Bankの秘密基地

個人日記兼つれづれなるままに

なんやかんやで時間が経って

2012年12月16日 | 投資理論
 ブログ更新もせずにかなりの年月が経ってしまった。別段何かが起こったわけでもなく、ただ市場がつまらないので放置していた。まあ、近況を書けば今年はREIT指数が年初から23%上昇したことにより、トータルの資産のリターンも19%程度の上昇になった(11月末現在)。REIT指数よりも割り負けているのは株式資産が足を引っ張っている点(年初来でTOPIXが+7.2%、MSCI Kokusai指数がドルベース+12.31%)と実物資産の価格変動をゼロとおいたことが影響しているが、そこそこいい線をいっているだろう。因みに東日本大震災が起こった2011年はトータルの資産リターンで-6%程度になったが、TOPIXが-18.94%、REIT指数が-26.21%、MSCI Kokusai指数が-6.64%(但しドルベース)下落したことからこれもまあいい線いっているといってよいだろう。

 アセットアロケーションはREIT資産を含む日本株式・投資証券が60%、外国株式が15%、実物資産が10%、キャッシュが14%、その他が1%キャッシュが多いのは株式の大幅調整を予想していたことだが、結局大きなものはなかった。それでも、自慢するわけではないがアセットアロケーションはいわゆる機関投資家と比較しても勝っている方ではないのでなかろうか。株式会社格付投資情報センターが発表しているR&I年金ユニバース・パフォーマンスによれば2012年1-3月は6.82%のプラス、4-9月はマイナス2.02%だから年初来で考えると時間加重収益率で4.66%のプラスだ。9月末現在で見ても私の資産全体のパフォーマンスは18%を超えているのでまずは勝利だ。とはいっても個人資産と企業年金のパフォーマンスを比較しても仕方のないことだが、でもやっぱ自分がどうだったかというのは知りたいところだ。R&I年金パフォーマンスは日本の厚生年金基金、確定給付企業年金の多くを網羅しているので、「世間並み」がどの辺にあるのかを教えてくれる。

 勝っているからと言っても常に勝っているわけではない。例えば2011年の場合(私のパフォーマンス評価は暦年ベースで行っており、企業年金では年度ベースで行っているので比較するには再計算する必要がある)、R&Iの年金ユニバースのリターンは再計算してみると-3.6%。私の資産は6%以上下がっているので負けていることになる。一番の大きな原因は債券の比率がどの程度あるのかという一点に尽きる。基本的に為替ヘッジ目的以外の債券投資にはあまり興味がないのでほとんど投資していない。債券投資の世間並みがどの程度なのかは不明だが、一番参考になるのが企業年金連合会のアセットアロケーションだ。


            
 企業年金連合会は実は私もお世話になる予定の年金基金で、転職した人や退職して自営業などになった人が企業に勤めていた時に掛けていた厚生年金基金の資産を引き継ぐ組織だ。わかっているとは思うけど国が運用している厚生年金(基礎年金)と企業が運用している厚生年金基金は別物ですから。紛らわしいので理解している人が少ないのだが.....。これで見てもわかるとおり、債券の比率は結構多い。外国債券を含めれば59%。つまり6割も組み入れている。個人的にこれはどうかなと思うけど。アセットアロケーションで顕著に変化したのはやはりリーマンショックの時で21年度から22年度にかけて大幅に国内株式の組み入れ比率が減少している。一方で外国株式の比率は上昇しているが、先進国から新興国株式に振り向けられたと考えれば頷ける。リターンの方はどうなったかと言えば、それは下の図になる。



 債券の比率を上昇させた割には資産のボラティリティが低下しているとも思えない。債券を引き上げるという意味は株式士資産のボラティリティと比較して期待リターンが低いと予想していることを示しており、当然資産のボラティリティを引き下げパフォーマンスの悪化を防ぐ目論見だが、あんまり成功しているようには見えない。むしろ、市場が好転した23年度は株式の比率が低すぎてとれるリターンが取れなかったとも解釈でき、裏目に出たとも言えるのではないか。年金の指導的立場にある企業年金連合会が保守的なアセットアロケーションを組んでいるのには理由がある。AIJ事件で注目されたが、総合型と呼ばれる中小企業主体の年金システムが崩壊しかかっている。基金の解散とかあるとその受け皿になるのは連合会だ。10兆円弱の資産規模を誇る連合会だが、今後の年金給付や解散基金の増加を考えるとあまりリスクを取れなくなるのは自然だ。直近の23年度で見ると給付・受換金の合計ではネット5千億円のキャッシュアウトになっており、ピークで13兆円あった資産は25%以上減少している。



