Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

海外のREIT投資(8) CPN Retail Growth(タイランド)

2009年09月30日 | 海外REIT研究

 タイのREITはいくつかの点で特徴があり、投資対象としても検討してもよいと考えられ
る。まず第一にその地理的な条件でASEAN諸国のほぼ中心に位置しておりカンボジア、
マレーシア、ミャンマー、ラオスと接しておりシンガポール、インドネシア、中国、インド等
とも地理的に近い。また熱帯気候ながら勤勉な国民性など日本とも共通する要素がある。
 タイには日本の自動車産業のアジアの生産拠点があり、タイを経由してアジア全域に
輸出が行われており、経済的にも重要な位置を占めている。タイと日本のREITの違いは
主として法的な規制がタイの方が厳しくなっているのが特徴だ。タイのREITは日本と異な
り、企業形態をとっておらず、形式としてはClosed-endのMutual fund即ち投信ファンドの
形をとっている。またレバレッジ規制が厳しくNAVの10%以上の借入れが禁止されている
のも特徴でアジア地域で最もレバレッジがかかっていないREIT市場である。
 それが逆にリーマンショックの金融危機の影響を最小限に抑えた効果もある。

 CPN Retail Growth Leashold Property(以下CPN)はタイの商業施設に特化したREITで、
タイの中心街にある大規模商業施設を2つ保有運営している。2005年8月にタイの証券取引
所に上場したREITで運用SCB Asset Management、プロパティマネジャーとしてCentral
Pattana Public Companyが当ファンドの運営に関わっている。ティッカーはCPNRF。



 保有する商業施設は2つありCentral Plaza RamaII、とCentral Plaza Ratchada-Rama III
で賃貸面積はRamaIIで93,338m2、RamaIIIが39,975m2の合計で約13万m2。総資産は113億
バーツ(316億円) 写真の通り大規模ショッピングモールが主体の商業REITだが、ロケーション
は悪くない。バランスシートは健全だ。LTVは5%。即ち、ほとんど借入れがないのが現状だ。
これは前にも述べたようにタイの法規制がREITに対して厳しく、レバレッジをほとんどかけら
いことからきている。少なくとも日本並みにレバレッジをかけられるようになれば分配金
利回りはかなり上がるのだが、現在の所、変更の可能性はないと考えてよいだろう。



(業績)

 業績についてはまず過去3四半期分のグラフを見てもらおう。



 業績は安定している。上の図は賃貸収益、純投資収益、分配金の過去3四半期の図になって
いるが、賃貸収益は直近四半期で微減、分配金に関しては同じトレンドとなっている。繰り
返しとなるが、BSの構造が極めてシンプルなため賃貸収益のボラティリティのみが業績の変
動要因となり、他のREITのように金融市場の変動による金融費用のボラティリティがほとんど
ないというのが他のREITと大きく異なる点であろう。業績が比較的安定しているもう一つの
理由は契約形態からくる。下図でみるとわかるがRamaIIの固定賃料契約が52%、RamaIIIでは
78%が固定賃料となっており、全体の固定賃料比率が比較的高い。但し、RamaIIIは固定賃料
契約の比率が高いが収入に占める割合が低く、歩合賃料がかなり大きいと想像される。



 タイで気をつけなければならないリスク要因としてはやはり政治情勢だろう。日本と異な
り、軍部によるクーデターが何回も起こっており、そのリスクは考慮する必要がある。とは
いっても前回のクーデターの際にも影響はあったものの特段の悪影響があったわけではなく
そういう意味からしてもクーデターで株価が下落したときはチャンスかもしれない。稼働率
は直近4四半期を見るとRamaIIIで低下傾向にあるが、全体の稼働率は98.1%と高水準を維持
している。特に賃貸面積の大きなRamaIIの高稼働が貢献している。



 当ファンドの契約形態をさらに細かく見てみよう。まずリース期限プロファイルを見てみ
るとほどよく分散しており、2012-2024年の比較的長期の契約が存在していることから、固
定賃料契約と合わせてキャッシュフローのボラティリティーの最小化に貢献している。



 テナント構成比については取り立てて問題はないだろう。これも適度に分散されていて、
マクロ的なリスクを除けば特段のリスク要因にはなりにくい。但し、商業施設であることか
ら当然タイ経済の影響を受けざるを得ないが、そのリスクは投資家は当然とるべきで、それを
含めた投資判断が要求されることはいうまでもないことだろう。



(成長戦略)

 タイのREITに関しては成長戦略として考えられるのはまず内部成長だ。タイの法規制によ
り、レバレッジに制限がかけられていることから借入れを増加させて物件を取得することが
できない。従って、成長のフォーカスはどうしても内部成長に重点をおかざるを得ない。可
能性として考えられるのはやはりエクイティを行って外部成長を目指すことだが、現在の環
境では困難だろう。タイのREITはこのようなレバレッジの制約からグローバルな投資家から
あまり注目されていない。むしろ、中長期的な観点で考えると法規制の厳しい現在に投資し
ておいて、将来レバレッジ規制が外れた場合にはバリュエーションが大きく上昇する可能性
もある。但し、やはり基本は業績で抑えておくのが第一であり、現在のマクロ経済環境の影
響はやはり受けている。下図はRamaII、IIIの交通量を調べたものだが、経済環境の悪化に伴
い鈍化していることが分かる。レバレッジが効かない分、経済状況に細心の注意を払う必要
があることは言うまでもない。



 現在のNAVは一口あたり10.4バーツで直近の株価9.2バーツと比較するとディスカウントは
ほとんどない。リーマンショック後に株価が大きく下がってその後急回復したことによるが、
やはりレバレッジが低いと市場が正常化すると純資産価値にさや寄せされやすい。配当利回
りは直近で9.7%。株価的にはフェアバリューだろう。それでも将来のレギュレーションの変
更などを考慮するとタイのREITには少しは投資しておきたい。

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東急リアル・エステート投資法人(8957)

2009年09月28日 | 国内上場REIT


 本投資法人はその名の通り東急がメインスポンサーとなっている商業施設・オフィスに特化
型で、資産運用会社である東急リアル・エステート・インベストメントは東京急行が60%、東急
不動産40%の比率で出資している東急グループのREITである。上図の通り東京に集中しており、
特に東急沿線沿いなど東急グループのパイプラインサポートが受けられるエリアに展開してい
る。投資対象地域は首都圏に限定されており、東京都心5区に加え、東急沿線地域に85%を投資
することをターゲットとしており、オフィス:商業施設の投資割合を6対4と定めて運用してい
る。実際の投資ポートフォリオは直近決算でオフィス58.4%、商業施設41.6%となっている。ま
た現在、狭義の東急沿線地域の投資は60%程度となっており上場時よりも低下しており、東京
都心5区の比率は73%と逆に上昇している。さらにポートフォリオの特徴の一つに渋谷区の投
資が39.5%と比較的高いのが際立っている。ポートフォリオの平均築年数は15.8年、期末の
LTVは46.9%、NOIは4.8%、組み入れ物件は23物件、期末稼働率98.6%、総資産2195億円。一口当
りの純資産は594,202円となっている。

 ポートフォリオの個別の組み入れを見てみると大手町にあるりそな・マルハビルが14.4%と最
も大きく、世田谷ビジネススクエア10.9%、cocoti9.4%、QFRONT8.9%、TOKYU REIT虎ノ門ビル6.5%
と上位5物件で50.1%を閉める集中度となっていることに注意が必要だ。


(前期決算)

 前期決算は数字の上からは堅調だった営業収益で2.1%減少、営業利益3.3%減、経常利益は4.8%
の減少と流石に格付けの高いREITだけあって金融費用の増加はほとんどなく営業収益の減少分が
影響しただけだった。とはいっても手放しでは喜べない部分も相当ある。一つはポートフォリオ
の加重平均年数が高くなっていること。(下図参照) この理由は外部成長にあり、2004年に取得
したりそな・マルハビルが築25年、前期取得した菱進原宿ビルが築20年、東急池尻大橋ビルが築
19年、代官山フォーラムが築15年と外部成長をするたびにポートフォリオ平均よりも古い物件を
取得したことで築年数が高くなっている。少し疑問なのは古い築年数の物件を購入するのであ
ればそれなりのNOIの高さの物件を取得したと思いがちだが、直近取得の菱進原宿ビルでみると
償却前のNOIで3%を切っている。代官山フォーラム2.2%だ。場所はいいんだろうが、取得価格に
問題はなかったのかと勘ぐりたくなる。それでも決算が比較的堅調であったのはやはり金融費用
が抑えられていることが大きい。当法人は投資法人債を発行しているが融資と合わせた期中の平
均金利は1.69%とその前の期と比較しても3bpほどしか上昇していない。LTVを見る限りエクイティ
がないと今後の外部成長は少しつらいだろう。その場合、やはりポートフォリオの平均築年数は
下げる方向で考えないと資産の劣化が起こる可能性もあるので要注意だ。



 もう一つ気になる点はやはり他のREITでも起こったことだが、含み益が急減していることだ。
幸い当法人は都心5区や渋谷区の比率が高くまた東急沿線沿いにある物件が多いことはプラスと
いえよう。但し、その減り方はかなり急激だ。これは前回のアップで都道府県地価調査で言及
したことだが、今回の地価の変動を見ると地方よりも都心の地価下落が大きく、さらに都市部
においてはプライムエリアほど下落したという現象が起きている。23区での地価変動率の下落
率トップは渋谷区の14.2%が最大で、2番目は世田谷区の13.8%であった。当法人は下落率が高い
この2つの区へのエクスポージャーが高いのが影響したと考えられる。



