行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

米大統領選に匹敵する日本取材ツアーの人気

2016-11-27 09:31:09 | 日記
汕頭大学新聞学院は毎年、数回、学生の取材団チームを選抜し、海外での短期テーマ研究を実施している。来年の計画の一つとして、3月、日本の九州へ環境保護をテーマに取材団を派遣する。通訳が不要で経費が削減できるということで、着任したばかりの私が引率をすることになった。1週間前に募集の告知をし、昨日、応募学生の面接が行われた。50人近くが参加し、今年の米大統領選挙取材ツアー並みの人気だったという。

教師が3人並び、5,6人の学生に対し集団面接をするのだが、当然、日本人である私が質問の大半をすることになる。あらかじめ日本の環境問題についてネットで検索し、入念に用意してくる学生から、漠然とした日本への関心から抜け切れていない学生までさまざまだ。福島原発、リサイクル社会、ごみ分類、環境教育、公害訴訟まで関心の範囲も多様だ。他学生の意見に触発され、追加の発言を求めてくる者もいる。すると討論会のような流れになり、面接であることを忘れてしまいそうになる。

日本の学生と大きく異なるのは、面接の際、自分のセールスポイントを堂々と語ることだ。冒頭、院長が「あなたの『長所』(中国語では「特徴」)は?」と尋ねる。するとこんな答えが返ってくる。

「私は映像制作ではテレビ局での実習経験もあり、学校のコンテストでも入賞した。私がチームに加われば、発信力の面で大きい力になるはずだ」
「私は学内組織の責任者を務めた豊富な経験があるので、リーダーとしての能力がある。日本に行って取材団の班長になることもできる」
「私は新聞社での研修中、記事作成能力を認められ、単独での取材まで許可されたので、取材の能力は実証されている。カメラ撮影も全国の大学メディアコンテストで入賞歴があるので自信がある」

こちらは相手の履歴書を見比べながら、発言に耳を傾ける。履歴書の枠に収まりきれないような実習歴、受賞歴、課外活動歴を見て、彼ら、彼女たちがなぜ、授業をそっちのけで、ふだんからあれこれの活動に忙しくしているのかに合点がいった。おそらく就職試験の面接も同様なのだろう。この空欄をぎっしり埋めなければ、厳しい競争に勝てないのだ。では授業の意味はどうなるのか・・・深刻にならざるを得なかった。

だが、枠の中に自分が選択した科目しか書いていないような学生がいる。そういう学生は面接でも発言が控えめで、必要最小限のことしか言わない。だが、心を打つ言葉が交じっている。

「日本の環境問題についてはよく勉強していないのでわからないけれど、この機会に学びたい」
「取材や撮影の技術は特に秀でていないが、学習に対する熱意は強い」
「日本の経験を通じ、中国の環境問題解決に役立てたいと思った」

どういいうわけか、私の授業をとっている学生に後者のタイプが目立った。就職の即効力を考えれば、日本人教師の授業は実用性が低い。だから、私の授業には本当に外国人教師から何かを学びたいと思う学生が集まる。そういうことなのかも知れない。

面接後、教師による選考の話し合いが行われた。当然、「目立つ」学生がリストアップされる。私はどうしても「目立たない」学生を入れたかった。かなり強引にアピールしたが、印象が薄いためなかなか納得を得られない。私が「自分は自費でもいいから、定員をもう1人増やしてほしい」と主張したため、当初の定員5人を6人にし、私が推薦する学生が加えることができた。

計画は始まったばかりだ。学生たちに、功利だけではない、人生にとって価値あるものを学ぶ機会を与えたいと思う。

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「九州での環境保護問題」というテーマのほか、1週間の具体的な取材スケジュールはまだ決まっていないので、これから手探りの準備が始まります。人員を増やしたため経費も限られ、心配の種は尽きません。是非、各方面の方々からアドバイスを仰ぎたいと思っています。よろしく願い申し上げます。
メールはkato.takanori@hotmail.com。

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