 アセットアロケーションというと即ち、「いかに儲けるか」というのが第一目標と考えられがちだが、それは投資主体による。私のような個人では確かにそれが第一目標といっても良いだろうが、年金基金の場合には少し意味合いが違う(と私は考える)。年金であるからには年金受給者に対して受給権の確保。即ち、資産の保全が重要であることは間違いない。実は資産の保全という観点では国ごとに考え方の違いがあって、例えば欧米など最も早くから年金制度を初めた国では株式資産への傾斜が高く、債券・不動産への比率が低い。これは株式に長期にベットしてリターンを上げることを目指しており、一方で債券はポートフォリオのボラティリティの低下、つまりリスクリターンプロファイルの改善を目的としている。不動産は一般的にリスクが高いと考えられており、ようするにリターンはあるかもしれないが「あぶない」資産クラスと考えられている。一方、日本では株式は「あぶない資産」と考えられ、債券は安全、不動産はまあまあ安全と考えられているのは特徴的だ。「年金は大切な資産だから、安全に運用しなくてはならない」。確かにこの考え方は間違っていない。間違っていないから合成の誤謬というか、意図せざる結果をもたらす。

           
 上の図は経済財政諮問会議のグローバル化改革専門調査会が平成20年に出したレポートで出ていた図を載せたが、日本の2002年から2007年の平均収益率は2.9%。カナダの9.1%はもとよりノルウェーの4.6%にも負けている。但し、注意しなければならない点として旧大蔵省預託分を除く、市場運用部分で見ると4.3%となる。それでもカナダには負ける。これはどういうことかと言えば、仮に平均リターンが5%と下位だが、それなりの運用をしたとすれば日本の実績値との差は3%。5年間で複利計算すれば、資産は1.15倍になる。国民年金・厚生年金保険(政府管掌分)の積立金規模が149兆円だから、5年間で23.7兆円の差がでていることになる。確かに損はしてなかったが、儲けそこなったのは「損じゃないか」? 因みに各国のアセットアロケーションを示せば以下の通りとなる。



「だからもうけるのが正解だろう」と言われれば、そうなんだけれども、そうじゃない。結局、アセットアロケーションはちょっとカッコよく言えば投資の理念・哲学・思想が反映されていなくてはならない。報告書で紹介されているカナダの年金基金の場合、投資の目標・信念は次のようなものとされている。

・CPPIBの運用の使命は、加入者及び受給者の最善の利益のために投資を行い、カナダ年金制度の資金調達に与える影響や同制度の財政上の義務を考慮しながら、不必要なリスクを回避して長期的な投資収益を最大化させることとされている。

また、CPPIBは次のような考え方で運用を行っていることを明らかにしている。

1. 投資に対する新しい考え方は、収益をもたらし得るものである一方、このような投資にはスキルが必要。

2. 先行して参入することには、高いリスクがあるが、高収益を得るチャンスもある。

3. 市場収益を上回る収益(α)は非常に重要である。ひとつの市場において、投資家が多くなるほど、αの獲得は難しくなる。

4. 未公開株は多大な収益をもたらすものである。


 さらにノルウェーの政府年金基金の場合は

○ 将来の高齢化の進展による福祉関連支出の増加に対し、石油・天然ガス産出による財産を将来世代に残すことが投資の目標とされている。

○ 基金財産は国会の承認に従って中央財政のみに使用されることとしている。基金の運用益は中央政府の財政赤字補填を行うこととされており、その補填額を除いた剰余金は基金の積立金として蓄積される。中央政府の財政赤字補填(2008年予算で約7,300億円、約4%に相当)に当たっては、基金の仮想収益率を4%として政府予算を組んでいる。

