今週の一おしは桑島秀樹『崇高の美学』(講談社、1600円)ー日経ー。崇高という現代社会ではあまり語られなくなった崇高という言葉だが、著者は哲学史論究をしていく。評者(塚原史)は「崇高とは見慣れた日常を見知らぬ世界に変える感性」とまとめているがアメリカにみる巨大建築、宇宙開発をさしていう。リオタールの人間不在のテクノサイエンスから論じたものだが、18世紀の思想家バークは崇高を「苦」と「恐怖」に根差したところから論じた。カントは人間理性のダイナミックな覚醒としてとらえた。私はこの著の特徴は崇高を神的概念とは異なる論究をしている点だと思う。形而上的論究ならある意味で容易な作業だからだ。評者は「地」に向かう新たな崇高観を施行するところに本書の核心があるからだと思う。「石ころ」に注目する著者が崇高の美学の原点だと書評では紹介されている。
もう一つ推薦すべき書としては長いタイトルだが、今井賢一『創造的破壊とは何か 日本産業の再挑戦』(東洋経済新報社、3200円)ー日経ーだ。日本再生のシナリオとも言える本書は創造的破壊とは「汎用性の高い発明を多様な用途に展開し、活用していく、自律的な企業者活動の連鎖によって達成される」(評者沼上幹)ものであり、決して単発の発明で生まれるものでない。蒸気機関や半導体のような実際の経済の中で活用できるような補完的な技術を創り出すものなのだ。ラディカルなイノベーションを生み出す企業活動の連鎖をどう創り出すかを著者は説く。経済を念頭において歴史、認知心理学などを駆使する。碩学の書に注目。
文学では辻邦生ファンとして『背教者ユリアヌス』を熱中して読んだ一人として辻の妻が書いた辻佐保子『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』(中央公論新社、1470円)ー朝日ーを紹介する。作家辻と交流のあり文芸欄を担当していた前編集委員由里幸子が評者。辻の旺盛な創作エネルギーは心に潜むマイナーなものとの恐怖感が源泉にあったと説く。辻が物語論で書いていた空虚な生を埋めるものとしての文学、美。言葉で創り出す姿を妻が敬愛を込めて書いている。
文学作品では丸山健二『日と月と刀』(上、下 文藝春秋、上2500円、下2150円)ー毎日ーは、評者三浦雅士をして傑作と書評冒頭書かしめる作品。アニメ的手法で吉川英治の『宮本武蔵』を書き直したとまず評者は作品の手法のアウトラインを示す。映画的手法も駆使するこの作品、中世足利時代の乱世を幻想小説として書き上げる。エンターティンメントを追求してきた著者の結実した記念的作品かもそれない。評者は「エンターティンメントは教養の芯にあるべきものは生命力であり、感動する力だ」と結んでいる。マーガレット・アトウッド『またの名をグレイス』(上、下、岩波書店、各2940円)ー毎日ー、坂東眞砂子『傀儡』(集英社、1900円)ー日経ーが書評されている。
もう一つ推薦すべき書としては長いタイトルだが、今井賢一『創造的破壊とは何か 日本産業の再挑戦』(東洋経済新報社、3200円)ー日経ーだ。日本再生のシナリオとも言える本書は創造的破壊とは「汎用性の高い発明を多様な用途に展開し、活用していく、自律的な企業者活動の連鎖によって達成される」(評者沼上幹)ものであり、決して単発の発明で生まれるものでない。蒸気機関や半導体のような実際の経済の中で活用できるような補完的な技術を創り出すものなのだ。ラディカルなイノベーションを生み出す企業活動の連鎖をどう創り出すかを著者は説く。経済を念頭において歴史、認知心理学などを駆使する。碩学の書に注目。
文学では辻邦生ファンとして『背教者ユリアヌス』を熱中して読んだ一人として辻の妻が書いた辻佐保子『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』(中央公論新社、1470円)ー朝日ーを紹介する。作家辻と交流のあり文芸欄を担当していた前編集委員由里幸子が評者。辻の旺盛な創作エネルギーは心に潜むマイナーなものとの恐怖感が源泉にあったと説く。辻が物語論で書いていた空虚な生を埋めるものとしての文学、美。言葉で創り出す姿を妻が敬愛を込めて書いている。
文学作品では丸山健二『日と月と刀』(上、下 文藝春秋、上2500円、下2150円)ー毎日ーは、評者三浦雅士をして傑作と書評冒頭書かしめる作品。アニメ的手法で吉川英治の『宮本武蔵』を書き直したとまず評者は作品の手法のアウトラインを示す。映画的手法も駆使するこの作品、中世足利時代の乱世を幻想小説として書き上げる。エンターティンメントを追求してきた著者の結実した記念的作品かもそれない。評者は「エンターティンメントは教養の芯にあるべきものは生命力であり、感動する力だ」と結んでいる。マーガレット・アトウッド『またの名をグレイス』(上、下、岩波書店、各2940円)ー毎日ー、坂東眞砂子『傀儡』(集英社、1900円)ー日経ーが書評されている。