 含み益は6ヶ月間で228億円減少している。最も大きな減少は商業施設のcocotiで39億円、率に
して15.9%、次が世田谷ビジネススクエアで30億円(率で-11.15%)、りそなマルハビル30億円(同
-8.67%)、額は小さいが直近で取得した代官山フォーラムは5.7億円減で-15.05%、菱進原宿ビル
14.2億円減、同-13.4%となっている。経済環境の悪化があったとしても目利きに少し問題がある
ような気もするが................ 全体で180億円の含み益があるといっても個別で見ると少
しお寒い状況となっている。下図は物件毎の含み益だが含みで大きいのはりそなマルハビル、
QFRONT、世田谷ビジネススクウェアなどで、一方の菱進原宿ビルの含み損率は簿価に対して41%
代官山フォーラムで20.4%となっている。最近の物件ほど含み損がでかい。もう一つ気になるのは
鑑定評価のキャップレートだ。商業施設で4.56%、オフィスで4.68%となっており、個人的には
低いような気がするのだが。いくらプライムでも保守的な評価とはいえないだろう。大きく鑑定
評価が下げられた菱進原宿ビルで4.4%、代官山フォーラムで4.3%、cocotiで4.3%というのはど
うだろうか。一律な評価もどうかという気もするが、青山で4.5%、虎ノ門で4.7%、表参道で4.5%
で評価しているのと比較していると少し甘い気もするが。



(今期決算)

 今期予想分配金は前期比1705円減少の13800円を予想している。賃料収入が262百万減少し、営業
外での金融費用が49百万円増加するとの前提に立っている。期末稼働率が96.7%と2ポイント近い低
下を予想している。比較的保守的に見えるがLTVが既に46%まで上昇していることから外部成長は
なく、むしろ現実的な数値かもしれない。幸いにもバランスシートは高い格付けのため金融費用の
増加分に関してはバッファであると考えられる。デッドプロファイルも結構なだらかで目先の問題
点は少ない。


 しかしながら問題点がないことはない。懸念されるのはレント水準の急激な低下だ。下の図は当
法人のレント水準と市場賃料の差を時系列でみたものであるが、3期前までは市場賃料が高く、東急
の貸している水準が低かったことから値上げのポテンシャルがあったわけだが、前々期にマイナス
即ち、市場賃料が割安になり、前期にはさらに市場賃料が下落して東急のレント水準が割高になって
いる。やはりオフィスが大きく下落しておりこのデータによれば-17.8%。つまり市場賃料よりも2割
程度高いことから、テナントからの値下げ圧力が増加すると考えられる。また空室の部分については
フリーレント含めた実質的な賃料の下落が予想される。オフィステナントの契約更新は今期はオフィ
ス全体の26%、来年は20%が更改の予定。当然テナントサイドは市場賃料の下落は知っている訳だから
賃料水準の下落はまずあると考えるのが妥当だろう。



 このように考えると賃料収入の減少はどの程度現実的なのかは不透明になってくる。少なくともテ
ナントサイドは市場賃料水準である2割弱下の水準を要求するだろう。仮に4分の1が2割引き下げを要求
すればオフィス全体で5%の賃料収入の減少となる。全体では3%の下落。金額にすれば70百万円の減少
となろう。商業施設の乖離は5%未満であるから稼働率の低下、賃料の下落で見るとまあいいせんいっ
ているかもしれない。
 
(成長戦略)

 順調に外部成長を続けてきた当法人であるが、流石に現在のLTV水準では資産の入れ替えやエクイティ
がないと継続するのは難しくなっている。都心立地ではあるが、中身を細かく見ると意外に苦戦して
いるという印象があり、また鑑定評価も必ずしも保守的には見えない。従って今期が終わるころには
含み益がなくなっている可能性もあり、あまり手放しでは喜べない。もともと物件数も少なく上位物件
の集中度が高いREITであることから資産の入れ替えもしづらいであろう。そう考えるとエクイティだ
が、それをやるのかは全くの不透明。投資戦略も逆張り投資を謳っているがそうであるならLTVは低く
なって新規取得の時期だが、前期に結構築年数のいった物件を買い増ししているのは当法人の運用戦略
に合致しているとも思えない。また気になるのはプライムエリアでの空室率がやはり上昇していること
だ。


 これを見ると地方は当然大きく上昇しているが、都心超一等地においても空室率が上昇している。不
況の影響であることはわかっているが実際に上昇傾向がはっきり読み取れるのは嫌な状況だ。丸の内、
大手町、有楽町などの超一等地で見ると1年前が0.4%が今年の6月には4.2%と10倍以上拡大している。不
動産市況の底入れを見るむきもあるが、これを見る限りやはり景気の回復がない限り不動産市況の底入
れはないだろう。そう考えると今は守りの運用が必要なのではないか。NAVで見るとディスカウントだが
鑑定評価をもっと保守的に見ればディスカウント幅はかなり縮小しそうだ。現在の分配金利回りの水準
も考えるとあまり積極的に買う理由はなさそうだ。ただ、一つ評価できるのはディスクロージャーは他
のREITと比較すると良い。これは続けてほしい。

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都道府県別地価調査(7月時点)

2009年09月26日 | 不動産
 公的機関が発表する地価動向に関する調査は主要なもので2つあり、1月1日現在を基準とする
地価動向を国が調査し発表しているのが一つ(公示地価)。土地取引の指標として公共事業用地
の取得の算定根拠となったり、相続税の計算時に用いられる路線価の根拠となるものである。
公示地価は土地鑑定委員会が年一回発表する。毎年4月に発表される。一方、7月1日時点の地価
の調査は「都道府県地価調査」と呼ばれており、これは都道府県知事が年一回各都道府県の
基準地(21年度は23024地点)における価格を不動産鑑定士の鑑定評価をもとに公表する正常価
格とされ通例9月に発表される。 どちらも固定資産税や相続税などの税の算出根拠となるも
のであるが、土地価格のトレンドを知る指標としても注目されている。

 9月17日に国土交通省から平成21年度の都道府県別地価調査が発表されたが、その内容を見
てみよう。まずは圏域別での変動率の表を見てみると(下表)、いままでのトレンドと異なる
ことが分かる。


 三大都市圏及び地方圏に分けた表であるが、住宅地、宅地見込地、商業地別にしたもので
ある。オリジナルは工業地、準工業地などを含んでいるがここでは割愛している。21年度の
変動率は全国ベースでは-4.0%の下落となったが、三大都市圏の下落率が-5.6%となってい
る一方、地方圏は-3.4%の下落に留まっている。さらに三大都市圏を見ると東京が-6.5%と
最大の下落率となっているが、大阪圏で-4.5%名古屋圏で-4.2%となっている。即ち都市部に
なればなるほど下落しているという事実である。ニュースでは福岡での下落率が最大になった
と大きく伝えているが、マクロ的には東京圏の下落が極めて大きかったというのが実情であっ
た。このトレンドは商業地でも同じで東京圏の下落が-8.9%と最大となり、地方圏の下げが少な
い。これらの理由の一つとして地方は先行して下落が始まったのに対して東京圏の下落は遅行
して始まったと見ることができる。東京圏の地価の下落がいつごろから本格的に始まったのか
を見てみよう。下図の表は国土交通省が別に発表している地価ルックと呼ばれる調査で下落率
をいくつかのセグメントに分けてそのトレンドを見ている。



 総合評価の表では下落率を0-3%、3-6%、6-9%、9-12%、12%以上の5段階に分類しており、調
査時点での数をカウントしている。いわゆるDIと似たような統計手法を採用しているが、平
成20年第3四半期、すなわち昨年の7-9月期まで6%以上の下落地点はほとんどなかったが、
10-12月の第4四半期に急増、今年の1-3月まで継続した。丁度、リーマンショックを境に市場
の調整が大きくなったというのが分かる。現状では0-3%未満の下落が46%となっており、見た
目では下落の一巡感がみられるが、上昇地点は皆無でありこれを市場の底打ちと取るのは
まだ早いだろう。東京圏の下落が大きいのは先ほど見たとおりだが、さらに23区に限って細
かく見てみよう。



 この図は前述の都道府県地価調査のデータを基に私が自分で作成した図だが、まず驚かさ
れるのはプライムエリアでの下落だ。23区平均で10.8%の下落に対して渋谷区で14.2%、
世田谷区で-13.8%中央区で-12.5%、千代田区で12.3%という具合に都心部になればなるほど下
落率が高い。こういった傾向は今までの地価調査で確認されなかった傾向であるばかりでな
く、プライムエリアがより下がるといった一般的に信じられている傾向のまさに逆の方向に
向かっているのがよく分かる。これも解説としては極めて平凡だが、リーマンショック
のようなグローバルな金融ショックの大きさが招いたものと考えられる。元々、地方圏での
土地取引が枯渇しているなかでショックが発生しても取引量がなかったことが地価の下落を
抑え、一方で流動性があり換金しやすい都心部が一挙にクラッシュしたと考えるのが妥当だ
ろう。

 ここから導き出される結論は意外なほど少ない。まずこのトレンドが収束しているのかそ
れとも継続しているのかという問いに関してはそれは金融システムしだいというこれもありき
たりな答えになるだろう。融資環境が厳しくマンションの新規着工が枯渇している中で土地
価格が需給の締りにより、底を打つといった主張が多いがどうもまゆつばな気がする。金融
環境が厳しいからこそ換金性の高い都心部に影響したと考えられるのなら、その状況に変化
がない中でどうして需給関係だけによって地価が下げ止まるだろうか? また需給論に関して
の反論はいくらでもできる。マンション供給が絞られており、買い手が増加するなどという
のは幻想でバイヤーである一時取得層のキャッシュフローの状況こそ考慮すべきだ。即ち、
雇用環境の悪化がとまらない現状では銀行ローンが組みにくい、むしろ雇用不安から人生で
最も大きな買い物をチャンスだと買い出動できるのはローンを組まずに済むキャッシュ
リッチなバイヤーのみである。いまだ地価動向には注視する必要はありそうだ。

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海外のREIT投資(7) Capital Commercial Trust(シンガポール)

2009年09月24日 | 海外REIT研究
 Capital Commercial Trust(CCT)は2004年5月にシンガポール市場に上場した商業REITで
総資産69億シンガポールドル(4529億円)と最大規模のREITだ。シンガポールの中心部に11
の商業施設を保有し、敷地面積31万7千m2、テナント数500を数える。当法人は日本のREIT
とやや趣きが異なり不動産以外にも投資を行っている。クアラルンプールの不動産を保有
するQuill Capita Trustに30%投資しており、Malaysia Commercial Development Fund Pte
Ltd.に7.4%投資している。