○ 国内外に対しての情報開示を徹底して行っている。

 カナダと違って少し、あいまいな書き方だが、国内の資源で得た資産を将来に残すという点をはっきりさせている。そのために資産配分は株式資産は41%の配分としているが、ノルウェー株式。即ち、自国株式の配分をゼロとおいているのが特徴的だ。自国市場が小さいことから海外株式に特化するとは
っきり打ち出している点が興味深い。


 スウェーデンのケースではこんな感じ

○ 所得比例年金において可能な限り高いリターンを得ることとされている。ただし、投資における全体的なリスク水準は低くあるべき、また、リスクの水準は、長期的に高いリターンが見込まれるように決定されるべきとされている。

○ 産業政策やその他の経済的関心については勘案しないこととされている。

 運用資産の30%以上は信用リスク及び流動性リスクの低い債券に投資することと、インハウス運用及び、アクティブ運用の比率が高い。特にアクティブ比率は7割以上になっており、日本の年金で流行っているインデックス運用とは一線を画している。



 翻って日本の公的年金の運用の理念・哲学・思想とはなんだろうか。「長期的な観点からの安全かつ効率的な運用」、「分散投資を基本として長期的な観点からの資産構成割合(基本ポートフォリオ)」を定め、これに基づき管理・運用」などとまあわかるんだけどアナリスト試験のテキストからコピペしたような文章がつらつらと並んでいる。先ほどのカナダの例で言えば、受給者の利益を考慮して最善の投資を行う。即ち、リターンに見合ったリスクはちゃんと取りますと宣言しており、その具体例を挙げている。ノルウェーの場合でも資産を後世の世代に残すためにリスクを取ります。但し、自国市場は小さすぎるので投資しませんと宣言している。スウェーデンの場合には少しあいまいだが、一定の債券投資を除けばリスクを取ります。そしてインハウス・アクティブ運用が多いという特徴がある。アクティブが多いということは市場リターンだけでなく、積極的にアルファを取りに行くということを宣言していることだ。

 そこで先ほどの哲学・思想に関わるのだけれども、「受給権は大切だから損しないようになるべくリスクを押さえます」というのは思想たり得ない。これは年金は年金でも閉鎖年金の思想だ。閉鎖年金とは加入者がいない受給者だけで構成される年金のことを指し、受給者に給付をすることを最大の目的とした年金を言う。従って、リスクは取らず給付ととも最後には消滅することを前提にしている年金だ。

 投資は期待収益率をもとにアセットアロケーションを決定するというのは確かに教科書が教えることだが、結局のところ期待収益率をバーラモデルとかでどんなに精緻に最適化計算をしたとしても確率論的に高いものしかでてこない。つまり絶対に正しい答えなど世の中に存在していない。個人の場合には1年あるいは3か月程度の見通しでしか市場を見ない。機関投資家でさえ、毎四半期のレビューを恐れて、長期と言いながら3か月位の見通しで運用している。本来、長期で考えられるはずの年金基金ですら、理事会への報告の為にアロケーションは1年位でしか考えられないのが現状だ。

 そんな不確実な世界にいる我々が長期の視点で運用など本当にできるのだろうか。損を出さずに利益を最大化するなど神でもないわれわれ人間が可能なんだろうか。こういった不可知論に陥ると何もできなくなるが、それを防止するために運用の哲学・思想が必要になってくる。確かに絶対確実な期待収益率は得られない。損する可能性もある。受給権の確保はとても重要だ。神に頼ることができない我々人間は次に頼るのはおのれ自身が持つ信念による他ない。 哲学・信念は人それぞれ、お国ごとにも違うので正解はないが、例えばこんな感じ。

・長期(ここでは30-50年とかの単位)で考えれば、経済は拡大再生産して行く(ここでは単に日本経済という視点でなく、世界規模での経済の拡大再生産を前提とする)。従って、受給権の確保とリターン最大化を狙うには債券投資よりも企業への投資、即ち株式投資への傾斜配分がリスク・リターンプロファイルを最適化させる。株式投資は経済のグローバル化の進展を考慮してGDPウェイトベースのベンチマークを採用する。アクティブ投資はインデックス投資に負けるというリサーチ結果が数多くでているが、優秀なファンドマネジャーは必ず存在する。従って丹念にマネジャーの資質を精査しながら、一定割合のアクティブ投資を行ってアルファを獲得する。未公開株投資はリスクは高いがリターンも大きい。新興国経済の一層の成長は当該市場の株式リターンが高いと予想できるためある程度の配分を行う。


