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個人日記兼つれづれなるままに

賃貸物件のリフォーム

2013年03月09日 | 不動産
 REIT等の証券投資と異なり、実物不動産投資は手間がかかるうえにキャッシュフローがあまり安定していないなどの特徴はあるが、リターンという点では証券よりも高いケースが多い。今は相場がもとに戻ったのでなんともいえないが、不動産不況の時にはグロスで10%以上はざらだったし、中にはかなりお買い得の物件もあったようだ。地方物件は特にグロスのリターンは高く、20%以上も珍しくない。但し、賃料が東京圏と比較して大幅に安い上に、管理費などのコストは東京と同じくらいなので実質のリターンは低い。グロスベースで2ケタを割ると実質ベースでは東京圏よりも利回りが下がる場合がある。

 地方物件のリスクは空室リスクだ。空室になると1年以上客付ができないということも多い。地方は賃借よりも家を買う人が多い。賃借で済ます人は地方では短期的なニーズがあるか、転勤してきた人たちで、転勤シーズンの3-4月を逃すと次の年まで空室なんていうこともありうる。一番良いのは一棟などのポートフォリオで運用するという形だ。たまに「サラリーマンでも大家さん....云々」という本に触発されて地方物件を1つとか、東北、関西、九州に区分所有を1件ずつなど購入して結局ほとんどすべてが空室でローン支払いに苦しむなどという投資家もいる。最悪なのは東京圏での不動産投資をしていた人が地方でも同じように1Kタイプの一棟アパートを購入するとかいうケース。地方で1K借りる人はかなり特殊なニーズだ。東京圏と違って回転率に大きな差がある。ある不動産屋さんに聞いた話だが、地方大学のすぐそばに1Kタイプのアパートを建てて運用したのは良いが、しばらくしてお目当ての大学が移転してしまい、ほとんどが空室になってしまったという笑えない話がある。

 結局、実物不動産を運用するには覚悟だけでなく、運用のポリシーも必要だ。純粋にリターンだけを考えて、「住めればいいんだ。借りる奴はいる」みたいな考えの人は失敗する。実際にその物件に自分が住んでみたいかと言えば、NOだったりする。自分が借りたくもない物件を他人が借りてくれるなどと考えるのは間違った考えだ。私の場合、よくある木造アパート1棟という形の不動産投資はしなかった。税効果を考えればもっとも効率が良いのだが、そういう物件は新築の時は気にならないが、5年、10年たつと本当にぼろくなる。税効果、投資リターンを最大目的にしているから、管理も自主管理だったり、管理費をケチったりする。そういう物件は本当に痛みが速い。

 私が実行したのは地方物件の区分所有マンションを数件まとめて運用する方法だ。(投資を始めたのはだいぶ前だが) これなら空室リスクはゼロにはならないが、ある程度抑えられる。1Kや1LDKなど単身者向けでなく、ファミリー向けでポートフォリオを作る。東京圏と異なり、地方で単身者向けというのはやはり特殊なマーケットだ。地方は流動性がないことから、例えば大学に近いとか単身者が多そうな工場の近そうな立地であるとか、そういった特殊物件になりがちだ。ファミリー向けであればそのような特殊事情を考慮しなくてもよい。つまり「大は小を兼ねる」というのが地方では当てはまる。

 それでも実物不動産の悩みはまだある。それは経年劣化による賃料下落だ。首都圏だろうと地方だろうとやはり「初物」には人気がある。一方、マンションも時間が経つとやはり相場が下がってくる。無論、原状回復工事をするからクロスもきれいになって部屋の見栄えもいいのだが、やはり設備は古くなる。特に水回りは人が使うとクリーニングしても古さは払しょくできない。そうなると影響するのは賃料で年々、微妙に下がりだす。私が運用する物件でも賃借人が変わるたびに微妙に賃料が下がる。エアコン、照明等を新調したりといろいろとやったが、やはりうまくいかない。さらに悪いのは賃料の下落が起きるとその賃料相場で集まるユーザーの質が低下することだ。具体的には「滞納」というやつで、賃料が安いということはそれにあった所得層の人が集まってくる。当然、この20年間のデフレ相場の影響でリストラされたり、賃金が下がったりして滞納リスクが高まってくる。過去数年のケースでも滞納案件が起きた。理由はさまざまなんだが、やはり経済の悪化で職をうしなったというケースが多い。

 いゆわるデフレスパイラルによる負の連鎖というやつで、実物不動産も同じだ。こうした負の連鎖を断ち切るにはいくつか方法がある。まず考えられるのは実物不動産からの撤退。REITが運用手段として有効になっているのでリスクを完全に遮断することができる。取るべきリスクはマーケットリスク、銘柄固有リスク位だ。但し、利回りも下がる。以前、地方の実物不動産を売却した時、トータルリターンを計算してみた。いろいろと厄介な物件で滞納が起きたり、空室がでたりと苦労があった物件でだ。市場価格で売却できたので一安心だったが、計算してみると意外にリターンが高かった。(キャピタルゲイン+期中のインカムゲインを含めて計算) 苦労したのでリターンは低かったろうと思ったのだが、税引き後のリターンで考えても実物の方が高かったのは本当に意外であった。但し、苦労した分を考慮すると見合ったリターンだったかは微妙なんだが。

 もう一つの方法はリノベーションによる賃料自体の引き上げだ。普通の現状回復工事で賃料を上げたところで単に空室期間が長期化するだけだ。上げるにはそれなりの投資が必要になる。それは需要側の要望を斟酌したうえで、値段に合った設備を適正な値段で提供することに他ならない。賃料引き上げはもう一つの効果を狙っている。それは上昇した賃料水準にある所得層を狙うこと。5万円の賃料を求めるユーザーと7万円のユーザーではやはり所得水準が違う。低価格を求めるユーザーは一番の要求項目が「賃料の絶対水準」だったりする。要するに安いことが第一なのだ。一方で、高めの賃料を受け入れる層は所得水準が高いというのもあるが、要求の第一項目は絶対水準でなく、「設備」になる。因みに東京圏と違って「駅から5分」とかは競争項目としては弱い。地方は車社会なのでよほど遠くにあるなら別だが、駅や商業施設まで5分-10分以内(勿論、車で)であれば差別化は難しい。ということでリノベーションによる賃料水準のアップを狙ってみた。どのようなリノベーションをするのか、まあ結論は見えているのだが、とりあえず人口動態的に検証してから計画を作ってみる。(とりあえずカッコよく言ってみる)



 厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」(平成23年)から抜粋した世帯構造別統計表からは、よく言われているように少子高齢化の影響がでている。単独世帯、夫婦のみ子供なし世帯の全世帯に対する比率で見ると47.9%とほぼ半分に達している。世帯別の平均人数を見ると下のグラフのようになる。



 要は少子高齢化、晩婚化に伴い単独世帯が増加、夫婦子供なし世帯が増加しており、平均世帯は継続して減少している。統計を取り始めた昭和28年には5人だったわけだから、いかに減ったのかがわかる。また平均人数が3人を割ったのは平成に入ってからであるのでここ20年間の減少傾向が加速していることが理解できる。つまり、ファミリー向けといっても20年前のファミリー向けは現在のファミリー向けでないことが容易に想像できる。そこでこんな計画にしてみた。



 計画の肝は間取り変更だ。保有している物件は平成3年頃に建設された物件で、築で20年を超えてきている。当時はファミリー向けといえばこのような3LDKが当たり前でLDK10畳、和室6畳・4.5畳、洋室5.5畳と平均的な間取りになっている。東京圏でファミリー向けでもこのような間取りはほとんどないが、地方で20年以上前だとこれが当たり前だった。購入した時から気になっていたのだが、この間取りは夫婦・子供2人の計4人もしくは5人といった家族構成を想定していている。現在の日本の平均的な家族構成とはマッチしない。

 まず、和室が人気がない。無論、和室を好む人がいるのは事実だが、最近の傾向はフローリングだ。それに世帯平均が3人を切っている状況では部屋数よりもリビングなどの生活空間がスペースが重要になってくる。LDK10畳というのは狭くはないが、実は商品の訴求力がない。賃借人が内見するときは家具などのものが置いてないのでスペースがあるように思えるのだが、実際に家具を配置すると10畳は狭く感じてしまうものだ。ここは自分の感性を信じて、というか「もし自分だったらどのような間取りがいいのか」というのを重視して窓側6畳の和室をぶっ潰して、LDK16畳に変更。洋室はカーペットからフローリングに変更した。