(ポートフォリオ)

 ポートフォリオの中身は収入別の比率で言うとオフィスが74%と最も高く、リテール向
け16%ホテル、コンベンションセンターが10%の比率となっており、8割以上の収入がA
クラス物件もしくは6割の持分を保有するラッフルズシティからきている。ラッフルズシティ
はその名の通りラッフルズ通りに面し、シティホールのすぐ隣にある延床面積320,738m2の
大規模商業複合施設で28.2%の収入がこの物件からきている。Battery Road(23.1%)、Capital
Tower(12.4%)、George Street(17.1%)などの上位4物件で80.8%の収入を占めていることから
ポートフォリオの集中度が高いのが特徴である。



 テナント構成でみた場合、金融(36.1%)が最も多く、エネルギー(14%)、医療(10.1%)、ファッ
ション(6.7%)政府及び政府関連施設(6.3%)、食品(5.8%)などとなっている。比率の高い金融では
JPモルガンチェース、スタンダードチャーター銀行、野村シンガポール、HSBC、ロイズなどの
大手金融機関が顧客となっている。また上位10位の顧客で月間賃料総額の45%を占めており、
ここでも上位集中度が高いことが特徴となっている。

(中間決算)

 業績は回復している。前回分析したAscottと似ているが、第2四半期決算では純不動産賃貸
収入が外部成長もあり40%増加、減損前税引き利益は18.3%の増益となった。一方で、鑑定
評価減による評価損失計上により、590百万ドルの赤字となった。但し、前回もいったが、
これは非現金項目の費用であることから、配当には直接の影響はない。配当可能利益は93百万
ドルど前中間期と比較して29.9%の増加となった。(表参照) 配当は中間で3.33セント、前中間
と比較して3割増加。年率換算の配当は6.72セントで配当利回りに換算すると8.2%となった。



シンガポールのプライムエリアにあるだけあって、他のREITとの比較では健闘している部類に
入る。気になるのは稼働率の低下だが、やはり金融危機の影響を受けており、2008年の4Qに
低下してからまだ回復はしていない。それでも稼働率は96.2%を維持しており、これは市場平
均の91.2%よりも高い。これは当法人の連とが市場平均よりもまだ低いことから解約率が他社
と比較すると抑えられていることを示している。2009年の営業収入に関しては92%の顧客から
コミットされているため、目先の不安はあまりない。



                      図CCT稼働率の推移


                      図CCTレント水準の比較

(バランスシート・見通し)

 バランスシートは問題がなくなった。その理由はエクイティファイナンスを実施したからで
ある。当法人は上期に株主割当中間発行増資を実施した。これにより828百万ドルを調達し、
ギアリングは(LTVに相当)は30%まで低下した。ファイナンスの問題も2011年のCMBSの償還まで
特にないことから、当面はバランスシートでの問題はなさそうである。6月まで26.4億ドルの
有利子負債は中間発行増資により、19.8億ドルまで低下した。固定負債の平均残存年数は2.2
年から2.7年に長期化しており、金融危機からようやく脱しようとしている。

 いくつかの好条件があるわけだが、それでも市場環境の悪化による業績への影響はいまだ無
視できない。法人は市場平均よりも低いレント状態からレントの値上げによる内部成長を主張
しているものの、現段階で内部成長の達成がどの程度可能かは不明だ。シンガポール市場は2008
年10月をピークにAクラスビルで48%の賃料下落となった。流石に海外は調整がドラスチックだ。
法人側のプレゼンテーションでは2009年に入ってから5月からの下落率が11.6%と大きく鈍化し
ていることから、市場の底打ちも近いとの見方をしている。


 また2011年までファイナンスの問題はないといってもCMBSのリファイナンスにはまだ懸念は
くすぶる。現時点ではやはり日本と同じようにCMBSの買い手がほとんどいない状況であること
から、当法人は株主割当という手段でリファイナンスしたわけだが、2011年に市場が回復して
いるかどうかはまだ不明だ。先ほどの図表で示したデッドプロファイルでもCMBSでのファイナ
ンスが多く、銀行借入が少ないのがちと気になる。恐らくコストでそうしたのだろうが、やは
りファイナンス手段も多様化してほしい。しかしながら結論としてはまだ保有でいいだろう。
やはりギアリングが制御可能なレベルまで低下したことと、シンガポールのプライムエリアを
抑えているのはやはり強い。REITの国際分散投資を目指すものにとってはずせないというのは
やはり大げさだが、抑えておきたい銘柄ではある。

バックアップのPCでこのブログを更新しているが、やはりパフォーマンスが悪いのでしばらく
更新はしたりしなかったりします。

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MMDを触ってみる(4)

2009年09月13日 | Weblog



MMDソフトで遊んでいるとやはりHDでのアップロードをしてみたくなった。というわけで
とりあえずHD画像のアップロードをしてみたが、それをするのに随分と苦労した。まずはHDでの
aviファイルをMMDで出力するのが簡単ではなかった。出力しようとするとどうしてもうまくい
かない。いろいろ調べてみるとまずはCPUの能力が足りない。出力したと思っていても実際に
出力ファイルを再生してみると画像が壊れている。詳しくはPS3の活用(10)に譲るが、ようやく
出力できたのがこれだ。やはりYoutubeで16:9のHDは見やすい。
 モデルは言わずとしれたバーチャルアイドルの初音ミク、モーションデータ、ステージともに
借り物だが、カメラモーションだけは自分で作ってみた。

 ところで、買ったばかりのHPのPCが壊れた。買った初日にWindowsのインストールに失敗。その
後、インターネットを見ているだけでハングアップした。HPに対する期待度は大暴落。いいかげん
なハードを売るな。コールセンターに電話するとこれがまたつながらない。ようやくつながると
今度はテストをしてほしいとのことだが、どう考えてもRAID1の片方のディスクに障害が起こって
いるのだから、すぐさまピックアップして直してくれと要求。とりあえずピックアップしてもらうこと
にする。

明日から旅行と少し遅い夏休みをとる予定。PCも修理に出すのでブログ更新はしばらくお休みとな
ります。


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MikuMikuDance でPさんと呼ばれる本
かんなP,ラジP,極北P,ポンポコP
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民主党の子供手当てを考える

2009年09月12日 | Weblog
 民主党の子供手当ては既に大きなニュースとなっており、少子高齢化の時代にあっては大半
の人は財源論を別にして反対するものは少ない。むしろ、その必要性に関して論じる必要もな
いという態度が大勢だと考えられるが、あえて考えてみたい。まずは当たり前の所から確認し
てみたい。分かりきったことではあるが、単に世間がそういっているからということでなく、実際に
自分の目で確認することが議論をする上で大事なことであると考えている。


 やはり確認するまでもなかったが、少子高齢化と言われているだけあって子供人口は減少し
ており、当然ながら将来の生産人口が減少する訳だから経済にとって大いにマイナスとなる事
が予想される。民主党の子供手当ては子育て支援との受け止め方が強いものであるが、民主党
の発表したインデックス2009では所得税改革に伴う所得の再配分のを主な目的としている
事が分かる。所得控除から手当てへの転換により低所得者への再配分機能を強化することで、
下位の所得階層の可処分所得を増加させることが目的であることが理解できる。すなわち、
マスコミや自民党からのばら撒き批判の多くは民主党のもともとの趣旨を誤解しているともいえる
だろう。

                     図 民主党インデックス2009


 とはいってもだからといって民主党が正しいとは限らない。民主党等が主張している根本は
失われた10年で拡大した格差の是正が根本にあるのだが、実際に格差はどの程度まで広がっ
ているのだろうか。このような素朴な疑問に対しては一般的に非正規雇用が拡大や年収100
万以下の世帯の増加、生活保護世帯の急増、失業者の増加など確かに現象面から見るとその可
能性は高そうである。では格差とはなんだろうか。辞典などで調べると「格差」とは「同類のも
のの間における、価格・資格・等級・水準などの差。」とあり、「格差社会」とは「国民の間
の経済的・社会的格差の大きい社会」とある。格差社会の定義はちと微妙だが、経済的な状況
の落差が激しい事を示すと理解しよう。さらに最近入れている「格差の是正」という文章に対
しては「近年になって経済的な格差が広がった為にそれを修正する」と理解する。そこで経済
的な格差がどれだけ広がったのかを見るために国税庁の給与階級別給与所得者数・構成比で確
認してみる。

 これを見る限りにおいては平成15年からの過去5年間での比較となるが、平均所得が500
万半ばとして低所得者がどの程度増加したのか見てみる。平成15年では68%、平成19年
では69.2%と1.2%の増加となっている。一方で平均所得よりも十分に高いと考えられる1000万超
の所得階層は4.9%から5.0%に増加。両方とも増えてるじゃん。当然、中所得者階級の減少が見ら
れるわけだが、これを格差の拡大と捕らえるべきかはマクロ的には微妙だ。便宜的に1000万
円の世帯を高額所得者層と定義したが、実際には確定申告が義務付けられる2000万円
を超える世帯にいたっては0.4%と特段の変化は見られていない。超低所得者と高所得者が増加し
て社会の階層構造が激しくなったことを捕らえて格差の拡大と呼ぶことは可能だが、本当に社
会構造の変化によるものなのか。是正というからにはやはり金持ちが取りすぎて、低所得者が割
を喰っているといいたいはずだろう。それでは実際にそうなのかこれも国税庁による給与統計で
見てみる。

 これで見ると平成15年から連続して給与は減少していたことが分かる。わずかに19年に給与が
回復しているが、これはリーマンショックの前までの効果だったといえる。どうも私には給与総
額の減少が影響しているとしか思えない。中所得階級の低所得階級への脱落は過去10年近い給与
総額の減少による影響であると見た方がマクロ的に正しい気がする。当然、非正規雇用の増加で
あるとか低賃金を強いられている労働者の存在の増加などは社会現象として認知できても、それ
がマクロ的に正しいとは必ずしもいえない。むしろマクロ面から捉えれば、「景気が悪い」とい
単純な説明の方がしっくりきたりする。ただ、それではマスコミも芸がないので社会構造の変化
などと説明したくなるのだろうか。マクロ的な検証を加えるためにさらにGDP成長率と物価水準
を示すGDPデフレーターも見てみよう。