 上記に書いた内容が正しい、正しくないというのは議論の余地はあるが、繰り返しになるが思想・信念に1つの正解はない。つまるところ、それを信じきることができるかが重要なのだ。なんだか、宗教がかってくるが、絶対確実な期待収益率が得られないのは真実である以上、何を信じるかが重要であって「慎重」にとか「適切」、「リスク管理」とかわかったようなわからない言葉を語るよりも、最善の運用するためにどういった信念でもって運用するかを明らかにするのが大切だ。「経済が拡大再生産に向かう」と信じられるか、「優秀なアクティブマネジャーが存在する」と信じられるか。「新興国の経済成長」を信じられるかが上記で問われている。ちょっとかっこよく言えば、アセットアロケーションには自らが信じる思想・信念が入っていなくてはならない。

 先ほどの企業年金連合会のアセットアロケーションを見ると、日本株の長期的な配分減少は「日本経済は衰退する」もしくは「日本経済の低迷はさらに長期化する」との暗黙の了解が資産配分に実現したものだ。原発事故いらいよく「がんばろう」という言葉をよく聞く。「頑張ろう日本」という標語もよく目にするが、日本の投資家に限っては「日本は頑張れない」という暗黙の信念があるようだ。私は「日本は頑張れる」との信念から日本株の比率はかなり多いです。恐らくこの信念は相場がどうなっても変化しないだろう。なぜなら私の信念だから。

 PS

 文章を読み返して気づいたのだが、上記の議論で言っているアセットアロケーションとは厳密には「ポリシーアセットアロケーション」を指します。ポリシーとはGPIFなどが言っている基本アセットミックスと同じで長期で保持すべき基本的なアセットアロケーションを指し、実際の運用の過程では資産配分を変更するのは問題ない。信念があるからと言って確たる相場見通しがあっても当該資産を減らしてはいけないという意味ではなく、マーケットのタイミングで資産配分を変更することをタクティカルアロケーションと呼ぶ。一般の投資家は資産配分と言えば、タクティカルアロケーションの事だと考えているが、長期の投資家にとってはポリシーとタクティカルをわけて考える必要がある。短期的に相場局面で資産配分を変更してもそれは基本配分であるポリシーに色を付ける形で行い、もし相場予想が立たない、よく分からない、自信がない場合、長期配分であるポリシー配分に戻るという形で利用される。ポリシーが必要なのは人間は間違える、自信過剰になる、悲観的になるのが普通なのでそれらを防止するアンカー(錨)の役割を果たす。そういう意味でポリシーはアンカー配分とも呼ばれる。

 年金運用ではよく使われる概念なのだが、まあ、何を言っているのかわからないという人は特に気にする必要はありません。上記の議論含めて忘れてください。


 最後に最近もらった株主優待を紹介



 日清食品のセットです。結構大きいです。



 これはJT。優待品は選べます。私はごはんセットを選びました。

web拍手 by FC2


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Monex Vision βを試す

2011年04月11日 | 投資理論
 投資ツールはネット証券をはじめ各社からいろいろなツールが出されており、現在の個人投資家レベルでも結構いろいろなものが使えるようになってきている。私も時折利用するが、スクリーニングツールなどやチャートツールなどは機関投資家の利用しているものとは異なっているが、それでもそれほど劣ったものではない。むしろトレーディングツールに関して言えば機関投資家用とさほど変わらないものもあるほどだ。但し、トレーディングが主体でなく、中長期投資でバイアンドホールドが基本とする一般投資家にとっては、高度なトレーディングツールは面白そうであっても意外に投資判断に寄与していない。デイトレーディングやチャート分析で売買を行う投資家ならいざしらず普通の投資家はそれほどアクティブであるわけではない。 むしろ材料でもって投資判断を下す人が大半だ。一方で資産運用に関しては全体のポートフォリオ管理を行っている人はほとんどいない。直感的にキャッシュポジションを管理していたり、気分でアセットアロケーションをしている人がほとんどだろう。