 ついでにいろいろと手を加えてみる。洗面台、浴槽、バス床なども交換した。ユニットバス交換でなく、単純に浴槽交換である点が重要。ユニット交換だとコストが10倍くらいになる。キッチンは変えたかったが、これもコストの面から断念。不動産業者によるとキッチンは30年以上もつのでよほどの不具合がないと交換しない方がいいと言われた。照明ははやりのLEDでおしゃれなやつを。東京圏では照明、エアコンがついているのが普通だが、地方ではついてないケースが多いらしい。だが、これは私のポリシーなので付ける。という訳でリフォーム前と後を比較してみる。



 お風呂は汚れるよね。後、トイレがあれだと借りる気力は落ちるよね。



 借りる人にもよるのだが、引っ越す前に掃除する人と、全く掃除しない人がいる。新品同様ピカピカにする必要もないしできないのは分かっているけど、必要最小限の掃除もしない人ってどうなんだろう。別に怒ってないけど、「立つ鳥跡を濁さず」ていう格言もあるんだけど。この物件は全く掃除の形跡がなかった。

 でまあ、リフォーム後は次の通り。まずはお風呂



 ユニットバスの交換をするとどんなに安くやっても60-70万かかる。だからたいていのオーナーはクリーニングで済ますんだけど、20年くらいたつとクリーニングでは落ちない汚れが発生する。次善の策としては浴槽交換というのがある。文字通り、ユニットは交換しないでパーツの一つである浴槽だけ新品に換えるという手だ。浴槽だけなら安く調達できれば5万くらいでいける。



 シャワートイレは日本国民には必須アイテム。当然購入した時はなしだったが、これは量販店で買えば2万-5万位でできる。便器まで変えるとえらいコストになるが、そうまでしなくてもOK。写真のは実はリフォーム前から設置したものでクリーニング後のもの。設置してからまだ3年たってないので今回は新調しなかった。



 洗面台変更。いまどきのはやりはやはりシャワー水栓。水栓部分が伸びるのでシャワーがすごく楽になる。自分は朝シャンなんてやったことないけど。特に女性には人気かも。



 やはり16畳のリビングは一言で言えば「spacious!!」。これなら自分でも住みたいと思う。天井のシーリングライトもLEDに交換。エコです。



 和室4.5畳をLDKから見た写真。流石にここをつぶすと寝るところがなくなってしまうので残したが、単身者ならとってもいいかもしれないな。まあ、しないけど。和室6畳をつぶした効果は面積だけでなく、リビングが「明るくなった」ことが一番大きい。採光できる窓の面積が増えたのだから当然なのだが、本当に「ものすごく明るくなった」のにはびっくりだ。



 キッチンは残念ながら交換しなかった。個人的にはしたかったが、コスト的に厳しい。別段、お金がなかったからでもないし、出せない金額でもないのだが、これをしてしまうと投資採算利回りがかなり低下する。「自分の住みたい」部屋にリノベーションするのは必要条件だが、投資採算利回りを無視してまでやるとただの「趣味」になってしまう。またREITの利回りを下回るようではやる意味がない。交換は無理だが、浄水機能付きの水栓に交換してみた。それと購入当初は蚊取り線香みたいな電熱器タイプだったが、IHに交換してある。



 洋室はカーペットからフローリングに。カーペットって人気ないんだよね。掃除しずらいというのもあるが、汚れが目立ちやすい。オーナーにとってはカーペットの方を好むがそれは「安い」から。



 20年以上の前の物件だからテレビカメラ付きインターホンなどはない物件。付けてみる。個人的には大したことがないと思ってたが、意外に受けている。やっぱセキュリティに関心があるからだろうか。20年以上前の物件なのでオートロックではないし、他の人がマンション内に簡単に侵入できるのでこれは必要なのかも。

 こんな感じでリノベーションを実行し、募集賃料を20%引き上げた。地方なんで埋まるのは半年くらいかかるかと思ってたら、なんとリノベーション終了と同時に賃借申込みが入った!! マジですか? まあ、工事終了がちょうど転勤シーズンの4月前に終わったというのがあるんだが、それにしても速攻で埋まったのには驚き。但し、一つだけ説明しておくと20%賃料を引き上げたが、それは「相場の範囲内」であって、コスト掛けたから相場を無視して賃料設定したわけではないことに留意してほしい。その地方での相場はグレードによって範囲があり、以前はどちらかと言えば相場レンジの下の方だった。それをレンジ上位(最高値ではない)に設定した訳で、コストから逆算して設定したわけではない。あくまでもその地方の相場を無視してはいけないというのは重要な点だ。

 実はブログには書いてないが、リノベーションはこれで2件目だ。1件目も同じような工事を行い、これも賃料設定を20%引き上げた。工事終了が転勤シーズンが終わった後なので埋まるのに半年かかったが、これも設定賃料で埋まった。


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中古マンション価格(8月調査)

2009年10月13日 | 不動産
 東京カンテイという民間の情報サービス会社が発表している調査に全国の主要都市
の中古マンションの価格調査というのがある。8月に発表された数字は新聞にも載って
おり、「中古マンションの価格底入れで不動産市況も改善か?」などとヘッドラインが
踊った。実際にその調査内容を見てみよう。



 上のグラフは首都圏、近畿圏、中部圏の3大都市圏の中古マンション価格の調査で、
首都圏の数字がピクリときているのが分かる。調査は70m2以上のいわゆるファミリータ
イプのマンションを調べていて首都圏だけを取り出すと下の表のようになる。特に東京
都が前月比で2.2%の上昇となっており、これだけを見ると底入れしたような気もするが、
実のところ、チャートを見て分かる通り首都圏は7ヶ月連続で下げ続けており、これが
下げ止まったのか、それとも急落が終わったのかはまだ判断できない。表には前年同月
比も載っているが前月比で上昇でも前年同月比では10.1%の急落となっており、いかに
ここ半年の下落が凄まじかったかを物語っている。(表は一部省略してある)



 前回の都道府県地価調査でも述べたことだが、神奈川、埼玉、千葉などに比べると
東京の下落がかなり大きかった。8月の神奈川の前年同期比が-6.4%、埼玉で-5.4%、千
葉では-2.0%である。それに比べると東京が10%を超えるというのは換金売りが多かった
ということを示しており、投売りによる地価の下落。とりわけ換金性の高い場所ほどよ
く下がったということを改めて確認できると考えられる。またこの調査に関しては別に
客観性がないとは思わないが、データの質も検討する必要があるだろう。下の表は更に
サブセグメントの数字を示したもので東京23区、横浜市及び千葉市の状況が載っている。
なお、8月のみの数字に修正している。



 これを見て気がついたのだが、8月の4028というのが平均価格で70m2当たり4028万円
という数字だ。一方で18.0というのは平均築年数で18年であることが分かる。平均で18
年ということは結構古いマンションを含んでいると考えたほうが良いだろう。私もよく
中古マンションの市況のチェックをよくやるが、投資対象としてはやはり築浅を見てい
て20年以上は対象から除外している。調査データは平均で18年というからには築浅もあ
るが相当古いマンションのデータも入っていると見るのが妥当だ。そうするとどの築年
数が動いているのかということはこのデータからはうかがい知れない。さらに注意を要
するのはこの調査は東京カンテイのデータベースに登録された「売り希望価格」のデータ
ということだ。つまり、取引価格ということではない。見方によっては投売りでオファー
価格が急落したが、実際に成約して高いオファーが残った為に価格が上昇していると見
ることもでき、手放しで喜ぶのはまだ早い。買い手のデータというのがデータベースと
して存在しないことから仕方のないことだが、やはり中古マンションの取引価格の推移
で見るのが良いのかもしれない。といってもないのだが。


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不動産賃貸に関わる更新料返還訴訟(3)

2009年10月08日 | 不動産
 (3)更新料の法的な性格

 いよいよ問題の更新料に関する議論を見ることにする。敷引きの問題と異なり、日本全国
の大家の利害が一致する分野だ。まずは双方の意見を見てみよう。なお、原判決は文章の
べたうちなのでエクセルに落として見やすく加工してある。



 更新拒絶権の対価とはよく考えたものだと感心するが、確かに一度貸してしまうと
家主には「正当な事由か゜ない限り更新の拒絶ができない」ことになっている。その
意味では対価を受け取ることには正当性があると思う。自分の保有する物件でもそろ
そろ売却しようと思っている物件があるが、あいにく賃借人がおり、とりたてて滞納
などの問題がない為、更新拒絶はできない。不動産のオーナーなら知っていると思う
が、空室で売却するのとオーナーチェンジで売却するのでは同じ物件でも値段が違って
くる。空室の場合には最終需要家が購入するケースが多いため、比較的高く売れる。
一方で、オーナーチェンジの場合には売る相手が投資家なのでいわゆるその時の投資家
採算利回りで決まってしまう。現在であれば、空室の物件の場合場所がよければ想定
利回りで4-6%でも売れるが、これがオーナーチェンジだと現在の投資家採算利回りで
うる必要がある。立地にもよるが現在の投資家採算利回りは7-9%で、最悪の場合で
半値になってしまう。

