行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

【2019古都取材ツアー⑫】西陣の底力を感じた座談会

2019-05-21 09:47:31 | 日記
和服と同じ意味を表す呉服の「呉」が、中国江南地方の古称からきていると知って、中国の学生たちは驚いた。大阪が食い倒れならば、京都は着倒れと言われる。着物にこだわる伝統の根っこが中国にある以上、学生の取材テーマとしては欠かせない。ある学生が選んだテーマは、中でも代表的な伝統工芸、西陣織の再生だった。伝統と現代が交錯する場に、呉服の故郷から来た若者が居合わせること自体、奇縁を感じざるを得なかった。

まさに糸をつむぐように取材の輪が広がっていった。まず、学生時代の同級生で、出町柳・正定院の住職木村純香さんが西陣のイノベーションにかかわっている福田陽子さんを紹介してくれた。

福田さんは、大阪でWEBデザインの仕事をしていたが、2010年、着物に魅せられ京都に移り住んだ。
雑貨ブランド「西陣ごのみ」(http://gonomi-kyoto.com/)を生み出し、金糸や銀糸を使った斬新な西陣織グッズを開発するとともに、今は京友禅の企業で働いている。古い土地にあって、伝統を乗り越えるイノベーションはしばしば外からの力に触発されるが、福田さんはその好例である。
(産経新聞サイト参照 https://www.sankei.com/west/news/170220/wst1702200005-n1.html)

市場の縮小、後継者難と伝統工芸をめぐる状況は厳しい。そこに身を置く苦労ややりがいを聞きたい、というのが学生たちの期待だった。メールで取材を申し込むと、逆に以下の提案を受けた。

「次世代、西陣織を継承している若手経営者の中でイノベーションが起きている事を私も感じています。提案なのですが、西陣織の事業に携わり、イノベーションを起こそうとしている若手経営者が何名か知人におりますので、私だけではなく、その方々にお声掛けし、どこかの場所でトークセッションのような形で、お話できればと思うのですが、いかがでしょうか?実際の商品も一緒にご覧いただければ幸いです。」

福田さんのアイデアと行動力に感銘し、喜んで提案を受け入れた。彼女がつけたトークセッションのテーマは「西陣織の伝統とイノベーション」、司会進行も引き受けてくれるという。学生にとっては願ってもない、得難い機会だった。

時間はGW前の5月25日午後7時から、場所は若者とモノづくりをつなげるコンセプトで作られたというカフェ・ギャラリー「Senbon Lab」(https://www.senbonlab.com/)。バラエティに富んだ企業家、企業家が集まった。福田さんの呼びかけに賛同し、

同カフェ・オーナーの「西陣織circu」松田沙希さん https://www.makuake.com/project/circu/

「とみや織物」冨家靖久さん http://www.tomiya.biz/

「和工房明月」小谷千果さん https://www.kyotomeigetsu.com/

「寺島保太良商店」寺島大悟さん http://tabane-kyoto.com/

「岡本織物」岡本絵麻さん http://okamotoorimono.com/

「タイヨウネクタイ」松田梓さん https://taiyo-kyoto.com/

の計7人による座談会が実現し、学生3人と通訳1が参加した。福田さんの人脈、そして西陣織にかかわる人たちの熱意にただただ圧倒された。学ぶことの多い、忘れ難い京都の夜だった。









自由な議論を通じ、洋装を含めた服飾だけでなく、文化財から工芸美術、ネクタイ、雑貨など様々な分野での取り組みを知ることができた。家族経営の壁や保守的な風土など、克服すべき課題も提起された。伝統とは言っても、ただ慣習を墨守してきたのではなく、戦乱や遷都などの激変を乗り越え、絶えず新しいものを追い求めてきた。そして今もまだイノベーションの途上にある。京都をみる楽しみがまたひとつ増えた。

(続)

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