 私も何社かの証券会社を利用しているがそのうちの1社マネックス証券でポートフォリオ管理ツールが提供されているのでそれを試してみる。このツールの優れているところはマネックスの残高だけでなく、預け入れている他社の投資残高を反映させることができる点だ。登録しておけば、他社に自動ログオンして残高を更新させることができる。Monex Vision βとよばれるプログラムでマネックスの顧客であれば利用することができる。ところが少し困ったことにこのプログラム、マネックス自身があまり宣伝していないのか、マネックス証券の顧客も容易に探せないようになっている。



 ログオンして「投資情報」にあるかと思ったら、ない。上の写真のとおりだが、ログオンして「商品・サービス一覧」を選択するとサービスメニューがずらっと並ぶ。その中にMonex Vision βを見つけることができる。ほとんど宣伝していない理由もよくわからないが、まだベータバージョンだからだろうか。ベータが取れれば本格的に利用できるということなんだろうか。それはともかく利用は極めて簡単だ。ログオンすれば自動的に残高がロードされ分析画面がでてくる。



 上の図がログインした後にでてくるポートフォリオ分析図だ。まず外部資産の自動更新であるが、国内の金融機関の大半は対象になっている。SBI証券、カブドットコム証券、楽天証券などのオンライン証券はもとより、野村、大和、日興証券などの対面型証券の自動ログオンが可能だ。それに主要な銀行も対応できる。問題となるのは海外の金融機関には対応していない点。マネックスが買収したBOOM証券もできない。恐らく海外金融機関を利用しているユーザーはほとんどいないとの見方をしているのだろう。但し、海外金融機関対応はしていないものの、マニュアルで入力する機能があることから問題は起こらないだろう。参考としてアップした写真だが、すべての証券を登録するのも面倒だったので、私が利用している主要な証券の資産残高を更新している。BOOM証券の残高はマニュアル入力を行った。それと銀行口座は除外した。銀行のキャッシュは資産運用対象外なので問題はないだろう。また実物不動産や匿名組合出資なども除外している。パフォーマンスが計測できないといいうのが理由だ。

 ポートフォリオ分析をしてみると面白いことが分かった。ターゲットは積極型のポートフォリオを選択したが、分析結果から得られた最適ポートフォリオは結構異なっている。一方でリスクリターンプロファイルは現状ポートフォリオでも結構近接していることがわかる。REIT資産がオルタナティブ扱いになっていることと、REITのボラティリティが株式のそれと結構にていることがその背景にあるのではないだろうか。適当にやっているわりには意外にいい線言ってんじゃね?



 分析の詳細タブを選ぶと現状と目標ポートフォリオの比較ができる。これによればオルタナティブ投資が多いので株式資産を増やせというのがアドバイスの第一、国内資産が多いので新興国株式を含めた外貨建て資産の増加を促すというのが2番目のアドバイスだ。ひとつ前の写真でもわかるとおり、実は最適化ポートフォリオと現状ポートフォリオとではリスクリターンプロファイルが似通っていることから、リバランスによるリスクあたりのリターンの増加が少ない。リバランスに伴う売買コストを考慮すると本当にリバランスをした方がメリットがあるのかは疑問だ。但し、国内資産を減らして外貨建て資産の増加を図るというのは少し賛成だ。



 追加購入アドバイスというタブを選択すると何を買えばいいのかというアドバイスが個別資産ごとに金額で示してくれる。私の場合には新興国株式をもっと買い、コモディティ関連にも投資しろという内容だ。このツールのよいところは自分の運用ポートフォリオのリスクリターンプロファイルを計算してくれるところが最大の売りだ。一方、難点はいくらでもあるのだが、まあ簡単にいえばクオンツ運用している投資家ならともかく、アクティブ投資家にとって必ずしもアドバイスに従うインセンティブがほとんどないことだ。私のケースでも外貨建て資産の増加というのは傾聴に値するが、新興国株式・コモディティの投資の増加はあまり素直にしたがえない。第一、REIT、高配当株式をメインに投資している投資家に本当に最適なものかという点だ。確かに期待リターンとリスクで最適化すれば、そうなるだろうが投資家にもいろいろなタイプがおり、数値化できないリスク選好を持つ投資家にとっては馬耳東風となろう。

