内にとどまった可能性がある。帰宅困難者に関してはすでにアカデミックなリサーチがされていて、東京大学の廣井悠助教授が当時の状況をアンケート調査した結果以下のようなものになった。



 調査対象サンプルが2026なので数としてはそれほど問題はないだろう。これによれば全体の8割の人が自宅に帰宅することができたのに対して、2割程度の人が何らかの理由により都内に留まったという結果になっている。帰宅しなかった人の内、半分が勤めている会社に泊まったのに対して、残りの8割が会社以外の場所に泊まった。気になるのは自宅に帰ろうとしたがあきらめたという人だが、いったいどうしたのだろうか。道にでも寝たのか、それとも公共施設などにお世話になったのかその辺のところはよくわからない。もっとも興味深いのは次の図で次回同じような状況になった場合にどうするか尋ねたのがこれである。



 これによれば、今回の震災で自宅に帰った人の8割は帰宅するつもりであると答え、9%の人は会社もしくはそれ以外の場所に留まると回答。実際に会社に泊まった人は77%が次回も会社に泊まると答え、会社以外に泊まった人も4割弱の人がとどまると回答。自宅に帰ると答えたのはそれぞれ11.5%、28.1%で、会社に泊まった人は意外に無理しなくても会社にいればよいと考えていることがわかる。震災当日は企業の方でも迅速に対応した企業も多く、社員を早めに帰宅させたり、帰宅が困難な社員には支援を行った企業があったことを示している。今回は直接の震源が宮城県沖であったことから震度6以上の地震とはならなかったが、それでも公共交通が遮断されたことを考えれば、首都直下型の地震(震度6以上)になった場合には帰宅困難者はこの程度では済まないと考えるのが妥当だ。東日本大震災で首都圏でも死者はでたが、その数は10人にも満たない。直下型であれば死者行方不明者は千、万単位になることが予想され、道路などのインフラにも直接的な被害が予想される。中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会報告(2005年)によると,地震により首都圏の鉄道網が全線途絶になると,東京都内で約390万人,1都3県で約650万人が帰宅困難になると推計されている.今回の震災はその面からすれば軽度であったといえるかもしれない。中央大学理工学部助教授鳥海重喜が発表したレポートによれば地震によるインフラへの影響がほとんどないにも関わらず、震災当日に復旧した路線は東京都心部、神奈川方面に限られ、千葉・埼玉方面は全滅といった状況であった。



 千葉方面は浦安が液状化したり、茨城方面での震災の影響があったことから常磐線などに影響があったことは理解できるが、それ以外もJR東日本は運転を再開しなかった。また、埼玉方面が全滅となった理由もよくわからない。時系列的に見た運転復旧率のグラフが国土交通省から発表されている。いつもおもうんだが、せめてプレスリリースはオリジナルのPDFファイルを使ってほしい。画面スキャンした汚いファイルをそのまま発表文にする理由がよくわからない。したがってグラフは担当者がちゃんとスキャンしなかったんで斜めになっている。全く役人という奴は。



 これでみてわかるとおり関東圏の鉄道復旧率は6時間もゼロのままであった。線路の安全確認などが理由であろうが、それにしても直接的な被害がほとんどなかった関東圏ではこの数字は驚きだ。少なくとも鉄道関係者がビビっていたことは容易に想像できる。震災当日、最も早く復旧したのは西武鉄道、京王電鉄、東京急行、東京メトロ(一部)、都営地下鉄(一部)、横浜市営地下鉄、みなとみらい21線、埼玉高速鉄道、相模鉄道などに限られ、JR東日本、東武鉄道、京成電鉄、小田急、京浜急行、新京成、つくばエクスプレス、りんかい線、東京モノレールは終日運転休止となった。因みに山手線が復旧したのは12日の8時になってから。京浜東北線は12日8時56分、中央線は7時36分、総武線は7時54分、埼京線は7時、横須賀線は8時21分、東海道線は7時59分とJR東日本の復旧は同じく12日に復旧した私鉄よりも遅いケースから見られた。首都圏直下型地震の発生にはこれよりももっとひどいことになることが予想される。少なくとも、24時間から48時間の鉄道運休も想定せざるを得ない。それによって陸の孤島と化す地域がでることも想定すべきであろう。

2. あまりにも広範囲な地震動・影響


 いうまでもないことだが、今回の震災の規模は関東大震災を経験している人でもなければ初めてという規模・範囲にわたる。戦前生まれの私の父親が「こんなの初めて」というくらいだからまずほとんどの人が初めて経験する事象だろう。影響がどの程度であったかというのはやはり視覚にとらえるのがはやい。日本には地震観測のためにいくつかの観測ネットワークが整備されておりその水準は世界最高レベルといってもよい...と思う。強震観測網(K-Net、KiK-net)、高感度地震観測網(Hi-net)などが日本中に展開されている。K-NETは、全国約1000ヶ所の地表に設置した強震計からなる観測網であり、KiK- netは、Hi-net観測点の地表と地中に設置された強震計から構成される観測網をいう。Hi-netは人が感じない微弱な揺れまで記録するために全国約800ヶ所の地下100m以深に設置した高感度地震計で構成される。それ以外にも広帯域地震観測網(F-net)というものもあり、全国約70ヶ所の横坑の奥に設置した地震計で構成される観測網で、日本列島周辺で発生した地震のメカニズム解の推定や地下構造の推定に利用されている。これらのデータはすべて公開されている。東大地震研究所がこれらのシステムを利用して今回の地震のシュミレーションを公開している。まずはK-NETから




 いろいろな観測網があってごちゃごちゃしてしまうが、K-NETとは簡単に言ってしまえば有感地震の測定と考えていいだろう。このシュミレーション結果を見ても東日本を中心に一部は近畿地方にも影響があったということからかなりの広範囲で影響がでたことがわかる。一方、Hi-netのシュミレーションは無感地震を含むものなのでこの影響はさらに大きかった。




 これでみても北は北方領土(一応日本の領土です)から南は九州まで、なんと一部韓国南端まで地震動があったことになる。特徴的な点はいくつかあるがなんといっても地震動の長さだ。強震度計でも4分、微弱震度でも5分近くあった。さらに首都圏の超高層ビルの場合には長周期振動によって長いところでは10分以上揺れたとの話もある。また、今回はエネルギーの解放の規模が以前と比較して半端でないことから震度4以上の比較的揺れの大きな余震だけでも141回、M5.0以上のエネルギーを持つ余震では400回以上に上っている。(下図) 余震回数の多さは、経済活動や人々のセンチメントに大きく影響することになり、消費などの影響も大きかったと推定される。




 余震活動は震源地である宮城県沖だけではなく、地震のポテンシャルの高まった他の場所でも地震を誘発した。3月15日に静岡県で発生した地震はM6.4のエネルギーでかつ震源が富士山だった。韓国のメディアが富士山が爆発するなどとのデマ報道を流したり、真に受けた一部のうっかりさんがツイッターでデマをリレーするなど隠れたパニックがあったが、いまのところ事なきを得ている。海外のメディアがそのような報道をしたのは、1707年の10月4日に起きた宝永地震の49日後に宝永大噴火と呼ばれる富士山の大噴火があったことを念頭を置いているのと考えられる。但し、宝永噴火はいわゆる東海・南海・東南海連動型地震で、今回の地震とは異なるし、第一、地震と火山噴火の因果関係が明らかでないのにその点を抜きに報道するのはいかがなものかと思う。噴火が起こるかわからないというのが正解だろう。因みに防災科学技術研究所第119回火山噴火予知連絡会のレポートによれば火山性微動及び深部低周波地震の観測はされていない。



今回の地震で発生した長周期地震動の影響だが、通常の木造家屋、中低層のビルやマンションなどには、周期3.5 秒以上の長周期地震動は、一般に大きな影響を及ぼさないが、高層ビルでは、それぞれのビルが持つ固有周期が長周期地震動の周期に一致するとき、非常に大きな影響を与えると考えられている。実験や解析によれば、一般的な鉄骨造ビルの場合、その固有周期T(秒)は、階数をN とすれば概ねT = 0.1N、高さをH (m)とすると概ねT = 0.02~0.03×Hであり、大きく揺れる際には、固有周期はさらに長めになるといわれている。(地震調査研究推進本部地震調査委員会「長周期地震動予測2009」)



