携帯電話業界ブログ

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スマートフォンの世界出荷、5億台に迫る データ通信量の爆発的増加、世界悩ます

2012-02-29 | 携帯事業者/世界



 スマートフォンの急速な普及を受けたデータ通信量の爆発が、世界共通の問題に発展している。

 スペイン・バルセロナで開かれている世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」でもスマートフォン新製品に加えて、データ通信の増加に対応した技術展示が目を引いた。

 2011年の世界出荷台数が約4億9千万台とパソコン(約3億5千万台)を上回り、なお普及が加速するスマートフォン。データ爆発を食い止められなければ、米国などで動き出した料金定額制見直しのシナリオも現実味を帯びてくる。


●シグナリング問題

 「残念ながら対策のために欠席する」。英ボーダフオン、米AT&T、グーグル、米マイクロソフトなど数多くの通信・インターネット企業の首脳が顔を連ねるMWCの講演。

 出席するはずだったNTTドコモの山田隆持社長は、急きょ基調講演をキャンセルした。

 理由は通信工事。ドコモは昨年末から頻発する携帯電話の通信障害に対応するために、MWC開幕直前の25日未明から「パケット交換機」と呼ばれる新型設備を導入し、交換機の能力増強工事に着手していた。

 1月に都内で最大252万人に影響が出た通信障害は、この新型のパケット交換機を導入する際のミスに起因したもの。

 前回の工事の失敗を受けて万全の対策を期したドコモは「工事に幹部も立ち会う」(山田社長)ことを決定。「2度目の悪夢」に備えての欠席となった。

 スマートフォン時代のデータ爆発の要因の一つとされるのが、無料通話アプリなど特定のソフトが頻繁に発する「シグナリング」と呼ばれる制御信号。

 日本で人気の無料通話アブリは韓国発祥のものが多いが、その韓国でも通信会社LGユー・プラスで、1月にドコモが障害を起こす直前に同様の不具合が発生。「シグナリング問題」は世界共通の問題になりつつある。


●15年に10倍に拡大

 データ通信量自体の増大も苛烈さを極める。スマートフォンのデータ使用量は従来型の携帯電話の10-20倍。米シスコシステムズの予想では15年には11年比で世界の携帯電話のデータ量が10倍に拡大すると予測する。

 主要先進国だけでなく、インドやタイなどアジアを中心にスマートフォンに対応した第3世代携帯電話サービスが続々始まっていることもデータ爆発に追い打ちをかける。

 こうした事態を受けて、MWCの会場でもデータ通信の増加対策を意識した発言が相次ぎ、対応した技術展示にも注目が集まっている。

 米グーグルのアンドロイド部門でエンジニアリングを担当するヒロシ・ロックハイマー副社長は「携帯電話の利用者がスマートフォンに切り替えると、ネットワークへの負担が高まるのは当然。(通信を)効率化するのはソフト開発者の責務だ」と指摘。

 通信会社と連携して対策の検討に乗り出したことを明らかにした。「色々な通信会社と話して、ソフトをどのように効率化できるか、取り組みを進めている」という。

 一方、携帯電話の業界団体GSMAは通信事業者22社などと、通信への負担軽減、消費電力の改善、セキュリティー対策などに関する、アプリ開発者向けのガイドラインを発表した。

 スウェーデンの通信機器大手エリクソンはストックホルム、香港、米サンノゼの3カ所に「スマートフォンラボ」を設置。

 機種ごとに発するデータ量、データの送り方などを詳細に分析、結果を通信機器開発に生かしているほか、様々な動作をするアプリの問題点などを開発者などにも周知している。

 今回のMWCでもデータ通信の集中を分散する技術を盛り込んだ基地局設備などを展示した。日本勢ではNECがスマートフォンの映像を再生する際に基地局への負担を減らす技術をMWCで展示した。

 端末の性能に合わせて基地局から最適な映像を配信するほか、再生の際に視聴されなかった無駄なデータを削減する。


●新たなインフラづくり

 技術的な対策が本格化する一方で、爆発を抑えられない場合、利用者にとって喜ばしくないシナリオが待っている。

 「料金定額制見直し」だ。米AT&Tやベライゾンはデータ量の上限を細かく区切った料金体系として提供し始めたほか、香港でもPCCWなどが定額料金の新規受け付け停止を発表するなどの動きが出ている。

 「20年には、1人の利用者が1日に1Gバイトのデータを使うようになる」。フィンランドの通信機器大手、ノキアシーメンスネットワークスのラジーブ・スーリ最高経営責任者(CEO)はプレス向け説明会でこんな見通しも示した。

 携帯電話回線だけでは受け止められないスマートフォンのデータ爆発にどう対応するか。通信各社が現実的な解とみるのが有線との連携。

 日本では総務省を中心に光ファイバー網の普及・活用を促す「光の道構想」が議論されるなど、一時はかなり先行していたが、今はこの構想も塩漬け状態。

 データ爆発という危機が目の前に迫れば、新たなインフラづくりの議論が再び盛り上がる可能性がある。




【記事引用】 「日経産業新聞/2012年2月29日(水)/22面」


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