 見た目にもハイテクなツールがでるとなんだかその気になる人が多いのであるが、いくつか注意点を。Monex Vision βは仕様が明らかにされていないが、オプティマイザー(Optimizer)を利用した最適化計算ツールだ。有名どころではパーラモデルが有名だが、それに似たものだと考えていい。問題はオプティマイザーで使用する期待収益率とボラティリティをどのように計算しているかという点だ。通常、簡便なツールであれば、ボラティリティは過去20年とかのヒストリカルボラティリティを利用する。期待収益率も過去の平均リターンを使用する。当モデルでは国内株式の期待収益率が4.8%におき、1980年1月から2010年8月までの30年間の平均リターンで計算しているようだ。しかし、新興国株式とかREITのボラティリティは一体どうやって計算しているのだろうか。最適化プロセスではどの程度のヒストリカルデータを利用するのかという点と、ウェイトづけをするかしないかで最適化結果は大きく変わってくる。

 最適化ツールについては書き出すと本ができてしまうくらい奥が深いのでここでは詳述しないが、ヒストリカルデータの扱い方で「最適」かそうでないか、答えが大きく違うという点を意識する必要がある。例えば、ヒストリカルデータを平均するやり方とヒストリカルデータにウェイトづけするやり方では答えが違う。「平均」とはまさに押しなべて平均的に「事象」が発生することを指すが、株式市場の経験則は大昔よりもより直近の「事象」に左右されると考えれば過去20年のデータなら直近5年のデータに50%とか多めのウェイトをつけて算出するという方法もある。分かりやすく言えば東電の株価の動きは15年前-20年前よりも直近5年の動きの方が未来のボラティリティをうまく説明できるという考え方だ。

 期待収益率の算出についても留意する必要がある。一般的にはこれもヒストリカルデータを利用するが、これは過去に実現したリターンが将来も「平均的に」実現すると予想したものに他ならない。理屈はそうだが、直感的には疑問が残る算出方法だ。アクティブに期待収益率を予想するという方法もあり、マクロ予想からのトップダウン手法、アナリストの予想収益率を集計したボトムアップ手法など、さらにアクティブ予想に複数シナリオを予想して確率で加重するシナリオ加重といった手法など様々な方法がある。期待収益率が1%異なれば、でてくる最適化結果も大きく異なってくる。

 結論からすれば、最適化ツールはあくまでも参考で、「最適化結果」を鵜呑みにして投資判断を下してはならないという当たり前の結論になる。このサービスがあるのはうれしいが、私個人としてはサービスで利用しているオプティマイザーを公開して個人で利用できるようにしてほしい。実はそう思うのは一つ理由があって、最適化ツールであるオプティマイザーにはその機能を利用すると少し変わったことができる。まあ、オプティマイザーの種類やカバーしている機能にもよるが、オプティマイザーで最適ポートフォリオを計算するという一般的な利用方法とは別に、現状ポートフォリオから投資家が期待している資産クラス毎の期待収益率を計算することができる。分かりにくい説明だが、仮にある投資家の現状のアセットアロケーションが「最適」であると仮定した場合、オプティマイザーを利用してその投資家が期待する各資産クラスの期待収益率を計算することができる。これを「逆最適化」と呼ぶ。つまり、仮に現状がベストなポートフォリオと想定するなら自分が保有する国内株式、外国株式等の期待収益率を逆算できることになる。

 なにを言いたいかといえば、仮に投資家が自分のポートフォリオに国内株式を30%保有しているとする。そして他の資産クラス、例えば外国株式、債券の比率が分かっており、自分のアセットアロケーションがベストなものであると考えているとする。さらにその投資家が個人的に株式に超強気と考えている。逆最適化により各資産クラスの期待収益率が計算され、仮に国内株式の期待収益率が外国株式のそれを下回ったという結果がでれば、それは本当は自分は国内株式にそれほど強気ではないということが分かるのである。実際のポートフォリオから自分の本当の期待が計算できる。まあ、こんな使い方もできる。


web拍手 by FC2
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アセットアロケーションと通貨セレクション(2)

2005年01月02日 | 投資理論
 グローバルな資本市場においてはアセットアロケーションと通貨配分の意思決定は別々になされるというのがここでの主張である。これは過去のヒストリカルなリターン、ボラティリティ系列の分析から支持される。1990年までの5年間でヘッジストラテジーはヘッジなしポートフォリオに対して著しい劣後となった。ドルが主要通貨に対して急激に下落し、フォワードレート以上の下落になったのが原因である。一方で円ベースの投資家の場合にはその逆の状況になる。

