「本河田、中にいるのか?」
三津林は、洞穴に向かって呼びかけた。
「先生、来て下さい。・・・中は広いですよ。」
そう言われても、正直三津林は怖かった。
「危ないから、出て来なさい。」
「先生、怖いんですか?」
図星だった。しかしここは教師の面目もあり行くしかない。仕方なく屈んで穴の中に入って行った。
「おい、何も見えないぞ。」
中に入ると真っ暗で何も見えなかった。
「目が慣れれば、だんだん見えてきますよ。」
あいつは、怖くないのか?と三津林は思った。
「先生、ここ。」
愛美の手が三津林の手を握った。三津林は思わず強く握り返してしまった。
「危ないから出よう。」
「先生、奥の方に何か光るものが見えますよ。」
「出口じゃないか?ここはただの地中に出来た空洞だよ、きっと・・・。」
「じゃ、行ってみましょ。」
「いや、何があるか判らないから出よう。」
三十過ぎの男だが、怖いものは怖い。三津林は出たかった。
・・・とその時。
ドドドドドッと地鳴りと共に洞穴が揺れた。
「うわっ!」「きゃっ!」
二人は、肩を抱き合ってしゃがみこんだ。
「じ、地震?」
「だ、大丈夫だ、離れるな!」
「は、はい!」
強い揺れが続いた。
「きゃあっ!」「うわあっ!」
二人のいる地面が数十センチ程二人諸共陥没した。愛美は三津林にしがみつき、三津林も愛美を抱きかかえた。
「先生!」「大丈夫だ、きっと助かる!」
その時、横たわる二人の足元の地面が地鳴りと共に大きく割れ、その割れ目から目も開けられない程の光が飛び出して来た。
「きゃああっ!」
再び地面が崩れ、二人は光の中へ落ちて行ってしまった。

どれくらいの時間が経っただろうか?
「せ、先生・・・。」
気が付いた愛美は、暗闇の中を手で探った。すぐ横で三津林は倒れていた。
「先生大丈夫、先生!」
三津林が動いた。
「先生、生きてる?」
「あ、ああ生きてるよ、あ、痛っ!」
「出口あるかな?」
二人が周りを見渡すと、光が差し込む所があった。
「出口だ。さあ出よう。」
三津林は、愛美の腕を掴んで出口へと向かった。
二人は、狭くなっている洞穴の出口を屈んで出た。愛美そして三津林と。
「先生、何か違う。」
「何が?」
土を掃っていた三津林も辺りを見ると、洞穴に入る前の周りの状態と違っていた。木々も多く、茂みもかなり違う。
「違う出口だったのかな?」
ザザザザッ!と音がした。
「きゃっ!」
愛美が思わず叫んで三津林に抱きついた。二人の前に男が現れたのだ。しかも陣笠をかぶり、胴や籠手、脛当てをし、そして刀を持った男だった。
「お、お前達!」
男は、愛美と三津林を見て、目を丸くしていた。
「いかん、隠れろ、さあ!」
男は、二人を無理矢理出て来たばかりの洞穴に押し込んだ。そして辺りを見回して葉のたくさん付いた木の枝を折り、自分も洞穴に入ると穴を塞ぐように、木の枝を立てた。しばらくすると穴の近くを人が走った。
「待てえ!」
すぐにまた数人の男達が、追うように通り過ぎた。
「うわあ!」
ほんの少し先で、追われていた男が数人の男達に囲まれ、時代劇のように刀で切られ、そして突かれて倒れた。男達はそのまま先を進んで行った。林の中が静まり返った。