そして、実際にどうだったかを見たのが上のグラフである。新宿にある工学院大学の29階と地下6階の加速度・変位波形を見たものだ。(JABS・建築雑誌・2011年5月号・工学院大学建築学科教授久田嘉章) このビルでは比較的大きな揺れが400秒近く発生している。7分弱なので十分長い。地下を地表面と同じと解釈すれば、実際に地面が揺れていたのは200秒程度、3分ちょっとということだ。私は10階以下の階に住んでいるが、揺れたのは4-5分くらいだった気がする。もっと短かったかもしれないが、それでも長く感じていた。実際に50階とか高層階にいた人達は結構ビビったんでしょうね。実際に計測された中で最も揺れたとされるのが新宿のセンタービルで13分間揺れたそうだ。そこに本社がある大成建設が調べたそうだ。実はこのビル2009年に長周期地震動対策工事をしている。揺れは長かったが、被害はなかったようだ。ここで誤解している人がいるかもしれないので注意を喚起しておくと、いわゆる免震構造ビルといっても「揺れない」とうわけではないということ。新宿センタービルも対策工事をしているが、これは対策をしたから揺れがそれほど大きくならなかったという意味であり、「揺れない」ということでは決してない。世の中全ての「免震ビル」は「揺れない」のではなく、「揺れが少ない」ということであって、必ず長周期地震動の影響を受ける。



 まだ今回の地震に関する長周期地震動に関する詳しいレポートが発表されていないのでなんともいえないが、首都圏直下型、東海地震など想定される地震動では長周期地震動の影響が深刻化する可能性もある。特にスロッシングと呼ばれる現象は要注意で、今回はコスモ石油の石油タンクが爆発したが、それに輪をかけた状況になることも懸念される。地震調査委員会が発表した長周期地震動予測地図(2009年試作版)では想定東海地震で最も影響を受けるのが関東地方であるというシュミレーション結果がでており、高層ビルでの長周期地震動対策はもとより、湾岸地区の石油コンビナートタンクのスロッシング対策も今後も重要になるだろう。



3. 買占めの動き

 これは後で考えたらさもありなんだったが、地震がくるまで気がつかなかった。会社勤めの友人に聞いた話だが、地震後ものの1時間もしないうちにコンビニの食料品が売り切れたそうだ。かくいう私は地震がおさまった後、5時ごろにおにぎりでも買おうかとコンビニに行ったら、何も残っていない。震度5で食糧買いあさるなんてあんたらパニックしすぎだよ!! と、心で思っていてもパニック心理は伝染するようだ。私も残っているお菓子をとりあえず買った。といってもビスケット2個程度です。食糧買占めに加わらなかったのには理由があって、実は私は防災グッズマニアで以前から非常用食料とか電池、保存用ミネラルウォータとか備蓄している。簡易トイレ、マッチ、ろうそく、カセットボンベ、簡易浄水装置とか結構持ってます。非常用食料も乾パン、アルファ米、火やレンジが使えなくても発熱して調理できる牛丼とか、缶入りパン、缶詰とかまあ、2週間は救援がこなくてもOKです。ていうか、このくらいは準備しとこうよ。地震は絶対くるって言われているんだから。

 買占めの効果はかなり影響したことがわかる。これは電池、ミネラルウォーター、レトルト食品、米など十分在庫があるのにも関わらず不足が長期化したことでそれを証明している。店頭に在庫がなく、誰かが備蓄在庫を積むために買占めに走ると、それに影響して回りの人が家庭内過剰在庫を積む。いつも店頭に品物がないから、品物が店頭にでるとその場にいる人はなくなるかもしれないとの予想の元に家庭内過剰在庫を積む。こうして悪循環が重なり、いつまでたっても店頭に商品が並ばない。今回買い占めた人たちを一概に責めるのも酷だが、カップ麺や消費期限の短い商品まで買占めた人たちは一体どうしているのだろうか。カップ麺なんか半年も持たないし、なかには1か月程度の消費期限の食料品を買いあさった人もいる。カップ麺とか毎日食べられないし、レトルトパックを買い占めた人は今年中に大きく後悔するだろう。(レトルト食品も1年以上の消費期限のものはあまりない)
 特に乾電池を買い占めた人の判断には理解に苦しむ。確かにあったほうがいいに決まっているが、関東地方で計画停電の影響があったのはごく一部で時間にしても2時間程度。買った乾電池の個数にもよるが、数十個とか買い占めた人たちはどの程度の停電を予想したのだろうか。恐らく、関東地方に地震が来て停電すると恐れたというのが本当のところだろうが、仮に関東に地震が直撃しても電気の復旧はガスよりも早い。関東地方の発電所がやられ、復旧もままならないという想定なら、相当の大地震でまず死んでしまう確率が高い。そのような想定をするならば乾電池よりも関東地方から逃げ出すことを考えたほうがより合理的だ。



 買占めにあった商品は最初は食料品、電池などが主だったが、その後お菓子、ミネラルウォータ、トイレットペーパー、マスクなど震災、福島原発事故などが影響して広範囲にしかも日用品の品不足が顕著だった。JTの工場が被災して3月末からたばこの出荷が止まると今度はたばこパニック(但し、スモーカー限定)が発生。


(つづく)


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Intel HD2000によるエンコードスピードの比較

2011年04月09日 | Weblog
 現在書斎にあるPCはメイン、サブにバックアップ用の3台となっているが、先月にメインのPCをリプレースした。インテルの新世代CPUであるSandy Bridge(Core i7 2630)で、動画のハードウェアエンコード支援機能がついている。動画のエンコードはサブ機で行っているのだが、実際にエンコード支援機能がどの程度早いかテストしてみた。



 メイン機ではブログ更新、メール、インターネットなどの軽いものが主体で動画や3DCGなどの重い仕事はやらせていない。メール、トレーディングなどあまりPCがクラッシュしてもらっては困るものでは重いソフトはほとんど入れないようにしている。1台でホビーもトレーディングもメールもといろいろなソフトを走らせているとクラッシュするとかなり困る。これは過去の経験則から得たものだ。PCは高校自体から数えれば20台以上乗り換えてきた。そこで学んだのはPCは必ずクラッシュしたり、壊れる。壊れなくても不具合は必ず起こるということだ。だからPCも重いソフトを走らせるもの、大事な情報を扱うもの、予備のデータ復旧用とまあ3台あれば十分かな。実際にはノートを含めると4台になるけど。但し、すべてのPCを同時に使うというのはまれ。計画停電のせいというわけではなく、3台同時に走らせると暑い。特に夏場は暑いし、エコじゃないし。従って場中は2台稼働してたりするが、場が終わると大抵1台の稼働。だからメイン機は頑丈であること。余計なソフトを入れて不具合を起こさせないことなど結構気を使っている。今回のメインのPCも新世代CPUではあるが、グラフィックカードは搭載していないタイプでグラフィックはCPUに内蔵されているグラフィックエンジンが使われている。これのメリットはグラフィックカードがないので電力消費が低くなる。グラフィックカード用のドライバは不必要でインテルのドライバが使える。ドライバが少なければそれだけ余計なトラブルに巻き込まれる可能性が低くなる。さらにグラフィックカードがないと騒音が小さくなる。従って長時間の稼働でも低消費電力、低トラブル、低騒音が期待できる。

 それで肝心のテストのほうであるが、衛星放送のHD画像を適当に5分録画してエンコードさせてみた。ソース画像はBSなので1920x1080で、16Mbps。リサイズしてエンコード速度を見るのが一般的だが、ここは単純に4MbpsのHD画像に変換するという単純な方法でテストしてみる。これならグラフィックカードをほとんど利用しないので単純にCPUのパフォーマンスが測れると思う。まずは従来のCPUエンコードだが、サブ機が対象となるがcpuはCore i7 960 @3.2GHz。グラフィックカードはHD5870のハイエンドだが、フィルターとか一切使用しないので単純なCPUパワーの比較ができると思う。利用するエンコードソフトはTMPEGEnc Video Mastering Works 5(VMW5)だ。



 ハードウェアエンコードでは1パスなのでそれに対応するためにCPUエンコードではCBRの1パスで行った。これがいいのかどうか、実はよくわからないのだが、VBRの1パスというのが何故か選択できなかった。どうしてだろう。まあ、それでも単純にBSのHD画像を4Mbpsで圧縮するという単純なエンコードなので問題はあまりないだろう。VMW5はエンコードエンジンがx264を利用しており、画質は結構きれいだと思う。今回はハードウェアエンコードによる画質も比較してみようと思う。



 当然のことながらCPUエンコード中はCPUの負荷率は高い。平均しても95%になる。従ってエンコードしながら他のジョブを行うというのはあまり現実的ではないだろう。しかもエンコード中の騒音は結構大きくなる。サブ機のハードウェア自体の問題かもしれないが、ちょっとうるさい。というかかなりうるさい。因みにサブ機はデルのモデルです。