 その意味からすれば更新を拒絶する権利が元々大家には付与されていないというのは
やはり納得がいかない。更新料はその対価と考えるのはそれほど不合理とは思えない
のたが。②の賃借権の強化というのはロジックとして分かるが少し弱い気がする。確
かに2年であれば、2年間退去要請が起こらないという一つのオプションという見方も
なされるが、やはり現在の借地借家法で規定される賃借人の権利を考慮するとこれは
存在しにくい。でまあ、裁判所はこれもばっさり。


 
③と④は賃料補充と中途解約権だが、これについての双方の意見は次のようになってい
る。


 やはり一番しっくりくるのが賃料補充という点だろう。なんだかんだいって募集賃料を上げ
ると集まらないし物件管理コストを考えると投資回収には必要だという観点というのが実務的
にも合理性がある。例えば私の場合には更新料というのは全て賃貸管理会社への支払いに消え
る。自分で管理しているオーナーは別として大抵のケースでは更新料を自分の懐に入れている
オーナーはあまりいないだろう。募集するためのコスト、退去後の原状回復。大抵の場合には
クロスの交換や畳の表換えなどが対象になるが、それらのコストをなんらかの形で吸収しない
と賃料設定が高くなるというのが本音だろう。オーナーは一般的に賃借人に関して優先的な
地位を持っていると思われがちだが、募集賃料に関してオーナーの選択権はない。常に市場の
相場水準で決めないと店子が集まらないので価格決定権に関してはオーナーは持っていないと
いうのが実情だ。

 賃料の自由な設定権限もなく中途解約も更新の拒絶もオーナーに許されていないのだ
から、更新料という形でのコスト吸収は許されてもいいのではというのが私の意見だ。
何もオーナーが懐に入れているのではなく、募集するための部屋の修繕や募集活動の
コスト吸収をしたいと思っているだけならだから。という主張も裁判所には通じないら
しい。


 裁判所の判断は家主側の主張を全て否定する。敷引きに関しては関東の人間ということも
あってそうかなという気もするが、更新料は違うだろう。大岡裁きをしたつもりなんだろう
けれど、実体経済を知らないとしか思えない。そう言えば、最近消費者金融の過払い金訴訟
で最高裁判決がでてから、今まで払った金利に加えて貸した元本までまで借りた人間に払え
という無茶苦茶な事態になっている。アイフルが私的整理に追い込まれたのもそのせいだ。
最近の裁判所はなんか変だ。「弱きを助ける」のはいいが、「強きを殺す」態度にはいささか
閉口する。しかも「助ける」のではなく、「失った以上のものを与える」ような判断は世の中
をいたずらに混乱させるのではないか。

 しかも納得がいかないのは判決の根本的な判断基準は敷引き、更新料に関する規定が契約書
に明示してあるものの、家主側の示した根拠が具体的に説明されていないことが消費者契約法
10条に違反するとの趣旨だが、じゃあ契約書に明示したら違う判決がでるのかという点には
触れていない。むしろ、仮にそれが入っていたとしても家主側が敗訴しそうな雰囲気である。
不動産オーナーの受難は続きそうな気配である。

 (終わり)


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不動産賃貸に関わる更新料返還訴訟(2)

2009年10月07日 | 不動産
 (2) 双方の主張を見てみる。

 敷引きに関する法的な性質を賃借人及び家主側からの主張をそれぞれ見てみよう。
まず①及び②であるが判決文からまとめてみた。なお原文の判決文はだらだらと書いて
あるので文章をエクセルファイルに落として見やすい形に直してみた。



 ①の自然損耗に関してはいわゆる原状回復の為のコストを誰が払うかといっ
た点に尽きる。特に原状回復といっても賃借人通常使用により生ずる損耗。す
なわち、自然損耗に関しては賃借人には原状回復義務はないというのが、現在
の大方の見方だ。これは国土交通省の原状回復トラブルガイドラインにもうた
われており、通常損耗に関しては家主がそれらを含めた値段を賃料に含めると
いうのが今の見方となっている。下図の通り、不動産の賃貸借契約においては
原状回復費用は通常使用・経年変化にともなう回復と故意・過失に伴う部分に
わかれるが、家主側は当然貸す際に経年変化・通常使用にともなう減耗を予測
して貸すわけであるから、賃料に入っているというのが現在の解釈だ。

            (出典) 国土交通省原状回復トラブルガイドライン


 ②のリフォーム費用に関しては家主の味方をしてあげたいところだ。確かに長期で
借りてもらえるなら問題はないが、短期間で退去されるとやはりコストが結構かか
る。クロスの交換とか発生するし、予測不能な部分は確かにあるが、それでもこの主張
は厳しい。でもって裁判所の見解はやはり賃借人と同じく。個人的にも賃料に敷引きの
ような形で回収するというのは大家としては理想だが、それは賃料でと言われてしまう
と、はいそうですねといわざるを得ない。というわけで裁判所の見解は以下の通り。



 ③及び④だが、両方の主張をまとめると下の表のようになる。空室損料という言葉は
初めて聞いた。こんな考えがあるのかと少し感心。賃貸契約の謝礼というのは苦しい。
恐らく賃貸契約を締結した際に礼金をとったのではないかと想像するが二重にとるのか。
正直同じ大家としての立場でも理解に苦しむ。



同じ家主としては味方をしてあげたいところだが、やはりロジックとしては厳しいだろう。
空室リスクを賃借人に転嫁すると読めるが、それでは大家はリスク負担をしないと聞こえ
てしまう。賃貸契約の謝礼という点ではやはり「礼金」という言葉が問題だ。外国人など
はこの「礼金」という言葉を聞くと怒るといわれているが、それはそうだろう。金を払って
借りるのに相手に感謝しろとはいったい何様だと言いたくなるだろう。本来は減価償却分
や賃料の一部として説明するのが最も適切な説明だろう。ということで裁判所の見解は思った
とおりというか、まあ普通そうだろうという結論。いくらなんでも空室リスクの転嫁がで
きるとか、謝礼というのは苦しすぎる。というわけでやはり裁判所もばっさり。



 でもって、⑤と⑥は最も注目してよい事項だろう。



 敷引きは前払い賃料との性格と中途解約権の対価として家主が受け取れるとの主
張であるが、実はこれは更新料の法的な性質と微妙に関わってくる。後述するが、
更新料にも中途解約権の対価として家主側が主張しており、中途解約権の対価が敷
引き分と更新料ののどちらにも登場する。家主を応援したい気持ちはあるのだが、
どう考えても同じ名目で2重取りとの印象をぬぐえない。また更新拒絶権の放棄の対価
として更新料が登場しているが、中途解約権と似たような権利の対価を大家が別々
に受け取れるとする主張はさすがに苦しい。ということで裁判所もばっさり。



 要するに敷引きという関西特有の慣習に個人的に納得できないことからくるので
あるが、裁判所見解と同じくお金を取る方便として敷引きが利用されてきており、実
質的な賃料を賃借人に隠す目的があったと言われてもしかたがない。とまあ、敷引き
関してはあまり京都の大家の肩はもてないのだが、問題は更新料の方だ。更新料は関西
関東問わず、一般的に存在する慣習であることから敷引きを否定する裁判所がどのよ
うな見解を持つのかは極めて重要だ。
 (続いたりする)

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不動産賃貸に関わる更新料返還訴訟(1)

2009年10月06日 | 不動産
 先日、京都地方裁判所での判決は家主にとっては衝撃的な判決となった。自分もREITだけ
でなく実物資産での運用を行っていることから、他人事ではない。ここでは判決文原文を読
んでその内容を確かめておこう。報道によれば賃貸住宅の契約で「更新料」支払いを義務付
けた条項が有効かどうかが争われた3件の訴訟で、京都地裁はいずれも「入居者の利益を一
方的に害しており、消費者契約法に照らし無効」と支払い義務を否定する判決を言い渡した
というものである。同じような訴訟は京都地裁だけでなく、大阪高裁でも家主側が敗訴して
おり(現在上告中)、最高裁判決で仮に家主側が敗訴すれば「更新料」そのものが不動産賃貸
ではなくなる可能性がある。

 ところでその判決文であるが、インターネットで探してもなかなか見つからない。探し方
が悪いのかもしれないが、ようやく京都地裁の7月の判決文を手に入れることができた。


 内容は家主にとって全面的な敗訴。なにしろ、敷金、更新料全額だから、当時締結した契
約そのものが無効だと判断されたわけだ。元々締結された契約の内容は以下の通りとなって
いる。

 イ 契約期間平成18年4月1日から平成20年3月31日まで
 ウ 賃料1か月5万8000円
 エ 保証金35万円
 オ 解約引き30万円(以下「本件敷引金」という。)
 カ 更新料賃料2か月分