「もう大丈夫だ。」
男が洞穴を出た。愛美と三津林も後に続いて出た。
「あの、時代劇の撮影ですか?」
愛美が男に尋ねた。
「あはははっ!」
男が笑った。そして陣笠を取りながらしゃがみ込んだ。
「そう思っても仕方ないな。・・違うよお嬢さん。本物の戦だよ。」
「じゃ、ここは戦国時代?」
「嘘、私達は戦国時代に来ちゃったってこと?」
「そういうこと。」
「でもあなたは?」
男は、ニヤッとして言った。
「君達と同じようにタイムスリップして来た人間さ。・・もう三年になると思うけどね。」
ザザッと物音がした。
「やばい、また追っ手だ!逃げるぞ。」
男は、二人の背中を押して走り出した。三津林は走りながら男に聞いた。
「追って来るのは?」
「武田勢だ!双俣城が落ちて、逃げて来たんだ。」
「きゃっ!」
愛美が転んでしまった。
「大丈夫か?本河田!」
そこへ追っ手が二人やって来た。
「クソッ!足軽か。」
追っ手の一人が言った。
「足軽で悪かったな!お前達も同じだろコノヤロー!」
男が刀を振って二人の追っ手に立ち向かった。
「今のうちに逃げろ!」
三津林は、愛美を起こすと手を握って林の中を走った。
信じられない思いを胸にひたすら走った・・・。
三津林は、洞穴に向かって呼びかけた。
「先生、来て下さい。・・・中は広いですよ。」
そう言われても、正直三津林は怖かった。
「危ないから、出て来なさい。」
「先生、怖いんですか?」
図星だった。しかしここは教師の面目もあり行くしかない。仕方なく屈んで穴の中に入って行った。
「おい、何も見えないぞ。」
中に入ると真っ暗で何も見えなかった。
「目が慣れれば、だんだん見えてきますよ。」
あいつは、怖くないのか?と三津林は思った。
「先生、ここ。」
愛美の手が三津林の手を握った。三津林は思わず強く握り返してしまった。
「危ないから出よう。」
「先生、奥の方に何か光るものが見えますよ。」
「出口じゃないか?ここはただの地中に出来た空洞だよ、きっと・・・。」
「じゃ、行ってみましょ。」
「いや、何があるか判らないから出よう。」
三十過ぎの男だが、怖いものは怖い。三津林は出たかった。
・・・とその時。
ドドドドドッと地鳴りと共に洞穴が揺れた。
「うわっ!」「きゃっ!」
二人は、肩を抱き合ってしゃがみこんだ。
「じ、地震?」
「だ、大丈夫だ、離れるな!」
「は、はい!」
強い揺れが続いた。
「きゃあっ!」「うわあっ!」
二人のいる地面が数十センチ程二人諸共陥没した。愛美は三津林にしがみつき、三津林も愛美を抱きかかえた。
「先生!」「大丈夫だ、きっと助かる!」
その時、横たわる二人の足元の地面が地鳴りと共に大きく割れ、その割れ目から目も開けられない程の光が飛び出して来た。
「きゃああっ!」
再び地面が崩れ、二人は光の中へ落ちて行ってしまった。

どれくらいの時間が経っただろうか?
「せ、先生・・・。」
気が付いた愛美は、暗闇の中を手で探った。すぐ横で三津林は倒れていた。
「先生大丈夫、先生!」
三津林が動いた。
「先生、生きてる?」
「あ、ああ生きてるよ、あ、痛っ!」
「出口あるかな?」
二人が周りを見渡すと、光が差し込む所があった。
「出口だ。さあ出よう。」
三津林は、愛美の腕を掴んで出口へと向かった。
二人は、狭くなっている洞穴の出口を屈んで出た。愛美そして三津林と。
「先生、何か違う。」
「何が?」
土を掃っていた三津林も辺りを見ると、洞穴に入る前の周りの状態と違っていた。木々も多く、茂みもかなり違う。
「違う出口だったのかな?」
ザザザザッ!と音がした。
「きゃっ!」
愛美が思わず叫んで三津林に抱きついた。二人の前に男が現れたのだ。しかも陣笠をかぶり、胴や籠手、脛当てをし、そして刀を持った男だった。
「お、お前達!」
男は、愛美と三津林を見て、目を丸くしていた。
「いかん、隠れろ、さあ!」
男は、二人を無理矢理出て来たばかりの洞穴に押し込んだ。そして辺りを見回して葉のたくさん付いた木の枝を折り、自分も洞穴に入ると穴を塞ぐように、木の枝を立てた。しばらくすると穴の近くを人が走った。
「待てえ!」
すぐにまた数人の男達が、追うように通り過ぎた。
「うわあ!」
ほんの少し先で、追われていた男が数人の男達に囲まれ、時代劇のように刀で切られ、そして突かれて倒れた。男達はそのまま先を進んで行った。林の中が静まり返った。

「もう大丈夫だ。」
男が洞穴を出た。愛美と三津林も後に続いて出た。
「あの、時代劇の撮影ですか?」
愛美が男に尋ねた。
「あはははっ!」
男が笑った。そして陣笠を取りながらしゃがみ込んだ。
「そう思っても仕方ないな。・・違うよお嬢さん。本物の戦だよ。」
「じゃ、ここは戦国時代?」
「嘘、私達は戦国時代に来ちゃったってこと?」
「そういうこと。」
「でもあなたは?」
男は、ニヤッとして言った。
「君達と同じようにタイムスリップして来た人間さ。・・もう三年になると思うけどね。」
ザザッと物音がした。
「やばい、また追っ手だ!逃げるぞ。」
男は、二人の背中を押して走り出した。三津林は走りながら男に聞いた。
「追って来るのは?」
「武田勢だ!双俣城が落ちて、逃げて来たんだ。」
「きゃっ!」
愛美が転んでしまった。
「大丈夫か?本河田!」
そこへ追っ手が二人やって来た。
「クソッ!足軽か。」
追っ手の一人が言った。
「足軽で悪かったな!お前達も同じだろコノヤロー!」
男が刀を振って二人の追っ手に立ち向かった。
「今のうちに逃げろ!」
三津林は、愛美を起こすと手を握って林の中を走った。
信じられない思いを胸にひたすら走った・・・。
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