Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

海外のREIT投資(15) - Sunlight REIT(香港) 決算

2010年09月11日 | 海外REIT研究


 前回、あまりエキサイティングではないと書いてしばらくしたら何故か株価が上がり始め
気がつくと利喰える水準まで来てしまった。特に材料らしいものはないのだが、先日本決算が
発表されたので少しだけレビューしてみよう。ただ、発表された内容を見ると事前の想定の範囲
に収まっており、特にサプライズはなかった。このREITは正直ディスクロが良いとはあまり言え
ないが、最低限のディスクロはしている。まず損益計算書を見てみると内容はやはり事前の想定
通り。なお、当法人の決算期は6月なので2010年6月期決算の話である。



終わった期のPLでみると賃料収入が3.6%増加しており、コストが若干低下したこともあって、
NPIが5.4%増加した。損益計算書に最も大きな影響を与えたのが保有不動産の鑑定評価額の
変動で前年度は8億ドルの減少に対して終わった期は13億ドルの大幅な増加となった。それに
してもポートフォリオ全体の鑑定評価額が1年で1割以上上昇するというのはどうなんだろうか。
実際に上昇したのかもしれないが、ちょっと信じられないというのが正直なところ。但し、算定で
利用したと考えられるキャップレートはオフィスが4.15%から4.65%、リテール部門で4.0%から4.75%
となっているからはやりキャップレートの低下が大きく影響したと考えてよいだろう。



 経済環境の好転が主な理由と考えられるが、稼働率の状況を見てみると興味深い内容が見られる。
まずリテール部門はほぼフル稼働になり全体でも98.8%と極めて高い稼働率になっていること。第2
に当法人のオフィスポートフォリオは248 Queen's Road Eastを除けば全てがグレードBの不動産である
が、そのBグレードの稼働率が大きく上昇している。これは経済環境がかなり好転していることを示し
ており、香港の経済環境は日本の「回復」よりもかなり早くしかも大きいことを示している。やはり
中国本土に近いというのがメリットを受ける理由なのであろうか。因みに当法人の持つグレードBの
不動産だが、数は多いが規模が小さい。10百万ドルを超える物件は3件で残りはそれ以下の物件で
投資家があまり評価しない理由もこのポートフォリオの質によるところが大きいだろう。

(鑑定評価)

 鑑定評価は前述の通り大きく上昇した。前年度が93億64百万ドルだったが、期末では107億
22百万ドルと14.5%も上昇した。オフィスポートフォリオで12%、リテールポートフォリオで17.1%
の上昇とリテール物件の鑑定評価が大きく上昇した。実は鑑定評価の上昇ぱ別のプラス効果をもた
らす。それはギアリングの減少だ。ここで言うギアリングとは総借入れの総資産に対する比率をいい
簡単に言えば負債比率。LTVとは少し異なる。前年度末に39.7%だったギアリングは35.3%と大きく
低下した。これにより純資産は53億19百万ドル、1ユニット当たりで計算すると3.4ドルと前の年と
比較すると23.2%上昇した。冒頭に株価上昇の理由がよく分からないとしたが、敢えて理由を考え
ればこれがその理由となるだろう。

 バランスシートにも少し言及すれば、39億5千万ドルの借入れ金利は銀行との借り換え交渉によって
終わった期末平均約定金利3.5%が今年度には2.978%と50bp低下する予想だ。仮に稼働率が
変化しない前提でいけば金利コストは20百万ドル低下することが予想される。こう考えると結構な
ポジティブ材料があって株価が上昇したとも思えるが実は当法人にとってのプラスは他の香港上場
リートにプラスである。実際に他の香港リートを見てみると似たようなチャートになっており、ほとんどの
銘柄が同じ時期に上昇している。従って株価上昇はどちらかといえば香港経済回復によるマクロ要因で
あることが分かるだろう。(下図参照)



 Sunlight REITはファンダメンタルズからみると決して優良銘柄とはいえないので、はやり少し売って
エクスポージャーを減らした方がいいかもしれない。とりあえずその方向で検討。


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