 関東に住んでいる人間には少し違和感のある契約に思えるかもしれない。関西地方の物件
保有しているので私には理解できるのだが、関西には「敷引」という慣習がある。もともと、
敷金というのは債務不履行の際の保証金的な性格をもっており、敷金から債務を相殺すると
いった使われ方が一般だが、関西地方では原状回復費用を敷金から引くという取り決めがよ
くある。これを「敷引」と呼んでいる。それにしてもこの契約内容を読んだときの印象はと
いうと「ちょっとえぐいなこの契約」というのが素直なものだ。第一、敷金35万円は6か月
分家賃相当だ。敷金2ヶ月、礼金2ヶ月というのが一般的な相場だし、最近は礼金は1ヶ月とい
のが多い。実際に私の保有する物件では礼金は1ヶ月でその礼金も募集費用として不動産会社
への支払いに消え、いままで礼金なるものを自分で手にしたことはない。

 加えて、敷引き30万円というのは敷金の85%に相当し、実質的には敷金は家賃の一部である
とみられても仕方がない。さらにいうなら、更新賃料2ヶ月というのもひどい。自分の物件で
も他の一般的な物件でも更新料は1ヶ月だ。その更新料だが、私の場合、不動産会社に取られ
るのでこれもいままで受け取ったことがない。(契約している会社とは滞納保障契約を締結し
ており、そのコストとして充当されている)

 判決には家主に同情するが、この契約に関しては同じ家主業をするものとしては賃借人に
同情する。敷引きなどの関西の慣習も違和感を感じるし、訴訟が起きたのもやはりもともと
の契約がえぐいから起きたのではないか。結局のところ、高い賃料だと募集できないので、
見かけ上の家賃を安く見せる仕組みだろう。仮に2年間住むとすれば敷引き30万円は月間にな
おすと12500円、更新賃料2ヶ月は4833円の上乗せ賃料となり、月間58000円の賃料は実際には
75,333円の賃料であったということだ。まあ、簡単にいえば実際の賃料より23%表示価格を安
く見せるというのが実態で、賃借人とって「家賃偽装」と言われてもしかたがない。この契約
自体、借りる人のことを考えていない。

 賃借人に同情する点はあるとしても判決は納得がいかない。なにしろ、家主側の主張が全否
定というから、怖くて不動産を保有したくなくなる。そこでどこが問題になったかを整理して
みよう。


(1) 争点は何か?

 この訴訟での争点は一つ。「敷引特約及び本件更新料特約は,法10条に該当するものとし
て無効といえるか」 ということ。ここで言う法とは「消費契約法第10条」のことを指す。
消費契約法10条はこういうこと。


 ここに書いてある通り、消費者の義務を加重し、利益を一方的に害するような契約であった
かどうが問題となった。義務を加重というのは賃貸借契約において、それ以外の本来家主が負
担すべきようなコストを賃借人に転嫁して支払いの義務を課すという意味。 そして敷引き、
更新料の法的な位置づけが争われた。では敷引きについてそれぞれの主張を見てみる。関東
には存在しない習慣であるが、敷引きとは家主側の主張によれば①自然損耗料、②リフォーム
費用、③空室損料、④賃貸借契約成立の謝礼、⑤前払い賃料、⑥中途解約権の対価が渾然一体
となって構成されており、それらのコストを「敷引き」という形で賃借人が支払うという論法
になっている。少し長くなるのでそれぞれの項目について双方の主張を見てみる。回を分ける
ので今回はこれまで (続く)

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都道府県別地価調査(7月時点)

2009年09月26日 | 不動産
 公的機関が発表する地価動向に関する調査は主要なもので2つあり、1月1日現在を基準とする
地価動向を国が調査し発表しているのが一つ(公示地価)。土地取引の指標として公共事業用地
の取得の算定根拠となったり、相続税の計算時に用いられる路線価の根拠となるものである。
公示地価は土地鑑定委員会が年一回発表する。毎年4月に発表される。一方、7月1日時点の地価
の調査は「都道府県地価調査」と呼ばれており、これは都道府県知事が年一回各都道府県の
基準地(21年度は23024地点)における価格を不動産鑑定士の鑑定評価をもとに公表する正常価
格とされ通例9月に発表される。 どちらも固定資産税や相続税などの税の算出根拠となるも
のであるが、土地価格のトレンドを知る指標としても注目されている。

 9月17日に国土交通省から平成21年度の都道府県別地価調査が発表されたが、その内容を見
てみよう。まずは圏域別での変動率の表を見てみると(下表)、いままでのトレンドと異なる
ことが分かる。


 三大都市圏及び地方圏に分けた表であるが、住宅地、宅地見込地、商業地別にしたもので
ある。オリジナルは工業地、準工業地などを含んでいるがここでは割愛している。21年度の
変動率は全国ベースでは-4.0%の下落となったが、三大都市圏の下落率が-5.6%となってい
る一方、地方圏は-3.4%の下落に留まっている。さらに三大都市圏を見ると東京が-6.5%と
最大の下落率となっているが、大阪圏で-4.5%名古屋圏で-4.2%となっている。即ち都市部に
なればなるほど下落しているという事実である。ニュースでは福岡での下落率が最大になった
と大きく伝えているが、マクロ的には東京圏の下落が極めて大きかったというのが実情であっ
た。このトレンドは商業地でも同じで東京圏の下落が-8.9%と最大となり、地方圏の下げが少な
い。これらの理由の一つとして地方は先行して下落が始まったのに対して東京圏の下落は遅行
して始まったと見ることができる。東京圏の地価の下落がいつごろから本格的に始まったのか
を見てみよう。下図の表は国土交通省が別に発表している地価ルックと呼ばれる調査で下落率
をいくつかのセグメントに分けてそのトレンドを見ている。



 総合評価の表では下落率を0-3%、3-6%、6-9%、9-12%、12%以上の5段階に分類しており、調
査時点での数をカウントしている。いわゆるDIと似たような統計手法を採用しているが、平
成20年第3四半期、すなわち昨年の7-9月期まで6%以上の下落地点はほとんどなかったが、
10-12月の第4四半期に急増、今年の1-3月まで継続した。丁度、リーマンショックを境に市場
の調整が大きくなったというのが分かる。現状では0-3%未満の下落が46%となっており、見た
目では下落の一巡感がみられるが、上昇地点は皆無でありこれを市場の底打ちと取るのは
まだ早いだろう。東京圏の下落が大きいのは先ほど見たとおりだが、さらに23区に限って細
かく見てみよう。



 この図は前述の都道府県地価調査のデータを基に私が自分で作成した図だが、まず驚かさ
れるのはプライムエリアでの下落だ。23区平均で10.8%の下落に対して渋谷区で14.2%、
世田谷区で-13.8%中央区で-12.5%、千代田区で12.3%という具合に都心部になればなるほど下
落率が高い。こういった傾向は今までの地価調査で確認されなかった傾向であるばかりでな
く、プライムエリアがより下がるといった一般的に信じられている傾向のまさに逆の方向に
向かっているのがよく分かる。これも解説としては極めて平凡だが、リーマンショック
のようなグローバルな金融ショックの大きさが招いたものと考えられる。元々、地方圏での
土地取引が枯渇しているなかでショックが発生しても取引量がなかったことが地価の下落を
抑え、一方で流動性があり換金しやすい都心部が一挙にクラッシュしたと考えるのが妥当だ
ろう。

 ここから導き出される結論は意外なほど少ない。まずこのトレンドが収束しているのかそ
れとも継続しているのかという問いに関してはそれは金融システムしだいというこれもありき
たりな答えになるだろう。融資環境が厳しくマンションの新規着工が枯渇している中で土地
価格が需給の締りにより、底を打つといった主張が多いがどうもまゆつばな気がする。金融
環境が厳しいからこそ換金性の高い都心部に影響したと考えられるのなら、その状況に変化
がない中でどうして需給関係だけによって地価が下げ止まるだろうか? また需給論に関して
の反論はいくらでもできる。マンション供給が絞られており、買い手が増加するなどという
のは幻想でバイヤーである一時取得層のキャッシュフローの状況こそ考慮すべきだ。即ち、
雇用環境の悪化がとまらない現状では銀行ローンが組みにくい、むしろ雇用不安から人生で
最も大きな買い物をチャンスだと買い出動できるのはローンを組まずに済むキャッシュ
リッチなバイヤーのみである。いまだ地価動向には注視する必要はありそうだ。

