ヌーブロマンのフィリップ・ソレルス『スチュディオ』(水声社、2625円)-朝日―が書評で取り上げられた。60年代の目で見渡した「今」が書かれていると紹介されている。それは無機的な透明感を読者に与えるというわけだ。評者尾関章は「突如として、社会的なつながりがほどけてしまった」という疎外感という一節を引用している。いかにもソレルスらしい仕立てだ。しかしソレルスの小説構成は21世紀の今、実感を覚えるのだから恐ろしい。現代を描くとすれば、無機的な世界をどう描くのか。それと欲張ればその脱出を示唆できるのかにあるようだ。
鈴木英生『新左翼とロスジェネ』(集英社新書、735円)-毎日は田中優子が評者。著者は『蟹工船』ブームきっかけを作った新聞記者。どこが新左翼がロストジェネレーションに結びつくのか。社会改革の有効な方策構築に失敗したというのが著者の新左翼感らしい。だからこそロスジェネということか。しかしそれではだめであし、また思い出としての新左翼であってはならないわけで、田中が言うように、日本社会が乗り越えるべき課題が新左翼運動で挫折したものに見出している。その挫折したものの分析は本書に真骨頂だが、著者独自の視点でもある。
京都大学で昨年末、「竹内好の残したもの」というテーマでシンポジウムが開かれたが、定員をはるかに超える申し込みがあり、情報をつかんだ時点で私は定員オーバーで参加できず地団駄を踏んだ。あれから半年でシンポの内容を知ることができる本が出るとは実にありがたい。鶴見俊輔編『アジアが生みだす世界像 竹内好が残したもの』-京都―のこの書は、鶴見の「人民の記憶」の継承を希求することで実現したといえるシンポなのだ。安保闘争で規定したのが鶴見の「人民の記憶」継承という言葉なのだが、竹内が悪戦苦闘して求めた自前の思想をどう記憶として継承するかにある。竹内に関する基調講演を中島岳志が、井波律子、大澤真幸い、山田慶児、山田稔などが論じるのだ。編集グループSURE制作で、定価は1785円。書店では購入できない。郵便振替用紙で京都市左京区吉田泉殿町47、編集グループSURE 00910-1-93863 に申し込むこと。
大学改革で最も求められているのがグランドデザインのなさ。大学人は独立法人化、少子化対策で学問研究よりも企業なり高校への交渉担当者という部分をもつのだから、おちおちと研究に没頭することなど出来なくなる。ビジネス最前線のような大学人。これでは当然反省が出てくるわけで、猪木武徳『大学の反省』(NTT出版、2300円)-日経―では大学教育の反省を述べたもので、「古典を中心としたカリキュラム」を上げている。教養教育の充実を指摘する。それは単なる学力である学知ではなく、公共知(判断力)、私徳(個人の心の行儀)から公徳(社会倫理)を養成をあげる。教養教育とともに老人の経験知をあげる点が、この書の独自の視点だ。竹内洋が評者。
茂木健一郎が評者としてスティーブン・ビンガー『思考する言語』上・中・下(NHK出版、上・中1160円、下1070円)―日経―を紹介している。英語の例をあげながら言語の奥行きの深さをあげている。
鈴木英生『新左翼とロスジェネ』(集英社新書、735円)-毎日は田中優子が評者。著者は『蟹工船』ブームきっかけを作った新聞記者。どこが新左翼がロストジェネレーションに結びつくのか。社会改革の有効な方策構築に失敗したというのが著者の新左翼感らしい。だからこそロスジェネということか。しかしそれではだめであし、また思い出としての新左翼であってはならないわけで、田中が言うように、日本社会が乗り越えるべき課題が新左翼運動で挫折したものに見出している。その挫折したものの分析は本書に真骨頂だが、著者独自の視点でもある。
京都大学で昨年末、「竹内好の残したもの」というテーマでシンポジウムが開かれたが、定員をはるかに超える申し込みがあり、情報をつかんだ時点で私は定員オーバーで参加できず地団駄を踏んだ。あれから半年でシンポの内容を知ることができる本が出るとは実にありがたい。鶴見俊輔編『アジアが生みだす世界像 竹内好が残したもの』-京都―のこの書は、鶴見の「人民の記憶」の継承を希求することで実現したといえるシンポなのだ。安保闘争で規定したのが鶴見の「人民の記憶」継承という言葉なのだが、竹内が悪戦苦闘して求めた自前の思想をどう記憶として継承するかにある。竹内に関する基調講演を中島岳志が、井波律子、大澤真幸い、山田慶児、山田稔などが論じるのだ。編集グループSURE制作で、定価は1785円。書店では購入できない。郵便振替用紙で京都市左京区吉田泉殿町47、編集グループSURE 00910-1-93863 に申し込むこと。
大学改革で最も求められているのがグランドデザインのなさ。大学人は独立法人化、少子化対策で学問研究よりも企業なり高校への交渉担当者という部分をもつのだから、おちおちと研究に没頭することなど出来なくなる。ビジネス最前線のような大学人。これでは当然反省が出てくるわけで、猪木武徳『大学の反省』(NTT出版、2300円)-日経―では大学教育の反省を述べたもので、「古典を中心としたカリキュラム」を上げている。教養教育の充実を指摘する。それは単なる学力である学知ではなく、公共知(判断力)、私徳(個人の心の行儀)から公徳(社会倫理)を養成をあげる。教養教育とともに老人の経験知をあげる点が、この書の独自の視点だ。竹内洋が評者。
茂木健一郎が評者としてスティーブン・ビンガー『思考する言語』上・中・下(NHK出版、上・中1160円、下1070円)―日経―を紹介している。英語の例をあげながら言語の奥行きの深さをあげている。