 成長率は過去5年に限ってみれば辛うじてプラスを維持しているが潜在成長率近傍をさ迷ってい
たと見るのが正しいだろう。一方で先ほどの給与統計は名目ベースでの統計である当然、物価水
準で割り戻さなくてはならないが、そういう統計はないのでGDPデフレーターで物価水準の推移
を見てみよう。これを見ると10年にわたりデフレーターはマイナスであった。名目賃金が減って
も、物価が下がっているので実の所、低所得者の増大はマクロ的にはあまりなかったと見ること
ができる。即ち、賃金の平均下落率は過去の平均を取ってみると押しなべて1%程度のマイナスが
続いており、一方でGDPデフレーターも年間1%程度のマイナスが続いている。これは実質所得が
ほぼフラットであまり賃金水準がマクロ的には変化していないことを指し示している。「そんな
ばかな」といわれる方もいるかもしれない。確かに社会的な弱者、失業して生活が困窮している
人、非正規労働で不安定な職業だったりする人は数多くおり、それを否定するのが趣旨ではない。

 つまるところ、そのような社会的な弱者や格差などは社会がどのような状態にあっても常
に存在するという事実だ。むしろ、正社員として働いている人はリーマンショック以前の生活を
省みてほしい。確かにニュースでも不況だ、非正規労働だ。賃金が伸びない、生活が苦しいなど
とメディアが騒いでいて自分もその気になっているが、よくよく考えてみると5年前もそんな事を
言っていませんでしたか? 10年前も政府の経済対策は無策だとか、生活が苦しいと言ってたでし
ょう。即ち、いつの時代でも満足できる社会状態はないのだ。格差が拡大というよりも、昔か
ら人は常に社会に対して不満を持っているし、少し極端に聞こえるか知れないが特に不況にな
ると人はなんでも社会のせいにしたくなるものである。



上の図は厚生労働省の所得再配分調査を元に私が作成してみた図だが、それぞれの所得階層がどの
程度負担を行い、どの程度受益しているかを示した図である。まさに予想したとおりとなったが、
所得が低い階層は負担よりも受給が多く、高いものは持ち出しが多い。民主主義の理想とする
所得再分配は機能しているようだ。経済的な格差は必ず存在し、その為に国は所得の再配分を行う。
所得の低いものには支払った額以上の便益を供与し、所得の高いものからは便益以上の負担を要求
する。このような形で正常に機能しているにも関わらず、また実際にはネットでの受給がプラスで
あるにも関わらず、格差の拡大によって政府・役人から搾取されていると考えるのはどうしてだろう
か。生活の困窮は税・社会保障負担が重いから? いや、国際的に見ても日本の家計負担が低いのは
事実だし(夫婦世帯では英国の3分の1以下、フランスの半分。但し、米国は日本より低い)、本人
はそう感じてなくても、統計上では支払うべき税金以上を受け取っている形になっている。むしろ
問題なのは全体で受給がプラスとなっており、所得再配分以前に国がばら撒いていいることだ。
結局これが借金の増加をもたらしている。要するにマクロ的に見るともらい過ぎの状況になっ
ている。格差是正とは「税は払いたくないけど生活が苦しいからもっとよこせ」と言っているように
私には聞こえてしまう。格差是正の前にちゃんと税金を払わないとまず国が破綻すること
になりかねない。「国民の目線にあったやさしい政治」とは国が受け取ってもいない税金を先食い
してばら撒くことなのだろうか。格差問題を錦の御旗にさらに国民負担を引き下げようとする考え方
の前に本当に格差とはなんであるのか。格差の実態はどうであるのかを客観的に知らずして格差問題
の是正、格差の拡大を唱えるのは間違った方法論ではないか。

 以上からの私の結論としては格差問題とは実体経済の停滞に伴う名目賃金の減少、但し、物価
下落により実態的な水準は変化していないにもかかわらず、「貨幣錯覚」(money illusion)効果
によって不況感を強める事だと理解している。民主党の子供手当てに関して言えば、内需拡大に
よる経済構造の転換というのはほとんど意味を持たないと考えるが、所得再配分により貨幣錯覚
を打ち消す効果は十分あるだろう。センチメントの改善により、消費が刺激される効果も期待で
き、設備投資への波及もあれば現在の閉塞感を解消する機会となるかもしれない。このように経済
へのプラス効果が期待できるものの、内需主導型経済への転換はナンセンスだ。ただ、それについ
ては今回は議論はしない。それよりも子供手当て導入にあたり解決しなければならない問題がある
だろう。

 それは公平性が担保されるのかという点だ。私個人は子供もいないので受益者にはならない
が、それ自体不満はない。ただ、子供1人年間31万2千円。中学卒業まで支給するというアイデア
は美しいが、現実的にどうだろうか。例えば子供2人いる世帯があるとして15年間にその世帯に
国から1000万円の補助金がでるという政策だ。子供のいる世帯にとってありがたい話だが、1000
万円とか聞くと個人の自助努力をスポイルする政策にも聞こえる。あまりにも国に依存しすぎな
いか。子供手当ての導入にあたって毎年5兆円以上のコストが必要である。しかも民主党はこれを
恒久処置とするわけであるから、例えば10年間で50兆円以上を国民に配るわけだ。別に配るのが
悪いとは思わないが、格差是正を目的とするならば、給与所得を上げる為の雇用の創出に使った
方が良いのではないか。個人的には困窮者へのセーフティネットは拡充すべきだが、乞食を増
やすような政策にも聞こえてしまうのは私だけだろうか。失業者が増加するのは企業が十分な仕
事がないことから雇用を増やさないのであるし、賃金が増えないのは利潤を上げられる競争力の
ある企業、言い換えればグローバルに競争できる優れた日本企業が増えていないのが問題ではな
いのではないか。優れた製品開発、技術力のある企業、よりよいサービス、革新的なアイデアに
より個人が容易に起業ができる社会。社会的弱者に対して政府だけでなく個々人が手を差し伸べ
ることを可能とする柔軟な寄付税制に支えられた博愛主義思想の浸透した社会を目指すべきでは
ないだろうか。もしくは10年で50兆円を使うのなら、今は苦しくとも新しい産業を国家を挙げて
創造して失業者を減らし国民全体の所得水準を引き上げるとか。もしくは実施をするにしても少子
化対策強化の為に5年、10年の時限処置とするとかして野放図な支出政策に対する牽制装置を組
み込むべきではないのか。

仮に、30年後に少子高齢化問題が解決したとする。(例えば出生率が2を超えたとか)すると子育て
支援を廃止しようとすると消費税どころではない猛烈な反対運動が起きるのではないか。人口構成
が正常化しても10年50兆円の支出を続けなければ、政治体制を維持できないという不健全な政治状
況が生まれるリスクはないのだろうか。少子高齢化の問題解決を目指すならば、長期的に問題の解決が
見えた段階ですっぱりやめますと先に言っておくべきではないだろうか。所得再配分機能の是正と
少子高齢化問題の解決策としてはやはり一律、全国民という、評判の悪かった定額給付金みたいな
ことは避けるべきではないか。という疑問がどんどん沸き起こってくる。このようにけちをつけよ
とするといくらでもつけられそうだが、実際に5兆円がどの階層に分配されることになるのであろう
か。政府の世帯統計で今回対象になる世帯はどの程度か見てみよう。



 矢印と囲みが間違っているが、対象となりうるのは1700万世帯。全世帯が4800万世帯だから、35%
の世帯が対象だ。単純化すると「国民3人の内、1人に500万円を国からプレゼント」(子供のいる人限定)
子供が2人ならダブルチャンスで1000万円、3人ならトリプルチャンスで1500万円。4人ならなんと
2000万円を無条件に支給となる。先の所得再分配の図表でも分かるが、例えば所得300万円以下の
階層に対しては国による再配分によって年間100万円以上の便益が支給されている。子供手当ての
期間に合わせて考えると世帯あたり1500万円が便益として支給されている。それに加えてさらにプラス
というのは少子高齢化是正という看板がないとなんとも不公平感がぷんぷん匂うではないか。テレビで
よくやるのは生活苦から中学、高校への進学をあきらめるとか、生活費が足りない上に仕事を失ったと
かいう悲惨な話が多いが、それは国民全部がそうであるわけではない。マスコミはキャッチーな部分を
取り出してニュースにしているのであって、世の中全てがそうであるという印象を受けてはならないの
である。そういった悲惨な家計に対しては生活保護の拡充であるとか、奨学金制度の充実、中学、高校
授業料の無償化などいろいろとやり方があるのではないか。民主党の子供手当てを全て否定するもので
はないが、制度設計をしっかり行って将来の禍根を残さないようにしてもらいたい。


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プレミア投資法人(8956)

2009年09月11日 | 国内上場REIT
 決算前の4月に一度レビューしたが、6月に決算もでたことなので改めてチェックしてみよう
と思う。概要になるべく割愛するが、当法人の特徴はレジデンシャル、オフィス複合型でなおか
つBクラスビル特化というREITで特徴といえばそれが特徴的だ。また投資法人債を250億円発行
しており、その償還問題が存在する。但し、償還は来年9月なのでまだ時間的な余裕がある。
格付けはR&IでA+、Moody'sでBaa1となっている。

(前期決算状況)

 終わった前期は営業収益で46百万円の減収、営業利益で38百万円、経常利益で64百万円と
それぞれ減益に終わった。当初予想と比較しても減益となっている。オフィス部門では稼働率が
予想対比0.3ポイント上ぶれしたものの、レジデンス部門で募集賃料の引下げ及び稼働率が当初
計画98.3%に対して91.4%と下回ったのが大きい。オフィスでは予算比で18百万円のプラス、レジデ
ンスで32百万円のマイナス寄与となった。意外だったのはオフィスよりもレジデンスの方がマイ
ナス寄与が大きかったことだ。(下図)


