携帯電話業界ブログ

── ケータイ業界関連の記事集.

タイの3G携帯免許入札、中止が決定 政策混乱、外資の投資に影

2010-09-24 | 市場動向/東南アジア



 タイで高速データ通信が可能な第3世代(3G)携帯電話サービスの本格導入が暗礁に乗り上げた。

 同国最高行政裁判所は23日、政府機関の国家通信委員会(NTC)による事業免許入札が「違憲の可能性がある」との判断を示し、予定していた入札は中止が決定。

 周辺国に比べて見劣りする高速通信の環境整備がさらに遅れるだけでなく、相次ぐ政策混乱が、外資の対タイ投資に影響を与える恐れも出てきた。


●タイの信頼揺らぐ事態も

 タイ政府の重要な産業政策に司法が待ったをかけるのは、総額1兆円規模の事業計画が「公害法制不備」を理由に1年間凍結されたマプタプット工業団地問題と同じ構図。

 今回の3Gの事業免許入札中止を「第2のマプタプット問題」として、投資先としてのタイの信頼感が揺らぐ事態を懸念する声も強い。

 NTCは当初、20日の入札を予定し、国内携帯電話最大手アドバンスト・インフォ・サービス(AIS)と2位のトータル・アクセス・コミュニケーション(DTAC)、3位のトゥルー・ムーブの3社が参加を表明。

 3つの免許枠をそのまま取得し、2011年初めにもサービス開始が見込まれていた。

 ところが、通信インフラを保有するCATテレコムとTOTの旧国営通信2社が直前になり「NTCに入札実施権限はない」と主張。

 入札差し止めを求める訴えをタイ中央行政裁判所へ起こし、同裁判所は16日、旧国営通信2社の訴えを認めて入札の仮差し止めを命じた。

 NTCは異議を申し立てたが、上級番の最高行政裁はこれを退け、入札中止が確定した。


●入札の整合性に問題

 争点となったのは、現行憲法の規定とNTCによる入札の整合性。

 憲法は、設立準備中の「国家放送通信委員会」(NBTC)が放送・通信両分野の規制権限を持つ、と定めているが、3G導入を急ぎたい政府は過渡的組織であるNTCも事業免許を交付できると判断した。

 CATなどは、これが憲法違反に当たると主張。最高行政裁は政府判断が憲法規定に抵触する可能性があるという立場に立った。

 アピシット首相は「NBTC発足の手続きを急ぐ」としているが、国会審議などの難航も予想される。入札実施まで3-4年かかるとの悲観論もある。

 周波数の新規割り当てを待たず、既存サービスと同じ周波数帯を利用する3GはAISなどが手掛けているが、通信速度などに制約があり、加入者数は15万人強とタイの携帯電話全体の0.2%にすぎない。

 3G普及率はマレーシアが2割、インドネシアは1割、ベトナムも1%弱で、タイは大きく出遅れている。




【記事引用】 「日本経済新聞/2010年9月24日(金)/7面」


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