胡錦濤前総書記の側近だった令計劃・前人民政治協商会議副主席に4日、収賄と国家機密の不法取得、職権乱用の罪で無期判決が言い渡された。令計劃は上訴しない意向を示し刑が事実上確定した。日本の各紙は彼を「団派」(中国共産主義青年団=共青団出身者の派閥)の一員と見立て、習近平総書記が重要人事を決める来年の第19回党大会を前に、団派人脈を牽制したという背景分析をした。
横並びはいつものことだが、その原因は現場の記者が取材をしていないことにある。香港を中心とする海外メディアが流布しているステレオタイプの分析に寄りかかり、当たり障りのない、業界用語でいえば逃げ道を作った、悪く言えば中身の全くない記事を垂れ流している。国家機密が絡むため非公開となったが、国家機密の中身が何なのか、現場記者にしかできない、現場記者だからこそすべき取材の成果が一文字も表れていない。こういうのを東京にいても書ける記事という。新華社通信はネットを開ければ世界のどこでも読むことができる。
そもそも団派という政治派閥は存在していない。共青団は官僚の養成機関に過ぎず、党内での地位は高くない。党内での権威は軍との関係に基礎をおいている。官僚集団が強いものになびくのであって本来、組織としての求心力は弱い。共青団出身の胡錦濤は、李国強首相を後継に推したが、自分自身は典型的な官僚で、権力への執着はそれほど強くない。派閥を率いる力量も器も持っていない。令計劃は胡総書記時代の10年間、秘書役の党中央弁公庁副主任・主任を務めた。中国において秘書は政治家本人と一体である。秘書の失脚は本人の失脚に等しいほど大きな意味を持っている。胡錦濤の権威は地に落ちたのである。だから今さら団派の力を持ち出すのは荒唐無稽だ。
日本メディアの報道に、令計劃が主宰した「西山会」が触れられていないのは最大の見落としである。これこそ政治派閥なのだ。「西山会」はいわゆる山西省出身幹部の県人会に相当する。令計劃も薄熙来も同省の同郷である。令計劃の兄、令政策は前山西省人民政治協商会議副主席で、弟には兄たちの権力をバックに商売をしていた元新華社通信記者の令完成がいる。令完成は、令計劃が不正取得した国家機密を持って米国に逃亡中だ。
令一族は、令計劃の中央での権力を背景に地元で勢力を張り、2007年ごろから地元出身の有力者らによる派閥「西山会」を結成し、石炭産業などの利権で私腹を肥やしていた。毎年3月に人知れぬ場所で会合を持ち、携帯や秘書、愛人まで隔離される秘密保持が貫かれた。固い掟によって結ばれた秘密結社を思わせる組織である。清朝まで中国には社会のアウトサイダーが血の結束で結んだ秘密結社が多数存在していた。孫文も毛沢東もこうしたならず者たちをうまく利用して旧体制に抵抗したのである。
したがって令計劃は表面的に団派としての顔を持ってはいたものの、地方に土着した秘密結社の頭目に近い存在だった。官僚集団ばかりを見てきた胡錦濤はこの点を見逃していた。父親たちの血で血を洗う権力闘争を見聞きして育った習近平ら紅二代からすれば、胡錦濤は子どものような存在である。党内の私的な派閥が党そのものをむしばむ危険を察知した習近平は、反腐敗キャンペーンを使って中央集権を強化している。令計劃の断罪はその大きな節目となる。
党中央は昨年3月、党内の幹部会議で、「周永康と薄熙来、令計劃の三人が2009年に政治連盟を結び、すでに第17回党大会(2007年)で内定していた習近平同志の政権継承を阻止して、第18回党大会で薄熙来政権を誕生させ、令計劃を党中央政治局常務委員入りさせるクーデターを企図した」と報告している。薄熙来、周永康がそれぞれすでに無期懲役の刑に服役中で、今回の裁判は、3人による政治連盟を裁く締めくくりだった。極めて重要な意味を持っていた。習近平がクーデター計画の粉砕にピリオドを打ったのである。