通常、不況期ではオフィス部門は敏感にその影響を受けるがレジデンシャルの場合はやはり賃借人
の懐がいかにさびしくなったとしてもそう簡単に住む場所を退去するのは容易でない。従って、景
気の下降局面ではレジデンシャルが踏ん張りオフィスのマイナスを支えるというのがたいていの場
合であるが当法人の場合にはそうならなかったようだ。その理由として考えられるのは当法人の賃
料水準帯によるものが大きいだろう。下の図では当法人の賃料別ブレークダウンと稼働率を示した
もので右が前期の実績である。これで見ると15万円以上の賃料帯が全体の81%あり、30万円以上
でみても41%を占めている。首都圏に集中しているため一般的とも言えなくもないが、スターツプロ
シードのように低価格帯に集中しているREITと比較すればやはり高めの水準帯の物件が多い。価格
帯が上昇するに従って稼働率が低下傾向にあり景気の影響度合いが大きいことが分かる。でも、50
万円以上で借りている人っているんだな。恐らく会社による借上げ社宅扱いの物件が多いと思うが、
そういう物件ほどリストラの対象になりやすいと考えられる。



 従って、稼働率の低下とりわけレジデンスのマイナス影響によりNOIもレジデンスが最低になって
いるこれも少し意外なところだ。NOIベースでみてもオフィスが6.8%と最も高い。Bクラスのビルと
いうことでAクラスと違い取得価格が安いことでNOIは比較的高めにでるようだが、レジデンシャルの
NOIがだいぶ低いような気がする。可能性として考えられることはレジデンスの物件がコーポレート
ユースすなわち社宅借り上げ分が比較的多いのではないだろうか。特に決算説明資料には書かれてい
ないが、NOIの低い物件を見てみるとパークアクシス明治神宮前(3.3%)、ホーマットウッドビル(西麻
布、4.5%)、アレミロッソ(渋谷、4.4%)、Walk赤坂(3.6%)、プレミアステージ芝公園(4.5%)、MEW(港区
4.1%)、ストーリア赤坂(3.8%)、ルネ新宿タワー(4.0%)、プレミアステージ両国(3.9%)と都心部にあ
るロケーションもかなりの一等地が多い。前期決算は数字的には特段の問題がなさそうに見えるが、
中身については今後の景気動向をよく見る必要がありそうだ。



(今期決算)



 今期決算に関しては微妙だろう。現在の45物件を前提としており、有利子負債の返済分も織り込
んだ計画となっているが、稼働率がどの程度になるかによる。一応、レジデンスが92%、オフィスが
95.1%としており、オフィスは前期期中平均が98.3%なので保守的といえなくもないが、レジデンスの
稼働率が上昇する予想になっており、これに関しては当法人の保有するレジデンスの性格からすれば
少し微妙だ。2期予想をしているREITだが、来期の数字は正直当てになるとは思えない。来年の9月に
投資法人債のに償還があるわけだし、そうなると来期中に売却に動いているのが自然なのではないだ
ろうか。問題なのは鑑定評価の減価である。(下図参照)



 これで見て分かるとおり、前回の分析時には法人側は含みが250億円あり、売却によって償還資
金は出せる可能性が高いとしていたが、鑑定評価の含み益はほぼ半分になっている。さらに細かく見
てみるとレジデンシャルでの益出し可能物件がほとんどなくなっている。(下図参照) 図では示して
はいないが、レジデンシャルで含みのある物件は10物件あるが、最大の含みは六本木グリーンテラ
スの425百万でその含みは10%程度である。直近の取引事例を考慮しても売却すると利益は出ないだ
ろう。一方でオフィス物件では11物件あるが、評価損益率で考えて利益がでそうな物件は6物件程度で
今後も鑑定評価の低下を考えると売却は来期のどこかでやらざるを得ないだろう。利益のある物件だ
け売却すると評価損が拡大するだけであるから、恐らく評価損の物件といっしょに合わせ切って投資
法人債の償還に備える必要がある。



(成長戦略)

 やはりどこかの時点でのエクイティが必要になると考えられる。投資法人債の償還に関してはバラン
スシート上の問題はあるにせよなんとか解決することは可能だろうが、それでは投資法人としての
成長がなくなることになる。レジデンシャルの部門でも高額賃料物件が多いことから景気回復頼みにな
らざるを得ないし、さらに3年後の投資法人債100億円の償還もある。一番いいのは大きくディスカウン
トされた投資法人を買収するのがもっとも良いシナリオであるが、スポンサーのクレジットがいまいち
だ。ケンコーポレーション、総合地所といったスポンサーでは買収するにもニューマネーの投入が難し
いと予想される。もう一つは株主割当増資などのエクイティだ。REIT市場が回復している現在がもっと
もやりやすいのではないだろうか。次の決算で少し方向性が出ることを期待したい。それと最後に
当法人はREITの中でもディスクロは良いほうだと感じている。大手の一流といわれるREITほど意外に
ディスクロが駄目だったりする。大手のREITはむしろ見習うべきだろう。例えば、日本ビルファンド
などの日本を代表するREITのディスクロは最低限は満たしているかもしれないが、合格点はあげられ
ない。投資家はあまり不便を感じていないかもしれないが、例えばポートフォリオに組入れられてい
る個別物件のにPMLなどは決算短信にも資産運用報告にも見当たらない。ようやく有価証券報告書
の中で発見することができた。どうせ投資家は分配金さえ出しとけば文句ないだろうとでも思っている
のだろうか。大手ほど投資家をなめている傾向が強い。


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阪急リート投資法人(8977)

2009年09月10日 | 国内上場REIT

                         図 ポートフォリオ構成

 当法人は名前の通り阪急阪神ホールディングスがスポンサーになっている商業
REITでかつ地域的に関西に特化したREITだ。地域特化ファンドは福岡リートなど
があるが、このファンドは関西圏特に阪急阪神グループの営業エリアにコミット
したファンドである。現在の投資比率は関西圏が72.7%、その他27.3%となってお
り、用途別では商業用途68.5%、事務所用途31.1%の割合で運用されている。元々
阪神阪急グループの営業エリアでの特性を考え合わせると商業用途に重点を置い
たほうがシナジーが出やすい上に、本体の営業戦略を立てやすくなるという意味
においては明快な戦略とも言えるだろう。

                      図 主要組入れ物件

 ポートフォリオは16物件、総資産1339億円。主要な組み入れ資産で見る
HEPファイブ(投資比率17.1%、大阪市北区)、NU Chayamachi(同14.3%、大阪市北区)、
汐留イーストサイドビル(東京都中央区、14.1%)、スフィアタワー天王洲(東京都
品川区、同7.0%)となっており、上位4物件で52.5%を占めていることからポート
フォリオの集中度は高く、資産分散はあまり効いていないのには注意を要する。
ポートフォリオ全体のROAは2.3%、ROEは5.2%、LTVは57.9%と他のREITと比較すると
高めになっている。NOIで35億円、FFOで26億円。FFO倍率で7倍程度。数字上
特段の問題はないがLTVが直近の資産取得によって高くなっており、外部成長はエ
クイティファイナンスがないと難しい。

 但し、収益構造を見てみると商業不動産という景気の変動にさらされるリスクは
高いと思われがちであるが、変動賃料の比率は3.9%となっており、固定賃料実質固
定賃料が全営業収益の96.1%を占めている。バランスシートはLTVの高さを考えると
微妙だが、やはりスポンサーの高いクレジットを反映してか、R&IでA+、Moody'sで
A3を取得している。ポートフォリオの鑑定評価額は1339億円、帳簿価格で1338
億円となっていて1億円の評価益。但し、この数字はもっと下だろう。現状の売買
価格を考慮すれば含み損の状況にあると考えるのが妥当。ポートフォリオのNOI利回
りは5.2%と個人的には商業不動産としては微妙に低い気がする。


                           表 業績動向

(前期決算)

 決算は順調だ。資産取得を5物件行ったことで営業収益は前の期よりも6億円の
増加となり、営業利益も21%増益、経常利益13増益と外部成長効果が効いている。
分配金は17365円とその前の期と比較して2023円の増配。はやり外部成長
効果だ。但し、前の段でも述べたように鑑定評価額の落ち込みによりLTVが当初予想
の54%でなく、59%まで上昇したことで当法人の運用上の制約であるLTV60%以下に
抵触しそうである。従ってエクイティファイナンスを実施するか、資産を売却して
LTVを下げるかのどちらかを今後選択する必要がある。当法人に痛いと思われるのは
今期、来期と将来を予想すると鑑定評価は下がることはあっても上がることはありえ
ないという状況である。すなわち、このままほおっておくとLTVは上昇し続ける為、
エクイティか物件売却のどちらかをしなくてはならないというものである。

 稼働率は前段で述べたように実質固定賃料が多いせいか98.5%を維持しており、特段
のリスクはないと考えられるが、懸念があるとすればやはり事務所棟であろう。スフィ
アタワー天王洲の稼働率は上昇しつつあるが、あの土地はやはり景気が悪くなれば
真っ先に空室が高くなる場所だけに今後も油断できない。


               
(今期決算)

              図 一挙に5資産を購入

 今期は122百万円増収、営業利益で203百万円の減益、経常利益では278百万
円減益で分配金は3265円減少の14100円と予想している。但し、この予想だが
はっきり言ってどのような根拠によるのか良く分からない。前期にららぽーと甲子園、
ラグザ大阪、難波阪神ビル、ホテルグレイスリー田町、リッチモンドホテル浜松など総
額220億円、以前のポートフォリオの2割に当たる大型資産を一挙に購入した事で増収
要因は資産取得によるものであるのははっきりしているが、2億円の減益要因がどのよ
うなものであるのか、説明がほとんどない。保守的と好意的に言おうとしてもその保守
的な前提すら開示しておらず、適当とすら言える。野村のときにも書いたが、もう少し
投資家の分析ができる開示をして欲しいものだ。金融費用が増加するとは思えないし、
第一営業利益の減益幅が大きすぎる気もする。妥当性を主張するなら前期決算での説明
での「好調ですよ」という主張が嘘に聞こえてしまう。というわけで今期決算は不明だ。
因みに当法人は1期のみの予想である。