 一方のメイン機は富士通製でCPUはCore i7-2600 @3.4GHz。グラフィックカードはなく、Intel HD2000がグラフィックを担当する。VMW5でのハードウェアエンコードはとても簡単でエンコーダー選択タブをクリックすると選べるようになっている。なお、パフォーマンスはCPU、ハードウェアエンコードともに「やや速い」にしてある。HD2000では4MbpsのVBRで、ピーク8Mbps。1パス。可能な限り条件をそろえたつもりだが、これであってるよね。



 エンコード中のCPU使用率は平均すると4割弱。結構さくさくエンコードするんで少し驚いた。しかもこのCPU使用率ならば、他のジョブを並行させて実行することも可能だ。しかも、騒音がかなり少ない。



 実際の結果が上の写真の通りだCPUエンコードが5分54秒、それに対してハードウェアエンコードは2分49秒。インテルの宣伝通りではないとしてもやはり速い。リサイズもフィルターもかけていないので単純な比較でみれば倍の速度であることがわかる。今回はVMW5のパフォーマンス設定を「やや速い」にしているが「標準」でも同様な結果がでるだろう。それで、問題となるのはやはり画質がどうなったのかという点だ。それは次の写真。



 この写真を見て優劣が判断できる人は相当画質にうるさい人だ。というか、そこまで気にしなくても...とも言える。画質に関して言えば、かなり細かく見ないと分からない。当然、画質がきれいなのはCPUエンコードの方だが、ハードウェアエンコードも結構いい線いっている。但し...それは動きの少ない映像の場合。動きの速い映像だとやはり違いが判る。というか、気になる人は増えると思う。アニメなど動きの激しくない映像には向いているかもしれないが、最近のアニメは結構こっているし、アニメおたくは結構うるさいのでやはりハードウェアエンコードはそれほどはやらないんじゃないかという気がする。映像をコレクションする人に恐らく受け入れられないだろう。ニュースとかどうでもいいのならいいかもしれないが、第一、どうでもいいような映像は映像コレクションなんかしない。というわけでIntel SDK(ハードウェアエンコードのこと)は話題としては面白いが、はやらないんじゃないかというのが結論。エンコードする人はやはりCPUパワーを求めるだろう。現在のSandy BridgeがIvy Bridge(インテルの次世代CPUで来年初頭に登場)にに代わって、グラフィック機能が強化されてもやはりハードウェアエンコードはそれほどはやらないと思う。


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尖閣諸島中国漁船船長釈放

2010年09月25日 | Weblog


上記の写真は国土交通省の国土情報ウェブマッピングシステムから検索して写真を合成。
尖閣諸島とは沖縄県石垣市に属する島で、8つの島・岩礁からなる。昔は人がいたらしい
が現在は無人島。

 驚いたのは、「処分保留による釈放」という処置だ。犯罪の有無の前に判断を停止して被疑者
を釈放するというのは法治国家としてあってはならないだろう。中国人船長が無罪になっても
別に構わないけれど、起訴・不起訴の判断すらしないというのは一体全体日本の検察は何様なん
だろうかとも思える。不起訴にして釈放ならまだしも判断すらしない。あいた口がふさがらない
というのはまさにこういうことだろう。

 次に驚いたのは「日中関係を考慮して...」というくだりが検事の口からでたことだ。貴方は
検察官だろう。検察は法律に従って、犯罪の有無の捜査、起訴・不起訴の判断をすることであって
政治判断をするのは仕事に含まれていないだろう。それとも日本の検察というのは政治家の仕事も
兼任しているのだろうか。これもまた開いた口がふさがらない。自分は右翼思想の持ち主ではない
がそれでも三権分立の要である司法組織の中核をなす検察が守るべき原則というはあるはずで、
今回の決定はその原理・原則を破るもので日本にとっての痛恨事ともいえる。


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PS3の活用(11)

2010年08月30日 | Weblog
気に入った番組はDVDなどを購入してコレクションするのだが、やはりいちいちコンテンツの
再生にディスクをいちいち入れるのも面倒なので、PCのハードディスクに落としてそれをサーバー
にして居間のテレビで視聴している(PS3経由)。ブルーレイディスクが普及してきてコンテンツも
BDソフトに移行しつつある。やはり大画面ではその違いは歴然でBDソフトもハードディスクに落
として居間で見たいという欲求が高まった。ところが、ブルーレイディスクはDVDと異なってプロ
テクトがきつく、DVDのように簡単に行かないケースが多い。ということでいろいろ調べてみて
最も効率が良かった方法が次のやり方だ。なお、買ってきたBDソフトをハードディスクに落として
居間で見るというのが趣旨なので有料コンテンツをタダでコピーするという趣旨ではないことを
理解して欲しい。気に入ったコンテンツはお金を出して買うべきです。タダでコピーする人が増え
るとコンテンツの値段が下がらない。逆にお金を出す人が増えれば、コンテンツの値段が下がって
くる。これに気がつかない人が日本には本当に多い。中国じゃないんだから、クオリティの高い
コンテンツにはお金を出しましょう。


1. mkvファイルを作成する

 今回利用する方法は必ずしも全てのコンテンツに使える保障はない。特にハリウッド作品など
高度なプロテクトがかかっているものは利用できるか不明だ。というか期待しないほうがいいだ
ろう。実際、今回落としたものはアニメで、国内もののアニメで高度なプロテクトがかかっている
のは多分少ないだろう。国内のドラマなども同じ状況だと思うが定かではない。mkvファイルを
作成するとしているが、まず何故かというとリッピングに用いるソフトが「MakeMKV」という動画
変換ソフトでDVDやBDソフトからmkvファイルを生成するときに用いる。mkvとは何かという点だが、
簡単に言えばコンテナのことだ。avi、MPEG2、MPEG4、flvファイルなどなんだかよく分からない
動画ファイルの世界だが、動画ファイルはコンテナの中に動画ファイルと音声ファイルが含まれ
ている。MPEG2とかH264/AVCとかはコーデックと言われる動画の圧縮方式のこと。

 例えばH264/AVC(いわゆるブルーレイレコーダーなどで記録される一般的な圧縮方式)で圧縮
記録された動画ファイルとAAC LC(携帯用音楽、PS3、BDディスクなどで利用される音声用の
圧縮方式)の2つのファイルは拡張子がMP4とあればMP4コンテナに格納されたファイル。今回
はMKVというコンテナに格納されているファイルになるわけだ。






 なんでこんな面倒なことをして、直接パソコンなどで一般的に利用されているMPEGファイルに
しないのかという点だが、このソフトがmkvファイルの変換ソフトだからというのが理由だ。リッピ
ングソフトは他にもいろいろあるがとりあえずこれが楽だった。まずはディスクを入れると読み込み
中身が表示される。特に指定することもないのでそのまま変換ボタンを押す。これで終了。


2. Super CでMP4ファイルに変換する

 パソコンに保存してパソコンで見たいという場合にはmkvファイルを読めるようにすれば、それ
で終わりになる。mkvをマイクロソフトのメディアプレーヤーで読めるようにもできる。mkv動画
コーデックを入れればよい。とにかくコーデックだけを導入してPCで見られるようにするには
「Lazy Man’s MKV 0.9.9」という動画コーデックパックをインストールすればメディアプレーヤー
で見れる。最初に読み込むと「対応していませんが読めることもあります」というメッセージが
でるが、そのまま「はい」と押せば再生することが可能。

 本当はTMPEGEnc 4.0Xpressを利用したかったが、TMPEGEncでmkvファイルを入力するやり方が
わからない。単にコーデックを導入しただけでは駄目なようだが、出来るらしい。ところでmkvファイル
を何故MP4コンテナに変換するかといえば容量の問題だ。mkvファイルにそのまま変換しただけな
ので今回変換したコンテンツは1時間で23GBにもなる。いくらなんでもそれではでかすぎる。また
居間のテレビではPS3やノートパソコンで視聴しているが特にPS3ではmkvファイルはサポートして
いないので読めるMP4ファイルにする必要がある。そこで以前紹介したSuper Cを利用する。Super C
はフリーソフト(正確にはドネーションウェア。私は10ドルほど寄付した)でよくできている。
但し、有料のTMPEGEnc 4.0 Xpressの方がCudaを利用できることから処理速度は速いと思われ、また
同時に編集とかできるので利用したかったが、入力方法がわからないのでこれにした。