いくら紙面のスペースが狭いからといって、以上のことぐらいは書けるはずだ。
横並びはいつものことだが、その原因は現場の記者が取材をしていないことにある。香港を中心とする海外メディアが流布しているステレオタイプの分析に寄りかかり、当たり障りのない、業界用語でいえば逃げ道を作った、悪く言えば中身の全くない記事を垂れ流している。国家機密が絡むため非公開となったが、国家機密の中身が何なのか、現場記者にしかできない、現場記者だからこそすべき取材の成果が一文字も表れていない。こういうのを東京にいても書ける記事という。新華社通信はネットを開ければ世界のどこでも読むことができる。
そもそも団派という政治派閥は存在していない。共青団は官僚の養成機関に過ぎず、党内での地位は高くない。党内での権威は軍との関係に基礎をおいている。官僚集団が強いものになびくのであって本来、組織としての求心力は弱い。共青団出身の胡錦濤は、李国強首相を後継に推したが、自分自身は典型的な官僚で、権力への執着はそれほど強くない。派閥を率いる力量も器も持っていない。令計劃は胡総書記時代の10年間、秘書役の党中央弁公庁副主任・主任を務めた。中国において秘書は政治家本人と一体である。秘書の失脚は本人の失脚に等しいほど大きな意味を持っている。胡錦濤の権威は地に落ちたのである。だから今さら団派の力を持ち出すのは荒唐無稽だ。
日本メディアの報道に、令計劃が主宰した「西山会」が触れられていないのは最大の見落としである。これこそ政治派閥なのだ。「西山会」はいわゆる山西省出身幹部の県人会に相当する。令計劃も薄熙来も同省の同郷である。令計劃の兄、令政策は前山西省人民政治協商会議副主席で、弟には兄たちの権力をバックに商売をしていた元新華社通信記者の令完成がいる。令完成は、令計劃が不正取得した国家機密を持って米国に逃亡中だ。
令一族は、令計劃の中央での権力を背景に地元で勢力を張り、2007年ごろから地元出身の有力者らによる派閥「西山会」を結成し、石炭産業などの利権で私腹を肥やしていた。毎年3月に人知れぬ場所で会合を持ち、携帯や秘書、愛人まで隔離される秘密保持が貫かれた。固い掟によって結ばれた秘密結社を思わせる組織である。清朝まで中国には社会のアウトサイダーが血の結束で結んだ秘密結社が多数存在していた。孫文も毛沢東もこうしたならず者たちをうまく利用して旧体制に抵抗したのである。
したがって令計劃は表面的に団派としての顔を持ってはいたものの、地方に土着した秘密結社の頭目に近い存在だった。官僚集団ばかりを見てきた胡錦濤はこの点を見逃していた。父親たちの血で血を洗う権力闘争を見聞きして育った習近平ら紅二代からすれば、胡錦濤は子どものような存在である。党内の私的な派閥が党そのものをむしばむ危険を察知した習近平は、反腐敗キャンペーンを使って中央集権を強化している。令計劃の断罪はその大きな節目となる。
党中央は昨年3月、党内の幹部会議で、「周永康と薄熙来、令計劃の三人が2009年に政治連盟を結び、すでに第17回党大会(2007年)で内定していた習近平同志の政権継承を阻止して、第18回党大会で薄熙来政権を誕生させ、令計劃を党中央政治局常務委員入りさせるクーデターを企図した」と報告している。薄熙来、周永康がそれぞれすでに無期懲役の刑に服役中で、今回の裁判は、3人による政治連盟を裁く締めくくりだった。極めて重要な意味を持っていた。習近平がクーデター計画の粉砕にピリオドを打ったのである。
いくら紙面のスペースが狭いからといって、以上のことぐらいは書けるはずだ。