 バランスシートでの問題点は特段見当たらない。現時点でのLTVは確かに高いものの、
長期固定比率が80.8%と高く、短期的なキャッシュフローの問題にさらされることはな
い。また平均調達コストは1.36%とスポンサーのクレジットを最大限活用できている。
投資法人債の発行もなくバランスシートのリスクはほとんどないといってよいだろう。


                       図 デットプロファイル

(成長戦略)


今後の成長戦略にはやはり外部成長がかかせない。とりわけ固定賃料契約が多いとしても
商業REITは少なからず景気変動の影響を受けるのは必至である。また資産を拡大させたと
いっても1300億円程度ではやはりまだ規模での見劣りがする。その為にはやはり制約
条件となっているLTVの引下げが必要だ。前段でも書いたがその為のエクイティは重要な
点であるといえる。
 エクイティファイナンスの課題としてはやはり現在の株価だろう。1口当たりのNAVは
665430円、実に35%のディスカウントである。別に公募をやってはいけないという法律
はないが、やはり既存株主の損失になることは一流REITなら避けたいものだ。解決法として
はいくつかあるが、一番手っ取りはやいのは株主割当増資である。これは海外でも一般的で
稀釈化による既存株主の不利益を解消する方法としては早い。スポンサーである阪急阪神
ホールディングスへの第3者割当て増資は可能だが、キャッシュフロー上の問題点がない
状況での第3者割当増資はやはり問題を含んでいるだろう。

 REITポートフォリオの地域分散という観点から当法人の優位性はあるだろう。現在上場
しているREITの多くは東京圏に集中していることから、当法人と福岡リートなどと組み合わ
せることで地域分散を進めることができる。ただ、関東直下型でなく、東海・東南海地震
とかで東京大阪同時に直撃となれば意味はないが......投資したタイミングがたまたま金融
危機の後だったのでとりあえず含みが出ているが、その後買い増ししたので同じような危機
が発生したらすぐにでも含みは飛ぶ可能性があるが....まあ、とりあえずいいんじゃないか
持ってても。

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海外のREIT投資(6) Ascott Residential Trust

2009年09月09日 | 海外REIT研究


 アスコットレジデンストラスト(ART)はアジア地域のレジデンシャル不動産に投資
するシンガポール上場のREITでシンガポール市場に2006年3月に上場した比較的新し
いREITだ。アジア地域に幅広く投資するレジデンシャルREITという点でユニークな
投資vehicleでもある。現在は38物件3642戸を11の地域に分散投資しており、総資産
は15.5億シンガポールドル(996億円)の規模に成長している。地域分散は中国が25%、
インドネシアが5%、フィリピン9%、ベトナム13%、豪州3%、日本18%、シンガポール
27%となっている。(下図参照) スポンサーはシンガポールの不動産大手のCapitaLand
だ。CapitaLandはこのREITのほかにシンガポール最大のREITであるCapitaMall Trust
商業REITの代表格であるCapita Commercial Trust、中国ショッピングモール特化ファ
ンドであるCapitaRetail China Trust、マレーシア商業REIT Quill Capita Trust
などを運用しており、アジアでも最大級のREITマネジャーである。





このリートの面白いところはエマージング市場に52%、先進地域に48%という形での
分散投資を行っており、新興国にベットしたいがあまりリスクはとりたくないという
投資家にはぴったりかもしれない。シンガポール、日本、豪州などの先進国でのヘッ
ジをおこないつつ、ベトナム、中国などの経済成長率の高い地域に投資するというの
がこのREITのアイデアとなっている。保有物件はSomersetもしくはAscottというブラ
ンドで統一されている。例えば日本の物件はSomerset麻布、Somerset六本木、などで
ある。地域別の投資は述べたとおりであるが、利益的な寄与ではベトナムの利益が最も
大きく、次いでシンガポール、フィリピン、中国、日本、豪州という順になっている。
但し、利益構成比を見てみるとキャッシュフローが安定するとの触れ込みの先進国地域
の利益構成が低く、エマージング諸国の利益構成比が高いというのは少し注意をする必要
があるだろう。(下図参照)


     

(2Q決算のポイント)

 発表された2Q決算では鑑定価格の減価はあったものの比較的検討した部類に入るとは
思える。コアの賃貸利益は減益ながら最悪のシナリオとはならずキャッシュフローベース
で見た場合の打撃はコントロール可能な範囲にあるといってよいだろう。(下表参照)




 しかしながら、リーマンショックによるグローバルな金融危機は当法人にも少なか
らず影響した。第2四半期(4-6月期)の業績は営業収益で7%減、償却前利益で11%減少、
配当可能利益は17%の減少となった。鑑定評価の値洗いによりよる償却額61百万ドル
を差し引くと税引き後利益は3166万ドルの赤字に転落した。但し、赤字といっても
鑑定評価の減価分は非現金費用であるので配当可能利益は黒字であることに注意する
必要がある。従って配当はあり、年率換算の分配金利回りは8.13%である。また鑑定
評価額は60百万ドル減価したが、このほとんどが日本及び中国の資産の減価によるも
のである。1株当たりの純資産(NAV)は1.36ドルとなっており、現在の株価88セントか
ら見ると35%のディスカウントとなっている。金融危機後に株価は暴落したが、現在
はかなり株価が回復しており、ボトムからは倍以上の株価となり金融危機前に近づい
ている。

 営業収益ベースでの各地域別のパフォーマンスはシンガポールで41%減益、中国で
31%減益、インドネシアで12%減益となったが、豪州、日本、フィリピン、ベトナムの
各地域では増益となった(償却前利益であることに注意)。

 気になるバランスシートの状況だが、6月末のギアリング(LTVに相当)は40.7%。有利子負債
は630百万ドルとなっている。この数字だけからすれば特に問題となることはないだろう。
有利子負債の長期固定比率は70%でポートフォリオの平均固定金利は3.4%となっている。
しいて問題となりそうなのはMaturity Profileかもしれない。ファンディングスケジュール
からは2011年に有利子負債の62%に当たる389百万ドルの借換えが必要となってくる。
但し幸いなのはすべて銀行借り入れでCMBSによるファンディングでないこと。日本のREIT
は投資法人債で問題を抱えているが、海外のREITはCMBSを発行して、その償還問題が大きな
ところがあり、その点では日本と似ている。当法人はその問題からは無縁だといえるが、
それでもMaturity Profileは改善の余地があるだろう。



(投資判断)

 正直言って確信といえるほどの自信はないが、結構面白いREITだと思う。実は既に
投資はしているが、バランスシートリスクは皆無ではないが、スポンサーも信用でき
るし投資対象、戦略は面白い。バランスシートを見てふと気がついたのだが、当法人
の有利子負債の4割が円資産というのはちょと....という感じがする。でも、将来、
円安になるとこのREITにはかなりのメリットはでる。その逆はマイナスなのだが...
株価は大きく回復したが、まだNAVディスカウントは大きいのでしばらく保有でよい
だろう。

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野村不動産レジデンシャル(3240)

2009年09月08日 | 国内上場REIT
               図 野村不動産レジデンシャルの特徴


 東京圏を中心とするレジデンシャル物件に投資するREITでスポンサーは野村
不動産。ポートフォリオは139物件1214億円、東京圏が85.8%、平均築年数7.2年、
上位10物件の集中度が21.2%。規模の割には分散がきいており、比較的小粒な
REITという印象。東京圏に集中しているのも特徴。また物件は役から5分以内の
物件が49.6%、10分以内が91.5%となっており、レジデンシャルとしてアピール
できる駅近物件が多い。バランスシートを見てみると有利子負債729億円、LTV
は他のREITと比較的多い56%となっており、負債の平均残存年数は2.8年、加重
平均金利は1.57%となっており、レバレッジが効いている割には調達コストが
安い。これは格付けが良いことからきており、JCRでAA、Moody'sでA2、S&PでA+
といずれも高格付けになっているのが理由。

(前期決算)
            


 決算は順調だ。他の中堅REITと異なり順調に物件取得を進めており、前期、前々
期に取得物件のフル稼働により営業収益は181百万円の増加、営業費用も増加し
たが、トップラインの伸びにより3.1%の営業増益となった。但し、物件取得は
極度ローンによる融資により取得したことから金融コストの増加で経常利益は
1.6%の減益となった。これにより当期利益も減益となり減配だが、当初予想よ
りは上方修正となった。それにしてもディスクロ資料を見て思うのだが、なに
かいまいちディスクロが良いとは思えない。他のREITは自社のアピールに必死
でいろいろと工夫を凝らしているにもかかわらず、当法人の資料は最低限とい
うか、必要と思われる資料に関しては見易さ分かりやすさという点の配慮に欠
けているような気がする。投資家なめているのか。

 例えば鑑定評価に関しての情報が少ない。評価に用いたキャップレートや個々
の物件の情報が少ない。因みにポートフォリオ全体の鑑定評価は1135億円で、
帳簿価格1240億円との差は105億円の評価損となっており、評価損率は8.4%と
なっている。この数字も決算説明資料では簡単には分からず、決算短信とつき
合わせてみないと分からない。本当に投資家なめてないか野村。
いちおう、鑑定評価の低下要因としてキャッシュフローの低下で0.8億円、キャ
ップレートの上昇により52.4億円とあるが、個々の物件のキャップレートの前
の期と前期の状況が分からないので説明を検証できない。
やっぱなめてるだろう、野村。

(今期決算)



 今期決算は営業収益、営業利益で増収増益、経常利益で若干の減益を予想し
ている。前期取得物件からの変動がないことを前提に有利子負債に関しても特
段の変化がないことを予想前提としている。しかし、これも前提条件以外特に
説明もなく、例えば保有物件の変化がないという前提なら、前期の2月-3月に
30億円近く物件取得をして営業収益が3百万円しか増えない理由がよく分から
ない。本当になめているな野村。

(成長戦略)