 ヘッジベースの株式市場のボラティリティはヘッジなしと比較すると低いことが知られており、資産間の相関係数は5年、10年といった期間においても十分低い水準となっている。ヘッジすることによる資産クラスのボラティリティは現地通貨ベースのそれと等しくなり、マーケットリスクは為替リスクから解放されることになる。ヘッジポートフォリオはヘッジなしと比較するとボラティリティが10%以上低下していることが歴史的に確かめられている。

 ヘッジポートフォリオはリスク・リワードを改善させる効果があると試算されている。たとえば、世界株式の平均リターンが12%であったとしよう。かつリスクが15%で、ここでヘッジすることによりリスクが12%まで低下すると幾何平均リターンは40bp程度改善することが試算されている。ここでの結論は必ずしも自動的なヘッジストラテジーを推奨するものではないことを断っておく。ヘッジコストが過大かどうかは結局のところキャッシュリターンとフォワードマーケットのコストの差分に依存し、外国通貨の期待リターンのコンフィデンスの度合いによって決定されるべきものである。しかしながら、為替ヘッジによるリスクの低減効果の大きさとリスク・リターンプロファイルの改善効果は検討に値するといえよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アセットアロケーションと通貨セレクション(1)

2005年01月01日 | 投資理論
The kind of framework we have described makes no naive assumptions about the normal relations between price/earnings ratios across international boundaries, and it makes no assumptions inconsistent with equilibrium theory. Importantly, such a framework separates the currency forecast from the forecast for asset class returns, and thus presents the investor with an array of fully hedged investment alternatives. Forecasts of hedged asset class returns can be developed directly from measurements of risk premia. These can thenbe supplemented with independent forecasts of currency returns.

為替ヘッジ戦略は複数の海外資産にわたる株価収益率との裁定関係といった単純な前提ではなく、通常の均衡理論と一致するものではない。このようなことから原資産リターンと為替リターン予測は分離することが重要となり、投資家はフルヘッジベースでの資産選択を行うのが重要とされている。ヘッジベースの資産クラスのリターン予測はリスクプレミアムの計測から直接的に計測される。またこれは為替リターン予測とは独立して行われるが通常である。

Distinguishing asset class expectations from currency expectations is important because it achieves two often contradictory objectives: it broadens the set of investment alternatives and simultaneously simplifies the evaluation of those alternatives. If asset class decisions are based on fully hedged(local currency) return expectations, the reulting structure will give approximate equivalence among cash equivalents around the globe, since the forward markets are largely driven by this arbitrage.

 為替予想からくる原資産のリターンとの分離は重要である。なぜならそれはしばしば2つの相反する目的を達成させることができるからである。投資選択可能な集合を拡張させることと同時に、それぞれの選択肢の評価を単純化させることが可能である。仮に資産選択決定プロセスがフルヘッジベース(現地通貨ベースの期待リターン)の収益率であるなら、最適化されるのはすべて現地通貨ベースのキャッシュリターンになるはずである。なぜならば、ヘッジコストはキャッシュリターンとフォワードマーケットとの裁定関係にあるからである。

This structure leads to direct comparability of the asset classes and to variance and covariance measures that are independent of the home currency. The crrency decision can then be made separately, based on whether the incremental return associated with an attractive currency would justify the incremental risk associtated with lifting the hedge. In fact, the appropriate "no-forecast" allocation for investors will be fully hedged since the two-sided nature of the currency market makes it unlikely that the normal expected return from unhedged positions is sufficient to justify bearing the additional risk.

 このような関係は異なるアセットクラスの直接的な比較を可能にさせまた同時に自国通貨とは独立な分散と共分散の計算が行えるようになる。通貨配分の意思決定は別に行われ、それらは為替ヘッジにより、リスク・リターンの増分に見合ったより魅力的なリターンが達成できるかどうかの判断によるものである。「予測なし」の資産配分はフルヘッジベースの配分のことを指し、これは通常為替市場がリスク増分に見合う期待リターンを生むことがまれなことを前提にしている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする