外に無く、内に有ること。

美を感じること、自然に生きること。

色彩の極致へ。

2010-03-29 07:57:14 | 日記


今日は、ジョルジョーネの優秀な弟子「ティツィアーノ」。
ジョルジョーネの前には、ベリーニ兄弟に学んだようなので、ヴェネツィア派としては完璧です。

ティツィアーノは当時としては非常に長生きで90才くらいまで生きたと言われている。
初期はジョルジョーネ風の落ち着いた画風でしたが、後期にはバロック様式にまで踏み込んでいる。
これは同じようにしたミケランジェロにも言えることだろう。

ミケランジェロとティツィアーノはローマで会っている。
ヴァザーリにミケランジェロはこう言ったらしい、「ティツィアーノの色と筆法はなかなか気に入ったが、充分に素描を学んでいないのが残念なところだ。」と。

基本的にフィレンツェは素描に重きをおき、ヴェネツィアは色彩に重きをおく。
どちらが重要ということではなく、そのひとに深く染みこんだ資質が調整点を見いだすのだ。

ティツィアーノの最晩年に描かれた「ピエタ」はその時代をはるかに超えている。
色彩が抑えられているかに見えて、かえって色彩が奥底から浮かび上がるという、極致に到達している。

解説の辻茂いわく、

「燃える色彩の錬金術師」。



人間に深みが出たのか?

2010-03-28 10:19:25 | 日記


今日はヴェネツィア派のキーパーソン「ジョルジョーネ」。
ジョバンニ・ベリーニの弟子で、ティツィアーノの師にあたります。

彼はベリーニが作り上げたものを継承して深め、ティツィアーノへと伝えたのですが、30才ほどで亡くなっている。
ジョルジョーネの作品は全てが美しい、それはフェルメールと同様なことだ。

私にとってのジョルジョーネは「嵐(テンペスタ)」と呼ばれる傑作、誰もが認める絵画の頂点の一点。
この絵は私が高校の図書館で美術全集を見ていて、その絵の女性に強く惹かれて、鉛筆で模写したものだ。

今観ると、その女性より背景の風景のほうに強く惹かれる。
う~ん、やはり年齢を経て、人間に深みが出たのか?きっとそうでしょう、、、。

こんな話が載っている、ジョルジョーネの友人が壁画を褒めると、その部分はティツィアーノが描いた部分だった。
それ以来、ティツィアーノには仕事をまわさなかったという、ジョルジョーネさん、その小さいところも、よけい好きになりました。

でもティツィアーノの良いところは殆どジョルジョーネから来ている。
そして私はジョルジョーネのほうが大好きです。

解説の今泉篤男いわく、

「微かに覆い流れている一種憂愁の気配」



ああ、麗しのウルスラ姫。

2010-03-27 04:42:23 | 日記


今日はなぜか美味しそうな名前の「カルパッチョ」。
ヴィットーレ・カルパッチョは「聖ウルスラ伝」の画家として知られている。

カルパッチョは、美術史上はあまり重要な画家とは言えないが、その素朴な描写力が長所になっている。
もしも意図的にしているとしたら、この魅力的な画面にはならないだろう。
解説では「カルパッチョの芸術的性格ともいうべきものは、表現の暖かさである。」と暖かく書かれている。

カルパッチョは努力家であるのは、舞台装置としての背景の丁寧な描写に感じられる。
このシッカリした舞台があってこそ、この人形劇のような人物たちが生き生きしてくる。

評論家ジョン・ラスキンはこの「聖ウルスラ伝」主人公のウルスラ姫にかなり深く2次元萌えをしていたらしい。
それもそうだなあと想わせる、お姫さまキャラに描かれているのが、面白い。

解説の目形照いわく、

「ヴェネツィアの生命の魔術的発現」。



特別な絵か、特別な心か?

2010-03-26 10:55:04 | 日記


今日は、昨日のマンテーニャの義兄弟「ベリーニ」。
ジョバンニ・ベリーニは、父のヤコポ、兄のジェンティーレが画家である、ヴェネツィア絵画の基礎を築く画家一家に生まれている。

ベリーニの妹がマンテーニャに嫁いだために義兄弟になるわけですが、同じ時代に生まれて、同じような画題を描きながら、二人はハッキリとした画風の違いがある。
マンテーニャにはあまり空気感が感じられないのに、ベリーニはそよ風が吹いているような感じだ。
3Dソフトをレンダリングするとき、全体にピントがあったクリアな画面が普通だ。
高度なソフトでは被写界深度を設定することができるので、空気感を感じることができる。
マンテーニャのクリアな感じに対して、ベリーニは被写界深度を微かにかけた感じの空気感だ。

その違いは何処から来るのか、と考えると、育った内陸のパドヴァと海側のヴェネツィアの湿度の違いではないだろうか?
育った地方の気候は画家の視覚に強く影響があるはずだ。

かなり以前20年ほどか、テレビでアメリカの個人コレクションのなかに、ベリーニの「十字架を背負うキリスト」が写っていたが、それが光り輝いて見えて感動した記憶がある。
その後ベリーニの画集を見てみるが、それらしい構図のものはあるのだが、あの感動は感じられないのだ。
それだけが特別な絵だったのか、その時の自分の心が特別だったのか?

解説の辻茂いわく、

「敬虚と愛の画家」



短縮法の魔術師

2010-03-25 11:00:00 | 日記


今日は、カワイイもの好きな私が、かわいくなくても好きな「マンテーニャ」。
エゾリスも好きだけど、チャールトン・ヘストンも好き、て言う感じ。
彼こそイタリアルネッサンス第一の画家といっても過言ではない、かも知れない。

時代的にはフィレンツェ御三家より、年上なのに今頃出てきたのは、ヴェネツィア絵画につながり、そこからバロックに流れ行く方が自然だからです。

よく遠近法のテキストに短縮法の作例として有名な「死せるキリスト」で目にしてる方も多いはず。
人物の短縮法と室内の透視図法との二重の遠近法を使い分けて独自の絵画空間を創りあげている。
北イタリアのマサッチオと呼ばれる所以です。

マンテーニャは遠近法を愛した点では、ウッチェロやフランチェスカに近いものを感じますが、もう一歩踏み出して、古代風インテリア空間にまでなっている点が大きな特徴。
古代風空間に空間感を高めるために配置されている人物、登場人物が中心ではなく、その背景となるべき空間のほうが主人公になっている。

ヴェネツィアの画家一族ベリーニ家の娘と結婚したマンテーニャは、明日登場のジョバンニ・ベリーニと義兄弟になり、最強タッグでヴェネツィア絵画の基礎を築きあげるのです。

解説の辻茂はゲーテの「イタリア紀行」から引用して、

「なんと鋭敏適確な直截さが、マンテーニャの画面にはあることか」。