NTTドコモは24日、次世代携帯電話サービスLTEを「Xi(クロッシィ)」の名称で始める。
新サービスの開始は2001年の第3世代携帯電話「FOMA」以来で、通信速度は現行の5-10倍に高まる。だが、「世界初」と鳴り物入りで始まった第3世代携帯電話と比べると、開始時のサービス地域は限定的。
端末確保などの課題も抱えており、需要を見極めつつの慎重なスタートとなる。
●需要見極め徐々に移行
ドコモが24日に予定しているサービス開始のセレモニー。
当初は社外での大規模イベントとする案もあったが、開始時のサービス地域が東京、名古屋、大阪の一部に限られることもあり、本社(東京・千代田)などで開くことになった。
当初の対応地域が小さいのは、新サービスが既存の携帯電話網を併用できるため。
新サービス「Xi」のLTEを便った通信速度は37.5M-75Mビットだが、LTEの入らない場所では自動的に現行の7.2Mビットの携帯電話回線に切り替える仕組みを採用している。
13年3月期までの3年間のLTEの基地局整備投資は約3000億円。01年の第2世代から第3世代への移行時には3年間で約1兆円の新規投資に踏み切ったこととは対照的。
LTEは既存の携帯基地局設備をそのまま活用できるため、需要を見極めつつ徐々に移行する戦略を描く。課題は地域展開だけではない。24日投入されるのはパソコン向けのデータ通信端未1機種のみ。
2011年に無線LANルーターやスマートフォンを投入する見通しだが、直近のスマートフォン市場の急拡大を織り込めず「対応に大忙し」(端末メーカー)という。
●通信料ひっ迫の懸念
データ通信量のひっ迫も、懸念材料。
ドコモは、94-99%が5Gバイトに収まると想定。2年間の特別料金(月額4935円)期間が終了して以降は、月ごとの通信データ量が5Gバイトを超えると、段階的に料金が上がる仕組みを採用する。
だが、すでにLTEを開始している北欧のテリアソネラでは利用者が月間平均14G-15Gバイトの通信を実施。
総務省もLTEなどの高速通信の普及により、17年にはデータ通信量が現在の約200倍になると試算しており、ドコモの想定を上回る可能性が高い。
野村証券の増野大作アナリストは「対応スマートフォンの発売など、サービス本格化する12年には新たな料金体系の模索も必要になるだろう」と指摘する。
年末から11年にかけてKDDI(au)、ソフトバンク、イー・モバイルも現行の通信技術を生かした高速通信サービスを相次ぎ開始する。
LTEと同等の通信速度を持つ高速無線「WiMAX」もサービス地域の拡大で着実に顧客を増やしている。山田隆持社長はLTEについて、「14年に契約者の4分の1に当たる1500万回線を目指す」と目標を掲げる。
だが、激しさを増す顧客獲得競争を勝ち抜くためには、積み残した課題をどうクリアしていくか、かじ取りが問われることになる。
【記事引用】 「日経産業新聞/2010年12月24日(金)/3面」