片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

楽しみ方いろいろ、東京スカイツリー

2012-04-17 22:33:36 | 社会・経済

本日、東京スカイツリーの内覧会が行われ、いってきました。
「東京スカイツリー
天望回廊(第2展望台)」は、メディア初公開でした。
今日の、読売、朝日、毎日、東京、日本経済新聞の5紙の夕刊は、
そろって、1面に「天望回廊」の写真を掲載しています。

世間の注目度の高さが伺えます。

067※天望回廊の眺め

地上450mの、「天望回廊」を、実際に歩いてみました。
窓が外側に膨らんだパイプのような形のため、
ほぼ
直下から、頭上の空まで見渡せます。
ぐるりと、タワーを一周歩きながら、外の景色が楽しめる。

コンセプトがおもしろいですし、世界中のタワーを見ても、
ほかに類のない空間だと感じました。
関東平野の広さを実感でき、普段、あまり目にしない、

平野東部の様子を眺めることができます。

地上階から「天望デッキ(第1展望台)」までを結ぶエレベーターは、

江戸切子や金箔など、和風の装飾がなされています。
また、「天望デッキ」から「天望回廊」までを結ぶエレベーターは、

扉や天井の一部がシースルーになって、外の景色が見えるなど、
それぞれ、
乗っている時間も楽しめるような工夫がされています。
また、それぞれの
展望台からの風景はもちろん、
「天望デッキ」には、床がシースルーになっている
「ガラス床」、
オリジナルグッズを販売する「ザ・スカイツリーショップ」、
レストランや喫茶店
など、たくさんの見どころが用意されています。

しかし、そうはいっても、開業後、
しばらくは予約制ですし、
混雑が予想されます。混雑している間は遠慮したい、という人もいるでしょう。
そういう人は、
スカイツリーを下から眺め、
観賞する
だけでも、十分に楽しめます。
いや、むしろ、スカイツリーは、
ただ上るだけでは面白くない。
訪れて、さまざまなことを感じ、考えるからこそ、面白いのです

例えば、スカイツリーの直下で、その回りを一周すると、

見上げる場所によって、スカイツリーのフォルムが
どんどん変化する
のが楽しめます。
「そり」「むくり」を取り入れた「和」のデザインです。
夜のライティングも
「和」のライティングです。
ライトアップされた美しさもさることながら、

オールLED化を実現した技術にも注目していただきたい。

足元を支える太い鋼管を眺め、日本の製鉄技術、
鉄骨加工の技術
に思いを馳せるのも一興です。
約3万7000ピースもの鉄骨を、

一本一本、多くの人々が関わってつくり上げました。
それを、さらに、一本一本、
高精度に積み上げていって、
634mのスカイツリーができあがったのです。
そこで繰り広げられた、
数々のドラマを想像すると、
日本人の熱意や、技術力、勤勉さ、繊細さなどに思い至り、
誇らしい気持ちになります。
上るにせよ、上らないにせよ、
「一見の価値あり」です。

世界一の自立式電波塔、スカイツリーが完成するまでには、
多くの
“無名の挑戦者”たち“未知への挑戦”がありました。
スカイツリーは、
日本のモノづくりの集大成です。モノづくりの視点から、
その挑戦を描いた、拙著
『東京スカイツリー 六三四に挑む』(小学館)
を、
5月18日に発売予定です。
スカイツリーに挑んだ男たちの、モノづくりにかける
“ロマン”を感じ、
スカイツリーを、より楽しんでいただけると思います。
是非、ご一読ください。


トヨタが第3の拠点を「東北」に置く理由とは?

2012-04-16 20:18:53 | 自動車関連

トヨタといえば、愛知県ですが、1992年、北九州に拠点を構えました。
そして、
「第3の拠点」として、いま、東北に着々と進出しています。
これには、
歴史的なストーリーがあります。

トヨタの小型ハイブリッド車「アクア」が好調です。
「アクア」の生産拠点である、トヨタ子会社の
関東自動車工業の岩手工場は、フル稼働状態が続いているといいます。
同じく子会社の、
セントラル自動車の宮城工場でも、
「カローラ」の全面改良を控えており、
こちらも
当面、フル生産が続く見通しといいます。

トヨタは、7月に、関東自動車工業、セントラル自動車、トヨタ自動車東北の
3子会社を合併し、
トヨタ自動車東日本を発足して、
小型車の企画、開発、生産を一貫して手掛ける重要な戦略会社とします。
東北を、中部、九州に次ぐ、
国内の「第3の拠点」と位置付けるのです。
中部は、工場と研究拠点、九州は高級車中心の拠点ですが、
東北は、低価格帯のコンパクト車の拠点になります。

15日の日本経済新聞には、
トヨタが、東北大学と共同で
電気自動車など次世代自動車関連の
研究開発拠点を、東北に設けるとありました。
電気バスや、自動車向け高度情報サービスなど、
先端技術の開発施設を設けるというのです。

関東自動車工業と、東北大の産学連携機関の
「未来科学技術共同研究センター」が研究開発の拠点となります。
もともと、東北には電機産業が集積しており、
次世代自動車関連の研究開発を行うにも、地の利があります。
研究成果の試作には、地元企業が参画予定で、
地元の中小企業育成にも一役買います。