 設定は特にいじる必要がないがVideo Scale Sizeという欄は「No Change」を選択すると最初から
1080(HD)で変換してくれる。Bitrateはお好みだが、地デジ録画のDRモードで17Mbpsになるが、アニメ
などでは8Mbpsで十分だ。それにDRモードと同じbitrateにすると容量は変化しない。さらに容量を
小さくしたい人は5MbpsでもOK。しかし46インチ以上の大画面で見るとやはり違いは判ってしまう。
変換時間は40-60分というところ。容量は4GB以下になる。





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参議院選挙 民主敗北

2010年07月12日 | Weblog


 選挙が終了し民主党が敗北。自分は期日前投票をしたのでテレビで推移を見守っていた
が、国民の政治感覚はよく言えば日本的な解決を目指したともいえなくもない。実は私は
前回の衆議院選挙では民主党に投票したが、今回はみんなの党に投票した。自民党が伸びた
のは意外感があったが、自民党に関してはやはり野党をもう少しやらせるという国民の判断は
日本的だが、政治感覚としてはうまい解決策だと思う。

 テレビニュースをみていていつも思っていたが、民主党は政策の趣旨としては悪くない
のだが、どうも大衆迎合的な部分があって、すぐにばら撒こうという姿勢があるのはよく
ない。国会運営に関しても少し子供じみている部分があり、野党時代から強引な部分があっ
たが、与党になっても強引な運営が目立った。自民党の安部政権では小泉政権から引き継い
だ3分の2を背景に強行採決を何度も行ったのがマスコミで批判されたが、民主党政権に
なると意外に強行採決が多かった。マスコミが批判しないのは不思議だったが、国会運営
の強引さは、衆院選挙の結果を受けて、慣行を無視して議長・副議長ポストを独占しようと
したり、委員会委員長ポストでも独善的な配分をしようとしたりした。自民党政権時は政権
批判は多かったが国会運営に関しては意外に野党に譲歩して大人の対応をしていたのはあま
り報道されていない。

いつも思うのだが、民主党の行動規範は心意気やよしなのだが、悪く言えば子供じみている
(Childish)な部分が多いのが不安にさせられる。行政仕分けに関してもメディア向けのや
らせの部分が見えるところがある。選挙前は必要なものでも優先順位をつけるといってい
たのに結局、予算は膨張。事実上の撤回に。減らせない理由を納得させる形で説明できて
いない。脱官僚というのであれば、英国のように公務員を削減せざるを得ないのだが、行政
刷新相であった仙谷氏に至っては、「公務員にも生活権がある」などと寝言を言う。公務員
に生活権があるのは知っているが、サラリーマンだってあるのだ。しかし、会社が傾けば
否応なくリストラされるのだ。日本が傾いているときに公的部門のリストラに手を出せない
のは労組に配慮しているからに他ならない。

 英国は先月に政権交代があり、付加価値税の増税とともに公務員の削減、公的サービス
の削減など痛みを伴う政策を発表した。日本の選挙では消費税の議論を始めるといいなが
ら、公的部門のリストラに関してのロードマップが全く示されていない。細かな予算の
削減をいくら積み重ねてもはるかに及ばない。企業経営を見れば分かるが、(1)原価低減
(2)販売管理費の削減、(3)人員合理化というプロセスを経る。今の日本は既に(3)のプロセス
に入っているはずだし、優先順位をつけて人員削減に手をつける必要がある。



英国の財政再建プランはオズボーン財務相によれば、2015年までに財政赤字のGDP比を現在の
10%からゼロにするという結構大胆なものである。政策変更の主要なものとしては2.5%のVATの引き
上げを実施するが、これにより英国のCPIは0.6%の上昇圧力を受けることになる。CGT rate(Capital
Gain Tax - 譲渡益課税)の増税、所得控除の凍結に加え、法人税率はG20で最低になるレベルまで
引き下げる予定だ。さらに銀行などの金融機関への課税も新規に導入するが、これは内外問わずに
課税することにはなる。

一方で支出サイドでは各種手当ての物価連動をRPI(Retail Price Index)からCPI(Consumer Price
Index)へ変更(当然、支出の減少を狙っている)。子供手当ての凍結、社会保険控除のカット。公務員
給与引上げの2年間凍結(日本のケースでいえば人事院勧告の実施凍結に当たる)。全ての省庁の
支出に関するレビュー(日本でいったら行政仕分け)。今後4年間の予算を25%カット。これに
よって影響は公的サービス全般に影響し、警察官・消防署員・軍人などの人員も減少することが
予想されている。

 これだけを聞いても民主党の行政手腕と英国の新政権のそれの違いが判るだろう。行政仕分けは
見世物としては面白かったが、結果的にはほとんど実績というべきものを残せていない。単に仕分け
で蓮舫氏が有名人になっただけだった。なぜこのような違いが起こるかといえば、プロセスの進め方
が決定的に間違っていることだ。英国のケースではまず予算を25%をカットするというトップダウン
の意思決定があり、それに従って予算の優先順位を決めようとするのに対して、日本のケースでは
個別案件をレビューして無駄をなくすというボトムアップ手法である。国家が行う事業は膨大なの
でレビューすれば無駄は「発見」することはできる。しかし、それでは財政再建目標は達成すること
ができない。個別の事業はそれぞれ事業を始めた「理由」があり、それはそれでほとんど全ての事案
が合理性があるとされて実施されているからだ。英国のケースでは治安を担う警察官が英国で余剰で
あるということでは決してない。治安サービスを犠牲にしても優先順位の高い事業に配分せざるをえ
ないという苦渋の選択をせざるを得ないのだ。日本のやり方は個別事案毎で判断するからどれに優先
順位を与えるかという決断が後回しになるのだ。警察官や消防署員を減らしますといえば、誰だって
反対するだろう。しかし、医療・年金などを優先して、各種手当てのカットを行っても足りない場合
どうするか。英国新政権もやりたくてやっているのではない。25%の予算カットを実現するにはやらざる
を得ないのだ。

 翻って日本の新政権は子供手当ての導入まではまあ良しとすると(個人的に異論があるが)、その
財源を捻出できない。それは子供手当ての創設という目標の為に何を犠牲にして実現するかという
議論をしない。決断できない。高速道路の無料化は公約だからという理由で導入しようとするが、
これに関しても、ではその為に何を犠牲にするかという点で決断できない。「あれもやります、これ
もやります。でも予算は頑張ったけど減らせませんでした。増税します」...そんな結論を誰が納得
するのだろうか。トップダウンで決めたら、優先順位をつけるのが政治家の仕事だろう。必要だけ
どこの事業をやめますという話を日本の政治家はできない。新幹線は作ります。道路も作ります。
過去のインフラの老朽化が進んでいるのでインフラ投資も必要。年金・医療は重要。安全保障政策
の為にはお金をかけても移転を進めます。公務員も生活権があるのでなかなか数を削減できません。
いや、そんなことわかっているんだ。どれも個別には重要だし、あればいいと誰もが思う。別に
税金をちょろまかしている公務員が半分くらいて、財政が困っているなんてだれも思ってない。
問題はどこにターゲットを設定して、どのような優先順位をつけて、どれを拾い、どれを捨て
なければならないのかという「究極の選択」を政治家に求められているのだ。

PS

 今回の選挙の投票率は日経の推計によると57.9%ということらしい。つまり有権者の4割が投票に
参加していない。どうして日本人は自分で自分のことを決められない人がこうも多いのだろうか。
期日前投票制度がかなり便利になって都合でいけないという事態はほとんどなくなったはずなのに、
それでも4割の人間が選挙権を行使していない。少なくともそういう人達は消費税に関して意見を
言う権利がないし、子供手当てや高速道路、待機児童問題、いや経済に関することだって文句を
言ったり、ぼやくことすらできる立場の筋合いではないということを理解しているだろうか。

 権利はタダだからどうしようと自分の勝手と考えているのか、選挙権は権利でもあり、義務でも
あるのだ。いっそのこと所得税の基礎控除は選挙の参加の有無でできるようにしたらどうだろうか。



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フレッツ光ネクスト導入

2010年07月08日 | Weblog


Bフレッツでもそこそこの速度は出るのだが、やはり混雑してくる時間帯というの
があって、そのときは少しイラッとする。うちのマンションでも光ネクストが申
し込めるようになった。実のところ、自分の住んでいるマンションは光ネクスト
の装置が導入されてなくて、申しこめなかったのだが、マンションの管理会社に
言って理事会に働きかけてもらった。実際の回線速度を計ってみると。おおっ。
かなり早くなっている。上のグラフは最高時のものだが、何回か計測とても100M
オーバーが安定してでるようになった。やはりこのくらいでないとね。

光ネクスト導入の際に理事会の説得に使ったのはYoutubeのヘルプページで取れ
る動画速度比較で、自分たちのマンションが日本平均、や都内と比較して遅い
という表だ。大規模マンションではないが、住民の大半がBフレッツを利用して
るようなのであっさり理事会で通った。後でNTTが営業に来るとの話だったのだ
が、一向にこないのでNTTに聞いてみると、なんと既に申し込めるとのことで早速
申し込んだ。営業くらいしろよ。本当に民間会社か?