 当法人が貧弱なディスクロの割には格付け機関から高い評価を得ているのは
謎だが、それを最大限利用して外部成長遂げており、高い株価を利用して環境
が整えばエクイティファイナンスも可能だろう。レジデンシャルなので戦略といって
もそれほど難しくない。リーシングさえ間違えなければ外部成長で分配金成長
は可能だ。しかしながらそれでも懸念材料はやはりある。それは既存物件の稼
働率低下だ。築年数が進むとそれに伴い当然稼働率が低下してくる。プライム
エリアにあってもそれは起こる。リーシング力が問われるが、物件ごとにみる
と80%台の物件も多くこれらの改善が必要だ。救いがあるとすれば139物件と
ポートフォリオの分散が効いていることでやはりREITならではのヘッジが効い
ている。

 とはいっても現状の時価総額では成長に時間がかかるのも確か、やはりここ
はMAなどによって一気に資産成長させるのが得策だろう。ジョイントリートな
どは対象となりえるだろう。後はディスクロなんとかしてくれ。

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フロンティア不動産(8964)

2009年09月07日 | 国内上場REIT
 4月に分析したときから株価も堅調に上昇しまずまずのできと言いたいところだが
どのREITも上昇しているので分析が本当に正しかったのかという点では若干の疑問
は残る。増配になるだろうという予測も当初予想比548円増加したのでとりあえずは
当たった形になったが、それほど困難な予想でもなかったのでまあ外れなかったと
いうのが実態か。6月決算も発表されたのでもう一度分析してみる。基本的な概要に
関しては前回述べたので割愛する。


 (前期決算)


 業績は極めて堅調だ。上場来連続して増収増益を達成しており、他のREITと比較し
ても堅調さが際立っている。一つの要因として他社と異なり順調に外部成長を達成し
ており、新規物件の営業収益への増収寄与が影響している。前期に取得したイトー
ヨーカ堂東大和店(116億円)、マックスバリュ田無芝久保店(31億円)が稼動した事に
よりトップラインが440百万の増加となった。それによって営業利益が105百万円増加
の3259百万円を達成。稼働率は100%とこれ以上の改善はないという数字。長期での契
約が多いことから稼働率のボラティリティからくる減収リスクが少ないのも特徴だ。
期末のLTVは45%とこれに関しては普通の数字に見えるが、これには敷金・保証金の数
字が加えられており、実質的な有利子負債比率は22.6%という数字になっている。

当初予想数字との比較では田無の新規取得が予想前提に入っていなかったことで経常
利益で51百万の上方修正、支払利息の減少により49百万円の計100百万の上方修正だ。
REITに対する融資環境が厳しく短期金利が低下しても低金利メリットを受けるREITは
ほとんどなく、むしろ融資関連費用などの増加による減益要因が多い中、低金利メリ
ットを受けた数少ないREITだ。格付けもS&PでA+、Moody'sでA2、R&IでAA-と高格付け
を維持している。財務状況は良好で8月に入り、新規に中央三井から30億円のコミット
メントラインの設定に成功した。鑑定価格評価に関しては前期比4.6%減少の86.4億円
減。キャップレートで10-30bp上昇したことになる。これにより帳簿価格との差は57
億円の評価益となったが、実質的にはとんとんか評価損の状態であると考えるのが妥
当だろう。稼働率が100%で安定的なキャッシュフローがあるというのがその理由だろ
うが少し甘いのではないかとの印象を受ける。



 (今期決算)

              図 フロンティアの契約の特徴

 商業施設特化REITで景気の影響を受けるのは事実だが、長期契約が前提のREITなの
で商業施設でありながら、むしろ他のレジデンシャル、オフィスよりも業績が読みや
すい。残存契約期間10年超が77%あり、契約更改条項のない賃料契約が41.5%あるのが、
業績が読みやすい。今期は新規2物件の通常稼動によるフル寄与分が増収要因となり、
一方で支払利息の上昇を前提としており、今期の分配金予想は18500円と若干の減配を
予想。但し、当法人は保守的な予想をしていることから今期も増配を狙っていると見
るべきだろう。上図のように長期契約主体かつテナント、地域分散もバランスが良い
ことから達成可能な数字に見える。

              図 顧客タイプ、地域分散


 (成長戦略)

 現在は固定長期賃料契約によりキャッシュフローが極めて安定している。それは景気
のボラティリティに影響されないという意味ではプラスだが、逆の意味からすれば好景
気でもプラスの影響はないと読むことができる。法人側は現在の歩合賃料が営業収益の
1%程度だが、将来的には5%程度に拡大させたいとの意思を持っている。また営業収益の
10%は三井不動産からきている。三井不動産は商業施設事業としてららぽーと
が有名だが、三井不動産自身、新規稼動プロジェクトをいくつか抱えており、当然当法
人が取得する可能性があり外部成長のパイプラインは十分あると考えられる。現在の資
産規模1740億円から3000億円までの拡大を目指しており三井不動産のバックアップなど
を考慮すれば実現可能な数字だと考えてよいだろう。


 前回分析してから特に意見を変える必要はないだろう。商業施設というのでマイナス
イメージがあるが、成長のためのパイプライン、スポンサーのサポートなど環境はそれ
ほど悪くない。財務的面での強みを考え合わせればこのまま保有でいいだろう。

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株主優待利回りの測定(1) 東急レクリエーション

2009年09月06日 | Weblog
 株主優待制度は投資家にとってもうれしい制度だが、その内容はすべての投資家の
ニーズにマッチしているとは限らない。伊藤園などの飲料メーカーのように自社商品
だったり、ある企業ではクオカードだったりさまざまだ。最も歓迎されかつほとんど
すべての投資家に受け入れられるのはやはり配当金だが、優待制度でもらえるものに
は換金性の高い商品もある。



東急レクリエーション(9631)は映画の優待券が貰える銘柄で新宿ミラノ、上野東急の他に
全国の109シネマズで利用できる優待を発行している。優待内容は表の通りだが、
実際にヤフーのオークションで換金して実際の優待利回りを測定してみた。実際には
もっと保有しているが、1000株保有している場合を想定して計算。1000株保有
すると6枚綴りのA券を年間6冊、B券2冊をもらえることになる。年間でいえば109
シネマズで22回、新宿、上野なら36回映画にいける計算となる。すべて現物として
鑑賞に利用すれば一回1800円とすれば72000円。株価541円で考慮すば13.3%
となる。配当金を含めて14.4%。数字だけ見ると結構すごい。

               実物の優待券左がA券、右がB券


 すべて現物としての経済効果を受ければ確かにそのような利回りとなるが、実際に
のキャッシュフローベースでの利回りは異なってくる。チケット屋に換金すればその
利回りは驚くほど低くなる。一番キャッシュフローベースでの利回りを高めるにはや
はりヤフーのオークションなどで換金するのが最も有効だろう。但し、その場合の労力
はコストとして考えなくてはならないが、今回はその部分は無視した。実際にヤフーに
出品し、A券、B券ともに別々に出品して、実際に落札された。

           ヤフーでの落札価格
(A券6枚綴り)     ( 810 x3)
                      =2430円
(B券2枚綴り)     (1820円 x 2)
                     =3640円
-----------------------------------------------------
小計                    6070円         
オークション会費            -346円
オークションシステム利用料     -128円
配当金                  6000円
源泉税                  -600円
------------------------------------------------------
合計キャッシュフロー            10,996円

という感じになった。1株あたりにすると 10,996円で配当利回りは2.05%となる。109
シネマズで利用できるB券の人気が高い。A券でも109シネマズで利用可能だが、
A券2枚必要。2倍しているのは年2回発行しているからで今回売却分5-10月分
有効のものを売却。従って正確な利回りかどうかは少し疑問だ。優待券を貰うと同時
に有効期限が6ヶ月ある状態で測定すべきなのだが、実はずっと忘れていた。実際
の利回りらはもう少し高いかもしれない。
昔はもっと使い勝手がよかったのだが、現在は切り離し無効となっているので価値
は以前と比較すると下がった。松竹や東京テアトルのように株主優待カードの発行
に切り替えて換金を禁止する会社もある。株主にとってはただでも少ない配当金の
足しにしようと思っているのにわざわざ禁止するのはいただけない。それに優待券
で入場した株主外の人でも当日パンフレットとか、飲み物を買ってくれるかもしれ
ないのに。その辺の感覚はおかしいのではないかと思う。

 予想はしていたが、やはりこんな感じになってしまうものだ。実物を消費することで
2桁の利回りが実現できるが、キャッシュフローベースでは利回りが2倍になるのが関の山
だ。それにしても少し腹が立つのはヤフーのオークションだ。システム手数料が5.25%と
バカ高い上に毎月会費を346円取られる。年間4152円だが、オークションを昔やって
いて今何は何もしていない人は結構いるだろう。さらにそのまま退会していない人は結構いる
と思うのだか、退会するのを忘れている人は毎年ヤフーから4152円を盗まれていること
をほとんど知らない。そういった「忘れていて気がついていない会員」が恐らく何十万人、
いやもしかしたら100万人位いるんじゃないか。この記事を読んでいる人でヤフーの
オークションを昔やっていていまはほとんどご無沙汰な人。確認した方がいいですよ。

結局、保険の不払い問題も契約者が忘れていたら会社は知らんぷりを決め込むことで過去に
巨額の利益を会社に蓄積してきた。それが問題になった途端、生損保は真面目に保険金を
払うようになった。今のヤフーはまさに昔の生損保だ。アクティブでない会員が、忘れている
を幸いに数次のシステム利用料の値上げ、会費の値上げを行い、値上げによるサービスの
改善やメリットを会員に伝えようとしない。というか、何も改善していないので伝えられない。
個人的にはシステム手数料を取る位なら会費を無料にするべきだし、会費をとるならシステム
手数料を無料にするべきだろう。この問題、何か昔大騒ぎになったグッドウィルのデータ装備費と
本質的に同じじゃないのかと私は考えている。みなさん気をつけまょう。


