外に無く、内に有ること。

美を感じること、自然に生きること。

死の匂いと芸術の香り

2010-01-26 09:22:24 | 日記


今日の本は、佐藤明写真集「バロック・アナトミア」。
フィレンツェにある「ラ・スペコラ解剖学博物館」を撮影したものです。

同じ人の形を写したものなのに人形と解剖模型は、与える印象は違う。
それは人形の生のカタチに対し、解剖模型は死のカタチであるから。

以前この博物館の写真集を洋書でも一冊持っていたが、どちらか一冊残そうと、こちらを選んだ。
その理由はこちらの方が写真のピントが甘いから。
洋書の方は標本ケースから出して商品撮影のようにハッキリと正面から写している。
この本はケースのガラス越しに鑑賞者の視点で撮影しているので臨場感があるのです。

資料としての写真は精度を要求するが、芸術性とはまた別の話。
科学と芸術の境界とはそんなところにあるのだろう。
小さいことですが、科学と芸術のどちらかを選択しようと、迷いながらも芸術を選択したということ。
そんな小さな選択で運命のパズルは導かれていく。

角田光代が「過剰博物館」というエッセイで、「フィレンツェでもっとも満足したのはこの博物館だ」と書いていた。

角田光代いわく、

「何かが激しく過剰である。
 そして私は、過剰であるものを観るのが、本当に好きなのだ。」