Youtubeのグラフは結構面白くてこれを見ると新宿地区の速度が一番速い。また
日本の回線速度は世界平均の倍になっていてコストパフォーマンスを考えると
日本のブロードバンド環境は安くて速い、世界一の環境であることは間違いない。


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MMDを触ってみる(17)

2010年06月06日 | Weblog



 モーションは作れないけれども、若干の修正や調整が出来るようになると今度はいろいろと挑戦した
くなるものだが、その一つに口パクの作成がある。MMDから直接口パクを作成することも勿論できるが、
もっと簡単に口パクを作成することが可能だ。vpvpではMMD本体だけでなく、関連ツールがダウンロード
できるようになっているが、そのうちの一つにMikuMikuVoiceがある。VPVPの下の方に「なんちゃって
ツール」と書かれているリンクあり、そこからMikuMikuVoiceがダウンロードできる。もともと
MikuMikuVoiceはVocaloidソフトで作成した音楽ファイルから口パク用モーションであるvsqファイルを
作成するものであるが、単純にマニュアルベースでvsqファイルを作成して口パク用モーションを作成
するという使い方も可能だ。




  本来は音声Waveファイルから基本周波数と音量を抜き出し、それぞれPitchBendとDynamics
に変更してVocaloidシリーズ用のVsqファイルに出力するツールで、普通の音声ファイルをMMDの
口パク用作成に開発されたわけではないのだが、口パクの作成をMMDでマニュアルで行おうとすると
意外に面倒な作業で、本ソフトを利用した方が生産性が高い。使い方はそれほど難しくなくて、まずは
ファイルから元となる音声waveファイルを入力する。そうすると図のような画面が出てくる。口パク
モーションのみの作成であるので上段のグラフ以外は必要なく、2段目、3段目は特に必要がない。




 実際の口パクモーションの作成手順だが、まずマウスで対象となる範囲を指定して再生しながら音節
毎に範囲を指定する。これは自分の耳で聞きながら音節毎に範囲を指定する必要があり、MMVで最も
煩雑な部分ではあるものの、MMDで直接作成するよりは簡単だ。範囲を特定できたら、音節とかかれ
た入力欄に該当する音節を入力する。図の参考例では最初の音節は「な」であるので範囲を特定でき
たら入力欄に「な」を入力して登録ボタンを押す。すると音節バーに「な」が登録される。これを音節
毎に繰り返す。かなり根気がいる作業に聞こえるが、慣れるとそれほどでもなく、MMDで直接入力する
よりも格段に楽だ。




 時折、台詞が早口で範囲指定が困難になるときがあるが、その場合にはwaveファイルを拡大する
ことで細かい指定をすることができる。拡大・縮小ボタンは結構便利なんで活用すれば意外に早く
口パクモーションを作成することができるようになるだろう。




 全ての音節を入力できれば後は出力するだけだ。出力は簡単で範囲を指定してファイルタブを選択
し、vsq出力を選べばファイルが出力される。後はMMDで適用すればよいだけだ。





 vsqファイルの入力はMMDで表情タブを選択するとvsqによるリップシンクという選択肢があるので
それを選択する。するとファイルを指定するように求められるのでMMVで作成したvsqファイルを入力する
だけだ。ただし、問題があってvsqファイルを入力すると何故か位置がずれている。その理由はよく
分からないのだが、再生しながら位置決めをする必要がある。位置決めの基準となるモーションとか
が分からないとずれたままになるので調整は必要だ。調整が完了すればMMDで再生してずれがないか
確認する。モーション作れなくても口パクだけでも意外に応用可能なんじゃないかとも思う。やはり
工夫とアイデア次第でMMDはいろいろな遊び方ができると思う。






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MikuMikuDance でPさんと呼ばれる本
かんなP,ラジP,極北P,ポンポコP
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MMDを触ってみる(16)

2010年06月05日 | Weblog


(背景を動かす。)

アクセサリを登録するといろいろな効果が得られるのは前回述べた通りだが、背景の切り替え
だけでなく、背景が動くとより効果的だ。それを可能にするツールはいくつか公開されて
いてそれらを使用すればさらに凝ったものができる。代表的なものは「天空シュミレータ」
だが、より簡便に利用できるものに使えるようにしたのが「環境しゅみV100」だ。使い方
は難しくない。





まず環境しゅみをダウンロードし解凍、ユーザーファイルに入れておく。特に約束
ごとはないが、私の場合にはアクセサリファルダにいれている。MMDを起動して
まず環境しゅみv100.pmdをモデル登録する。環境しゅみはアクセサリを制御する
ダミーモデルで姿形はなく、ダミーボーンの塊になっている。

 環境しゅみはダミーボーンモデルといっしょに色々なアクセサリが入っている。
代表的なのは空、雲、星、月などまた昼の空、夜空、月夜などのパッケージもあり
かなり有用。これらを使えばたいていの用途に使えるので困らないだろう。また
空を固定して一部の雲だけを動かしたり、昼の空から夕焼けの空に遷移していく
などの細かい処理ができるようになっている。実はそこまで使いこなせてないの
でここでは説明しない。







 利用したいファイルを選んだらアクセサリの関連付けを行う。これをしないと
ただのアクセサリとして表示されるだけで動かない。アクセサリ読み込むと大抵
関連付け対象として「地面」となっているが、これを環境しゅみに変える。右に
関連先を指定できるが、ここでは「天空制御」を選択する。動かしたいのが1つだけ
なら「全ての親」を選択しても同じ結果が得られるが、ここでは環境しゅみの説明
に沿っていく。設定したらアクセサリの「登録」を必ずしておく。これをしないと
再生するときに関連先がデフォルトの地面になってしまうので注意。




 今回は空を動かすだけなんで難しいことはない。モデル操作を環境しゅみv100
を選択してフレーム登録。適当なフレーム、例えば100フレームとか200フレーム
先に飛んで天空制御ボーンを操作する。例のケースで200フレーム先に飛んでボーン
を90度回転させ登録。これを再生すると空が少しずつ動くように見えるはずだ。
登録は「ボーン操作」なので間違えないように。最後にモデル操作をカメラ・アクセサリ
に変えて再生すれば空が動く。





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米軍施設はごみ処理場扱い

2010年05月30日 | Weblog

 普天間基地問題がこれほど大きな政治的な問題になるかと想定していた人がいるだろうか。
かく言う私も最初はそれほどのイシューになるとは想像していなかった。というよりも国の安全
保障というものに対して漠然たる気持ちくらいしかなく真剣に考える努力を怠っていたといわざ
るを得ない。普天間問題での政府の対応をニュースでみる限り、恐らく大部分の国民と同じ気持
ちだと思う。まず鳩山総理の言動の「軽さ」だ。麻生前総理はその言葉の軽さや「ブレ」を批判
されていたが、今の総理の言葉の「軽さ」は超がつく。

 いや、正確に言えば聞いていてこちらが赤面するような台詞を平気で吐くのはいただけない。
「沖縄県民の思い」という言葉を何度となく聞いたが、確かにそれも重要だろう。しかし、国民
に語るべきなのは国の安全保障をどうするのが最善かを語るの先決だ。県内、県外、国外だと移
転先を巡っていろいろと議論するのは結構だが、マスコミにその内容を披露しながら議論すべき
性質のものではないだろう。結局、問題の本質を見誤って選挙パフォーマンスの為に旧政権が10
年がかりでこぎつけた成果をひっくり返して、なんとかなると考えていた節がある。

 筆者自身は基地問題に関しては中立だ。というか情報が少なすぎて判断できずにいる。少なく
とも安全保障の観点からどのようにすべきなのかという複数の異なる立場の人間の意見が必要だ
ろう。それがない限り国民としても判断することが困難だ。

別段、旧政権の10年の努力を支持したり、正当化するつもりはないが、今のメディアの報道
ぶりやそのメディアでの政治家の発言を聞くとまるでごみ処理場か核廃棄物処理場などの
迷惑施設の移転場所で紛糾しているとしか見えない。国家の安全保障がごみ処理施設と同列
に語られるのであれば米軍も迷惑な話だろう。このような議論の矮小化によって一般国民の
反応も「迷惑施設問題」と認識してしまうのだ。

 安全保障上の議論は門外漢なのであまり詳しくできる資格も知識も持つあわせていないが
少なくとも客観的な事実を積み重ねて議論の土台だけでも構築しよう。まずは日本の現状だ
が、上図の通り日本には米軍基地が点在というよりも「集積」されていてアジア・太平洋地域
における一大拠点で、中曽根元首相がいみじくも言ったとおり「不沈空母」の体をなしてい
ると言っても過言ではない。いわずと知れた日米安全保障条約を礎石として現在の日本の
安全保障が成立している。安保条約上の米軍駐留の意義は防衛白書から引用すると「日米安保
条約では、第5条において、米国の対日防衛義務を規定する一方、第6条において、わが国
の安全と極東における国際の平和と安全のためにわが国の施設・区域の使用を米国に認める
こととされており、総合的に捉えると、日米双方の義務のバランスが取られている。」とさ
れており、片務的なものでないとしている。よく米国メディアから「日本を守ってやってい
るのに..」という言動がちらりと出てくるが、条約の性質上「米国は日本の防衛義務を負う
が日本は米国防衛の義務を負わない」ということからきている。



 「片務的」でない理由を推測すると、米軍が日本に一大軍事拠点を構えることによるメリッ
トが日本防衛義務を差し引いてもおつりがくるということだ。さきほどの文章によってもわ
かるが、米軍基地は「日本防衛以外に使用しても構わない」というのが最大のメリットで、
アフガニスタンやイラクへの兵站基地に利用されてていることからも理解できる。また、冷戦
時代には旧ソ連に対する防波堤としての役割があり、冷戦終結後も中国に対する防波堤であ
り続けている。日本の軍事拠点が消滅すれば防波堤は米国西海岸まで後退してしまう。
(ハワイ、グアム、サイパンは軍事基地として利用できても日本のように生産力がないこと
から「砦」程度の役割しか果たさない)このように日本はいわゆる「地政学的に見た極めて
重要なメリット」を保持している。このような考え方は中国が北朝鮮を支援する理由と重な
る。中国にとって共産政権である北朝鮮を挟む形で米軍と対峙しており、緩衝地帯としての
役割を果たしており、政権崩壊はなんとしても防ぎたいのが本音だ。



 議論があまりにも錯綜していることから、一体どこから手をつけてよいのか分からなくな
るが、少なくとも安全保障のコストと便益については有効だろう。安保条約の意義や政治的
な価値という点はどうしても主観的になりがちで客観的な議論が保証できない。一方、コスト
面からの議論は一つの道を示すことは可能だ。日本の防衛予算は5兆円程度でGDPの1%
程度になっている。一方、米軍駐留のコストはどの程度なんだろうか。実はこれが意外に
厄介な問題で網羅的な統計がない。よく言われているのは「思いやり予算」といわれるもの
でこれは直近の数字で2千億円弱の数字となっている。この数字でみる限り米軍駐留コスト
は意外に安いなという印象を受けるがこれは基地のランニングコストの直接負担分のみを
だしている数字でトータルのコストとは言えない。




 在日米軍駐留経費負担は実は防衛予算に含まれており、さきほどの5兆円弱(正確には
4兆7千億円)の中に入っており日本の実質的な防衛予算はこの分を差し引く必要がある。
上記のグラフと表は円グラフが思いやり予算そのものの数字で下の表は防衛省関連予算を
しめしており、基地対策費に入っている思いやり予算とSACO関係経費、米軍関係経費
を加えると防衛省予算における駐留経費が算出できる。コストが2千億円を下回るだけな
ら確かに「安い買い物」じゃないかと思えるが、本当にこれだけなんだろうか。しかし調
べていくといろいろなものが出てきた。米軍の基地というのは必ずしも国有地に立地して
いるわけではなくて、中には私有地に建っているケースがある。



 上記の表を見てもらうと分かるとおり米軍基地は日本で10億28百万平方メートルの
敷地を利用している。国土面積でいけば0.3%。これが多いか少ないかという議論はとり
あえずしない。内75%は国有地で25%が民有地、自治体所有地などになっている。これを
沖縄に限ると国有地は35%しかなく、残りが民有地・自治体所有と逆転する。沖縄問題の
難しさはこのような所有者構造が本土基地と異なっている面も否定できない。
因みに硫黄島は一般人立ち入り禁止になっているが、実は民有地に自衛隊の基地があり、
国は借地料を地権者に支払っている。では米軍基地の借地料はどのくらいなのか。



 この金額がどの程度かといえば直近ベースで1194億円。内訳を見るとやはり沖縄
が圧倒的で900億円になっている。地主は47千人に上っていて、既に金融商品と化
している。思いやり予算に加えると3100億円となるが、それでもまだ安い印象を得る。
因みにこの借地料は事業仕分けでも議論されたが、満額通った。まあ、条約で決められて
いて勝手にカットするわけにはいかないだろう。

所有構造が何故、コスト面での問題になるかといえば、米軍が民有地を使用しても米軍は
借地料はおろか固定資産税も支払ってくれない。地方税法の臨時特例にの適用によって
地方税を課すことができないようになっている。米軍の所有する固定資産には固定資産税
や都市計画税を課することができず、また住民税や市町村税も非課税となっている。一方、
基地外に居住する軍人・軍属やその家族については、一般住民と同様に道路・水道・ごみ
処理・し尿処理・消防等の公共的サービスを市町村から受けている。国は損失を補填する
為に基地交付金(国有提供施設等所在し町村交付金)、調整交付金(施設等所在市町村調整
交付金)を支払っている。



 国が補填しているということはそれは最終的に国民の税でまかなっているわけだから、
これもコストに入れる必要がある。ではどの程度の金額なのかということだが、その数字
は上記の表の通り、米軍基地対策費として交付金総額で325億円、351市町村を対象
に支払われている。注意すべきなのはこの交付金だが、防衛関連予算ではなく総務省の
予算からでている。思いやり予算ばかり取り上げられるが米軍駐留経費は総務省からも
でていることになる。金額だけをみるとそれほどの金額に見えないのだが実はこれもカラ
クリがある。交付金の算定根拠が地方自治体に不利になっている。

基地交付金は
① 基地交付金の総額の10分の7に相当する額を市町村に所在する全対象資産の価格の合算
  額にあん分した額。
② 基地交付金の総額の10分の3に相当する額を対象資産の種類及び用途、 市町村の財政的
  状況等を考慮して、 特に必要があると認められる市町村に対して総務大臣が配分した額。
とされ

調整交付金は
① 調整交付金の総額の3分の2に相当する額を、各市町村に所在する米軍資産の価格を基礎
 として総務大臣が配分した額。
② 調整交付金の総額の3分の1に相当する額を米軍関係の非課税措置による影響、その他
 市町村の財政状況を考慮して総務大臣が配分した額。



と決められている。一体何をいっているのかよく分からないが、簡単に言えば予算が最初に
決まっていて、それに合わせて配分している。しかも客観性が担保されているとは必ずしも
言えない。何故こんなことになるかといえば、やはり国民負担になるわけだから国としても
最小限にして影響が出ないようにしたいという思惑がある。即ち、一部のつけを地方自治体
に回しており、基地周辺住民が経済的な負担を加重されているといってもいい。国の算定す
る補填額は自治体が想定する固定資産税、住民税などの代替に遠く及ばないことは基地所在
自治体が国に増額要望をだしていることから推し量られるが、問題は実際にどの程度なのか
という詳細な検証がほとんどなされていないことだ。実は神奈川県の相模原県議会議員の
金子豊貴男氏が自主論文なるものを発表しており、それによれば相模原市の交付金の実際の
額(2005年度)は10億9700万に対して、市が算定した固定資産税相当額は45億
円。差額の35億円が機会損失となっているとしている。住民税を入れたらどうなるかは
不明だが、仮に国が4分の1しか支払っていないとすれば本当のコストは1300億円程度に
なり、思いやり予算と加えると4500億円の経費を負担していることになる。

 それでも駐留経費が4500億円位ならまだ安いという気もするのだが、いわゆるコスト
というのは必ずしも目に見えるものが全てではない。「見えないコスト」もちゃんと計る
必要があるだろう。探してみるとやはりあった。これも考えてみれば当たり前の話なんだが
改めてみるとそのコストは意外に大きいことが分かる。米軍が駐留しているということは、
米軍が実施する訓練も現地で行うことになる。軍隊が駐留して何もしないなんてことはあり
えない。戦争が起きていないときはやはり訓練をすることになる。それが軍隊の「仕事」な
のだから。




 訓練域というのは陸上・海上・空域と幅広い。陸上での訓練は実は自衛隊と共用となって
いるケースが多い。一方、訓練海域と呼ばれるものが沖縄周辺にある。図がそれなんだが、
調べてみて驚いた。有名なのはニュースでも報道された「ホテル・ホテル訓練海域」で、な
んか変な名前なんで覚えている。何故有名かといえば、現在沖縄県や漁協が同海域の一部
返還を求めている。沖縄から約50kmの海上の領海・公海上に2万842平方kmの広大
な訓練海域が設定されている。訓練期間中には船舶の立ち入り禁止、船舶の停泊、係留、
投錨、潜水及び網漁業並びにその他すべての継続的行為の禁止等の制限・禁止が行われてい
る。これは漁業だけでなく、訓練海域における資源探査も実質的に禁止されることを指して
おり、資源小国日本の海底資源探査を断念することはある意味で見えないコストを支払って
いると考えるのが妥当だろう。

 しかしこれで驚いてはいけない。先ほどのホテル・ホテル訓練海域は図の右上の部分だが
それを上回る訓練海域がさらにある。インディア・インディア訓練海域は2万3399平方
km、マイク・マイク訓練海域が9512平方kmとこの2つだけで3万平方kmを超える。
沖縄周辺には訓練海域が29設定されており、合計すると5万4940平方kmとなる。
どの程度のものか想像が難しいが日本の国土が37万平方kmだから国土の14.5%にあ
たる面積の水域が米軍の訓練に供されていることになる。これによる経済的な機会損失がど
の程度あるのかという検証スタディはない。船舶の立入りが禁止されるわけだから、漁業に
は確実に影響があるだろう。海洋国家として重視したい海底資源開発も断念せざるを得ない。
いつも不思議に思っていたのだが、欧州では北海油田だとか、ベトナム、ミャンマーなんか
でも海底油田だとかいろいろと資源開発されている一方、四方を海に囲まれている日本では
とんと資源開発の話を聞かないのはなぜだと不思議に思っていた。その理由として米軍に供
される広大な訓練海域が影響しているのではないかと疑うのは考えすぎなのだろうか。

 在日米軍はアジア最大の空軍力を保有している当然のことながら訓練する空域も必要となっ
てくる。全国の数字はどこかにある筈だが沖縄の数字しか取れなかった。それによると沖縄
周辺だけという前提でいけば設定されている訓練空域は9万5415平方km。訓練海域と
合計するのは適切ではないような気もするがあわせると14万平方kmとなる。面積ベース
で日本の面積の4割くらいになるが、この比較は適切とはいえないだろうが、それでも広大
であるということはいえる。訓練のための空域が必要であるなら、それを管制する必要がで
てくるわけで、そこで出てくる問題は米軍管制空域の問題だ。



 横田空域は横田ラプコムとも呼ばれ1都8県にまたがる広大な空域で米軍が管制している。
民間機も通れることにはなっているが、基本的には民間航空機は横田空域を避けて飛行をし
ている。その経済損失がどの程度になるのかという検証スタディも存在しない。とはいって
もこんな巨大な空間が米軍管制下に置かれ、民間機がほとんど利用できないわけだから、
経済的な損失が発生していないわけがない。




見えないコスト負担に関する検証は全くといっていいほどされていないし、その経済的な
コストがどの程度か推測することも難しい。昨年9月にに横田ラプコムの一部返還が実現
し、それによって民間航空機の飛行短縮が実現した。それによる効果は国土交通省の推計
によれば以下の通りになった。

・羽田空港から西方面への出発機の飛行時間が短縮され、燃料、CO2及び経費を削減。
・経済効果は約98億円/年、環境改善効果は約81,000tCO2 /年。
・飛行短縮効果は平均で3分



 一部返還で98億円なら全部返還でどのくらいになるんだろうか。このように考えると
見えないコスト分は見えているコストをはるかに上回っている気がする。見えないコスト
が見えているコストの同程度とすれば全体コストは1兆円弱になるがもしかしたらそん
なところかもしれない。在日米軍は32千人と自衛隊よりも人数は少ないが、自衛隊と同
じ施設面積、その自衛隊をはるかに凌駕する訓練領域を使用している。自衛隊のコストが
4兆円程度とすると在日米軍の駐留負担経費が1兆円程度あってもおかしくはない。但し
もっと精密な検証が必要だろう。

 なんかこんな風に書いていくと迷惑施設にしか聞こえない在日米軍だが、本質的な問題は
一体米軍駐留のコストがどの程度なのかという正確な数字がないのが問題だと考える。
政府もそれを怠っているし、思いやり予算の2千億円で済んでますという程度の説明では誰
も納得しない。安保条約の便益について語るにしても正確なコスト分析があって初めて判断
されるものだ。米軍には撤退してもらって日本が核武装したって構わないが、ではその場合
コストがどの程度で便益はどうだという話になるだろう。現状を維持すればこのくらいと初
めて比較可能になり、安全保障に関する国民の議論ができる。現在の安全保障を巡る迷走は
必要とされる情報の開示がなく、またその情報の収集・検証すらしていないことから起こる
べくして起こったと考えてもいいだろう。


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子供手当てを再度考える

2010年05月23日 | Weblog


 子供手当て創出に関する法律が議会で通過して子供手当ての支給がいよいよ6月に
迫ってきた。これから手当てに関してメディアでいろいろと取り上げられることに
なりそうだが、依然として同手当てに関して疑問を持つ筆者は改めてその意義をレビュー
してみよう。別段、筆者に子供がいないからひがんでいるということでなく、なにか
釈然としないものが胸につかえているという気がしてしようがないのでこの正体を
自ら確かめるという試みでもある。まずは概要を見てみよう。今年度は半額であるが、
子供手当て総額で1兆2230億円でその財源は全て国費だ。従来の児童手当との違いは
なんといっても所得制限がないこと。これによって児童手当の欠点を改めるのが目的
とされているが、厚生労働省の趣旨説明を見てみると

* 子ども手当は、次代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するという観点から
   実施するものです。
* 子ども手当の創設の背景としては、少子化が進展する中で、安心して子育てを
   できる環境を整備することが喫緊の課題となっていることがあります。特に、
   子育て世帯からは、子育てや教育にお金がかかるので、経済面での支援を求め
   る声が強いという状況にあります。
* 他方、子育てにかける予算でみると、先進国の中で日本はGDP比で最も少ない国
   の一つとなっています。また、合計特殊出生率もG7諸国中最低となっています。
さらに、少子高齢化が進展し、現在は、3人の現役世代で1人のお年寄りを支え
   る形になっていますが、2055年には1人の現役世代で1人のお年寄りを支え
   る状況となることが見込まれており、思い切った対策を講ずることが求められて
   います。
* こうした状況も踏まえ、子ども手当については、子育てを未来への投資として、
   次代を担う子どもの健やかな育ちを個人の問題とするのではなく、社会全体で
   応援するという観点から実施するものであり、子どもを安心して生み育てること
   ができる社会の構築に向けた大きな第一歩であると考えています。

 なるほど高尚な理念に裏打ちされているなぁ..などとは全く思わない。どちらかと言
えばとってつけたような理由じゃないかとも思える。厚労省の資料でいかに日本の子供
関連手当てが少ないかという資料が下の図だ。



 ほう、やはり日本は低いのか。などと感心しても仕方がない。この図のレトリックは
英語でよく言う「りんごとみかんを比較する」(compare apple and orange)と同じで
比較するのがあまり適切でないものを比較している。比較に出されている欧州諸国は
全てVAT(付加価値税)が2桁。それも20%近い国ばかり。カナダの付加価値税は日本
と同じく低いが、それに呼応してやはり関連予算は低くなっている。要するに「みんな
で育てよう」という気があるなら「みんなで負担」しなくては意味がないということ。
消費税論議を封印して少子化だ、格差是正だと言っても肝心の負担について先送りする
事自体むなしい議論というべきだろう。

 一方で廃止される児童手当の問題点は一体なんだろか。少子化対策として機能してい
ない? それとも制度的な不備があるのだろうか。申請が容易に通らないとか、本当に
必要としている人たちに手当てが行き渡らないのだろうか。それでは過去の児童手当の
支給実態を見てみよう。それが下の表だ。



