片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

家電メーカーは自動車メーカーを見習うべし!

2012-04-11 20:52:35 | 社会・経済

シャープと、台湾・鴻海精密工業(フォクスコン)が提携します。
鴻海は、アップルのiPhoneiPadの量産などで知られる、
EMS(電子機器受託製造サービス)の世界最大手です。
鴻海は、いわば下請け企業でありながら、
シャープに約1300億円を出資し、“救済”したわけです。

市場は、この提携を評価していますが、
シャープの将来を考えると、出口が見当たりません。
98年、当時社長だった町田勝彦氏は、
液晶がまだ注目されていなかった時代に、
「すべてのテレビを液晶に置き換える」と宣言しました。
以来、シャープは、
液晶の技術で地位を築き、大躍進を果たしました。
いわば、
液晶で成功した企業なのです。

それが、いま、同じ
液晶の不振で苦境に立たされています。
もう一つの主力である、
太陽光発電パネルも、
中国企業の躍進で、
苦戦が続いています。
鴻海と提携したとはいえ、では、この先、
生き残りの道をどこに見出すのか、トンネルの出口が見えないのです。

シャープだけではありません。
ソニーは、
年内にも1万人の従業員を削減すると発表しました。
「いまごろ、リストラか」という印象をぬぐえません。
同社は、12年3月期まで、
4基連続の最終赤字が続いています。
パナソニックも然りです。三洋電機とパナソニック電工を子会社化し、
ソリューション・ビジネスに舵を切ったのはいいですが、
ソリューション・ビジネスが稼ぎ頭に育つのはいつのことなのか。
両社とも、やはり突破口はまだ見えていないのが現状です。

比較的、いま、安心して見ていられるのは、
自動車業界でしょう。
昨年は、
3.11の東日本大震災に加え、タイの大洪水
日本の自動車メーカーはどうなるか……と危惧されました。
ところが、
トヨタ、ホンダ、日産とも、いまや回復軌道に乗り、
世界市場で競争力を維持しています。
以前、ソニー、パナソニック、シャープの社長交代により、
50代社長のトリオが誕生すると、このブログで書きました。
じつは、
トヨタ社長の豊田章男氏、ホンダ社長の伊東孝紳氏、
日産CEOのカルロス・ゴーン氏
は、いずれも50代です。
もちろん、それだけの理由ではありませんが、
9・15のリーマン・ショック、3・11の東日本大震災という、
2つの大きな転換期を経た、いまのグローバル市場に、
自動車業界は、比較的、対応できていると感じます。

いま、
シャープ、ソニー、パナソニックの3社は、
本当に、
危機的な状況に置かれています。
社員一人ひとりが、
危機感をもてるかどうか。
そして、
リーダーが突破口をつくれるかが、問われています。

かつて、シャープが液晶の技術で躍進したように、
ビジネスの世界は、きっかけさえあれば、
突然、
大きな突破口が現れることがあります。
そのチャンスを、掴みとることができるかどうか。
とりあえず、
今年度が3社にとって、正念場であることは確かです。
新しい家電メーカートップには、企業の進む
方向性を、
しっかりと覚悟をもって示す
とともに、
日本企業の最大の弱点ともいうべき
スピード経営が求められます。