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教材作成の経験から(8回シリーズその4)

2013年03月03日 00時00分01秒 | 緑陰随想

(3) 教材の活用

 一時、教材の在り方については、事業団旧教材課で時間をかけて論議され、現在では一応落ち着いているが、教科書活用という点で、もう一度整理しておきたい。ここで論点の一つである教科書の性格的な取り扱いと作成側の考え方について述べる。職業訓練用教科書の作成についてはご存じの方もおられると思うが、作成過程については既に報告がある。(佐藤稔・6/1978/技能と技術)。

 筆者は、昭和52年4月より前任者が担当していた専修訓練課程左官科の教科書作成を前任者から継承し、昭和54年度から職業訓練校等で使用できるように、その作成に当たった。現在、労働省の認定委員会の審査を受ける段階までこぎ着けたので、反省の意を含めて、左官科の教科書作成を例に取り、その活用について述べたい。

 職業訓練用教科書は訓練生に対し、主として教室における集合訓練方式で訓練を実施していく場合の、訓練生用テキストとして作成され、実習上等で指導する実技の裏付けとなる知識を、体系的に付与することを重点にして作成されてきた。集合訓練方式に限定せず、個別学習にも利用される面もあるが、自学自習方式や個別学習に対してのメディアとして作成されていないので、必ずしもそのまま移行できるものではない。

 次に教科書に盛られているすべての内容を教えるか、それとも指導員が必要と思われるところのみを抜粋して教えるかと言うことが問題としてあげられる。作成側の意向としては、教科書の内容を策定する段階では、その基準を労働省の教科編成指導要領(以下教編という)において作成している。従って、訓練現場では、教科書に盛られている内容をすべて教えていただくことを念頭に置いている。教編は労働省が作成し、公共及び事業内訓練施設における訓練科ごとの訓練目標及び訓練内容を定めている。

 教科書の使用実態から見ると、教科書から指導員が訓練生の能力に応じて内容を抜粋して教えることもあるし、教科書の内容以上に様々な例を挙げて教える場合もある。つまり、訓練生の修得度や学習能力に対し、指導員の裁量によって使われ方は決まると言える。作成側と指導員との意思疎通の不足から使用方法の統一が欠けている面のあることは否めないが、少なくとも教科書に盛られている内容を基軸として教えるべきものと考えている。とはいえ、教科書に盛られている内容は、教編から出発している点で、あくまでも最大公約数的な面を持っている。

 左官科において、特に左官工事に使われる諸材料や工具の名称は、関東と関西を見ても異なっている。また、北海道の工法と、沖縄県の工法は地理的条件の違いにより、工法の内容に著しい違いがある。このことは当然考慮され、地域の実情に応じて訓練されなければならない。更には、左官工事の内容も地方では職域が広く、タイル張りやブロック組積、屋根工事、壁面の吹きつけ等もできることが要求される。一方、都市部では工事内容がより細分化し、分業や専門的方向に進んでいるため、従来の左官領域は年々狭まる傾向にある。訓練現場においては、このように教科書の内容がすべての訓練施設に共通でない面を認識され、地域の指導内容の調整が行われてしかるべきであろう。(次回へ続きます)