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不動産の都市伝説 高層マンションと異常分娩

2009年08月30日 | 不動産
 買ってきた雑誌をふと読むでいると「不動産のこわーい話」という題材で特集記事
があった。怖い話は結構好きなんで読んでみると「胎児が死ぬ確率が高まる 高層マ
ンション症候群」とあった。読んだ瞬間「マジかよ、嘘つけ」と内心思いながら読み
進むと意外にも学術的なデータに基づいているらしい。内容はというと4ヶ月検診を
受けた妊婦を対象に居住階層別に調査、6階以上に住んでいる妊婦の異常分娩、流産
の比率が高くなる傾向があるというものである。

 元ネタになったのは東海大学医学部地域保健学、逢坂文雄氏が発表した論文(高層
居住と流産の関連性について 神奈川県公衆衛生協会との共同)でまずは異常分娩の
比率が階数に比例する傾向が見られること。流産の割合で見てみると一戸建て8.2%、
集合住宅2-5階5.6-6.9%、6階-9階18.8%、10階以上38.9%と10階以上の流産が
驚くほど高い。調査は1993年9月から95年6月にかけて横浜市の3保健所管内の3000サ
ンプルで回収率は53.8%だった。但し、いくつかの条件を考慮(居住期間他)して有効
サンプルは1191名。

 いろいろ調べて元ネタになったオリジナルの論文を読んでみたが、この調査はまず
対象にしているのが第一子、つまり初産を対象にしている調査であること。サンプル
数と期間を考慮しての有効性がどの程度あるのかは判断できなかった。ただ、読ん
だ雑誌には論文発表をした当人のコメントを載せており、10年間毎年調査を継続
しているという。発表した当人は高層マンションで必ず流産が高くなるとは言っていない
が、毎年同じ傾向があることは認めている。少し笑ったのは、名前を名乗らず明らかに
不動産会社と思しき人物から電話で嫌がらせを受けたことがあるというが、不動産業
者ってやつは..........

それにしても10階以上での流産の比率が39%というのは無視できない数字だ。統計的な
調査なので何が原因かは論文では言及していないが、高層階に住んでいることで妊婦
が余計外出しなくなり、運動不足になることや、それから起因する精神的なマイナス
要因、高層階ゆえの微かな震動の妊婦への影響などさまざまな複合的な要因があるの
ではないかと推測している。

 まあ、確かにこんな話が広まればマンション販売に悪影響がでるかもしれないので
それはそれで嫌がらせの一つでもしたくなるだろう。因みにこの逢坂氏だが、雑誌の
コメントでは20年以上前も前にシックハウス症候群に関して警鐘を鳴らした人物と
して紹介されているが、果たしてこれが20年後の常識となるかは時間が解決するだ
ろう。それにしても子供を生む適齢期の女性には嫌な話だ。


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不動産取得税の不服申立て

2005年03月09日 | 不動産
不動産を購入すると必ずついて回るのが税金。新築物件を購入した時には、ほとんど気にならなかった。何故なら、不動産価格に対して税金の比率がそれほど大きくないのが要因だろうか。一方、中古物件となるとそうはいかない。なにしろ中古の価格自体が安いので税金のウェイトも異なってくる。どうしてこうなるかといえば、税金の計算根拠になる登録価格と実勢価格が異なっている。しかも、バブル崩壊後、実勢価格は急落しているのにもかかわらず、登録価格がほとんど下がらないという自体から、オーナーを中心に不満が高まるのが現状。しかしながら、長いものに巻かれろとよくいったもので文句を言ってもほとんど取り上げられない。役人の論理と現実は偏るものである。

とはいっても、方法がないわけではない。不服申立てというやつだ。日本には行政不服審査法という法律があり、行政に対して文句がある場合の手続きが法律によって保障されている。

 昨年度取得した不動産の不動産取得税の納税通知が来た。物件は青森県にあり、取得価格は500万円であった。対して税額は20万円と取得価格の4%と高い。理由は簡単で税額の算定基礎となる固定資産登録価格が高いこと。通常、不動産取得税は建物と土地に分かれており居住用の土地の税額は2分の1になる特例があり、税額は1.4から1.7%くらいに収まる。物件の登録価格は土地、建物の実際の購入価格に対して評価額が70%以上も乖離しており、これが税額の高さにつながっている。

固定資産税、不動産取得税にかかわる行政訴訟は大半は原告敗訴となっているが、次の登録価格の是正アピールの意味を含め不服申立てをすることにした。まずは不動産取得税の管轄をしている青森県庁に電話する。不動産取得税が高いので不服申立てをしたいと告げると、早速、解説をし始める。やはり、こういった苦情は多いらしい。しかし、こちらもそれなりに調べているので釈迦に説法である。とにかく申立てをしたいと告げると結構、親切に教えてくれる。特に書式は決まっていないが、行政不服審査法では以下の項目を申立書に盛り込む必要がある。

(1)審査請求人の氏名及び年齢または名称ならびに住所
(2)審査請求にかかわる処分
(3)審査請求の関わる処分があったことを知った年月日
(4)審査請求の趣旨及び理由
(5)処分庁の教示の有無及びその内容
(6)審査請求の年月日

これら審査請求書は正副2通を作成し、捺印する必要がある。実際、申立書を送ったら、添削されて再度作ってくれといわれた。役人は法律に則っていない文書は受け取れないらしい。しかし、やるとなったら受け取れる文書になるように指導してくれるのはなんか変な気分だ。妙な話と思うかもしれないが、審査請求書を出すまでに県庁の担当者と電子メールで3回、電話で2回打ち合わせをした。提出後はさらにFAX、電話でやり取りして再提出した。文句言う相手に懇切丁寧の指導という感じ。しかし、これは各都道府県で対応が異なっているらしい。固定資産税は地方税なのでお国柄でやり方が違うようだ。

とりあえず、審査請求期限は税を請求されて60日間にしないといけないので再提出の文書は速達で配達記録で出した。文書を提出してから3週間位すると今度は県知事名で手紙がくる。青森県知事は三村という人らしい。初めて知る。文書提出時には「青森県知事殿」とかいた。内容は、県税事務所から弁明書が来たという内容。一応、県知事は中立との立場らしい。それに反論があるなら反論書の提出を1週間以内にしろという内容。県税事務所の内容はまあ、ライブドアのホリエモンじゃないけど予想の範囲内。反論書を出したほうがいいかとも思ったが、その反論自体、最初の申立てに書いてあるので同じ事をするのもばからしいのでやめた。因みに県税事務所の弁明書には「審査請求人の主張は否認する」という趣旨のことが書いてあって、はっきり言って全人格を否定されたような気になった。結果がでるのはまだ先だが、なんだか既に結論が見えている気もするんだけど。結果がでればまた報告します。

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固定資産税とは何か(2)

2005年01月09日 | 不動産
 ところで、先ほどのケースは極端かもしれないが、課税台帳価格と実際の価格の乖離は当然ある。文句をつけることはできないかといえば、答えはイエスであり、ノーである。何故、イエスかといえば、法律では不服申し立てを行うことができる書かれており、実際に不服を申し立てる人は多い。何故、ノーなのかといえばほとんど行政側から却下されており、裁判にいたったケースでは訴訟を起こした者ほとんど全員が敗訴している。以下は裁判所判例からの引用。(H 8. 4.22 福島地裁 平成03(行ウ)11 固定資産税審査決定取消請求事件)

地方税法(以下「法」という。)は、固定資産の課税標準となる固定資産の価格は、適正な時価によるものとして(三四一条五号)、これを市町村長が決定して(四一〇条)固定資産課税台帳に登録し(四一一条)、関係者の縦覧に供しなければならない(四一五条)と定めている。その結果、固定資産の納税者が当該登録価格に不服のあるときには、各市町村に設置された固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができるところ(四三二条)、固定資産評価審査委員会は、市町村の住民で市町村税の納税義務がある者のうちから、議会の同意を得て市町村長が選任した委員によって構成されており(四二三条)、審査の申出があったときには直ちにその必要と認める調査、口頭審理その他事実審理を行い、その申出を受けた日から三〇日以内に審査の決定をしなければならず(四三三条一項)、審査申出人の申請があったときは、特別な事情がある場合を除き、口頭審理の手続によることと定められている(同条二項)。

 では裁判所の判断はといえば、残念ながらほぼ100%行政側の意見を支持している。地方税法では「当該固定資産の価格により難いとき」は課税台帳の価格を修正することができると書かれているが、ほとんどの訴訟は門前払いになっている。以下に裁判所の見解を引用する。(H13. 7.17 千葉地裁 平成12(行ウ)45 不動産取得税課税処分取消請求事件)