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PC買取サービス

2009年09月05日 | Weblog
 最近は環境意識の高まりというか、ごみを捨てるのも結構大変な世の中になってい
る。大昔にはごみの分別なんていうのは粗大ごみとその他位しかなかったが、今では
結構細かい分別が必要で、昔は粗大ごみ扱いではなかったものまで粗大ごみになって
しまっている。パソコンなんかは昔は気にせずに捨てたり(粗大ごみとして)、人に
あげてたりしていたものだが、今は個人情報の流出が怖くて簡単に捨てることができ
ない。PCの買い替えで古いパソコンの処分をどうしようかと思っていたが、持っている
NECのPCはNECは購入ユーザーから中古パソコンの買取をやっていた。ヤフーのオークショ
ンに出してもよいのだが、はやり個人情報の流出も怖いのでこちらにすることにした。

5年前に買ったNECのパソコンは水冷式、メモリ1GB、300GB HDD、ペンティアムD、17インチ
ディスプレイは当時としては先端の部類で値段も確か30万を超えていたと記憶しているが、
実際に査定してもらうことにした。最初のメールでは7千円くらいとの提示だった。まあ、
そんなものなのかと思い実際にPCを送って2週間。相手からの返事が来た。

 見ると買取価格が2660円。えっ...そんな安いの。よく見ると配送料2940円も取られ
ている。加えて1400円マイナス査定。説明にはケースに傷がついているという理由ら
しい。どのみち捨てるにしてもリサイクル料金がかかるのでこれでOKしたが、最先端
のPCも5年たつと99%減価してしまうというのも少しさびしい話だ。だからこそネット
ブックのような安いPCが人気になるのだろう。あまり高いPCを買うと損するというの
をみんな分かっているからだろう。それにしても安い。



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日本プライムリアルティの借換え

2009年09月04日 | 国内上場REIT
 先日、分析をしたばかりだが、JPRからのプレスリリースに少し気になった
ことがあったので改めて補足で分析してみる。気になったプレスリリースは9月
1日に出た資金の借換えのリリースだ。REITは他の上場株式企業と異なり、
かなりら細かい部分までディスクローズするのでありがたい。というか、細かす
ぎると思うときもあるのだが、情報開示体制という点では普通の株式の分析と比
べると投資家フレンドリーとも言える。その気になった点であるが、前回の分析
時にも書いたが、当法人が発行している投資法人債の償還に関わる借換えのプレ
スリリースだ。



 まあ予想していたことなんで一応チェックしてみるかという気になってざっと
読んでみると。あれっ。なにこれ。借入先がアフラック。借入のレートが3.44%
とバカ高い。返済期限が平成31年の9月6日と10年の長期借入れなので、利
率という点では相場かもしれない。しかし、決算説明資料にも有利子負債の長期
固定比率を引き上げる云々と書いてあったのでそれに従ったともいえなくもない
が、それにしても固定金利で借り入れるのは何故。なにもアフラックから借りなくて
もというのが2番の感想だ。投資法人債のクーポン0.94%から固定金利3.44%と
いうのもコストアップとして痛いが、10年の長期固定なのでこの水準自体には
特段の問題はないものの、やはりなぜこのタイミングでこの金融機関で、さらに
固定金利なのかという点である。



 これによって長期の有利子負債の比率は85%となり、確かにバランスシート上
短期資金に依存しない構造となったが、現時点で10年もの長期固定にする意味
がどの程度あるのかというのも少し疑問だ。後で気がついたのだが、180億円
のコミットメントラインを持っているが、決算説明資料にも決算短信にもどの程
度利用しているのかが書かれていない。コミットメントラインがあるので償還は
特に問題はないと当初思っていたが、枠がないのかそれとも使ってくれるなと言
われたのかは不明だが、その辺の説明が欲しいところだ。あまり悪くは考えたく
ないが、邦銀からのニューマネーの供給はやはり難しいと考えるのが妥当な線だ
ろうか。そう考えると官民ファンドの設立で浮かれている投資家は後でえらい目
に逢う可能性だってある。現状は「官民ファンド設立->とにかくみんなOK」
みたいな雰囲気で株価が上昇しているが、邦銀からのニューマネー供給が極めて
困難であるという状況であれば、「金融コストの上昇->業績下方修正」という
形のネガティブショックが発生する可能性もある。
(但し、今年でなく恐らく来年以降の話になると思う)。



 改めて決算説明資料を見てみるとこのタイミングで長期資金を導入する理由が
あることが分かる。11月に100億円、来年の2月に第2回投資法人債70億
円の償還、さらに来年の5月にはフォワードコミットメントによる取得150億
円が予定されている。このコミットメントで気になるのは取得価格が150億円
で期末評価が121億円とすでに30億円の含み損になっていることだ。恐らく
売買価格は下方修正されて契約になるとは思うのだが、果たして期末評価まで売
主が価格を下げるのであろうか。このコミットメントではキャンセルすると20%
の違約金が発生するが、30億円もの違約金はかなりいたい。従って何が何でも
取得となりそうだが、かといっていきなり30億円の評価損というのもいただけない
話だ。それに違約金でまた業績下方修正となれば投資家の信頼を大きく損なうこ
とになり、これも避けたい。しばらくJPRの決算には目が話せないが、ちょっと
いやな雰囲気なのは私だけだろうか。


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ジョイント・リート投資法人(8973)

2009年09月03日 | 国内上場REIT


ジョイント・リートの株価のパフォーマンスが堅調だ。スポンサーのジョイントコーポ
レーションがオリックスのサポートによる資本注入があったのにも関わらず、破綻したのは
驚きだったが、その後の株価の上昇はスポンサー破綻リートとは思えないほどの好調ぶり
である。無論、市場の関心は新スポンサーがつくことを予想して先回り買いしているわけ
だが、逆にいえばスポンサーが決定すると株価が落ちるのではないかとも思える。異常と
も思えるこのパフォーマンスが本物であるのか少し分析してみる。


 当法人は東京圏の賃貸住宅及び商業施設を主たる投資対象とする複合型ファンド
で、運用資産53 物件、総資産1047億円、純資産492億円(3月末)。ポートフォリオ
の地域別投資比率は東京都心・城南地区37.6%、東京・周辺都市部26.4%、その他
36.0%、用途別には住居70.9%、商業施設29.1%となっている。平均築年数は8.0年
の中小型REITである。スポンサーは破綻したジョイント・コーポレーションで現在
は実質的にメインスポンサーが不在の状況。

 (収益動向)

 前期実績の分配金は5485円とその前の期と比較して半減した。資産取得中止に伴う
違約金565百万が発生したことのがその理由。今期は特別損失が発生しないと予想さ
れているので分配金は倍増する見込み。ポートフォリオ子の収益力を見ると年間の
賃貸NOIは53.4億円。FFO(Funds From Operation)23.6億円。期末稼働率は97.3%とな
っており、これらの数字から見るとまあ普通。レジデンシャルとしてはまあ可もなく
不可もなく。一つだけプラスにみることができるのはレジデンシャルの稼働率が少し
上向いているところぐらいか。

 (バランスシート)


 LTVは49.3%と微妙に高い。スポンサーが苦境でしかも、金融危機の影響で物件取得
を中止したことによる違約金の支払いがやはりきいている。さらに問題になりそうな
のが投資法人債を2本出していること。発行残高は100億円で第1回50億円が2010年3月
12日償還、第2回が50億円で2012年3月13日償還となっている。金融機関との極度ロー
ン契約が昨年12月に終了し資金調達面での苦境は続いている。しかしながら、金融機
関からの借り入れはバランスもよく、長期固定比率が比較的高い。またみずほ、三井
住友、住友信託、あおぞら銀行など幅広く借りており、日本政策投資銀行も融資団に
参加している。オリックスの途中からの支援が効いたのかもしれない。

 
 (成長戦略)

 戦略というよりはまずはスポンサーがどこになるのかというのが重要だ。それもあ
まりゆっくりはできない。投資法人債の償還が来年の3月にあることから今年中には
スポンサー選定をしなくてはならない。投資法人債に関してはいくつかのシナリオを
もっているようで、①借入金への切替、②物上担保付投資法人債の発行、③物件売却
④第三者割当増資などのいくつかのシナリオがある。法人側が指摘するシナリオを見
て見ると①の借入金の借換えは無理だろう。②の担保社債は可能性としてはあるが、
やさしいとは思えない。REIT市場が回復したといっても投資家サイドの需要が極めて
弱い。③と④が最も可能性があり、新スポンサーが発表されれば第三者割当増資を行
う確率が高い。その場合の稀釈化がどの程度になるかという点だが、投資法人債の償
還を考えると2万株以上、最低でも2割。通常に考えると3割のダイリューションが発生
すると考えるのが妥当だろう。少し気になる点といえば投資主構成だ。外人の比率が
高く、これが障害になるとは思えないが、タワー投資顧問などの機関投資家も大量に
保有している。大規模な第三者割当増資はやりづらいかもしれない。これは既存の投
資家にとってプラスかもしれないが、新規にスポンサーになろうとするものにはあま
り良い形ではない。



 (投資判断)

 新スポンサーが誰になるのかという点とその場合、可能性として高い第三者割当増
資による稀釈化がどの程度になるのかという点が重要だ。NAVは47万円あり、仮に3割
の稀釈化が発生したとしても32万9千円。現在の株価で仮に合併比率が決められるとし
て、負の暖簾代はそれほどの巨額にはならない。直近の株価の上昇がそれを阻害して
しまった。もともと大型のREITでもないので負の暖簾代目当ての合併対象にはそれほ
どの魅力はないだろう。あるとすればレジデンシャル系REITで資産成長を目指してい
るというごく普通の理由になるだろう。当法人のレジデンシャルだけを見ると平均築
年数が3.1年と実は結構新しい。それが高めの稼働率を維持する原動力になっている事
は否定できない。投資判断としては微妙なとろこだ。稀釈化後の分配金利回りは恐ら
く6%を下回るだろう。仮に合併相手のレジデンシャル系REITがそのぐらいの水準であ
れば、まあ良くも悪くもない。つまり普通。そのくらいまで株価がすでに上昇してい
るという事だ。

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