トヨタが、東北での生産や研究開発に注力するのは、
東日本大震災からの復興を後押しするためだけではありません。
トヨタは、
東北には歴史的な縁があるのです。
豊田英二さんは、戦後、トヨタの礎を築いた
“中興の祖”
として知られます。
彼の盟友として、トヨタの復興期を担ったのが、齋藤尚一さんです。
齋藤さんは、東北帝国大学(現東北大学)工学部の出身です。
彼は、1935年に、初の新卒学士、
すなわち
学卒第一号としてトヨタに入社しました。
齋藤さんの存在が、トヨタと東北の縁の源泉といえるでしょう。

トヨタには、地元の名古屋大学出身者も多いですが、
東北大学出身者が少なからずいるのも、無関係ではありません。
トヨタは、
義理堅く、縁を大切にする企業です。
縁のある東北が、東日本大震災で被災したことは、
放っておけず、ここぞとばかりに
投資するキッカケになっているといえます。

東北には、
トヨタを、半分地元企業のように
受け入れる土壌
ができています。
トヨタが、
東北への投資を通じて、国内の雇用維持、
日本の
モノづくり力維持、さらに、
東北復興にも一役買おうとしていることは、
いかにも、
CSR意識の強い、トヨタらしいやり方だといえるでしょう。


ソニー平井さん、試金石は「テレビ事業黒字化」

2012-04-13 17:46:40 | 社会・経済

昨日、ソニーの経営方針説明会にいってきました。
冒頭から、社長兼CEOの
平井一夫さんが、舞台中央に立って
「ソニーを変える。ソニーは変わる。
変えるのはいましかない」
と、拳を振り上げ、力を込めて語りました。
内容については、必ずしも大きなサプライズがあったわけではありません。
平井氏自身がいう通り、
ソニーの変革に「奇策はない」のです。

いま、ソニーの喫緊の課題は、
売上の6割以上を占める
エレクトロニクス事業の立て直し
です。
なかでも、最大の課題は、
11年度で
8
期連続の赤字となったテレビ事業
です。
黒字化する、するといいながら、
ずるずると8年も赤字を垂れ流しています。
確かに、テレビの
急速な価格下落に加え、リーマン・ショック、
東日本大震災、タイの大洪水
など、再建をさまたげる外的要因は、
次々と起こりました。前任のハワード・ストリンガーさんは、
これらの
外的要因がなければ、黒字化できていたと語りましたが、
おそらく、その通りでしょう。
しかし、寅さんのセリフではありませんが、
「それをいっちゃあ、おしまいよ」――ですよ。

今回の発表で、中核と位置付けられたのは、
デジタルカメラや放送機器などの
「デジタルイメージング」
家庭用ゲーム機などの「ゲーム」
スマホやパソコンなどの「モバイル」の3つです。

しかし、「デジタルイメージング」についていえば、
これは
部品が中心で、主力製品とはいえないでしょう。
「ゲーム」についていえば、スマホを使った無料のゲームや、
ソーシャル・ゲームなどが台頭するなか、
どこまで中核としての稼ぎをあげられるのか疑問です。
「モバイル」についていえば、
サムスンとアップルという、
巨大なライバル
が立ちふさがっています。
これらの企業と、どう対抗していくのか、
簡単には道筋は見えてこないでしょう。

メディカル事業は、将来的に1000億円の売上高を目指すといいますが、
成果が出せるまでには、
しばらく時間がかかります。
まだ、ソニーを支える
「柱」となるには遠いのが現状です。
経営についていえば、平井さんは、自身を中心とした
One SONY」「One Managementを掲げています。
この発言は、何を意味するか?
これまで、
船頭が多すぎたということです。

つまり、
ソニーの事業領域は多方面にわたり、
それぞれが
勝手に動いていたのが現実です。
そして、ただでさえ、
自立心の強いソニーの企業風土のなかで、
社内を一つにまとめることは、容易ではなかった。
それを、一つにまとめようというのが、平井さんの狙いです。
これも、
決してやさしい課題ではありません。

では、ソニーは、今後どうすればいいのか。
私は、平井さんに求められるのは、まずは
何にも優先して、
テレビ事業の黒字化
だと思います。
テレビ事業を
CEO直轄として、黒字化に向けて取り組みをはじめていますが、
いまのところ、ライバルの
韓国・サムスンの背中は遠くなるばかりです。
今回の発表では、黒字化に向けて、13年度までに、
固定費6割削減、
テレビの機種数を、12年度に4割削減
などをあげました。
これらを着実に実行し、
ソニーの赤字の象徴ともいえる
テレビ事業を黒字化
できれば、
平井さんは、まずは、
経営者としての手腕を、
内外に評価される
と思います。

現状、テレビ事業は、
「14年3月期の黒字化」、
つまり、今期の黒字化はムリと判断して、来季の黒字化を掲げています。
しかし、どうにか
今期中に、
黒字化のメドを立てられないものか
と、思わずにはいられません。
テレビ事業が、
平井さんの経営者としての
試金石
なのは間違いないと思います。