法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」の意義等について
 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産について法が当該登録価格によって不動産取得税の課税標準となるべき価格とするのを原則と定めた趣旨は、固定資産税の課税対象となる土地及び家屋の範囲は、不動産取得税の課税対象となる不動産とほぼ同一であり(法73条1号ないし3号、341条2号、3号)、その価格も同じく適正な時価をいうものとされていること(法73条5号、341条5号)などから、両税における不動産の評価の統一と徴税事務の簡素化を図ったものと解することができる。
 すなわち、固定資産税の課税標準は、賦課期日における固定資産の価格で、固定資産課税台帳に登録されたものとされているが(法349条)、法は、固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにするため、市町村長等が行う固定資産の評価及び価格の決定は総務大臣により定められた評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)に基づいて行うものとし(法388条以下参照)、決定された価格について固定資産税の納税者に不服申立ての機会を与える(法432条以下参照)などの規定を設けている。そして、法は、固定資産のうち不動産については、税負担の安定と行政事務の簡素化を図る見地から、原則として3年ごとにその評価を行い、価格を決定した上、固定資産課税台帳にその価格を登録し、第2年度及び第3年度については、原則として、基準年度の登録価格をもってその登録価格とみなすこととしつつ、ただ、第2年度、第3年度において、「地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情」等が生じたため、基準年度ないし第2年度の価格によることが不適当、不均衡となる場合には、これによらずに当該不動産に類似する不動産の基準年度の価格に比準ずる価格によることとしている(法349条2項、3項参照)。
 このようにして評価、決定され、固定資産課税台帳に登録された価格は、基準年度の固定資産税の賦課期日における不動産の時価を示すものというべきであるが、不動産取得税の課税上、不動産の評価の統一性を確保し、また、極めて多数にのぼる不動産の取引等ごとに当該不動産の価格を評価,決定することの煩雑さを回避し、簡易で効率的な徴税を図るという見地からすれば、この登録価格を当該不動産の取得時の時価として取り扱うことは課税技術的に合理性があり、それによって税負担の公平を損なうなどの支障が生ずることは通常は考えられないことから、法は、都道府県知事が不動産取得税の課税標準である不動産の価格を決定するについては、固定資産課税台帳に当該不動産の価格が登録されている場合には、原則として、同登録価格によりこれを決定することとしたものと解される。
 このような法の趣旨及び固定資産税における不動産の評価及び価格決定の仕組みに照らすと、法73条の21第1項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、当該不動産の評価が行われ、その価格が決定された年度の固定資産税の賦課期日後に、当該不動産につき、増築、改築、損壊、地目の変換その他特別な事情が生じ、その結果、同登録価格が当該不動産の適正な時価を示しているものとみて、同登録価格をもとに不動産取得税の課税標準額を決定することが公平な税負担という観点から見て看過できない程度に不合理と認められる事態に至った場合をいうと解するのが相当である。


さらに駄目押しで引用(H10. 1.27 東京地裁 平成08(行ウ)263 不動産取得税賦課処分取消請求事件



第三 当裁判所の判断
一 法七三条の二一第一項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」の意義等について
1 前記第二の一1記載のとおり、法が、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、原則として、当該価格により当該不動産の取得に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとした趣旨は、固定資産税の課税対象となる土地及び家屋の範囲は、発電所及び変電所が家屋に含まれることを除けば、不動産取得税の課税対象となる不動産と同一であり(法七三条一号ないし三号、三四一条二号、三号)、その価格も同じく適正な時価をいうものとされていること(法七三条五号、三四一条五号)などから、両税における不動産の評価の統一と徴税事務の簡素化を図ったものと解される。
2 すなわち、固定資産税の課税標準は、賦課期日における固定資産の価格で、固定資産課税台帳に登録されたものとされているが(法三四九条)、法は、固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格が適正な時価であるようにするため、市町村長等が行う固定資産の評価及び価格の決定は自治大臣により定められた評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(固定資産評価基準)に基づいて行うものとし(法三八八条以下参照)、決定された価格については固定資産税の納税者に不服申立ての機会を与える(法四三二条以下参照)などの規定を設け、さらに、このようにして固定資産課税台帳に登録された基準年度の価格についても、第二年度、第三年度において、「地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情」等が生じたため、基準年度ないし第二年度の価格によることが不適当、不均衡となる場合には、これによらずに当該不動産に類似する不動産の基準年度の価格に比準する価格によることとする(法三四九条二項、三項参照)などの規定を設けている。
 そして、右のようにして評価、決定され、固定資産課税台帳に登録された価格は、基準年度の固定資産税の賦課期日における不動産の時価を示すものというべきであるが、不動産取得税の課税上、不動産の評価の統一性を確保し、また、極めて多数に上る不動産の取引等ごとに当該不動産の価格を評価、決定することの煩雑さを回避し、簡易で効率的な徴税を図るという見地からすれば、右登録価格を当該不動産の取得時の時価として取り扱うことは課税技術的に合理性があり、それによって税負担の公平を損なうなどの支障が生ずることは通常は考えられないことから、法は、都道府県知事が不動産取得税の課税標準である不動産の価格を決定するについては、固定資産課税台帳に当該不動産の価格が登録されている場合には、原則として、右登録価格によりこれを決定するものとしているものと解される。
3 右の法の趣旨に照らすと、法七三条の二一第一項ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」とは、当該不動産につき、固定資産税の賦課期日後に増築、改築、損壊、地目の変換その他特別な事情が生じ、その結果、右登録価格が当該不動産の適正な時価を示しているものとみて、右登録価格を不動産取得税の課税標準とすることが公平な税負担という観点からみて看過できない程度に不合理と認められる事態に至った場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成四年(行ツ)第一九六号平成六年四月二一日第一小法廷判決・判例時報一四九九号五九頁参照)。
4 法七三条の二一第一項ただし書の趣旨が前示のとおりであるとすると、右ただし書にいう「特別の事情」には、当該不動産自体に物理的変動があった場合はもちろん、都市的諸施設の整備など当該不動産の価格に直接影響を与えるような周辺環境の著しい変動があった場合が含まれるほか、賦課期日後に生じた地価の著しい下落といった事情も含まれ得るものと解されるが、地価の下落により当該不動産の取得時の時価が登録価格を下回ったというだけでは、右ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」に該当するということはできず(最高裁昭和四六年(行ツ)第九号昭和五一年三月二六日第二小法廷判決・判例時報八一二号四八頁参照)、賦課期日後の地価の下落により、当該不動産の取得時における時価とその登録価格に乖離が生じ、それが公平な税負担の観点からみて看過できない程度に達した場合に初めて、右ただし書にいう「当該固定資産の価格により難いとき」に該当することになるものというべきである。
5 また、前示のとおり、法七三条の二一第一項ただし書にいう「特別の事情」は、固定資産税の賦課期日後に生じた事由に限られるべきであるが、右にいう「固定資産税の賦課期日」とは、当該不動産の評価が行われ、その価格が決定された年度の固定資産税の賦課期日をいうものと解するのが相当である。けだし、法によれば、固定資産のうち不動産については、税負担の安定と行政事務の簡素化を図るため、原則として、三年ごとにその評価を行い(法四〇九条)、価格を決定した上(法四一〇条)、固定資産課税台帳にその価格を登録するものとされ(法四一一条一項)、第二年度及び第三年度については、原則として、基準年度の登録価格をもってその登録価格とみなしているのであって(同条二項)、このような固定資産の評価及び価格決定の仕組みに照らせば、法七三条の二一第一項ただし書に該当する事態が生じたか否かについては、当該登録価格が決定された年度の固定資産税の賦課期日後の事由を考慮すべきものとするのが、最も合理的であると考えられるからである。
6 なお、これまで説示してきたところは、当該不動産に係る固定資産課税台帳の登録価格の決定自体に重大かつ明白な瑕疵がない場合を前提とするものである。後述するとおり、当該登録価格の決定自体に当初から重大かつ明白な瑕疵があり、これを無効とすべき場合には、法七三条の二一第一項ただし書の規定をまつまでもなく、当該登録価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定することは許されないものというべきであるが、当該登録価格が基準年度の固定資産税の賦課期日における当該不動産の適正な時価を上回っているというだけでは、直ちに当該登録価格の決定が無効となるものではないというべきである。


要するに駄目って事ですね。お上には逆らえないと。...それにしても裁判所の文章というのはなんでこう分かりにくいのかね。
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固定資産税とは何か(1)

2005年01月09日 | 不動産
 不動産を取得するとかかる税金としてまず挙げられるのは不動産取得税、固定資産税、都市計画税である。そのうち、不動産取得税は都道府県税となっていて、固定資産税、都市計画税は市町村税である。すなわち、取得した土地は取得時に都道府県にそして毎年、市町村に固定資産、都市計画両税を支払う形になっている。不動産を所有して初めて人は税の重さを知るといっても良いのではないだろうか。それらの税金に関してどうなっているのかを見てみよう。

(固定資産税)
固定資産税とは何か。一般の人はなんとなく理解していると思うが、はっきりその定義はと聞かれると答えに窮するだろう。なぞなぞではないので答えを言うとこうなる。

固定資産税は、固定資産(土地、家屋及び償却資産)の保有と市町村の行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、資産価値に応じて、毎年経常的に課税される物税であるというのが正解。要するに財産税であるという位置づけである。固定資産税と似たものに不動産取得税というのがある。不動産取得税は不動産を取得した時点で課税される一度きりの税だが、これもじつは財産税の一つで固定資産税と同じ正確を持っている。実際のところ、固定資産税、不動産取得税に対する行政訴訟が多いことは知られているが、結構多くの訴訟人が固定資産税を財産税、不動産取得税を不動産の流通税であると理解しているケースがあるが、裁判所の判例でも両者とも財産税という位置付けか定着している。また固定資産税はその歴史的背景をみると、昭和25年のシャウプ税制により、それ以前の地租、地租附加税、家屋税、船舶税等をとり込んで成立したものであるという事情が存在する。固定資産税収入の構成割合を資産別にみると、概ね土地40%、家屋41%、償却資産19%となっている(平成14年度)

 固定資産税を支払う義務のあるものは固定資産を所有するものであることは明白であるが、台帳課税主義といって毎年1月1日の固定資産台帳に載っている所有者に課税される。したがって、AさんがBさんから土地を1月2日に購入したとしても固定資産税を支払うのはBさんになる。不公平に聞こえるが、実際の売買では固定資産税を日割りしてAさんとBさんは売買価格を調整するのが一般的になっている。固定資産課税台帳には、納税義務者である所有者のほか、その課税標準である価格等についても登録されており(地方税法381)、 この固定資産課税台帳に登録された価格が税の基準になる。

ここで固定資産税の計算に触れておこう。とくにこの計算が訴訟の種になっている。なぜなら過去10年を見ると不動産の価格が下落し続けているからである。一般の人は売買価格で決められていると思うが、実は結構複雑で問題の種となっている。固定資産台帳に載っている価格は原則として「適正な時価」が載っていることになっている。この「適正な時価」というのが曲者で行政訴訟の一番のキーポイントである。厳密な定義は以下のとおりとなる。

「適正な時価」とは、正常な条件の下において成立する取引価格(独立当事者間の自由な取引において成立すべき価格)をいうものとされている。なんだ、やっぱり売買価格じゃないかと思うとそれは違う。「適正な時価」、すなわち、固定資産税の評価額の具体的な求め方については、総務大臣が告示した固定資産評価基準(昭和38年12月25日自治省告示第 158号)に定められているとなっていて、簡単にいえば市町村である一定のルールに従えばそれで良いですよという話である。

問題はこれから。土地及び家屋については、その課税標準である価格を原則として3年間据え置くことになっている。即ち、土地及び家屋 に対して課する固定資産税の課税標準は、一定の年度を基準として、基準年度においてはその年度の賦課期日現在における価格で固定資産課税台帳に登録されたものとし、基準年度の翌年度(第2年度)及び基準年度の翌々年度(第3年度)においては、原則として新たな評価を行わず、その基準年度の固定資産税の課税標準となった価格で固定資産課税台帳に登録されたものとする(地方税法 341Ⅵ~Ⅷ、349①~③)。

 つまり、基準年度から3年間は台帳の価格は変わらない。仮に3年前に3000万円で売買されていたとして、地価が下落して2年後に2000万で購入したとしよう。しかし、固定資産課税台帳には3000万円とかいてあるのでこれが基準となり、税額もそれを基礎数字として使用することになる。直近では平成15年に基準が変更になったので、平成18年まで価格は変わらない。

 固定資産税の税率は標準税率で1.4%となっている。この標準というのも曲者で、実は各市町村の裁量権があり、1.6%なんてのもある。でも、大したことないじゃないかとお思いの方。税金をなめてもらっては困ります。先ほど3000万円なら1.4%なら42万円。実際に2000万円で購入して、それを賃貸に回しているとしよう。6%で回ると言われて賃料が年間120万円。当然、全額キャッシュで買う人は少ないからレバレッジを効かせるとして元利返済後のネットキャッシュフローがいいとこ2.5%でしょう。そうすると手取り50万で42万取られたら、あなたはどうします。

あまり脅してもしょうがないので結論を言うと、新築住宅であれば税の軽減処置があります。一定の要件を満たす住宅に関しては、課税台帳の金額の6分の1まで軽減されます。従って、3000万円なら、500万円に低下して税金も7万円に下がることになる。問題の本質は固定資産の税額の大小と言うようりも、固定資産税の計算根拠とする課税台帳にのる価格に恣意性があるという点に尽きる。とりわけ、裁判で争われた大半のケースでは争点になっている。

 紙面も尽きたので次回に続きます。
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不動産所得と確定申告、その経済的な効果(2)

2005年01月06日 | 不動産
 さて前回からの議論の続きであるが、新築マンションを購入し、予定通り確定申告により、56万円の税金を安くすることに成功したわけであるが、問題は次年度に所得と税金がどうなるかという点である。計算の前提として、給与所得は前年と同じ、賃料も同水準としよう。まず不動産所得の計算をする。2年目の不動産所得の大きな違いは取得にかかる経費の違いである。既に取得している状態であるので、仲介業者に支払う手数料などは2年目には発生しない。不動産取得税などの租税公課も初年度限りである。そして変化するのは減価償却費である。
減価償却に関してはあまり詳しく述べなかったが、現在の税法では建物の減価償却は47年の定額法が原則である。しかし、税務署申告すれば建物の付属設備(電源設備、キッチン、浴室等)は定率法を適用できる。ほとんど税務かんする知識がない人は業者に言われるまま購入し、その後はほったらかしにされるケースが多い。また税務に関しても相談にのるといっている業者でも、定率法の適用に関して親切に教えてくれるものは少ないようだ。

 前回のケースを使って2年目の減価償却費を計算する。まず、償却の基礎となる対象資産額を計算する。

減価償却対象資産  3600万円x50%=1800万円(建物合計)
建物本体      1800万円x70%x0.9=1134万円
付属設備      1800万円x30%=540-(540x0.142)=463.3万円(初年度は540万円)

償却額は 定額法(47年)では0.022、定率法(15年)では0.142をかけます。

償却額 = 1134x0.022+463.3x0.142=90.7

不動産所得 = 234(賃料)-10(租税)-90.7(償却)-33(金利)-30(その他経費)= 70.3万

租税、償却が減少。経費も減少して2年目は70.3万円の黒字。とすると2年目の所得税を計算すると、所得税で446万、住民税で244万円となり、合計の租税負担は690万円となり、なんと初年度と比較して125万円の増加、購入前と比べても66万円の増加になってしまう。しかも、不動産からのキャッシュフローは年間31.5万円しかなく購入前と比較したネットのキャッシュフローは35万円の赤字である。1200万円投資して実質のリターンがマイナスになるのでは何のために資金を投じたのか分からなくなる。計算は示さないが、3年目の不動産所得は経費が変わらなければ70万円からさらに増える。これは付属設備の償却が定率法であるから、毎年費用が逓減する。

2年目を赤字にする方法はあることにはあるが、問題が多い。第一にはその他経費を多く計上することである。但し、税務署に否認されてしまっては元も子もない。もう一つは不動産を追加購入する。これによって経費が大幅に増加し、2年目の黒字も飛ぶ。かりに同じような物件を購入すれば、購入物件で120万円の赤字となるので最初の物件の黒字と合わせても50万円程度の赤字になる。但し、その後の3年目にまた黒字となる。3年目は2件とも黒字となるので利益が150万円を超える。税率50%(所得税、住民税)で考慮しても税の負担は70万円以上となる。不動産の実際のネットキャッシュフローは60万円なので10万の赤字。では、3件目といった感じで毎年赤字にするには毎年の不動産の購入が必要である。

中古不動産の記事でも指摘したが、結局、不動産投資を行いかつ借入をおこしながら、税金とキャッシュフローを改善するためには物件のリターンが一番重要である。中途半端なリターンではキャッシュフローがマイナスとなる。しかし、当初考えていた税負担減は1年程度で消えてしまう。このように考えるとやはりうまい話はそんなに転がっていないというのが結論であろう。投資家は不動産であろうと、株式であろうとリターンをベースに投資判断をするべきであるというなんでもない結論に落ち着く。


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不動産所得と確定申告、その経済的な効果(1)

2005年01月06日 | 不動産
 不動産を投資目的で取得する場合、もしくは投資目的で業者に勧誘される場合の常套句は「不動産所得を赤字にすることによって税金をするなくすることができる」というものがほとんどである。では、どの程度の効果があるのか、そしてその効果はどの程度続くのかという点を不動産投資の意思決定をする前にシュミレーションできる人は少ない。ここでは新築物件を購入したという前提に立って、その効果をシュミレーションするのが目的である。