 当初、児童手当の実態を相当厳しいものと考えていたが、データを見てびっくりした。
平成10年度の受給者は198万人。それが19年度には929万人と4.6倍。支給対象児童は10
年前には220万人だが、直近では1297万人と5.8倍。支給額は6.5倍。大盤振る舞いじゃ
ないか。いくら経済環境が悪くなったといってもこの数字からは申請すれば即支給と
いう状況を物語っているのではないか。所得制限があるので別段それが悪いという意味
では言っているわけではないが、児童手当は経済環境の悪化に伴って十分な再配分機能
を維持しているのではないか。それを所得制限を取っ払って全員に「薄めて」ばらまく
以外の意味が子供手当てにあるのだろうか。それにしても900万人という数字は一体ど
の程度の水準なのか見当がつかない。とりあえず人口統計からその水準を推測してみる。

 その前に児童手当の支給要件を見てみよう。児童手当は0歳から12歳到達後の最初の3月
31日までの間にある児童(小学校終了前の児童)を養育しているものに支給される。
国籍条項はなく、外国人でも受給できるが所得制限がある。



 児童手当は扶養親族の数などでも変動するが、仮に子供2人とするとサラリーマンで
所得で600万以下になる。これをベンチマークにして国税庁の民間給与実態統計調査から
切り出すと上の表にあるとおりだ。直近分では所得階層600万以下では全世帯の79%
に該当する。仮に700万とすれば85%の層が対象になることになる。一方で人口統計
で対象となる児童がどのくらいいるかを見たのが下の表だ。



 これでみると児童手当対象となる人口は直近で1476万人に上る。一方で実際に受給
対象になった児童数が1297万人。88%にあたる児童が実際に受給している計算と
なる。なんだ、ほとんど全員にばらまいてるじゃないか。結局、子供手当という看板に
架け替えただけなのか? というより、あまりにも支給対象が多いのが腑に落ちない。
さきほどの表からすると給与階層別に所得が600万以下の世帯は79%だ。それに対
して対象全児童の9割近くが受給している。600万以下の世帯全てが子供持ちでもない
限りこんな数字にはならないんじゃないかという気もする。言いたいことは、この10年
で爆発的に伸びた児童手当の支給に関してどの程度の「不正受給」があるのだろうかと
いう疑問だ。ないと思いたいが独身世帯は対象となる所得階層に必ずいるはずだし、
子育てを終えて年金生活に入っている所得600万以下の年金生活者は統計的に考えて
も10-20%は入っているはずなんだが、数字的には600万以下は全て子育て世帯みたい
な感じにも見えるのは何故だろうか。


65歳以上で世帯を形成しているということはいわゆるリタイア層で、年金生活をしてい
ると推定される。年金は標準的に金額でみると上の図の通りになるが、どんなに高くもら
ったとしても500万以上支給されることはない。要するに先ほどの所得階層別世帯の中
にはほとんどの高齢者世帯(家族との同居を除く)が含まれている。ではどの程度いるかと
いえばこれも統計から分かる。単身世帯と合わせると1440万世帯。600万以下の
階層は3661万世帯。当然、リタイア層は児童手当とは無縁のはずなのでこれを差し引く
と2221万世帯が対象となる。独身世帯や子育ての終わった世帯がどの程度いるか不明
なので正確なことはいえないが、単純に割ると1世帯あたり0.58人。むむむ。それほ
ど不自然ではないか....

 それでも、子供人口の9割が受給しているという事実は統計的にも不自然さを感じる。
例えば、先の階級別所得階層表を眺めてほしい。600万以下でとりあえず切ってみ
たが、600万超の所得階層を合計すると29.9%の世帯がある。数にすれば926万
世帯(正確には1世帯で複数の人が申告しているケースがあるが便宜的に1世帯とカウント
する)いるわけだ。12歳以下の子供の9割は600万以下の世帯に集中していて、残りの
3割の世帯には子供は1割しかいない計算になる。あまりにもアンバランスに見えるのは
私だけだろうか。所得のごまかしとかやり方はいろいろあるんじゃないかとは思うが、手当て
の適正な支給をめざす方がさきなんじゃないかとも思えなくもない。

(第2の疑問)

 次の疑問としては「外国人の受給」に関する疑問だ。これも調べてみると何がなんだか
分からない。
 しかし、厚生労働省のHPには「次代を担う子供たちを社会全体で応援」と書いてあ
るし、また「少子化の進む日本で安心して子育てできる」とうたっている。でも、外国の
人も入るの? 疑問の本質はいたって簡単で「一体誰の為の支援なのか」という一点に
つきる。社会全体とは日本社会を示すのか、世界全体の社会を示すのか。次代を担う子供
とは日本人の子供なのか、日本に限らず世界の子供のことか。答えが後者であるのなら、
「あぁ、なんと高尚な制度なんだろう」と感嘆を禁じえないが、どうもなんとなくそうなっ
た気がするのは私だけだろうか。それにこんな記事も気になった。

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子ども手当:韓国人男性が554人分申請 孤児と養子縁組

 兵庫県尼崎市に住む50歳代とみられる韓国人男性が、養子縁組したという554人分
の子ども手当約8600万円(年間)の申請をするため、同市の窓口を訪れていたことが
分かった。市から照会を受けた厚生労働省は「支給対象にならない」と判断し、市は受け
付けなかった。インターネット上では大量の子ども手当を申請した例が書き込まれている
が、いずれも架空とみられ、同省が数百人単位の一斉申請を確認したのは初めて。【鈴木直】

 尼崎市こども家庭支援課の担当者によると、男性は22日昼前に窓口を訪れた。妻の母国
・タイにある修道院と孤児院の子どもと養子縁組をしていると説明し、タイ政府が発行した
という証明書を持参した。証明書は十数ページに及び、子どもの名前や出生地、生年月日な
どが1人につき1行ずつ書かれていた。担当者が「養子はどの子ですか」と聞くと「全員です」
と答え、男女で計554人と説明したという。

 男性には実子が1人いる。子ども手当は月額1人につき1万3000円(10年度)で、
計555人分が認められれば、年間8658万円の手当が支給されるが、厚労省子ども手当
管理室は「支給はあり得ない」と言う。

           中略

 尼崎市の男性は、子どもへの送金証明や面会を裏付けるパスポートのコピーなど外国人に
求められる書類をそろえており、事前に調べてきた様子がうかがえた。市の担当者は「可能
ならもらおうという意欲を感じた」と話している。
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 子供手当てを外国人も受給できる理由は実はそれほど難しくなくて、いわゆる「国籍条項」
というのが法律に入っていないからだ。国籍条項とは読んで字のごとく、法律施行にあたり
対象を国籍によって制限することだ。国籍条項は例えば公務員など公権力に就業する際に国籍
を本国人に限るなどというのがわかりやすいだろう。いくら優秀でも日本の首相は外国人で
はやはり困るし、検事、裁判官、警察などの司法、自衛隊員などもやはり日本人がつくべき
だというのは法理を説明しなくてもなんとなく理解できるものだとは思う。

 要するに国籍条項とは「誰のために」という目的を達成するための条項であり、社会構成員
が仮に外国人が多く含まれていようとも、その国のアイデンティティーを明確にするために
存在しているといっていい。

 廃止される児童手当には国籍条項は実は入っていない。法律成立時には国籍条項は入ってい
たのだが、その後撤廃された。撤廃した経緯はまず日本が国連の国際人権規約(A規約)を
1979年に批准したこと。さらに1981年には「難民の地位に関する条約」締結により、
国籍による差別を禁じ、社会保障政策において外国人にも内国民待遇を与えることがその理由
になっている。国際人権規約に書かれているのは締結国は「社会保険その他の社会保障につい
てのすべての者の権利を認める」とあり、「すべてのもの」とは国籍・人種・宗教・思想・
信条などの差別を廃したあまねく全てのものであるから、当然のことながら「国籍条項」は
排除される。という理屈だ。

 難民条約がでてくるのはなぜかと言えば、もともと国民年金などの社会保障での在日韓国人
朝鮮人への差別的待遇をなくすという趣旨ででてきたもので、児童手当も難民条約締結ののち
インドネシア難民への政治的配慮ということでそのついでに国籍条項が廃止されたという経緯
がある。(インドネシア難民を理由にして廃止したとも言える)

 しかし話はよく分かったが何故かすっきりしないのは何故なんだろうか。別に外国人に支給
してはいけないとは思わないけれども、少子化云々言わないで日本にいる子供たちのためにと
言われたほうがまだましだろう。せめて「国籍は日本じゃないけど、親子共々日本に暮らして
いる」のを条件にしてはいけないのか? 内国民待遇もいいけれどすっきりする線引きをする
のが筋じゃないのか。

 要するに子供手当て政策は
「筋は通っているが、人情に訴えない」
 のがすっきりしない理由なんだと考える。


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