行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

【期末雑感】今年の取材ツアーは北海道へ

2018-01-24 16:34:01 | 日記
学内の試験はほぼ終了し、スーツケースを引いて帰省する学生の姿が目立つ。連日、20度を超える亜熱帯地域に暮らしていると、東京の大雪ニュースがはるか遠くに感じられる。一年を通じて絶えないバウヒニア(洋紫荊)が濃いピンクの花をつけている。





ちょうど1年前、この時期は3~4月にかけての九州環境問題取材ツアーに向け、ビザ申請や取材計画の立案に追われていた。昨年の春節は学生の姿が消えた学内の宿舎で過ごしたことを思い出す。

取材チームは面接で選んだ女子学生6人で、彼女たちが相談して決めたチーム名が「新緑」だった。日本ではなじみの深い言葉だが、中国ではむしろ唐宋代の詩に用いられ、現代用語としてはあまり使われない。日本では夏の季語だが、中国では早春の言葉だ。取材時期にぴったり合っていた。みなは桜を楽しみにしていたが、あいにくの低気温で満開には待ちぼうけを食わされた。ちょうど福岡を離れる日、世話しをてくれた九州市立大学中国語専攻の日本人学生が、小倉城公園の鮮やかな花見風景を送ってくれた。

思い出がたくさん詰まった初回日本取材ツアーなので、「新緑」のチーム名は今後も継承することにした。2018年は2回目となる北海道ツアーを計画し、昨日から学生への公募を開始した。時期は5月末から6月初めの予定なので、日本の「新緑」時期にふさわしい。春節休暇中に申請書類を提出し、3月からの春季学期、書類審査を通過した者を対象に面接をして選抜する。文章が上手な学生、写真・映像が得意な学生、リーダーシップを取れる学生など、多様な特性を集めたチーム作りをする。記事や映像は通常の報道記事レベルを目指し、実際、権威ある雑誌や映像サイトに投稿する。

中国の学生は自己主張が強い分、譲り合いや協力が求められる集団行動は苦手だ。中国語ではチームワークを「団隊精神」という。応募の基準には、一にやる気、二に団隊精神、三に平素の授業態度、そして最後に「一定の技能」を加えた。さっそく、「費用はどうなるのか」「日本語の力は必要か」と質問が寄せられた。中には「私は幼少から日本文化のファンで、絶対このチャンスをつかみたい」と訴えるメールを送ってる女子学生や、逆にグループチャットで「授業をさぼらなければよかったと後悔している」とぼやく男子学生がいる。費用は大学が負担し、日本語通訳は私が担当し、必要に応じ現地の中国人留学生を探すので心配ない。学生が取材に専念できるよう、お膳立てを周到にするのが、引率者である日本人教師の役割となる。

心ゆくまで、日本、北海道を歩き、知ってほしいと思う。単なる交流や視察ではなく、本格的な取材なので、一般の旅行者とは違った面が見られるに違いない。取材ツアーのメリットはそこにある。大学予算でこうした事業を行っている大学は、中国でもほかに聞いたことがない。他大学の教師が学術会議などで私たちの大学を訪れた際、決まってうらやましいと感想を述べる。日中の青年交流にとっても、得難い貴重な機会だと考える。閉じこもりがちな日本の学生に少しでも刺激を与えられればとも思う。

明日、学校を離れ、上海を経由して一時帰国する。東京では、新学期の準備のため図書館通いが始まる。想像もつかない寒さが待っているのだろうが、残雪の下で、新緑の準備もすでに始まっているに違いない。考え事をするときに立ち寄る湖に別れを告げ、しばし大学を留守にする。