Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

IMF World Economic Outlook

2021年04月09日 | マクロ経済
既に新聞などで報道されているが、IMFの世界経済見通し(World Economic Outlook)が発表されたので中身を見てみる。予想されていた内容だが、経済回復が急速に進むだろうというのが結論だ。



予想の根拠は極めてシンプル。コロナショックから経済が正常化し、それに伴い貿易などが再開することから当然ながら経済は成長していく。通常の経済予測と異なり、異常事態の収束がわりと簡単に予測されることから当然の結論となる。とりわけデータからもそれが読み取れる。上のグラフの下段には財の貿易の成長率が載っているが、昨年の2020年の推計では-5.3%とかなりの落ち込みが見られた。2021年の予想ではこれが8%に急上昇すると予測している。チャートがなかったので載せなかったが、これは財の貿易だけをみただけで、財・サービスの貿易でみると2020年は-8.5%のマイナスだった。予測は予測だが、今回の予測は方向性としては信じることが出来るのではないかと思う。その理由が前回も似たようなケースがあったからだ。言わずと知れた2009年のリーマンショックがそれだ。



2009年の世界の財・サービスの貿易成長率は-10.7%と大きな落ち込みをみせ、2010年の回復期には+12.8%とかなり大きな回復となった。GDP成長率も2009年の-0.1%から翌年には+5.4%の大幅な成長になっている。今回も似たような傾向になると予想されている。但し、リーマンショック時と異なる点は経済の回復速度が地域的なばらつきが出てくることが予測され、世界同時回復とはならない可能性がある。すなわち、前にも言及したが、コロナショックからの回復は集団免疫を獲得して初めて可能となる。しかしながら、ワクチン接種率の違いから必ずしも世界同時とならず、まだら模様に回復する可能性が高いだろう。



但し、気になる点がいくつかあることは事実だ。1つはコロナ真っ最中とはいえ、鉱工業生産などはコロナ前に戻ってきている。とはいえ、成長率なんで、ボトムからプラスになっていてもまだ完全に戻っているとは言えないものの、意外に回復が早いことが気になっている。とりわけグローバルにみた貿易動向では資本財輸入が年後半から活発になっているのは注目されるだろう。



2点目は資本財や耐久消費財の伸びがが大きい。巣ごもり消費という言葉になれてしまったせいか、自動車等の耐久消費財の需要が増加していたというのは意外感がある。君らなにしてんの。この状況下で。いや、この状況だからこそ、車とか買いたかったのかもしれん。資本財の急上昇は先進国から途上国向けが多く、その多くはサプライチェーンの再開に伴う輸入という点である。都市のロックダウンなどのニュースが多いので気が付かなかったが、意外にサプライチェーンの再開が早い。自動車に関しても半導体不足で生産が停滞しているものの、それがなかったら結構急激な回復につながったかもしれない。



とりわけ昨年の第4四半期に工業製品・農産物ともに大きく回復している。燃油・鉱物が依然として大幅な減少に止まっているが、それでも全体でみるとプラスになってきており、既に回復の局面ということがマクロ的に見てとれる。うむむ、どうも体感とはかなり違う状態になっているようだ。だからこそ、株価は先行して上昇しているとも言える。予測では2021年は6%近い高成長を遂げるが22年には4.4%に成長率が鈍化すると見込まれている。しかしそれでも4%台の成長は高い方だろう。気になるのは2009年のショックでは世界のGDP成長率が急減速したといっても-0.1%だった。今回は-3.5%から+5.5%と大幅に回復するわけだが、もしかしたらそれ以上の過熱があるのではないかと気になっている。いうまでもなく、米国の財政拡張政策を考えればオーバーシュートの可能性も出てくるだろう。前回のインフレの可能性の議論ではやや否定的に論じたが、下手すれば高インフレの目もでてくるのではと少し不安になってくる。



インフレ率が抑えられるという論拠はまず第一に労働市場がタイトでないこと。少なくともコロナで失業もしくは潜在的な失業が発生していることから財政によるバラマキでも家計は防衛行動をとり続けると予想されること。2つ目としてはGDPギャップが世界的にマイナスとなっていることから、それを埋めるだけで市場を過熱させることはないだろうと予測しているからだろう。まあ、確かにそうなんだが、気になるのはGDPギャップを見るとアメリカの傷はかなり浅いんだよね。さらに2兆ドル近い財政政策でどうなるかはまだ予断を許さない。



さらにいえば、先進国、発展途上国で分けると日米欧などの先進諸国の傷が浅い。一次産品特に燃油・鉱物に依存しているかどうかで分かれている。このような状況からすれば回復のパターンは先進国>発展途上国の順番になるだろう。



先進国のなかでも米国の回復が早い理由は、既に数字に表れているからだ。失業率の推移を見ても戦後最悪と言われた4月の数字から急速に改善している。数字が出た段階ではこの先30%位まで上昇すると予想する向きすらあった。さらに消費の動きを見るとHigh-contact serviceと呼ばれる食品、レジャー、宿泊、交通の低迷をのぞけば軒並み回復している。というかかなりのハイペースでギャップを埋めようとしているのが分かる。ニュースではコロナの話ばかりで経済の話があまりでてないが、少なくとも先進諸国は回復局面にあることは間違いない。

やはり問題はインフレがどうなるのか、金利上昇がどうなるのか、株式市場はどう反応するかという点だろうが、とりあえずそれはここでの主題ではないので置いておく。但し、5月には米国でかなりの人がワクチン接種を完了すると見られていることから要注意であることは変わりがない。
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