ブログ「かわやん」

森羅万象気の向くままに。

韓国の希望と絶望 黄禹錫(ファン・ウソク)教授の悲劇

2005年12月24日 21時52分14秒 | Weblog
クリスマスイブの韓国ソウルは寒さを和らいだ感じだ。23日の黄禹錫(ファン・ウソク)教授幹細胞(胚性韓細胞)培養問題のソウル大学調査委員会の中間発表から1日たったが、昨日は話題で持ちきりだった。

その日会う人で午前11時からの記者会見の内容を知らない人がいないくらいだった。日本では「なぜ?」といぶかられる向きが強いが、黄教授は現代韓国の最大の英雄だったからであり、その動向に注目があつまるのは当然のことだろう。

 友人の反応から紹介しよう。
「ひどいことだ」といきなり批判して、とりつくしまがない。同じ姓の友人の弁。「やはり論文はあやまりだといっていました」とは日本語が達者な女性。こういう結果がでるだろうと達観的。「やはり基礎研究があれっだといかんなあ」と歴史学の大先輩の学者。「とにかく黄教授のは誤りとニュースでやっていました」とニュースを子育ての忙しさの中で聞いた女性の弁。「しかし2個の幹細胞は本当に作ったと信じたいです」と50代の主婦。ソウル市内でタクシーを乗ると、先ほどの黄教授と同姓の男姓の鉄砲を撃つような批判の声に頷く運転手さん。各人いろいろの反応だが、一応に関心が高いニュースで揺れた1日だった。

さて24日の各紙は4面ほどつぶして23日の記者会見の模様、発表文全文の掲載、これまでの経緯、調査委員会委員長のインタビュー、市民の反応など伝えた。これまで研究員からの卵子提供などが話題に出ていたが、遺伝性に何らかの疾患がある人などからの皮膚細胞から作った韓細胞を11個作ることで、将来再生医療が可能だとする期待が寄せられた背景がある。

「将来病が克服されるに違いないと、難病で苦しむ人にとっては救世主のように映った」と韓国人の知人は語ってくれた。期待を一身に浴びた黄教授は成果を出さねばならなかったという背景があったことはいなめない。日本の考古学界で「神の手」をもつと言われ次々と旧石器時代の歴史を書き換える発見をしてそれが全て仕組まれた発見、つまり嘘であったという事件があったが、黄教授はまさしく「神の手」をもつ人のように映ったのかもしれない(ただし日本の考古学での事件とは事情が違う。黄教授は生命工学で実績をあげてきた人であるからだ)。

 日本では人間の卵子を提供することが最近まで認められていなかったが、韓国では日本のように厳しくなく、救世主のように偶像視されると、1000人近い女性からの申し込みがあったと聞く。韓国政府の「国家的事業」と位置づけて700億ウオン近い支援を行ってきた(民主労働党調査)。韓国政府も将来の国の命運を切り開いてくれると踏んだのである。ところが23日の委員会の中間発表で黄教授の2005年『サイエンス』誌の論文の虚偽が断定され、2個の幹細胞が本当にクイローン胚から培養された幹細胞かの断定が残るだけになったのだ。委員会では最終発表は2006年1月中旬と話している(「中央日報」12月24日3面)。

 黄教授の誠実な人柄からか、彼が報道を通じて語った詩人ユン・ドンジュの詩の1節「1点も天に恥じることがない」という幹細胞の培養は「嘘いつわりなく作成した」という点だけは信じたとする人が以外と多い。「あそこまで話されるのだから‥‥」という黄教授への信頼が何もかも消え去ったのではない、つまり幹細胞作成は韓国の技術だという自尊心なのだ。

 当然、今後も研究は継続されるが、地道な研究の積み重ねで大輪の花を咲かせてもらいたいと思うのは、隣人にして門外漢の偽らざる気持ちである。

 ソウルのクリスマスイブはイルミネーションが鮮やかで、ソウル市庁前のクリスマススリーは豪華さに目を奪われる。全羅道の大雪の被害の対策に2000億ウオンいると新聞に報じられていた。ところが国会は最大野党ハンナラ党の審議拒否で開けていない。日本人の観光客は多く行きかっている(朝一番でソウル市内のヨイドにある国会図書館に駆けつけて調べものをしようとしたら、休館。土曜日は休みじゃないはず。クリスマスイブは休みということか。残念)
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