スマートフォン市場が韓国のサムスン電子と米アップルの2強時代に突入した。
7-9月期にサムスンがアップルを抜いて初めて首位となったとみられる一方、アップルも14日発売した「iPhone4S」を3日間で400万台販売。
スマートフォンヘの収益依存度を高めている両社が競う構図が鮮明になってきた。
●先行きに潜在的不安感
サムスンの7-9月期の部門別収益は未公表だが、売上は前年同期比2%増の41兆ウォン(約2兆8700億円)前後となった模様。
部品事業を支えるDRAMと液晶パネルの価格下落にも関わらず、増収を維持するのはスマートフォンの効果。
サムスンはアップル(1707万台)を上回る2000万台後半のスマートフォンを販売したとみられ、営業利益もアナリスト予測平均を上回って14%減の4兆2000億ウォン前後に踏みとどまった。
サムスンは19日、米グーグルが開発した最新の携帯用基本ソフト(OS)「アンドロイド4.0」を採用したスマートフォン「ギャラクシー・ネクサス」を発表。
11月に米国、欧州、アジアで販売する。日本ではNTTドコモが「ギャラクシー・ネクサスSC-04D」を発売する。
一方のアップルは、14日に日米など7カ国で売り出した新型「iPhone4S」を3日間で400万台販売。年末商戦は「記録的な売り上げになる」(ティム・クックCEO)模様。
ただ、7-9月期の台数は4-6月期に比べて16%減。前年同期比で21%伸びたものの、破竹の勢いは「一時停止になった」(アナリスト)。米株式市場の時間外取引で株価は一時7%超下落した。
「当面は好業績が続くだろうが、革新的であり続けられるかどうかが課題」(米メディア)。
スティーブ・ジョブズ会長の死去に伴い、市場が抱いてきた過剰な期待がはがれるとともに、アップルの先行きに潜在的不安感が強いことを示した。
●激しい価格競争
販売規模を伸ばすサムスンだが、死角もある。日本勢が薄型テレビなどの価格競争で体力を消耗したように、スマートフォンも価格競争が激しい。
例えば、アップルは現在、2009年に発売した旧世代の「iPhone3GS」について、2年契約できる利用者には無償で提供。機器単体の販売競争では、収益を確保しにくくなっている。
サムスンはグーグルと組むことで、アプリなどを利用できるようにした。しかし、アップルはすでに2億人以上に楽曲やアプリを配信する仕組みを自社で築いており、大きく先行している。
強力な指導者を失ったアップルと、次の展開で苦しむサムスン。雌雄を決するのはユーザーに対する求心力の差だ。
【記事引用】 「日本経済新聞/2011年10月20日(木)/7面」