豪州のREIT市場はリーマンショック後の株式暴落で大きく調整し、
その後の市場混乱で株式市場よりも下落するというかなりのボラティ
リティのある市場だ。要するにかなりリスクのある市場であるという
こと。財務基盤の弱いREITが多く、スポンサーの信用力もそれほどな
いのが多い。実際に破綻したREITが多く出たのも豪州市場である。
2008年5月を100とすると2009年の3月には70%以上も
の暴落となった。その後、豪州REIT市場は14億豪ドルの資本増強に
成功し、なんとか回復しつつあるのが現状だ。
Macquarie Office Trust(MOF)は豪州の投資銀行であるマコーリー
グループが運用するREITで、同社は3つのREITを運用している。MOF
はオフィス専業REITで豪州を中心に不動産を保有・運用している。
(資産内容)
MOFは40箇所のオフィスビルを所有し、500以上のテナントを有して
いる。豪州36%、アジア54%、欧州8%、米国2%という地域分散となって
いてリース契約の平均年数が4.8年、資産の稼働率は91%である。
賃貸収益は185.8百万ドル、一株当たりの利益は5.64セント分配金は
3.75セントとなっている。総資産44.3億ドル(3531億円)一株当たりの
純資産は49セントとなっており、現在の株価24セントと比較すれば
純資産倍率は0.48倍となる。分配金利回りは15.6%。
上位テナントを見るとJPモルガン(9.5%)、豪州政府(8.8%)、AT&T
(6%)、マコーリーグループ(3%)、ウェルズファーゴ(3%)、ベライゾン、
DeTe Immobilien(ドイツテレコム子会社)、シティオーストラリア、
Telstra(豪州大手通信会社)などとなっており、顧客の70%が大手企業、
政府となっている。
(リファイナンス問題)
他の豪州REITと同じくリファイナンスの問題が当法人を直撃、2009
年到来の14億豪ドルの償還問題で株価は大きく下落。5億ドルの第三
者割当増資及び新株発行、4.6億ドルの資産売却、配当の抑制など
で10億ドルを捻出。ギアリング(LTVに相当)は41%に低下した。さらに
9億ドルのシンジケートローンの延長、5億ドルのCMBSのリファイナンス
などにより問題の解決に当たるとしている。しかしながら、大規模な
稀釈化により配当は下期に1.5セントに減少。鑑定評価減で556百万
ドルの損失を計上した。
(成長戦略)
正直言ってやばさ半分である。収入の1割弱を豪州政府から得ている
というのはなんだか安心できそうな話だが、基本的にアングロサクソン
の契約はかなりシビアで関係があるからといって潰れないという保証は
全くない。今期決算は(MOFは6月決算)は1株当たりの利益は4.14セント
に低下する見込み。配当はいくらになるかわからない。当法人にとって
成長戦略というよりティフェンス戦略といったほうが良いだろう。いか
に生き延びるかという点が重要で、生き延びれば株価は純資産まで上昇
してもおかしくない。なお、外国人投資家にとって豪州のREITは配当に
関してはうまりうまみがない。なぜなら、源泉税率が30%と高いことから
配当利回りは7掛けとしなくてはならない。また上図にあるとおり、負債
償還スケジュールを考えると2012年に大きなヤマ場があり、まだ予断を
許さない状況だ。但し、生き残るという確信を投資家が持てば株価は急
騰するだろう。実は持っている。しかし評価損大。