(前提)

 まず以下の前提でシュミレーションを行う。典型例とは言えないかも知れないが、計算の単純化の為、以下の投資家を想定する。年齢35歳、外資系金融機関に勤め年収2260万円。妻子なく独身の設定。年収が高すぎるかもしれないが、投資目的の不動産取得はこのような例が比較的多いと考えられる。なぜなら、支払う税金に嫌気がさしている人が多いからである。また年収が2000万円を超えている為、彼は確定申告を行っており、痛税感が高い。総所得が中途半端なのは課税最高税率である37%の最低限に到達する水準である。

(不動産取得前)

ここで、税金について少しおさらいしておこう。給与所得者の税の計算は簡単である。まず、総所得2260万円に95%を掛け合わせ、170万円を差し引いた金額が「課税所得」となる。蛇足だが、このケースでは受取キャッシュフローから270万円を差引いた金額1977万円が課税所得である。270万円は企業で言えば必要経費とみなすことができる。

課税所得 = 総所得x95% - 170万円   ->  2260x0.95 - 170 =1977万円

所得税の計算は各種控除を差引いた後、税額表から計算される。ここでは基礎控除38万円、社会保険料120万円、生命保険料控除10万円の合計168万円を控除すると最終的な課税所得額は1809万円となる。所得税の税率は37%を掛け合わせ、249万円を差引くから、420万円。住民税は13%に31万円の控除で204万円。合計の税額は624万円となる。

(不動産の取得)

ここで、彼は都内の新築物件を購入するとしよう。投資目的で購入し、賃貸に回すことを前提にする。彼の最大の目的は節税をすることである。都内のマンション、どこでも良いが例えば山の手線内の駅から7-8分、という好立地で部屋も45㎡と比較的広いものとしよう。ワンルーム投資にしないのは理由があるがそれは後で述べるとする。価格は3600万円、彼がこれを決めた理由は立地条件があり、さらに賃貸利回りが6.5%で回ると予想されたからである。実際には消費税が90万円別途かかり、さらに業者、司法書士、銀行ローン等の手数料がかかるため、実際の支出はこれよりも多い。彼は自己資金を1200万円投じ、残りの2500万円を銀行ローンとした。
 彼は物件価格の33%の自己資金を投じることによって、その3倍の価格の資産を購入した。これによって彼のレバレッジ効果は3倍となり、投下資金利回り(CCR=Cash On Cash Return)は以下の通りとなる。

 CCR= 賃貸収入/自己資金 -> 234万(3600x6.5%)/1200万 = 19.5%

無論、これは借り入れコストをゼロとおいた場合で世の中それほど甘くない。銀行ローンは2500万円、期間2年固定金利、返済期間18年、元利金等返済、ボーナス返済なし、金利2.0%とした。ボーナス返済がないのは計算の簡便化の為であり、期間が中途半端なのは彼が早期にローンを返済し、かつネットのキャッシュフローをプラスにしようとしたからである。毎月13万7920円、年間で165万5千円の返済となる。また、マンションの管理費、修繕積立金が月に2万5千円、年間30万円かかる。固定資産税は7万円と暫定的に試算すると、ネットのキャッシュフローは以下の通り。

ネットキャッシュフロー = 234万円(賃貸料) - 165.5万(元利返済) - 37万(諸経費)=31.5万円

ざっと毎月2.6万円の黒字になる。ここで再度CCRを計算すると2.6%になる。これだけなら、投資してもあまり意味がないように見える。真の目的は不動産所得を確定申告して実質のキャッシュフローを改善するのが目的である。


(不動産取得後の確定申告、初年度)

計算を簡便にするために不動産の取得・引渡し、賃貸が1月1日に終了したと仮定しよう。不動産所得の計算は総収入から経費を引くだけでよい。但し、不動産は建物が建っていることから減価償却という非現金費用が発生する。ここでは土地と建物の比率を50:50とする。また、取得にかかった費用は消費税等の租税公課で120万円、金融機関、業者への手数料が100万円とする。土地は減価しないので建物の減価償却は47年(係数0.022)、さらに建物本体と付属設備に分け(建物:付属設備、7:3で計算)、付属設備は定率法を適用(税務署への事前申請が必要)である場合のトータルの減価償却コストは初年度で109万円。かかった金利コストは年間33万円(建物にかかる金利)であると。所得金額は

不動産所得 = 234(賃料)-120(租税)-100(手数料)-101(償却)-33(金利)= -120万

となる。これを給与所得と損益通産すると新しい税負担額は以下の通りとなる。

所得税 =(2260x0.95 - 170)-120(不動産所得)=1857 - 168(各種控除)=1689x37%-249=376万円
住民税 =1689x13%-31万=189万円

合計の租税負担額は565万円となり、税額が59万円減少する。これにネットキャッシュフローを加えた金額が合計の経済効果で年間では890.5万円円。実質のCCRは7.54%になる。今時の低金利で7%を実現できるのは少ないと喜ぶところだが、実はこれには大きな落とし穴がある。それは不動産所得が来年も続くということであり、減価償却は定率法を選べば次年度は減少し、大きなマイナス効果を持っていた諸経費は次年度に大幅な低下をみる。これについては次回で見てみよう。

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中古不動産投資とリスク・リターンの実態

2005年01月03日 | 不動産
 理論だけでなく、投資理論の実践は重要である。また実際のリスク・リターンプロファイルを実感することが投資活動にとって極めて重要であるのも確かである。外貨預金、国内株式、外国株式、外国債券、商品先物、国内外REIT等への投資を通じてポートフォリオ理論の実践に努めていたが、不動産投資を行ったのは3年前のことである。

 当時の私は不動産に関しての知識がほとんどなかったものの、さまざまなアセットクラスの投資を行っていることから、普通の人よりもましな投資ができたと考えているが、それでも新築物件への投資は失敗であったといえよう。最初の物件は利回りがグロスで6.9%あり、賃料収入からコスト、税金、元利返済のを差し引いてもプラスが残る形となったので当時の私はうまくいったと判断していた。しかしながら、その後行中古不動産投資と比べるとなんとリスク・リターンプロファイルが貧弱であったかを思い知ることになる。 

 不動産投資でよく見かけるのは利回り5%程度で高利回りを歌ったものがものが多いが、実際には管理費・修繕積立金、固定資産税、都市計画税などのコストを考慮すると実質の利回りは2%を下回ることになる。また、大抵ローンを組むことにより、元利返済が伴うことから実際のキャッシュフローはゼロ近くになることが多い。不動産投資で成功するには利回りは最低でも10%必要で、仮にレバレッジをかけるとすれば15%のグロスリターンがないと経済的な効果は極めて低くなる。

 私が今回投資を実行したのは岡山県にある中古マンションである。場所的には岡山駅からバスで25分、東岡山駅からは徒歩で18分である。これだけを聞くとなんと僻地にと思う方がおられるかもしれないが、実は地方は首都圏と違って車社会であることに注意すべきである。したがって、バスで25分というのは車なら10-15分程度であり不便さはほとんどない。これは実地のフィールドテストを行って実感したものである。

 岡山県のマンションのケースでは賃料57,000円(年間賃料684,000円)、投資額370万円でグロスのリターンは18.48%であった。これだけ見るとかなりの高利回りであるが、管理費・修繕積立金で169,920円、固定資産税、賃貸管理費を差し引くとNOIで405,634になる。これでみると実質利回りは10.96%に低下する。

 債券と異なりキャッシュフローの安定性から言えば当然劣るため、債券とのイールドスプレッドが5%もないような物件、すなわち新築物件は絶対に避けるべきである。岡山のケースでみると上記の実質利回りは空室率が100%の場合である。もし1ヶ月の空室が発生すると利回りは9.5%に低下する。2ヶ月の空室ではさらに8%まで低下する。そして1ヶ月ごとに空室が続くと利回りは150bpずつ低下し空室が半年続くと利回りは2.18%。さらに2ヶ月続くと利回りはマイナスとなるのである。これは固定的経費である管理費・修繕積立金・税などが物件価格の8%程度年間かかるためである。

グロス利回りが18%の物件でさえこうなるのであるから、グロス利回りが5%程度の新築物件の投資リスクは極めて大きいことになる。但し、中古物件との違いは管理費・修繕積立金が中古と比較して安いことが決定的な違いである。これは竣工して日が浅い物件ではかかる管理費が安いこと。また修繕積立金に関しても大規模修繕が近い将来ないことなどから割安に設定されているためである。しかしながら、新築物件では空室率の少しの低下が利回りの劇的な低下を招くことは必至で、3ヶ月程度の空室で実質利回りがマイナスになる可能性は高いといえる。
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